はじめに
選手のFA移籍ニュースも一段落し、「選手がオフシーズンをどう過ごしているか」とか、「新シーズンに向けてのトレーニング・キャンプに、あの選手が参加する?しない?」のニュースが、どの情報サイトでも多くなってきています。2週間後にプレシーズン・マッチも始まりますし。
今回取り上げるニューヨーク・アイランダーズのザック・パリスは、少し変わったオフシーズンを過ごしているようです。彼は無制限FA選手なのですが、チームから出ることなく、契約完了次第、チーム復帰予定となっています。しかし、彼は引退の可能性を匂わせています。
もう一つのニュースは、モントリオール・カナディアンズ期待の若手選手コール・コーフィールド、ケガから元気に復帰!です。巻き返しを図る名門チームはチーム始動を早め、新シーズンへの意気込みを内外へ示しています。それに間に合わせた彼の活躍に期待ですね。
ベテランと期待の若手、それぞれのオフシーズンの過ごし方が対照的だにゃ。
パリスは、ここ2シーズン全試合出場、まだまだできると思うのだが…。
引用元:NHL.com「Parise won’t attend Islanders camp, remains unrestricted free agent」
大ベテランは家族の元へ…、引退か?
9月11日(月曜日)、ゼネラルマネージャーのルー・ラモリエロは、ザック・パリス(左ウィング、39歳)がニューヨーク・アイランダーズのキャンプに参加せず、無制限フリーエージェントのままであることを明らかにしました。
※ルー・ラモリエロ=詳しくはこちら→☆。
39歳のフォワードはミネソタ州エディナに自宅を置いており、今シーズン後半に復帰する可能性について、ラモリエロは排除していません。
※ミネソタ州エディナ=米国ミネソタ州南東部ヘネピン郡にある都市で、人口は4万8千人ほど。富裕層が多く在住していることから、この街の住人は、マリー・アントワネットの言葉「だったら、ケーキを食べさせればいいじゃない」をモチーフにした「ケーキを食べる人」と呼ばれる。
「ザック・パリスはここにいないだろう」とラモリエロは言いました。「ザックは家族と一緒にいる。残りのシーズン(復帰予定のシーズン後半)がどうなるか見ていくつもりだが、今重要なのは、彼がそこ(ミネソタ州エディナの家族の元)にいることだ。
彼は家族と数年離れていたので、それ(キャンプ不参加で家族と過ごすこと)が現時点での決定なんだ」。
5月1日、パリスは、今シーズンについて、ニューヨークでプレーするか、引退するかのいずれかだと語りました。
「私の知る限り、彼は引退しない」とラモリエロは述べています。「実際のところ、現時点で彼がそうする(引退する)とは思えない」。
パリスの前歴
過去2シーズン、パリスはアイランダーズで82試合すべてに出場し、合計69ポイント(36ゴール、33アシスト)を記録しました。
アイランダーズ、ニュージャージー・デビルズ、ミネソタ・ワイルドでは1,124試合で879ポイント(429ゴール、450アシスト)を記録しており、2021年9月21日、(ワイルドが)13年間・9800万ドル(日本円で約144億円)で契約した最後の4シーズンを買い取っています。
※2021年9月21日、…=ワイルドの公式サイトやWikiでは「同年7月13日」となっている。公式によると、ワイルドがスタンレーカップ優勝を目指すため、メンバーの変更(要するに若返り)を断行した結果、4季分のサラリーを支払い、放出することとなった。
2023年のスタンレーカップのプレーオフ、イースタンカンファレンス・ファーストラウンドでカロライナ・ハリケーンズに6試合戦った末に敗れ、パリスはポイントを獲得できませんでした。
パリスは、2003年のNHLドラフトで、当時GMだったラモリエロのデビルズから1巡目(全体17位)で指名されています。
13年間・9800万ドルで結んだ契約の最後の4シーズンをワイルドが買い取った後、2021年9月10日、FAでアイランダーズと契約した際、ラモリエロと再会しました。
GMとチームメイトの談話
