オイラーズ次期監督にバブコック?地元メディアが猛批判の訳

NHLチーム紹介

はじめに

 2年連続でファイナルへ進出したエドモントン・オイラーズが、今まさに大激震に見舞われています。今夏、ロースター補強に集中すべきはずだった強豪は、前指揮官クリス・ノブロックとの決別を経て新監督選びの難題に直面。

 その中で浮上した大物マイク・バブコックの招聘検討は、ホッケー界に激しい賛否両論を巻き起こしています。組織の未来を占う緊迫の舞台裏に迫ります。🏒

参照記事(1):PFSN「‘Utterly Disgusting, They Should Be Embarrassed’ — Oilers Insider Puts EDM on Blast Over Mike Babcock Links

参照記事(2):The LeafsNationReport: Oilers consulting with NHLPA ahead of possibly hiring former Leafs head coach Mike Babcock

The LeafsNation(ザ・リーフス・ネイション)

 NHLのトロント・メープルリーフスに特化した、北米で高い認知度を持つ独立系のデジタルスポーツメディアである。2010前後に設立され、現在はカナダの大手スポーツデジタルネットワーク「Nation Network」の傘下で運営されている。

 試合結果の速報にとどまらず、高度なホッケーアナリティクス(期待ゴール率や補正セーブ率など)を用いた戦術分析、若手育成下部組織(サラリーキャップやドラフト指名選手)の動向、さらには番記者による独自の移籍・契約情報のスクープに強みを持つ。

 メープルリーフスはホッケーの聖地トロントを本拠地とし、リーグ随一の熱狂的なファン層とメディアの厳しい目に晒されるチームであるため、同サイトの分析や論評は現地のファンだけでなく、NHLのGMやエージェントなどの業界関係者からもクラブの動向を占う重要な情報源として広く参照されている。

連覇への光と影。ノブロック解任から始まったオイラーズの激動と漂流

 エドモントン・オイラーズの今オフシーズンは、輝かしい栄光の余韻に浸る暇もなく、不穏な空気とともに幕を開けました。チームを2年連続でスタンレー・カップ・ファイナルという最高の舞台へと導いたクリス・ノブロック監督。

 本来であれば、彼を中心とした長期的な黄金期の到来を予感させるはずでした。しかし、チームフロントが下した決断は、その功労者との電撃的な「袂を分かつ」という非情な選択だったのです。突然の指揮官解任以降、チームは立て続けに深刻な論争に直面することとなりました。

 本来の計画であれば、オイラーズはこの夏、悲願のカップ獲得に向けてロースターの弱点を補強することだけに全力を注ぐはずでした。しかし現在、彼らはチームを率いる新たな指揮官探しという、あまりにも重い難題を同時に抱え込んでいます。

 補強戦術の軸となるべき高度なホッケーアナリティクス、例えば期待ゴールパーセンテージ(xGF%)や、勝敗に直結するゴールテンダーのセーブ率、そしてチーム全体の年俸総額といった緻密なキャップコントロールの計算も、すべては新監督の戦術思想が決まらなければ進みません。

 そんな中、次なるベンチのリーダー探しは早くも暗礁に乗り上げつつあります。

 有力候補と目されていたブルース・キャシディとの交渉が完全に停滞する一方で、空席となった監督職になんと、ホッケー界で最もその名を知られ、同時に最も賛否が分かれる指導者の一人であるマイク・バブコックの名前が浮上したのです。

 この衝撃的な報道により、オイラーズの行く手にはさらなる混迷の霧が立ち込めています。

マイク・バブコック(Mike Babcock)

 カナダ出身のアイスホッケー指導者。

 NHLの監督として通算700勝を挙げ、デトロイト・レッドウィングス時代にはスタンレー・カップ優勝を経験したほか、カナダ代表を率いてオリンピック金メダルも獲得し、ホッケー界の栄誉である「トリプル・ゴールド・クラブ」入りを果たした輝かしい実績を持つ。

 その一方で、選手への高圧的な接し方や職場環境を巡る問題行動により、非常に賛否が分かれる人物としても知られている。

 トロント・メープルリーフス監督時代(2015-2019年)にはロッカールーム内に有害な環境を作り出したとして解任され、選手にチームメートの努力度を順位付けさせてそれを他選手に暴露したことなどが後に問題視された。

 また、2023年にコロンバス・ブルージャケッツのヘッドコーチに就任した際にも、開幕前に選手へ携帯電話を見せるよう要求するなどのプライバシー侵害疑惑が浮上し、プレシーズン開始前に辞任へ追い込まれている。

