はじめに
前回は、フロリダ・パンサーズが成功させたマシュー・トカチュクのトレードを真似しようと、トロント・メープルリーフスの立てた「計画」の是非と、そのリーフスのGMカイル・デュバス電撃解任の内情についてお届けしました。
前回の記事はこちら→☆。
今回は、デュバス電撃解任の内情の続きと、プレーオフの試合中、ダラス・スターズのキャプテン、ジェイミー・ベンが犯した悪質なファールに関するものです。リーフスの改革を進め、ワンランクアップして、さあ、これからという時期の解任、果たして何があったのか。
また、後者はベン個人の問題だけでなく、ファール・プレーへの認識がチーム全体で甘いのではないか、という問題提起になっています。
今回は、現在行われているプレーオフから7つの教訓を学ぼう!
の2回目だにゃ。
該当チームに対する厳しい指摘はかなり考えさせられる!
引用元:ESPN.com「Seven hard lessons from the 2023 Stanley Cup playoffs」。
デュバスは当然の権利を主張しただけなのか?
しかし、それこそが、現在、プロ・スポーツでメンタル・ヘルスに焦点を当てている理由です。その汚名を返上するために。
(ある人が)「この件について家族と話し合いたい」と申し出ても、「はぁ、この人が本当にここにいたいのかどうか分かりませんねぇ」と言い返されるような世の中にしないことです。
シャナハンとは何年も前からの知り合いです。デュバスと袂を分かつにあたり、公に対して述べた弁解を理解してもらおうとするあまり、あのようなことをしてしまったと思っています。彼のような性格と道徳観を持つ人間が、実際にそんな不評を買うようなことをするなんて想像できません。
カイル・デュバスについて、真実だと思っていることがあります:
保留中のフリーエージェント選手なら誰でもするように、彼は行動したまでです—そして、次のステップについて、家族と話す必要があると言うだけでなく、再契約する・しないに関わらず、家庭を持つ選手なら誰でも言うことです。
リーフスとの契約は今夏に終了します。デュバスは自分に賭けて勝ったことで有名です。OK、プレーオフ・ラウンドで勝ちましたが、これはトロントでのブライアン・バーク、デイブ・ノニス、ルー・ラモリエロの勝利以上のものです。だから、彼は活気にあふれていたのです。
※ブライアン・バーク=2008年11月〜2013年1月までリーフスGM職。彼の在任中、リーフスはずっとポスト・シーズン進出に失敗し、2004年のロックアウト以降、リーグ内でポスト・シーズン進出を果たせなかった唯一のチームとなってしまった。
※デイブ・ノニス=現カルガリー・フレームズのアシスタントGM。バークのいるところ、ノニスありと言われる如く、バーク政権の番頭役として行動を共にしていた。バーク解任後、リーフスGM職に就き、2013年、久方ぶりにチームをプレーオフ進出に導くが、以後は低迷。
※ルー・ラモリエロ=現ニューヨーク・アイランダーズのGM。NHLでのプレーはおろか、コーチ経験もないにかかわらず、GMに就任すると、ニュージャージー・デビルズを強豪にし、リーフスをプレーオフに進出させた。2004-05シーズンのロックアウト和解交渉でも尽力。
※勝利以上のもの=2013年のカンファレンス準々決勝進出以外、リーフスはプレーオフに進出できないか、できても1回戦敗退ばかりであった。デュバスがGMに就任し、今シーズン、遂にその壁を破り、2回戦へと駒を進めたため、彼は強気に出たのかもしれない。
また、デュバスには他の選択肢もありました:ピッツバーグ・ペンギンズにはホッケー運営の社長とゼネラルマネージャーのポストがあります。オタワ・セネタースの新しい所有権は、彼にチームのトップの仕事を提供する可能性があります。
デュバスは調子に乗っていたのかもしれない…
複数のNHLの情報筋によると、デュバスはシャナハンと同等のホッケー経営力と、その力に見合った給料を求めていたと言われています。もしそうなら、私はシャナハンの考えを理解します:
テーブルの上座にて、2人で同時に椅子の共有を望む部下に対し、そんな部下を会社にいさせようと悪戦苦闘するチーム社長がどこかにいますか?1人用の椅子に、同時に2人で座ろうとしたことはありますか?それは、上司に給料を聞かれるのと同じくらいの不快感しか残りません。
成功の可能性が低いにも関わらず、デュバスは軽々に行動してしまったのです。彼はホッケー界の中心にいて、太陽に近づきすぎたのかもしれません。リーフスは優秀な若い幹部を失いました。デュバスは心から愛していた仕事を失ってしまったのです。それがビジネスです。
ホッケー文化がまた誰かの感情の弱さを打ち砕くのではなく、その良き文化がすべての決定要因であると心から信じたいのです。
ESPN.comにデュバスの写真がアップされてるけど、
いかにもヤング・エグゼクティブって感じなんだにゃ。
彼の斬新なチーム改革は認めるけど、
社長のテリトリーにまで入っちゃいかんよ。
ダラスは大荒れの試合でやらかした!