「ドアはいつも開いていたよ」とラモリエロは語っています。「ザックが17歳の時からの私との関係は誰もが知っていると思うし、私は、彼の今いる場所で下した決断を理解し、感謝し、尊重する。
※17歳の時からの…=当時、米国ミネソタ州ファリボーのシャタック・セント・メアリーズ・スクールの高校生であり、同校内の最高クラスAAAミゼットのホッケーチームに所属していた。
同校のホッケー部は「ホッケーのホグワーツ(ハリーポッターに出てくる架空の魔法学校)」と呼ばれるほど、人材育成に長けており、NHLへ多くの選手を輩出している。
でも、あのように試合を愛し、あのような活躍をし、チームのために尽くしてくれた選手がいる以上、彼がその決断を下すのは難しいことなので、プレッシャーをかけたり、何か尋ねたりすることなく、彼にはできる限りのことをさせていると思うね」。
「彼は家族のために正しい決断をしたんじゃないかな。そして、我々は彼のためにドアを開けておくだけだ。そして、私が彼に言ったように、チームは背番号(11番)もそのままにしておくよ」。
ワイルドの若返り策は大胆だにゃ。意地を見せたのか、
パリスの2シーズン連続で全試合出場も、もっと評価されるべきだと思う。
若い頃から知っているとはいえ、GMの温情が素晴らしい。
パリスはNHLで11回に及ぶ20ゴールの記録を持ち、2008-09シーズン、デビルズでキャリアハイの45ゴールを挙げています。2022年2月25日、アイランダーズがサンノゼ・シャークスにシュートアウトの末4-3で敗れたとき、彼はNHL通算400ゴール目を決めました。
2023年2月17日、UBSアリーナで行われたピッツバーグ・ペンギンズ戦では、第3ピリオド残り2分43秒にゴールを決め、ニューヨークに5-4の勝利をもたらし、NHL通算1200試合目を達成しています。
7月13日、アイランダーズの主将アンダース・リー(左ウィング、33歳)は「あんな男と一緒にプレーするのは本当に特別だ。彼はとても成功したキャリアを積んできたし、あの年齢で、彼が氷上で何をしているかを見るだけでも非常に素晴らしい。
それに、この部屋(チームのこと)に、これ以上の男を見つけることができないよ」と述べました。
引用元:NHL.com「Caufield to start Canadiens training camp on time after shoulder surgery」
カナディアンズ期待の若手、ケガから復帰!
肩の手術から回復したコール・コーフィールド(右ウィング、22歳)が、予定通り、モントリオール・カナディアンズのトレーニングキャンプを開始します。
22歳のフォワードは、1月19日にフロリダパンサーズに6-2で敗れて以来、プレーしていません。
9月11日(月曜日)に行われたゴルフのカナディアンズ・トーナメントで、コーフィールドは「以前よりも気分が良くなったと言えるね」と語りました。「だから、本当にわくわくしているし、準備もできているし、気分は100%だ」。
昨シーズン、コーフィールドは46試合の出場にとどまったものの、センターのニック・スズキ(センター、24歳)と並ぶ、チームトップの26ゴールを挙げ、36ポイントを記録しています。
コーフィールドは「長い夏だったし、戻ってこられてうれしい」と語りました。
ここ数週間で40人以上の選手がモントリオールに集まり、キャンプを前にケベック州ブロサードの練習施設でトレーニングを行っていますが、その中にはコーフィールドやFWジュラジ・スラフコフスキー(左ウィング、19歳)らも含まれています。
※ケベック州ブロサード=カナダ、ケベック州のモンテレジー地域にある都市。モントリオール郊外の閑静な住宅地で、人口増加率も高く、俗に言う「住みやすい街」。人口は8万5千人ほど。フィギュア・スケートをはじめ、アイスリンクを使うスポーツの人気が最も高い。
キャンプ前の自主トレ期間中とはいえ、
所属選手ほぼ全員が集まっているところに、並々ならぬ意欲を感じるにゃ。
昨シーズンのディビジョン最下位が相当こたえたのだろう。
チーム全体が新シーズンに燃えている!
