あの時、君は若かった。2013年NHLドラフトを振り返る【後編】

アイスホッケー名選手

はじめに 

前編はこちら→。   

引用元:ESPN.com「2013 NHL draft do-over: Picking 1-30 10 years later」。

後編は30位から行ってみましょう!

 前編は上位中心に見ていきましたが、やはり、今をときめくスター選手が多かったように思います。

 ところが、30位から遡っていきますと、様子がガラッと変わってしまい、いぶし銀というか、地味な選手がズラッと並んでいます。NHLにいない選手が多いのも、特徴かもしれません。

29〜30位には苦労人の名が…

30.シカゴ・ブラックホークス

前回の指名:ライアン・ハートマン、右ウィング(現所属:ミネソタ・ワイルド)
再ドラフト指名:同じ

 統計的には、ハートマン(489試合で219ポイント)はマンサ(410試合で249ポイント。次項参照)ほどの成績を残していません。

 しかし、ハートマンは、ミネソタ・ワイルドに残した無形の資産と「glue guy(糊のようにチームのケミストリーやゲームの流れをつなぐ役)」としての地位によって、今日の彼をより価値のあるプレーヤーにする可能性があります。

 ただし、ハートマンが2021-22年シーズンのように34ゴールを達成することはないかもしれません。

29.ダラス・スターズ

前回の指名:ジェイソン・ディキンソン、センター(現所属:シカゴ・ブラックホークス)
再ドラフト指名:アンソニー・マンサ、右ウィング(全体20位、デトロイト・レッドウィングス。現所属:ワシントン・キャピタルズ)

 2017年から20年にかけて、マンサはデトロイトで好調なゴールスコアリング・シーズンを送ってきました。

 しかし、キャピタルズが、1巡目指名権とヤクブ・ヴラナ(左ウィング、27歳。現所属:セントルイス・ブルース)を含むトレードで、この身長185センチのフォワードを積極的に追いかけるには十分でした。

 キャピタルズでは108試合に出場して22ゴールを記録していますが、怪我の影響でラインナップにとどまるのに苦労しています。

一巡目指名なのに、ほとんど出場しなかった男 

28.カルガリー・フレームス 

前回の指名:モーガン・クリムチュク、左ウィング(引退) 

再ドラフト指名:オリバー・ビョークストランド、右ウィング(全体89位、ブルージャケッツ。現所属:シアトル・クラーケン) 

 2018年2月19日。この時、モーガン・クリムチュクはフレームスで7分25秒プレーし、2013年・一巡目指名組で、NHLに一度も出場しなかった唯一の選手になることを避けることができました。 

 ビョークストランドは2021-22年シーズンに28ゴールを記録し、自身最高のシーズンを送りました。彼の平均ポイントはシアトル・クラーケンでわずかに下がっていますが、非常に堅実で両翼のできる選手に成長しました。 

讃岐猫
讃岐猫

この後も出てくるのだけど、ここで挙がった何人かの選手は、

みなクラーケンへ移籍しているにゃ。

今のクラーケンの躍進を支えているのは彼らなんだ。

27.コロンバス・ブルージャケッツ 

前回の指名:マルコ・ダノ、センター(現所属: HCオセラージ・トシネツ〈チェコのエクストラ・リーガ〉) 

再ドラフト指名:トリスタン・ジャリー、ゴールテンダー(全体44位、ピッツバーグ・ペンギンズ。現所属同) 

 2013年のドラフトの中で、ジャリーは最も優れたゴールキーパーではなく、-モントリオールから36位で選ばれたザック・フカーレ(現所属:ワシントン・キャピタルズ)であるが、-サロスに次ぐ2番目のゴールキーパーであることは明らかです。 

 ジャリーがもっと上にいるべきだと思える夜もあれば、全体44位がちょうどいいと思える夜もあります(プレーオフ・シリーズも)。それでも、キャリアでセーブ率.915、平均失点2.62という数字は堅実なものです。ジャケッツは間違いなくそれを受け入れるでしょう。 

まだ27歳、これから花を咲かせるチャンスはある! 