教訓:ジェイミー・ベンはミスなんかしてません(一部の人々にとって)
ウェスタン・カンファレンス決勝の第3戦の後、ダラス・スターズは、ポスト・シーズン全体で最も多くのゴミのようなペナルティを受けたキャプテン(ジェイミー・ベン〈左ウィング、33歳〉)よりも、ペナルティを不服として、氷上にゴミを投げつけたファンに対する辛辣な批判をしました。
※ファンに対する辛辣な批判=ESPN.comの該当記事はこちら→☆(英文)。
記事によると、第2ピリオド終了間際、ダラスの選手たちによる暴力行為があり、審判の判断で試合が一時中断し、選手全員をロッカールームに避難させる処置が取られている。試合終了後、ダラスCEOのブラッド・アルバーツから、謝罪と一部ファンへの批判声明が出されている。
事件は第3戦開始直後に起こった
第3戦が始まって2分も経っていない時でした。
ベガス・ゴールデンナイツがすでに1-0でリードしているのは、ジャック・アイケル(センター、26歳)が良いパスを出すのを止められず、ジェイク・オッティンガー(ゴールテンダー、24歳)が入ってくるシュートを止められなかったからです。
ベンはマーク・ストーン(右ウィング、31歳)を氷上にたたきつけました。そしてスティックを手に取り、ストーンの顎を上から突くような形で押し付け、大きな体の力を使って氷上に倒してしまったのです。審判は試合上の不正行為と見なし、ベンにマッチ・ペナルティを与えました。
そして、そのまま、彼の身勝手な行為により、ゴールデンナイツに5分間のパワープレーが与えられ、その間にベガスはリードを広げ、ダラスはプレーオフ得点ランキング4位の選手を失うこととなったのです。
チームメイトはみな擁護派
第3戦後、ベンは発言せず、チームメイトに彼の代弁を任せました。そして、チームメイトは彼を擁護したのです。スターズで2番目に長く在籍しているタイラー・セギン(センター、31歳)は、スターズの選手控室での彼に対する不満は「0」だったと語りました。
NHLで最も尊敬されているリーダーの1人であるジョー・パベルスキー(センター、38歳)によると、ベンがストーンにタイトにマークされていたため「少し余計なことをしてしまった」と語っています。
その時、私は口を挟み、パベルスキー―彼自身もサンノゼで4年間キャプテンを務めた―に「ジョー、彼に失望していますか?」と尋ねました。
彼は、その質問を理解できないかのように「いいえ」と言うではないですか!
「オマエ、俺が尊敬している奴に失望したのかって?誰もそんなに激しく戦ってないぞ?俺からすれば、[ベンに]問題なんかないよ」とパベルスキーは言いました。
スターズの選手やピーター・デボア監督が、自分たちのキャプテンを貶めたり、敗因を彼になすりつけるとは、誰も思っていません。ホッケーの文化において、チームが勝つか、あるいは負けるか、それしかないのです。
しかし、第3戦以降に彼をサポートすることと、チームの勝敗は本質的に異なっています。この考え方に間違いはありませんでした。
第2戦の規定の試合時間終了時、ライアン・スーター(ディフェンス、38歳)が暴言を吐いたのは間違いです。これは、チーム・リーダーとして許されない行為です。彼のキャプテンシーがどの程度のものか、他の都市で厳しく指摘した記事があるはずです。
頭への故意のヒットというのは、
どんなスポーツでも禁止されていることだから、
さすがに正当化しちゃダメだにゃ!