 2025-26シーズン終了後にクリス・ノブロック前監督を解任したエドモントン・オイラーズにおいて、有力候補ブルース・キャシディとの交渉停滞に伴い、新監督の候補として名前が浮上した。

 しかし、過去の度重なる不祥事や負の遺産への懸念から、その招聘検討の動き自体がメディアや関係者、ファンから激しい非難と論争を巻き起こしている。

バブコック招聘検討という「禁じ手」。ジェイソン・グレガー氏が吠えた猛烈な批判の全貌

 マイク・バブコック氏の名が月曜日の午後以降、監督人事の最大トピックとなってから、地元は蜂の巣をつついたような騒ぎです。

 報道によると、エドモントンは選考の最終段階にあり、幹部は職場環境への懸念が残っていないかNHL選手会(NHLPA)と協議を進め、組織内の主要リーダーとも話し合っているといいます。

【讃岐猫😺の深掘りコラム】劇薬バブコック招聘論が炙り出すオイラーズの機能不全と、「マクデビッド限界体制」の悲哀

 マイク・バブコック氏の招聘検討が報じられた月曜日以降、エドモントン周辺がまさに「蜂の巣をつついたような騒ぎ」となった背景には、単なる一人のベテラン監督の復帰劇という枠に収まらない、現在のエドモントン・オイラーズという組織全体の「迷走」と「狂気」が透けて見えるからである。

 北米の著名なホッケー評論家や有力メディアは、この一連の騒動をチームフロントの極限的な焦燥感の表れとして極めて辛辣に分析している。

 大手メディア『The Athletic』のドム・ルシシン氏は、「コナー・マクデビッドの全盛期という、いわば『瀕死の輝き』を放つ貴重な格付けの時期が、スタン・ボウマンGMとマイク・バブコックの手に委ねられようとしているのは信じがたい事態だ」と切り捨て、チームのガバナンス欠如を痛烈に批判した。

 オイラーズは今季、レギュラーシーズンで総得点282点を叩き出し、138ポイントを挙げたマクデビッドや97ポイントのレオン・ドライザイトルを擁するリーグ屈指の攻撃力を誇りながらも、チーム全体で269失点を喫するという深刻な守備崩壊に喘いだ。

 さらにボウマンGMが獲得したゴールテンダーのトリスタン・ジャリーがセーブ率.882と大乱調に陥るなど、フロントの編成ミスが新監督選びのハードルを異常なまでに跳ね上げる結果となった。

 大本命とされたブルース・キャシディとの交渉が、前所属チームとの契約関係による許可制の壁に阻まれて決裂した瞬間、フロントに残された選択肢は「劇薬」しか残されていなかったというのが専門家の一致した見方である。

 今回の騒動で最も議論を呼んでいるのが、チーム幹部が進める「NHL選手会(NHLPA)への根回し」と「主力リーダー層への打診」の舞台裏である。

 バブコック氏は2023年にコロンバス・ブルージャケッツの監督を電撃辞任した際、若手選手の携帯電話のプライベート写真を強引に閲覧しようとしたという、深刻な職場環境汚染およびプライバシー侵害疑惑を引き起こした過去を持つ。

 ジャーナリストのシェイナ・ゴールドマン氏が「2023年のコロンバスの悲劇から、チームは何も学んでいないのか。モラルコード(道徳規範)は存在しないのか」とSNS上で憤りを露わにしたように、ホッケー界全体がこの倫理観の欠如に呆れ返っている。

 それにもかかわらず、インサイダーのエリオット・フリードマン氏やボブ・スタウファー氏らの報告によれば、バブコック氏はすでにオイラーズのオーナーであるダリル・カッツ氏と直接会談し、さらにキャプテンのマクデビッドを含む主力リーダーたちと直接話し合いの場を持ったとされる。

 この面談によって「選手側のあらゆる潜在的な拒否権が排除された」と報じられており、チーム内からは一転して「100%バブコックを支持する」という全会一致の歪んだシグナルが発せられる事態となった。

 評論家たちは、この不自然な合意形成を「スタンレー・カップ獲得のためなら悪魔に魂を売ることも辞さない、オイラーズの限界的な狂気の証明」と解釈している。

 『Edmonton Journal』紙は、「もしこの招聘が失敗し、過去のコロンバス時代のようにロッカールームが再び炎上すれば、組織は正当に処刑される(社会的に抹殺される)だろう」と断言し、マクデビッドがエドモントンに残留するかどうかを決める重要なこの時期に、このような致命的なリスクを冒すフロントの博打性を危険視している。