26.アナハイム・ダックス 

前回の指名:シェイ・セオドア、ディフェンス(現所属:ベガス・ゴールデンナイツ) 

再ドラフト指名:ジョナサン・ドルーイン、左ウィング/センター(全体3位、タンパベイ・ライトニング。現所属:モントリオール・カナディアンズ) 

 2013年のNHLドラフトを覚えている方は、この選手の再ドラフトを待っていたと思います。ドルーインはQMJHL(ケベック・メジャー・ジュニア・ホッケー・リーグ)出身の非常に才能のあるフォワードで、ライトニングの構成要素になるように見えました。 

 2016-17シーズンには21ゴールを記録し大ブレイクしましたが、ボルツ(ライトニングの愛称)はモントリオールからミハイル・セルガチョフ(ディフェンス、27歳)を獲得するために、彼を高く売り込むことにしたのです。 

 ドルーインはキャリア468試合で274ポイントを記録しています。彼は2度50ポイントの大台に乗せています。負傷や個人的な問題でかなりの時間を欠場していますが、それでもドルーインはゲームあたり平均0.54ポイントを記録しています。 

 彼は、満たされない(まま終わる)可能性を持つ一例であることに間違いありません。今思えば、彼が宝くじの当たりである可能性もゼロに近いですが、まだ27歳ですから。彼のホッケーの旅にまだ続きがある、少なくとも我々はそう願っています。 

讃岐猫
讃岐猫

「宝くじの当たりである可能性もゼロに近い」って、

相当な言われようだにゃ。

ドルーイン、負けるな!

25. モントリオール・カナディアンズ 

前回の指名:マイケル・マッキャロン、右ウィング(現所属:ミルウォーキー・アドミラルズ〈AHL〉=ナッシュビル・プレデターズ下部組織) 

再ドラフト指名:アンドリュー・コップ、センター (全体104位、ウィニペグ・ジェッツ。現所属:デトロイト・レッドウィングス) 

 この3シーズン、チームの多才なフォワード中、コップはラインアップで得点源として脅威となり、攻撃的なシーズンを大成功させ、レンジャーズのトレードのターゲットとなったのです(レンジャーズには1シーズンのみ在籍)。 

 しかし、彼はデトロイトではまだその実力を発揮できていません。 

どこの世界にも遅咲きの選手はいるのです 

24.バンクーバー・カナックス 

前回の指名:ハンター・シンカルク、センター(現所属:HCネフテヒミク・ニジネカムスク〈ロシアのKHL〉) 

再ドラフト指名:アレクサンダー・ウェンバーグ、センター(全体14位、ブルージャケッツ。現所属:シアトル・クラーケン) 

 ウェンバーグは、ブルー・ジャケッツにドラフト1位で指名され、一流のセンターとして開花することを期待されていました。攻撃的プレーヤーとして、自分のペースをつかむことができませんでした。 

 —彼は1シーズンで60ポイントを記録したことがなく、キャリアでもまだ300ポイント未満です。しかし、24位で選んだ選手がNHLで615試合出場すると、カナックスに伝えたら、彼らは例外なくそれを受け取るでしょう。 

 特に彼らの選んだシンカルクは、NHLで15試合しかプレーしていないからです。 

23.ワシントン・キャピタルズ 

前回の指名:アンドレ・ブラコフスキー、左ウィング(現所属:シアトル・クラーケン) 

再ドラフト指名:ニキータ・ザドロフ、ディフェンス(全体16位、バッファロー・セイバーズ。現所属:カルガリー・フレームス) 

 ザドロフは興味深い人物です。彼のキャリアのほとんどで、550試合、1試合あたり17分前後でプレーするフィジカル・ディフェンスマンとして、セイバーズが彼に費やした全体16位の指名を正当化できるかもしれない、という議論はできます。 

