はじめに
2025年1月、J.T.ミラーがバンクーバー・カナックスからニューヨーク・レンジャーズへと移籍し、波乱を呼びました。トレードの裏にはミラーとエリアス・ペターソンの関係悪化があり、チームの士気低下を防ぐための決断でした。
ミラーはカナックスで重要な役割を果たし、キャリアの中でも大きな影響を与えてきましたが、今後はレンジャーズで新たな挑戦が始まります。カナックスは新たにフィリップ・チティルやヴィットリオ・マンチーニを獲得し、未来への期待を込めて再編成を進めています。
この大波乱のトレードがカナックスの未来をどう変えるのか、注目です。
前々から噂になっていたから、第一報を聞いた時、残念と言うより「やっぱりね」の思いが強かったにゃ。ミラーは、自身をNHLの世界に導いてくれたチームに戻るわけだから、ある意味「再出発」するにはいいチームかもしれない。健闘を祈る!
引用元:nhl.com(NHL公式サイト)「Miller traded to Rangers by Canucks for Chytil, Mancini, draft pick」
ミラーの成績とトレードの背景
2025年1月、J.T.ミラー(左ウィング、31歳)がバンクーバー・カナックスからニューヨーク・レンジャーズへとトレードされる衝撃のニュースが飛び込んできました。トレードの内容は、フィリップ・チティル(センター、25歳)、ヴィットリオ・マンチーニ(ディフェンス、22歳)、2025年のNHLドラフト1巡目指名権と交換。
さらに、この指名権は、トップ13で指名される場合に限り、2026年のドラフトに繰り越される条件付きでした。また、レンジャーズはエリック・ブランストロム(ディフェンス、25歳)とジャクソン・ドリントン(ディフェンス、20歳)も獲得しています。
ミラーは現在31歳のフォワードで、今シーズンは40試合に出場し、9ゴール・26アシストで35ポイントを記録しています。2022年9月2日、カナックスと7年5600万ドル(=約87億円。年間平均800万ドル=約12億円)の契約を結び、現在その契約の3年目にあたります。
しかし、ミラーのトレードは、バンクーバー・カナックス内部の深刻な人間関係に起因しています。
カナックスのホッケー運営部門社長、ジム・ラザフォードは、ミラーとエリアス・ペターソンとの関係が悪化し、チーム全体に悪影響を与えていることを認めました。今回のトレードはその3日後に実現しました。
ラザフォードは、「長い間問題が解決できなかった。関係者全員がそれに取り組んできましたが、一時的に解決してもまた問題が再発し、最終的にはトレードしか選択肢がなかった」とコメント。内部の問題が表面化し、チームの士気に影響を与える前にこのトレードが決まった形です。
このブログでも、ミラーvs.ペターソンについて触れています。
選手たちの反応と複雑な心情
1月31日・金曜日、ダラス・スターズに3-5で敗れた後、ミラーのトレードについて、エリアス・ペターソン(センター、26歳)は自身の成長にどう影響するかについては触れたくないと語り、「今はただ前を向いていくことしかできない。正直、何を言えばいいのかもわからない。前を向くしかないね」とコメント。
金曜日、カナックスのキャプテンであるクイン・ヒューズ(ディフェンス、25歳)も「数ヶ月間の騒動は大変だったが、ミラーが去るのは寂しい。もちろん、彼の幸運を祈るばかりだよ」と語りました。ヒューズは、ミラーが素晴らしいプレーヤーであり、一緒にプレーした6年間を楽しいものだったと振り返りました。
「最近は本当にいろんな騒音が多かったと思う。ミラーにとっても、かなりの負担だったろう。彼も新たなスタートを切ることを楽しみにしているはずさ。彼は本当にハードにプレーし、素晴らしいホッケーを見せてくれた。
でも、それを言いながらも、僕らは今チームにいるみんなのことに集中しなければならない」とヒューズは語りました。
また、1月18日・土曜日のエドモントン・オイラーズ戦前に、カナックスがミラーをラインアップから外す可能性を検討していたという報道(スポーツネット)もありましたが、実際には20分以上のプレータイム(20分25秒)を記録し、2アシストを挙げ、チームの勝利(3-2)に貢献しています。