 勝利という免罪符のためにハラスメントの歴史を不問に付そうとするオイラーズの姿勢は、2026年現在のNHLにおいて、メディアからもファンからも激しい逆風に晒され続けている。

出典:

・The Hockey Writers, “Oilers Sending Mixed Messages to Fans Amid Mike Babcock Rumours“, 2026年6月8日

・Daily Faceoff, “Unfortunately, Babcock was always coming back. He just needed a team desperate enough to hire him“, 2026年6月8日

・The Big Lead, “Oilers face backlash over reported interest in coach Mike Babcock“, 2026年6月8日

・Markerzone.com, “The Oilers have officially chosen their next head coach, per Stauffer”, 2026年6月8日

・Sports Business Journal, “Report: Oilers consult with NHLPA on possible Mike Babcock hire“, 2026年6月9日

 この動きに最も強い反応を示したのが、オイラーズに精通するジェイソン・グレガー氏でした。彼は自身の番組『The Jason Gregor Show』でチームの姿勢を猛批判しました。

『The Jason Gregor Show』

 スポーツラジオ局「Sports 1440」などで放送されている、エドモントン・オイラーズの動向に精通したジャーナリストのジェイソン・グレガー氏がホストを務める人気スポーツトーク番組である。

 オイラーズをはじめとするNHLのローカル情報や鋭いチーム分析を日々発信しており、地元のファンやメディア関係者に強い影響力を持っている。今回のマイク・バブコック氏の監督招聘不祥事に関する報道に際しても、チーム・フロントの姿勢に対してどこよりも早く、かつ激しいトーンで猛批判を展開した発信源となった。

 「彼が就任するかは別として、検討している事実だけで組織の方向性が分かる。申し訳ないが全く良い方向に見えないし、本当に不快だ」と切り捨てたのです。さらに支持派に対し「彼を雇うことがなぜ良い考えなのか説明してほしい」と訴えました。

 グレガー氏は国際大会での成功を評価する声も否定。カナダ代表の豪華ロースターを挙げ、選手との過去の問題を無視する理由にはならないと主張しました。

 そして「選手にあれほど酷い扱いを繰り返した監督の招聘を検討すること自体、組織として恥ずべきだ」と痛烈に批判。

 自身のXでも「スターを揃えたチームでの勝利はNHL監督としての評価にならない。2013年以降プレーオフで勝っておらず、2019年以降NHLで指揮も執っていない。何より問題行動の過去がある」と指摘しています。

讃岐猫
讃岐猫

消えない「1499試合」の遺恨と奇妙な因縁。メディアと有識者が明かすバブコックの明暗

 この激しい議論は、グレガー氏一人の意見に留まりません。多くの有識者がバブコック氏の過去の「負の遺産」を次々と告発しています。NHLリポーターのアレックス・ミケレッティ氏は、彼の監督人生で最も悪名高いエピソードを挙げて痛烈に批判しました。

 「マイク・バブコックがマイク・モダノを健康上の問題もないのに欠場させ、NHL通算1,500試合出場まであと1試合の1,499試合で終わらせた非情な仕打ちを忘れてはならない。彼がこのリーグに戻る必要は一切ない」とXに投稿し、猛烈な拒絶反応を示したのです。

 その一方で、アナリストのポール・アルメイダ氏は、現在のオイラーズのフォワードであるザック・ハイマンを巡る、タイムリーかつ奇妙な繋がりを指摘しました。

 「先週、ザック・ハイマンがオーナーを務めるブラントフォード・ブルドッグスがマイケル・バブコックをヘッドコーチに任命した。そしてわずか3日後、今度はオイラーズが彼の父親であるマイク・バブコックを監督として迎えようとしている」と記したのです。

【讃岐猫😺の深掘りコラム】「1499試合の遺恨」はなぜ15年経っても消えないのか――バブコック問題の核心と、“息子人事”が呼んだ新たな波紋

 マイク・バブコック氏を巡る議論が、オイラーズ監督人事で再燃している最大の理由は、戦術論や勝率の問題ではない。北米メディアや評論家が繰り返し指摘しているのは、「彼は結果のためなら選手の感情や功績を軽視する」というイメージが、15年以上経った今でも消えていないことである。