 適切に配置されれば—2021-22年のフレームスをご覧ください–効果的なブルーライナーになれるのです。 

 全体的に、彼のキャリアにもっと多くのことを望むことになりましたが、しかし、この配置がザドロフの「残酷な美しさ」を過小評価している、と見るファン(おそらくコロラド出身)のいることを理解できます。 

おそらくコロラド出身=セイバーズで2シーズン、アバランチで5シーズン、ブラックホークスで1シーズン、ザドロフはキャリアを積んでいるが、絶対的なポジションを獲得しているわけではなかった。しかし、2021年にフレームス移籍後、才能が開花しつつある。 

 最も長く在籍していたアバランチのファンとしては、もっと早くにザドロフの才能と適切なポジショニングに気づいていれば、手放すこともなかったのに…という思いであろう。

一巡目指名なのに、NHLから海外リーグへ… 

22.カルガリー・フレームス 

前回の指名:エミール・ポワリエ、左ウィング(現所属:無制限のフリー エージェント。最近ではドイツのアイショッキー・リーガのイゼルローン・ルースターズでプレー) 

再ドラフト指名:アンソニー・デュクレア、左ウィング(全体80位、ニューヨーク・レンジャーズ。現所属:フロリダ・パンサーズ) 

 ポワリエのNHLでプレーした試合数は、2013年の1巡目指名選手の中で2番目に少ないのです。ここでは、パンサーズでようやく居場所を見つけたと思われる、デュクレアという才能豊富で得点力のあるウィンガーをフレームスが獲得したとしましょう。 

 昨季は31ゴールで自己最多を記録しました。 

21.トロント・メープルリーフス 

前回の指名:フレデリック・ゴーティエ、センター(現所属:カナダのナショナル・リーグ、 HCアジョワ) 

再ドラフト指名:マックス・ドミ、センター(全体12位、コヨーテズ。現所属:ダラス・スターズ) 

 ドミは実際に2013年組で8番目に高い得点を記録した選手ですが、爆発的に活躍したのは、2019-20シーズン、カナディアンズでの28ゴール・72ポイントのみでした。シカゴからダラスにトレードされ、4シーズンで5チーム目となります。 

 その一部はチーム状況によるものですが、競争力のあるチームで、ドミがデプス・フォワード(攻撃的ラインの順序で言えば、4番手)の役割に落ち着いたということもあるでしょう。 

 これは堅実なNHLキャリアではありますが、全体12位指名というレベルではないかもしれません。念のために言っておくと、リーフスが、このドラフトでドミをドラフト指名しない可能性はゼロです、ゼロ。 

讃岐猫
讃岐猫

ドミのように、目立った活躍はないのだけど、

貴重なバック・アッパーとして活躍する選手はたくさんいるにゃ。

他国のリーグへ行かず、

ずっとNHLに留まってプレーするところがエラい。

※2013年のNHLドラフトの記録に関しては、こちらを参照のこと→

まとめ 

  たまたまなのかもしれませんが、2013年のドラフトで一巡目指名されながらも埋もれていた選手や、もっと上位指名されても良い選手を、クラーケンが3人も獲得している点に注目です。 

 この手の選手にやる気を起こさせ、戦力として活用する手腕を持つハクストール監督は、もっと評価されていいと思います。 

 一方で、NHLに居場所を見つけられず、他国へ渡った選手、ほとんど出場できず、引退してしまった選手やフリーの身で次の就職先を探している選手…。人生いろいろ、ホッケーもいろいろな感じがします。 

 前編・後編としても全ての選手を紹介するにいたりませんでしたが、ドラマがてんこ盛りなのはお分かりいただけたでしょう。他の年のドラフトを振り返りながら、また同企画をやってもらいたいです。 

讃岐猫
讃岐猫

ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!

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