このような状況でも、ミラーはチームのために戦い続け、最終的にレンジャーズへのトレードが決まりました。
ミラーのカナックス時代の輝かしい成績
ミラーは、カナックスで過ごした6年間で404試合に出場し、152ゴール、285アシストの合計437ポイントを記録。これにより、この期間中のNHL得点ランキングでは11位に位置しています。その実力を証明し、チームの中心として活躍してきました。
特に昨シーズンはキャリアハイとなる103ポイント(37ゴール、66アシスト)を記録し、カナックスの得点王に輝き、NHL全体でも9位にランクイン。ゴール数、プラス・マイナス(プラス32)、パワープレーポイント(40)、ゲーム・ウィニング・ゴール(9)など、個々のスタッツもキャリア最高の数字でした。
今シーズン、ミラーは11月19日に個人的な理由で休養を取っており、その後10試合を欠場しましたが、12月12日に復帰しました。
ミラーのカナックス時代の功績と監督のコメント
ミラーは2011年のNHLドラフトでレンジャーズに1巡目(全体15位)で選ばれ、その後カナックス(19-25)、タンパベイ・ライトニング(18-19)、レンジャーズ(11-18)で通算839試合に出場、247ゴール、427アシスト(674ポイント)という素晴らしい成績を残しています。
また、プレイオフでも91試合に出場し、56ポイント(12ゴール、44アシスト)を挙げるなど、重要な場面で活躍してきました。
カナックスのリック・トシェット監督は、ミラーの移籍について「ビジネスの一環として理解している。長くこの世界にいると、こういうこともある」とコメント。
ミラーがチームにとって重要な存在であったことを認め、「選手たちはうまく対処していたと思う。彼が感情的になるのは当然だし、それは誰にでもあることだが、ビジネスとしてこういったことは避けられない」と冷静に語りました。
ミラーは、カナックスの“ハート&ソウル(精神的支柱)”として重要な役割を果たしており、レンジャーズでの活躍にも期待がかかっています。
今シーズン、カナックスは23勝18敗10延長負けの成績で、昨シーズンパシフィック・ディビジョンで優勝し、現在はディビジョン5位に位置しています。また、昨シーズン、ウェスタン・カンファレンスのセカンドラウンドでエドモントン・オイラーズに7試合で敗れました。
新たに加わった選手たちのプロフィール
ミラーの移籍により、カナックスは新たな戦力としてフィリップ・チティルとヴィットリオ・マンチーニを迎え入れました。チティルは2017年のドラフトで1巡目(全体21位)で指名され、これまでに164ポイント(378試合出場、75ゴール・89アシスト)を記録している実力者です。
昨シーズンは上半身の怪我でほとんどの試合を欠場したものの、今シーズンは順調に回復し、7年間のキャリアで初めて75試合を超える出場を目指し、20ポイント(41試合出場、11ゴール・9アシスト)を記録しています。2023年3月29日にはレンジャーズと4年契約を結び、今後が楽しみな選手です。
3年前の映像。これくらいの活躍をコンスタントにやってくれたら、カナックスとしては万々歳なんだけど。
また、ヴィットリオ・マンチーニは、今シーズン、レンジャーズでNHLデビューを果たした22歳のディフェンスマン。今シーズンは5ポイント(1ゴール、4アシスト)を記録しており、こちらも将来が非常に楽しみな選手です。
マンチーニは2022年のドラフトで5巡目(全体159位)で指名された逸材であり(2024年4月2日にレンジャーズと2年契約を結んでいる)、カナックスでの成長が期待されています。
カナックスGM、トレードの評価と新加入選手への期待
カナックスのゼネラルマネージャー、パトリック・アルヴィンは、ミラーの移籍について「バンクーバー・カナックス全体を代表して、J.T.がここで過ごした時間に感謝の意を表したい。J.T.は情熱的でインパクトのある選手であり、チームの良きリーダーだった。
簡単な決断ではなかったが、レンジャーズからの見返りには満足している」と述べました。そして、フィリップとヴィットリオの加入を「素晴らしい補強だ」とし、彼らがどのように氷上で活躍するのかに大きな期待を寄せています。