 その象徴が、いわゆる「1499試合事件」だ。

 2010-11シーズン、当時40歳だったマイク・モダノは、故郷に近いデトロイトで現役最後のシーズンを過ごしていた。ところがレギュラーシーズン終盤、NHL通算1500試合出場まであとわずかという局面で、バブコック監督はモダノを健康上の問題がないにもかかわらず欠場させた。

 結果としてモダノは1499試合で現役生活を終えることになったのである。CBS Detroitの当時の記事でも、バブコックが終盤戦でモダノを外した結果、1500試合到達が不可能になった事実が報じられている。

 この件について興味深いのは、当時よりもむしろ近年になって再評価が進んでいることである。現在の北米ホッケー界では「選手へのリスペクト」や「組織文化」が重視されるようになったためだ。

 近年の評論家や元選手の間では、「シーズン順位にほとんど影響しない状況で、将来殿堂入りするレジェンドの節目を奪う必要が本当にあったのか」という見方が主流になっている。実際、2025年に公開されたモダノ本人の回想でも、この出来事は改めて話題となり、バブコックの冷徹なマネジメントを象徴する事例として扱われた。

 さらに北米ファンコミュニティでは、この件は単独の事件としてではなく、後年明らかになったミッチ・マーナーへの心理的圧力や、ジェイソン・スペッツァの開幕戦欠場問題などと並べて語られる傾向が強い。

 つまり「1499試合」は、単なる記録達成失敗ではなく、バブコック流マネジメントの象徴として記憶されているのである。

 一方で、「ブラントフォード・ブルドッグスとバブコック家」の話題は、全く異なる意味で注目を集めている。

 OHLのブラントフォード・ブルドッグスは6月上旬、マイケル・バブコック氏を新ヘッドコーチに任命した。マイケル氏はAHLサンディエゴ・ガルズのアシスタントコーチを務めていた31歳の若手指導者であり、ホッケー界では有望株として評価されている。

 しかし、この発表が大きな話題となったのはタイミングである。

 ブルドッグスのオーナーは、現在オイラーズでプレーするザック・ハイマンであり、球団運営には兄のスペンサー・ハイマンが深く関与している。そしてマイケル・バブコック就任発表から数日後、今度はオイラーズが父マイク・バブコックを監督候補として本格調査しているとの報道が出たのである。

 もちろん、現時点で両者に直接的な因果関係がある証拠はない。しかし評論家たちは別の角度からこの偶然に注目している。

 ザック・ハイマンはトロント時代にバブコックの下でプレーし、キャリア初期に重用された数少ない選手の一人だった。バブコック体制下で信頼を勝ち取った経験があり、現在でも一定の敬意を持っていると見られている。

 そのため一部メディアでは、「オイラーズ内部でバブコック支持派が存在するとすれば、その中心人物の一人はハイマンかもしれない」という推測も出ている。

 つまり現在の論争は、「バブコックは有能か無能か」という話ではない。

 700勝監督という実績を評価する人々と、「1499試合事件」やブルージャケッツ辞任騒動に象徴される組織文化のリスクを重視する人々が真正面から衝突しているのである。だからこそ2026年のオイラーズ監督人事は、単なるコーチ採用ではなく、「勝利と組織文化のどちらを優先するのか」という現代NHL全体の価値観を問う象徴的なケースになりつつあるのである。

出典リスト

CBS Detroit, “Detroit Red Wings Notes And Quotes”, 2011年4月4日

CBS Detroit, “Modano Hoping To Get Back On The Ice”, 2011年4月15日

Sportsnet, “Brantford Bulldogs hire Michael Babcock as head coach”, 2026年6月5日

BrantBeacon, “Brantford Bulldogs hire Michael Babcock as head coach”, 2026年6月8日

Pro Hockey Rumors, “Snapshots: Canucks, McNabb, Babcock”, 2026年6月5日

Blade of Steel, “Mike Modano Reveals What Mike Babcock Told Him Prior to Fleecing Him Out of 1500 Games”, 2025年1月15日

 こうした生々しい反応は、バブコック氏の評価がいかに二極化しているかを物語っています。彼の実績には、NHL通算700勝、スタンレー・カップ優勝、オリンピック金メダル、そして栄誉ある「トリプル・ゴールド・クラブ」入りという、ホッケー界の最高峰の輝かしい功績が並びます。

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 しかし同時に、選手への威圧的な接し方は、今なお消えない影を落としています。

