NHLでは、どうやってトレードで獲得した選手の活躍をサポート?

NHLチーム紹介

はじめに 

 NHLのトレード期限3月3日まで、あと10日を切りました。このブログでも書きましたように、全32チームそれぞれの台所事情が違うのと、シーズン後に控えているドラフトとの兼ね合いもあり、当初は大波なく終わるのではないかと言われていました。 

 が、ここに来て、セントルイス・ブルースのGMのチーム設計に基づき、ベテラン2人がトレードに出され、それが呼び水となって、他チームもいろいろ動き出しそうな気配が漂っています。コヨーテズ、やばいのだよなぁ。 

  さて、今回は、NHL公式HP名物「コーチズ・ルーム」から「トレードで新加入した選手を受け入れる側の心得」をお届けします。豪快で激しく見えるNHLも、チーム内にいろいろ約束事はあるわけで、それをどう周知徹底させるかの方法論が主な内容。 

 先取りして申し訳ないですが、「ま、そりゃそうだよな」と無難な文章となっています。 

讃岐猫
讃岐猫

NHLの場合、いかにラインメイトと上手くやるかってのが鍵だから、

この「コーチズ・ルーム」通りに行けば、苦労しないんだけどにゃ。

引用元:NHL.com「Helping players acquired before NHL Trade Deadline fit in」。

「コーチズ・ルーム」とは 

 「コーチズ・ルーム」は、NHLの元コーチやアシスタントが、批判的な視線を試合に向け、教師のレンズを通して説明するというもので、2022-23年のレギュラーシーズンを通して恒例となっています。 

 フィル・ハウスリーとマーク・レッキが交代で、自らの洞察による見解を提供します。 

マーク・レッキ=現役時のポジションは、右ウィング。キャリア中、1991年にペンギンズで、2006年にハリケーンズで、2011年にブルーインズで、それぞれスタンレーカップを獲得。また、1980年代にNHLでプレーした最後の現役選手。 

 2011年、スタンレーカップ決勝でゴールを決めた史上最年長選手(43歳)でもある。 

 このエディションでは、バッファロー・セイバーズのコーチを務め、ナッシュビル・プレデターズとアリゾナ・コヨーテズでアシスタントを務めていた、殿堂入りディフェンスマンのハウスリーが、NHLトレード期限前に獲得された新しい選手が適応できるように、どのようにコーチが手助けするかについて論じています。

この時期のトレードとプレーオフ 

 スタンレーカップのプレーオフに向けて準備を進めているチームの中には、インパクトを与えようとしたり、躍進を予感させたりと、チームとしての地位を確立しているチームもあります。 

 これらのチームは、2023年のNHLトレード期限である3月3日午後3時(東部標準時。日本時間3月4日・午前5時)までに選手を追加して、チームの選手層に厚みをもたせ、レギュラーシーズンの終盤に向けてチームを活性化させ、プレーオフに臨もうとしています。 

  2月9日(木曜)、ウラジミール・タラセンコがセントルイス・ブルースからニューヨーク・レンジャーズにトレードされ、金曜日、ライアン・オライリーがブルースからトロント・メープルリーフスにトレードされるのを見ると、このような取引はとてつもない興奮を呼び起こします。 

※ウラジミール・タラセンコ、ライアン・オライリー=この2人のトレードに関しては、かつてブルースのチーム運営方針に関する記事内で触れている→こちら 

 これは、オーナー・グループとチーム・フロント上層部がチームにコミットしており、スタンレーカップを勝ち取るため、可能な限り、チームに最高のチャンスを与えたいと考えていることを示しています。 

 プレイヤーとしては、それだけで十分です。  

讃岐猫
讃岐猫

遂にブルースのベテラン2人がトレード…、

胸中複雑だろうが、頑張ってほしいにゃ!