さらに、カナックスからレンジャーズのトレードで、エリック・ブランストロム(25歳)が新たにレンジャーズ入りしています。今シーズン、ブランストロムは、カナックスで28試合で8ポイント(3ゴール、5アシスト)を記録し、オタワ・セネターズから移籍したばかりでしたが、安定したパフォーマンスを見せていました。
2017年のNHLドラフトで、ベガス・ゴールデンナイツから1巡目(全体15位)で指名されたブランストロムは、オタワ・セネターズとカナックスで294試合に出場し、77ポイント(10ゴール、67アシスト)を記録しています。
レンジャーズ入りしたジャクソン・ドリントン(20歳)は、今シーズン、ノースイースタン大学で23試合に出場し、10ポイント(2ゴール、8アシスト)を挙げています。ドリントンは、2022年のNHLドラフトでカナックスから6巡目(全体176位)で指名されました。
引用元:yardbarker.com(YARDBARKER)「Jim Rutherford gets brutally honest on Canucks’ Stanley Cup aspirations after J.T. Miller trade」
驚愕のトレード!J.T.ミラーの移籍とその背景
1月31日・金曜日の夜、J.T.ミラーのバンクーバー・カナックスでの時代が幕を閉じました。ミラーはニューヨーク・レンジャーズにトレードされ、その見返りとしてフィリップ・チティル、ヴィットリオ・マンチーニ、2025年の1巡目ドラフト指名権がカナックスに渡りました。
偶然にも、ミラーのレンジャーズ移籍関連の取引は、金曜日にカナックスが行った唯一のトレードではありませんでした。さらにカナックスは、ダントン・ハイネン(左ウィング、29歳)とヴィンセント・デシャルネイ(ディフェンス、28歳)をピッツバーグ・ペンギンズにトレードし、マーカス・ペターソン(ディフェンス、28歳)とドリュー・オコナー(左ウィング、26歳)を獲得しました。
ジム・ラザフォードの目指す未来:プレイオフ進出とチーム強化の戦略
これらのフランチャイズを変えるような一連のトレードを経て、カナックスのジム・ラザフォード社長はチームのスタンレーカップ挑戦について、ニューヨーク・タイムズに率直にコメント。
「それは良い質問だね。正直なところ、今の我々はプレイオフに進出するために戦っている最中だ。だが、我々は伸びしろを持っており、プレイオフ後の進展も視野に入れている。そして、未来のためにもしっかりと建設を進めているところだ」と語り、「何かを犠牲にして彼を手に入れたが、マーカス(・ペターソン)は本当に素晴らしいディフェンスマンさ」とラザフォードは続けました。
「私がピッツバーグにいた時(14〜21までGM。その間、2度スタンレーカップ獲得)、彼(ペターソン)をトレードで獲得したが、その結果には非常に満足している。ダニエル・スプロング(左ウィング、27歳。現在、シアトル・クラーケン在籍)をトレードで出したんだけど、当時は『どうしてダニエル・スプロングをこの選手と交換するんだ?』という声が多かったことを覚えている。でも、結果的にはかなり良かった1と思うね」。
トレードで手に入れたマーカス・ペターソンに自信を見せ、その成功を強調しているようです。「そのトレードがどれだけ良かったかというと、ここにまた戻ってきたということだ。我々には強化が必要で、彼はその強化を提供してくれるはずだよ。彼がその役目を果たしてくれると確信している」。
カナックスは次の試合が2月2日・日曜日の夜、ロジャーズ・アリーナでデトロイト・レッドウィングスを迎えて行われます。試合開始は午後8時(東部標準時間。日本時間では翌3日・月曜、午前9時)です。
【追記】
この試合は終了しており、延長戦の末、2-3でカナックスは敗戦…。第3ピリオド、新戦力のチティルのゴールで同点となり、延長戦へ。しかし、一枚上手の役者が相手チームにいた。アレックス・デブリンカット(右ウィング、27歳)の前方にフリー・スペースを開けて、万事休す。
チティルは使えると思うけど、やっぱりミラーの穴は大きい!