カナディアンズのホッケー事業担当エグゼクティブ・バイス・プレジデント、ジェフ・ゴートンは「彼らがここに来たいと思っていることを示しているね。我々がここから前進していく上で、重要な年だと彼らは理解してくれている」と述べました。
「良い若い選手達だ。彼らがどこへ行こうとしてるのかって?それがどこになるのか、我々は皆ワクワクしているよ。彼らはそんな我々の様子を見ていると思うし、一緒にいたいと思ってくれてる。
リーグを見渡してみても、32チームの中で、キャンプ前の月に、ここにいる必要のない時、40人もの選手を集めているチームがあるなんて思えないよね」。
「選手たちの献身的な姿勢は、私たちに多くのものを示してくれているんだ」。
2022年のNHLドラフトで1位指名されたスラフコフスキーは、1月15日、膝の怪我でルーキーシーズンを終える前まで、39試合で10ポイント(4ゴール、6アシスト)を記録しています。
「実際のところ、待ちきれないよ」とスラフコフスキーは語りました。「9ヶ月かそこら経っていて久しぶりだし、プレーが恋しくて待ちきれないね」。
「目指せ、プレーオフ進出!」が合言葉
2021年、カナディアンズ(31-45-6)はスタンレーカップ決勝に進出しましたが、この時、タンパベイ・ライトニングに5試合で敗れ、その後、負傷者続出のため、アトランティック・ディビジョンで2シーズン連続の最下位に終わり、スタンレーカップ・プレーオフを逃しています。
ゴートンは「(プレーオフを意味する)Pワードを口にし、これ(練習)をやって、このまま進んでほしい、と誰もが望んでいるのは分かっているさ」と述べました。「ここに来てから、ずっと我々は内心言ってきたし、毎日良くなるように努力しているつもりだ。
※Pワード=本来は、あまり公で使わない(使ってはいけない?)言葉を指すのだが、ここでは、前後の文脈から、「Play−off」あるいは「Power Word」のことを指していると思われる。
陳腐な決まり文句であることはわかっているし、申し訳ないけど、それ(Pワードを口にすること)については我々の前進する方法なんだよ。それが私たちの望んでいることだからね。
我々には成長の伸びしろのある若い選手がたくさんいて、もっと彼らにその伸びしろを与えていくつもりだ」と述べています。
3月15日、膝の手術を受けたフォワードのクリスチャン・ドヴォルザーク(センター/左ウィング、27歳)は、医学的にまだクリアにしていく必要がありますが、ディフェンスのアーバー・シェカイ(22歳)は3月1日に受けた肩の手術から回復しており、「Pワード」について言及することをためらいませんでした。
一昨シーズンのわずか22勝、そして2シーズン連続最下位は、
オリジナル・シックスであるカナディアンズとして、屈辱的な成績なんだにゃ。
記事に出る若手たちを中心として、どこまで巻き返せるか。
「僕らはみんな若いと思うけど、去年で1年生は全員卒業したと思うし、今ではある程度の経験を積んだはずさ」とシェカイは述べています。「だから、毎年プレーオフに進出することが今年の目標だ」。
まとめ
日本のプロ野球やJリーグでも、伝統あるチームの不振は格好のニュース・ネタとなります。カナディアンズも同様の立ち位置で、このまま新シーズンもズルズル行ってしまうと、面目丸つぶれで、GMやフロント陣の一掃も視野に入ってくるでしょう。
とはいえ、サラリー・キャップ制がある以上、湯水のようにお金を使うわけにいかず、あの手この手で育成促進していくしかないのです。ケガから復帰した若手2人がこれだけ注目されるのも、育成に重きを置くNHLならではの光景と言えるでしょう。
それとは真逆で、大ベテランのザック・パリスの帰還を待つGMの親心も、チーム運営上、必要なのかもしれません。本人が一度引退を口にしているだけに、ややチーム側は不利な感じもしますが、とにかくひたすら待ちの姿勢を貫くGMの願いが届くと信じたいところです。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!