トレードできた選手へのケア

 トレードがどのように機能するかはまだわかりませんが、新しい選手の加入により、コーチがチーム全員を集中させ、同じ方向に向かわせるために必要なことの一部となります。

 新しい選手をラインナップに加える時、さまざまな変数が出てきます。

 (リーダーのような)役割のある選手なのでしょうか?インパクトのある選手なのでしょうか、(移籍先のチーム・プレーに)快適さを感じるまで、ある程度出場時間が必要な、高い技術を持った選手なのでしょうか。

 また、新しい選手がどのような家族を持っているかなど、舞台裏で周囲の人々には見えていないこともたくさんあります。その選手に子供がいる場合、子供が新しい街に引っ越してくるのであれば、新しい医者と新しい学校を用意しなければなりません。

 そして、チャーター機への行き方・使い方など、(新しい選手にとって)当たり前と思われることはほとんどありません。きっと他の選手も手伝ってくれると思います。ロッカールームには、新しい選手に快適さを感じさせるための独自の方法があります。

コーチ陣のすべきこと

 コーチ陣に関して言えば、おそらくチームについて、ヘッドコーチは新しい選手と話し、彼を安心させたいと思うだろうし、おそらくいくつかの質問をして、その人を知ろうとするだけでなく、短時間で関係を築こうとするでしょう。

 タラセンコやオライリーのようなベテランがいれば、彼らが何をしていたかがわかります。

 (新しい)選手がチームに到着する前に、その選手の映像を少し見たことがあるかもしれませんが、多くの人がその選手と彼の能力を知っているので、それらは簡単だと思います。

 アシスタント・コーチは、選手と一緒に話し合い、(同じ目線で)体系的に物事を確認します。彼が快適に感じるように、コーチは一緒にいくつかの戦術面での決まりごとを実行していきます。

 フォアチェックの時、自分は何をすればいいのか?ニュートラル・ゾーンやディフェンシブ・ゾーンにパックがない場合はどうすればいいのか?

 (氷上の)3つのゾーンすべてで何が行われているか、について、選手の理解が進むのは重要ですが、自由にプレイしてもらいたいので、あまり早く多くの情報を与えたくはありません。

 それは、新しく入った選手を快適な気分にさせ、彼と合う選手達と一緒に氷上のポジションを決めるだけです。

 それには数試合かかるかもしれませんが、トレード期限前にこれらの動きを早めに行うチームは、新しい環境に慣れるため、選手達により多くの時間を与え、それが選手達の調整を本当に助けることができるからです。

他のチームメイトとのバランス 

 同時に、新しい選手を追加することは、すでにチームに所属している選手が、別の役割に移行する必要のあることを意味する場合もあります。 

 これらはすべて、他の選手と一緒に話し合わなければならない小さな調整であり、「我々のチーム戦力に厚みを増し、得点力を増してくれる新しい選手、チームのために多くの時間を割いてくれる選手が来てくれた」と説明する必要があります。 

ペンギンズの例 

 例えば、ピッツバーグ・ペンギンズに所属していたフィル・ケッセルが、ニック・ボニーノとカール・ハーゲリンと共に3番目のラインに下がった時のことを考えてみましょう。 

フィル・ケッセル=右ウィング、35歳。現在、ベガス・ゴールデンナイツ所属。2019年6月29日、ケッセルはアレックス・ガルチェニュクとピエール=オリヴィエ・ジョセフとのトレードで、デーン・バークスと4巡目指名権とともにペンギンズからアリゾナ・コヨーテズへ。 

ニック・ボニーノ=センター、34歳。現在、サンノゼ・シャークス所属。2017年のスタンレーカップ決勝戦(ナッシュビル・プレデターズと対戦)、足を骨折し途中離脱。同年7月、フリーエージェントで、プレデターズへ移籍。 

カール・ハーゲリン=左ウィング、34歳。現在、ワシントン・キャピタルズ所属。2016 年 1 月 、ダックスからペンギンズへトレード。良き場を得たのか、ダックス時代の不遇を振り払うかのような活躍を見せ、ペンギンズをプレーオフへと導く。 

