はじめに
NHL全32チームがだいたい25試合を消化し、次のステップへ進もうとする時期に入ってきています。予定通り働いてくれている選手や若手有望株だけでなく、ちょっと期待を裏切っているかな?と思わせる戦力も把握できてきます(チームの監督だけでなく、ファンにも分かる)。
期待を裏切る選手が多いと、当然チームとしても機能不全に陥るわけで…。今回は、その双璧とも言うべき2チームを紹介します。一つはニュージャージー・デビルズ、もう一つはピッツバーグ・ペンギンズです。両者とも、プレーオフ圏内確実と言われていたチームです。
あくまで個人的予想ですが、開幕前、ピッツバーグはヤバいかな?と思っていました。昨シーズン終盤の勝負弱さは、正直ベテラン過多から来るチーム疲労によるもの。逆にニュージャージーは意外なほど苦戦中。あれだけの攻撃力を持っているのに…分からないものです。
昨シーズンの下位チームの巻き返しに煽られまくっているのが、この2チームなんだにゃ。
まあ、上位陣がいつも同じメンツだとはつまんないから、これはこれで面白い。
引用元:cbssports.com「 Devils, Penguins off to disappointing starts: How the preseason darlings can bounce back, live up to hype 」。
充実したオフシーズンだったのに…。
2023-24シーズン第1四半期(約25試合)が正式に終了し、NHL全体を見ると、多くのチームが好スタートを切りました。
しかし、序盤に火がつくと多くの人が期待した2チームは、代わりに氷のように冷え込んでいます:ニュージャージー・デビルズとピッツバーグ・ペンギンズです。
デビルズは、ニューヨーク・レンジャーズを7試合で破り、2011-12シーズン以来となるプレーオフ・シリーズでの勝利の後、今シーズンを迎えました。
チームはプレーオフ後、スター・フォワードのティモ・マイヤー(右ウィング、27歳)と再契約し、ウィンガーのタイラー・トフォリ(右ウィング、31歳。カルガリー・フレームスから新加入)をトレードで獲得し、得点力を高めることで成功を収めたオフシーズンを送っています。
一方、ペンギンズはワイルドカードにわずかに届かず、16シーズンぶりのプレーオフ進出を逃しました。
新ゼネラル・マネージャーであるカイル・デュバスは夏に積極的に動き、スター・ディフェンスのエリック・カールソン(33歳。サンノゼ・シャークスから新加入)をトレードで獲得し、さらにゴールテンダーのトリスタン・ジャリー(28歳)と再契約しています。
思うように勝ち星が伸びない…
両チームとも今シーズンは大きな期待を背負っていただけに、シーズン序盤の苦戦は心配の種です。
デビルズは現在13勝10敗1延長負け(勝ち点27)で、メトロポリタン・ディビジョンで6位につけています。一方、ペンギンズは11勝11敗3延長負け(勝ち点25)で、メトロポリタン・ディビジョンで7位につけています。
デビルズとペンギンズがこれまでリーグで最も期待外れの2チームとなった原因を、詳しく見てみましょう。
この2チームの不調と全く正反対で、シーズン開幕前、
下位予想されていたバンクーバーとかアリゾナが大躍進しているんだにゃ。
おっと我らがフィラデルフィアも好調ですぞ!
攻撃は最大の防御とならず!
ニュージャージー・デビルズ
デビルズは確かにダイナミックな攻撃力を持っており、意のままにゴールを決めることができます。何しろ、このチームは現在1試合平均3.63ゴールを挙げており、これはNHLで4位の好成績1です。
得点力はあるが、デビルズの最大の問題はゴールテンディングでした。
デビルズは現在、チームとして平均失点率3.67を記録しており、これはサンノゼ・シャークスに次ぐリーグで2番目に悪い成績2です。
最後の砦・ゴールテンダーの調子がいまいち
このフランチャイズは、ヴィテック・ヴァネチェク(27歳)とアキラ・シュミット(23歳)という、1シーズン前と同じゴールキーパー・コンビの起用を選択しています。
ヴァネチェクはチームの27試合中16試合に先発出場していますが、彼は正確にパイプ(ゴールの両脇の柱。サッカーで言えば「ポスト」の意味)の間に立つレンガの壁ではありませんでした。
ベテランのネットマインダーは、39勝5敗(延長負けは無し)、平均失点率3.60、セーブ率.877の成績を残しています。
ヴァネチェクは、シーズンを通して、相手のセカンド・チャンスを阻止するのに苦労しています。
『Money Puck』によると、ヴァネチェクのリバウンド率(一旦相手のシュートを止めた後、リバウンドしたパックをシュートされ、更に防いだ率)は0.017(NHL44位)で、パック・フリーズ(パックをキャッチ、あるいは体で覆い隠すこと)はわずか14回(同じくNHL44位)しかありません。
このシナリオは、12月5日(火曜日)のバンクーバー・カナックス戦(6-5でニュージャージの勝利)で醜い頭をもたげ、カナックスの5ゴールのうち3ゴールがリバウンド・チャンスによるものでした。
一方、シュミットは現在、4勝5敗1延長負け、平均失点率3.03(全体30位)、セーブ率.902(全体27位)となっています。
この23歳は、2023年のポストシーズン、デビルズvs.レンジャーズとのプレーオフ・シリーズ開幕戦でヴァネチェクに代わってプレーした後、本当に成長しました。
シュミットは平均失点率2.35とセーブ率.921を記録し、スタンレーカップ・プレーオフ中に2回の完封を記録しました。しかし、その成功は今シーズンに反映されていません。
『Money Puck』によると、シュミットは-1.9ゴールセーブ、即ち1.9ゴールも予想以上に失点していることとなり、これはNHLゴールテンダーの中で44位です。
もちろん、まだ2023-24シーズンの序盤なので、デビルズにとってまだ慌てる必要はありません。結局のところ、チームはメトロポリタン・ディビジョンの2位からわずか4ポイント差です。
もしヴァネチェクまたはシュミットが今シーズンのプレーを向上させることができれば、デビルズはポスト・シーズンに進出し、スタンレー・カップ争いに深く食い込むことができるでしょう。
どちらかと言えば、ここ一番で安定したゴールセービングを見せるシュミットに、
先発を固定した方が良いんじゃないかにゃ。
プレーオフ進出枠からそんなに離れていない今、どっちかに決めるべきだと思う。
若手で策士のGM、その手腕に疑問符?