危険なプレーは絶対ダメ!
2010年、マット・クックがマーク・サバードの頭部へチェックしに行き、そのまま倒してしまいました。当時、それは出場停止に値するヒットと見なされていません。
※マット・クック=カナダ、オンタリオ州ベルビル出身、44歳。現役時代のポジションは左ウィング。荒っぽすぎるプレー・スタイルが批判され、NHL史上、いい評価をされていない。しばしばヘッド・ショットや膝のぶつけ合いで相手を負傷させ、出場停止処分を受けている。
※マーク・サバード=カナダ、オンタリオ州オタワ出身、45 歳。現役時代のポジションはセンター。2010年3月7日、サバードはクックの肩によるチェックを頭に受け、グレード2の脳震盪を起こした。しかし、3日後にはクックに罰則を課さないと、NHLは声明を出している。
この事件の余波が、選手の見えない位置からのヒットに対し、より重く罰する新ルールを制定するきっかけとなったことである。なお、サバードは事件後も病院には搬送されず、試合に出続けていたが、脳震盪の後遺症により、2010-11シーズンを最後に引退している。
ビル・ゲリンは、ペンギンズでクックのチームメイトでした。それでも彼はプレーと選手を批判し続けたのです。
※ビル・ゲリン=米国、マサチューセッツ州ウースター出身、52歳。現役時代のポジションは右ウィング。現ミネソタ・ワイルドGM。7つの異なるチームでシーズン20ゴールを達成した最初の選手であり、5つ以上の異なるチームでシーズン20ゴールを達成したわずか3人の選手のうちの1人である。
「彼が僕のチームにいて、僕が彼のすぐ隣に座っていても、あるいは彼がカリフォルニアでプレーしていても、僕らは皆同じ傘下にあるはずさ」とゲリンは言いました。
「でも、それは関係ないよ。同じリーグでプレーしている以上、僕らは皆同じく安全を望んでいる。お互いに対して同じように配慮しなければいけない、と思っているはずさ」。
試合で熱くなるのは仕方ないにしても、
その心の中には絶えず相手への配慮と敬意がないとダメだにゃ!
ルールは守ろう!
ベンの釈明に対する疑問
しかし、それをダラスに求めるには無理がありました。もしかしたら、ベンがストーンの上に転げ落ちたと思ったのかもしれません。
友人たちよ、私が出席していた記者会見で、マーク・ストーンの顎にクロスチェックしたこと(スティックを両手で持ち上げ、突き出して相手を妨害する反則)について、ジェイミー・ベンが重力のせいにして説明しようとした、そのときです。
NHLのあちこちからのメールで、私の携帯電話がどれほど激しく振動したかを説明できたらいいのに…と思っています。
「もちろん、5分間のペナルティを受けたくはなかったが、試合のスピード感が速くなると、感情が高ぶるんだ」と語りました。「当然、彼の上に落ちないようにしたかったし、自分のスティックを着地点として使ったから、ああなってしまったんだろう」。
うーん、そうでしょうか?上手く足を使えなかったせいで、相手の頭や首を、あのようにステッキの置き場として使わなければならないなんて残念です。数年前、ディラン・ラーキン(センター、26歳。デトロイト・レッドウィングス所属)のシーズンを終わらせた、このプレーのようです。
※このプレーのようです=上記引用元に映像がアップされている(Twitterより)。
ストーンに幸い怪我はありません。そこに残されたのは、スターズのスタンレーカップ獲得の可能性、そしてチームとキャプテンについての認識だけでした。
まとめ
今回の記事を見ると、いろいろとルールについて考えさせられる部分が多かったように思います。デュバスのような若い才能がNHLの未来を切り開く半面、若さに任せて「成分化されていないルール」を外れると、誰も手を差し伸べてくれなくなる事が分かります。
ベンの記事に目を移すと、「成分化されたルール」があるにも関わらず、それを無視しようとしたり、下手な言い逃れでルールを蔑ろにしようとするなんて言語道断です。
間もなく始まるスタンレーカップ決勝で、両チーム(ゴールデンナイツとパンサーズ)がクリーンかつエキサイティングなプレーを心がけてほしいと切に祈っています。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!