残された「空席」は2つ。キングスがラビオレットを選んだ裏で進むNHLPAへの根回し

 リーグ全体を見渡すと、各チームの思惑が複雑に絡み合っていることが分かります。

 月曜日、ロサンゼルス・キングスがピーター・ラビオレット氏を新監督に迎えたことで、2025-26シーズン終了後の時点でヘッドコーチが不在となっているチームは、トロント・メープルリーフスとエドモントン・オイラーズのわずか2チームのみとなりました。

 限られた選択肢の中で、オイラーズのフロントが焦りとともにバブコック氏という劇薬に目を向けたのは、ある種の流れだったのかもしれません。

 TSNのダレン・ドレガー氏の報告によると、オイラーズは元メープルリーフス監督であるバブコック氏を新指揮官として正式に迎える可能性を真剣に検討しているものの、その手続きは慎重を極めています。

 契約を交わす前に、まずNHL選手会(NHLPA)へ意見を求め、選手サイドからの強い反対意見や反発がないかを事前に確認している段階だといいます。

 それもそのはず、バブコック氏は2023年にコロンバス・ブルージャケッツのヘッドコーチに就任した際、選手のプライバシーを著しく侵害したとの疑惑が急浮上し、なんとシーズン開幕を前にして電撃辞任に追い込まれたという前科があるからです。

 ドレガー氏はこの件に関し、オイラーズが彼を実際に招聘する前段階として、当時の不祥事についての「さらなる詳細な調査が必要になる可能性がある」と言及しており、慎重な根回しが進められています。

マクデビッドへの打診、そして携帯電話疑惑。トロント時代に蒔かれた有害な種

 チームの動きは水面下で急速に進んでいます。NHL Networkのデビッド・パニョッタ氏によれば、オイラーズはすでにキャプテンのコナー・マクデビッドをはじめとする主力選手たちに対し、バブコック招聘の可能性について意見を求めているとのことです。

 選手たちの反応が注目される中、彼につきまとう不信感の理由は直近の醜聞にあります。

 2023-24シーズン開幕前、ブルージャケッツの監督に就任直後だった彼は、選手たちの携帯電話を見せるよう要求したほか、複数のプライバシー侵害行為を働いた疑惑が浮上。プレシーズン開始前に辞任へと追い込まれました。

バブコック氏の「パワハラ・スマホ覗き見辞任劇」を伝えるニュース映像。YouTubeには他の放送局の映像もアップされており、前代未聞の不祥事(彼1人で何回かやってるが)であることが分かります。

 それ以前、彼は2015年から2019年までトロント・メープルリーフスのヘッドコーチを務めていました。デトロイト・レッドウィングスで10シーズン指揮を執り、スタンレー・カップ優勝を経験した後に鳴り物入りでトロントへ移ったのです。

 2017年から3年連続で若いリーフスをプレーオフへ導くも、すべて1回戦敗退。2019-20シーズンには開幕からの成績不振に加え、ロッカールーム内に「有害な環境」を作り出していたとの批判が重なり、23試合を終えた時点で解任されました。

 有名な例として、2016-17シーズンに当時新人だったミッチ・マーナーにチームメートの努力度を順位付けさせ、そのリストを他の選手たちに見せた陰湿な行為が報じられています。

【讃岐猫😺の深掘りコラム】絶対君主の凋落と「ハラスメント・パラダイム」の終焉:マイク・バブコックが遺した壊滅的ガバナンスの正体

 北米プロホッケー界において、マイク・バブコックという名はかつて「勝利の絶対方程式」と同義であった。デトロイト・レッドウィングスでのスタンレー・カップ制覇、カナダ代表を率いたオリンピック連覇など、その実績は非の打ち所がない。

 しかし、トロント・メープルリーフスとコロンバス・ブルージャケッツで彼が引き起こした2つの決定的なスキャンダルは、「厳格な指導」の枠を完全に逸脱し、現代のスポーツマネジメントにおける最大級の禁忌である「心理的虐待」と「プライバシーの侵害」の領域に踏み込んでいたことが、のちのメディアの追及や評論家の分析によって白日の下に晒されている。

 まず、トロント時代の2016-17シーズンに発生したミッチ・マーナーへの「新人いびり(ルーキー・テスト)」は、ホッケー界の権力構造を悪用した最も陰湿なマニピュレーション(心理操作)の典型例として、今なおメディアで激しく糾弾され続けている。