引用元:theintelligencer.com(The Intelligencer=イリノイ州エドワーズビルのニュース・サイト)「David Pastrnak’s hat trick spoils J.T. Miller’s 2-goal return to Rangers in Bruins’ 6-3 win」
パストルナクがキャリア18回目のハットトリック!ブルーインズの圧勝劇
ボストン・ブルーインズの右ウィング、デヴィッド・パストルナク(背番号88、28歳)が、ニューヨーク・レンジャーズ戦でハットトリックを決め、チームを6-3で勝利に導きました。この試合は、J.T.ミラーのニューヨーク・レンジャーズ復帰戦でもありましたが、パストルナクがその勢いを完全に打ち消す結果となりました。
ブルーインズは、パストルナクの他にもチャーリー・マクアヴォイ(ディフェンス、27歳)、チャーリー・コイル(センター、32歳)、パヴェル・ザチャ(センター、27歳)のゴールでリズムをつかみ、連敗を止めました。ゴールキーパーのジェレミー・スウェイマン(26歳)は22セーブを記録し、試合を支えました。
J.T.ミラー復帰戦もレンジャーズは3試合連続敗北
ミラーは、バンクーバーからレンジャーズに再移籍した翌日に行われたこの試合で、2ゴールを決めました。レンジャーズはフィリップ・チティルをカナックスに送り、交換でミラーを獲得。ジョニー・ブロジンスキー(センター、31歳)も1ゴールを決め、イゴール・シェスターキン(ゴールテンダー、29歳)は19セーブを記録しましたが、ニューヨークは規定時間(60分間)で3試合連続の敗北を喫しました。
試合は、第1ピリオド・10分55秒、ミラーがスロットからワンタイマーを決めて1-1と追いついたところから動き出します。その後、第1ピリオド終了間際、パストルナクがシェスターキンの隙を突いてゴールを決め、ボストンが再びリードを奪いました。
第2ピリオド・3分39秒、チャーリー・コイルがアンドリュー・ピーク(ディフェンス、26歳)のシュートをチップインし、3-1に。その後、第3ピリオドの早い時間にパストルナクが2得点目を決め、さらにはエンプティゴールにシュートを決めてキャリア18回目のハットトリックを達成しました。これで今シーズンのゴール数は27に達しました。
ミラー以上に張り切るパストルナクの好調ぶりが目立った試合。絶不調ブルーインズの中で、一人輝いている。
敗れたとはいえ、復帰戦で挨拶代わり以上の2ゴールをマークするとは、ミラーはやはり千両役者だにゃ。調子の上がらないレンジャーズは若手切り替えより、とにかく即戦力を加えて、最低でもワイルドカードに滑り込む算段だろうけど、前途はかなり多難だ。
試合の重要なポイント
レンジャーズは、この試合の前にメトロポリタン・ディビジョンで6位、カンファレンスで13位と苦しんでおり、今後連勝が求められます。ブルーインズは、スウェイマンがバッファロー戦(1月28日・火)で7ゴールを許した後(2-7で敗戦)の巻き返しに成功しました。
決定的瞬間
ミラーが第3ピリオド早々に2点目を決めて4-2とした後、パストルナクが46秒後にスラップショットでゴールを決め、試合の流れを決定づけました。
注目すべきスタッツ
ブルーインズはアウェイ戦で苦しんでいますが、TDガーデン(ブルーインズのホーム・アリーナ)での過去14試合で11勝2敗1延長負けという素晴らしい成績を収めています。
次回の試合
レンジャーズは2月2日・日曜日にベガスと対戦し、ブルーインズは2月4日・火曜日にミネソタを迎え撃ちます。
【追記】
レンジャーズvs.ベガス・ゴールデンナイツ戦は終了しており、4-2でレンジャーズの勝利!ミラーは1点ビハインドの第3ピリオドで大暴れ。ゴールこそなかったものの、同点&ダメ押しゴールに絡む2アシストで移籍後初勝利に貢献。
まとめ
J.T.ミラーのトレードは、カナックス内部の人間関係の悪化が原因で、チーム士気を守るための決断でした。ミラーは昨シーズン103ポイントを記録するなど重要な役割を果たしましたが、対立が続き、トレードへ。
代わりにカナックスはフィリップ・チティル、ヴィットリオ・マンチーニら新戦力を迎え、再建を進めています。これらの補強がプレイオフ進出へどこまで貢献するか、注目が集まります。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- 17-18シーズンからNHLに参戦したペターソンは、アナハイム・ダックスで今ひとつ出場機会に恵まれなかった。2018年12月3日、ペターソンはダニエル・スプロングとの交換でダックスからピッツバーグ・ペンギンズへトレード。
翌年2月7日、フロリダ・パンサーズ戦で初ゴールを決めて以降、チームに欠かせない存在となり、2020年1月28日、ペターソンはペンギンズと5年契約延長するまでになる。2023年3月9日、ペターソンはNHL通算100得点目を達成。
一方、スプロングはトップ・チーム定着とはなかなか行かず、同じチームに長く腰を落ち着かせることもなく、ジャーニーマンとなっている。 ↩︎