 翌シーズン、怪我の影響もあり、レギュラー・シーズンはあまり活躍できなかったが、その分、プレーオフで取り戻し、見事スタンレーカップ獲得に貢献した。 

3番目のラインに下がった時…=当時のペンギンズは、シドニー・クロスビーを中心としたファースト・ライン、エフゲニー・マルキンを中心としたセカンド・ラインを攻撃の軸にしており、ケッセル達はそれほど注目されていなかった。 

 しかし、プレーオフで、当時のコーチ、マイク・サリバンが混乱するくらい、彼らのラインが中心となっていたことを指す。特にマルキンとケッセルが合わないことから、この「3番めのライン」が編み出されたと言われている。 

 このラインは、2016年と2017年、ペンギンズのスタンレーカップ獲得時、厳しい試合が続く中、いくつかの勝利を決定づける偉大なゴールを挙げました。 

 だから、監督としては、なぜこの選手をトレードで獲得したのか、それを選手に売り込まなければならないのです。 

 (新加入)選手の全体像を把握し、(監督は)「本当に偉大な道のりを歩めるかもしれない。この先、どんな未来が待っているか想像できないくらいだ」と思っているのですから、簡単に(新加入選手を)アピールできるはずです。 

  彼(新加入選手)は理解してくれるだろうし、(以前から在籍する他の)選手達も彼らの周りに集まってくると思います。プレーオフで大きな影響を与えるのであれば、互いに補完し合うことになるでしょう。  

讃岐猫
讃岐猫

ペンギンズのサード・ライン三銃士は、今も現役で活躍中。

3人共、主力級で頑張っているんだから、頭が下がるにゃ!

アバランチの例 

 昨シーズン、アルトゥーリ・レーコネン(左ウィング、27歳)が、モントリオール・カナディアンズからコロラド・アバランチにトレードされた期限前の取引を見てみましょう。 

アルトゥーリ・レーコネン=カナディアンズでも2シーズン連続プレーオフ(2019-2020、2020-2021)で活躍しているが(2季通算27試合、4ゴール・4アシスト)、昨シーズン、アバランチではそれを凌ぐ大活躍を見せていた(20試合、8ゴール・6アシスト)。 

 レーコネンは、アバランチにとって大きな働きをする選手にならないと思われたかもしれませんが、誰もが適材適所に配置され、スタンレーカップの勝利への道のりに大きな影響を与えました。 

 つまり、選手というピースをパズルにフィットさせ、機能させることなのです。見た目ほど簡単ではないこともあり、なぜか相性が合わないこともあります。 

 しかし、それ(相性が合うようにすること)はGMとコーチの仕事の一部であり、成功のために、可能な限り、確実に最高の機会を与えるようにし、ピースが合うようにしなければなりません。 

まとめ 

 改めてGMって大変なのだと実感しました。コーチよりも前に、移籍選手(予定も含む)がチームに合うかどうか見極めなければならないし、移籍後も何かと面倒を見なければなりません。 

 GMの中には元NHL選手も多いから、選手を見る経験値は高いのでしょうが、チームには大勢のスタッフや選手がいますからね、自分の好みだけでは判断できない恨みはあります。  

 監督も、新加入選手加入前から「雰囲気作り」というか、すんなり溶け込めるように努力をしなければなりません。しかも「仲良しグループ」じゃなくて、「闘える集団」にしていかねばならないので、多少の摩擦は起きて当然です。それをどれだけ少なくするかが腕の見せ所。 

 今回、アバランチのレーコネンの例が出ていましたが、パズルがハマった時の爽快感の如くチームとフィットしたおかげで、彼は実力以上のものを発揮し、トップ選手となりました。 

 同様の成功例がたくさん生まれるかどうか、生まれたチームの監督さんこそ名監督、それが誰なのかを見るのも一興ですね。  

讃岐猫
讃岐猫

ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!

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