 北米スポーツメディア『The Hockey Writers』等の詳細な検証によると、バブコックは当時わずか19歳だった新人のマーナーに対し、チームメートの練習態度や努力度を順位付けしたリストを作成するよう命じた。

 マーナーは困惑しながらも、謙虚さを示すために自分自身を最下位に置いたリストを提出したが、バブコックはそのリストを本人に無断で、順位の低かったベテラン選手たち(ナゼム・カドリ、タイラー・ボザックら)に直接見せつけたのである。

 この行為について、多くの評論家は「ロッカールーム内の信頼関係を意図的に破壊し、互いを監視・猜疑させることで、自身への絶対的服従を強いるための謀略(マキャベリズム的アプローチ)」であったと断定している。

 幸いにもベテラン選手たちがバブコックの意図を見抜き、マーナーではなく監督本人に「新人に対して絶対にやってはならない一線を越えた行為だ」と詰め寄ったため崩壊は免れたが、この一件はチーム内に回復不能な「有害な環境(トキシック・エンバイロメント)」を定着させる決定打となった。

 2019年にバブコックが解任された際、当時のGMカイル・デュバスらフロント陣すらこの事実をメディアの報道まで把握していなかったことが露呈し、監督個人のブラックボックス化した統治がいかに組織のガバナンスを機能不全に陥れていたかが浮き彫りとなった。

 そして、2023年夏にコロンバス・ブルージャケッツの監督就任からわずか78日で電撃辞任に追い込まれた「スマートフォン閲覧強要事件」は、彼が過去の過ちから何一つ学んでおらず、その支配欲求がさらに歪んだ形でエスカレートしていたことを証明した。

 ポッドキャスト番組『Spittin’ Chiclets』の告発を機に、NHL選手会(NHLPA)の合同調査へと発展したこの騒動の舞台裏は、当初チーム側が弁明したような「相互理解のためのチームビルディング」などという生ぬるいものではなかった。

 有識者やメディアの報道によると、バブコックは選手たち、特にまだ実績がなく立場が脆弱な若手選手をチーム施設外の密室に呼び出し、アンロック状態のスマートフォンを提出させ、数分間にわたって個人の写真フォルダやテキストメッセージを文字通り「物色」していたとされる。

 さらに、そのプライベートな写真をオフィス内の大型モニターにAirPlayでミラーリングし、他のコーチ陣や選手たちの前で公開するという、言語道断のプライバシー侵害を働いていた疑惑も浮上した。

 評論家たちはこの事件に対し、「スマートフォンの閲覧要求は、現代社会における個人の尊厳、セクシャリティ、あるいは家族との私的な領域に対する最悪の不法侵入である」と一斉に猛反発した。

 地位の優位性を利用し、拒否すれば「チームプレーヤーではない」との烙印を押されてキャリアを潰されかねないという恐怖を選手に植え付ける手法は、まさに前時代的なパワーハラスメントの極みであった。結果として、開幕を待たずしてNHLPAが介入し、事実上の追放処分となったのは当然の帰結と言える。

 マイク・バブコックという絶対君主の失脚劇は、単なる一指導者の不祥事ではない。それは、「勝てば何をしても許される」というアイスホッケー界の古い悪弊(オールドスクール・カルチャー)に対する、現代のコンプライアンスおよび選手の人権意識が下した決定的なNOの審判である。

出典

The Hockey Writers, “How the Marner–Babcock Incident Sparked a Culture Shift in Hockey“, 2024年

The Hockey News, “Former Leafs GM Dubas Says He Was Unaware Of Babcock-Marner ‘List’ Until Report Following Coach’s Dismissal“, 2024年

The Guardian, “Columbus’s Babcock resigns after reportedly asking to see players’ phone photos“, 2023年9月17日

The Link, “Shut Up and Dribble: Mike Babcock’s Immoral Second Chance“, 2024年11月5日

 なお、TSNのピエール・ルブラン氏は、もし彼が就任した場合、トロント時代のアシスタントだったDJ・スミス氏がスタッフに加わる可能性を指摘しています。

まとめ

 エドモントンにとって新監督選びは、チームの理念そのものを問う決断です。マイク・バブコック氏の招聘は、勝利への特効薬になり得る一方、深刻な「負の遺産」を背負うギャンブルに他なりません。

 もし就任が現実となれば、初日からメディアやファンによる厳しい追及は避けられないでしょう。サインが交わされる前から、この巨大な論争はオイラーズの次なる、そして最も重要な章に暗い影を落としています。🏒

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