ピッツバーグ・ペンギンズ
ロン・ヘクストール4がペンギンズのゼネラル・マネージャーを務めていた間、チームは若手を獲得するよりも、最終目標であるスタンレー・カップを追い求める決断を下しました。
2022年のオフシーズン中、ピッツバーグはチームのの中核をつなぎとめるために、ベテランのクリス・レタン(ディフェンス、36歳)とエフゲニー・マルキン(センター、37歳)と大型契約延長を持ちかけ、再契約しました。
2023年のオフシーズンの間、ペンギンズは、トロント・メープルリーフスと袂を分かったデュバスが5率いていたのです。デュバスはゴールキーパーのトリスタン・ジャリーと再契約し、スター・ディフェンダーのエリック・カールソンを6トレードで獲得することを決めました。
ニュージャージーとは反対に、得点力不足
ペンギンズはここ数年、このような動きをしてきたにもかかわらず、2023-24シーズンはかなり不本意なスタートを切っています。
ペンギンズは現在、71試合あたりわずか2.96ゴールでリーグ20位です。チームとして、ピッツバーグは過去10試合で1試合平均2.1ゴールしか挙げておらず、そのうち3試合で1ゴール以下を記録しています。
ピッツバーグはパワープレーに苦戦しており、マン・アドバンテージ(人数的に優位な場合)でチャンスを掴むのはわずか9.9%にとどまっています。これはNHL全体で3番目に悪い成績8です。
ピッツバーグの得点力不足は、全く予想できなかったにゃ。
ただ、ボストンやワシントンと並んでベテランへの依存度が高いチーム、
ベテランって衰え始めると、一気に行って、歯止めが効かなくなるからねぇ。
新GMの熱望した新加入選手が足を引っ張る?
シーズン序盤の荒れ模様は、ペンギンズがカールソンの獲得に動くべきだったのかどうかという疑問を提起するかもしれません。
オールスターに選出されたブルーライナーは、9新チームでスロー・スタートを切り、シーズン最初の1か月でわずか2ゴール・4アシストにとどまりました。さらに悪いことに、カールソンは過去5試合のうち4試合でポイントなしに抑えられています。
大型契約延長でジャリーを呼び戻したことにより、ペンギンズは多くの人から批判されましたが、チーム全体の平均失点率は2.6010であるため、ゴールテンディングはそれほど問題ではありませんでした。
簡単に言えば、ペンギンズがイースタン・カンファレンスのプレーオフ争いに返り咲くためには、オフェンス面を改善する必要があります。
ペンギンズは、この流れを変えたいのであれば、パワープレーのチャンスを生かす必要があります。彼らはベテランの何人かを放出せず、スタンレー・カップを追いかけることを選んだのですから、これは彼らが見届けなければならないプロセスです。
もしペンギンズが2シーズン連続でプレーオフ進出を逃した場合、デュバスが就任早々に手を打った後、かなり精彩を欠いたスタートを切ったから、と言われてしまうでしょう。
まとめ
オフシーズンの旋風児だったカイル・デュバス率いるピッツバーグは、ビッグ・ネームなベテランに賭けて失敗してる感じします。ベテランと若手をバランス良くプレーさせ、少しずつ前進しているアナハイムやバンクーバーのように待てなかったんでしょう、デュバスは。
ニュージャージーは取っても取っても、ザルのように失点していく訳で、あまりそれが続くと、フォワードとディフェンスの間の信頼関係が危うくなってきます。「肉を切らせて骨を断つ」で開き直っていくのか、それとも早めにモデル・チェンジするか。
どちらも地力のあるチームなんで、ふとしたきっかけで連勝街道を突き進む可能性はあります。ただし、ピッツバーグはそれを掴めず、ズルズル負けがこみそうなムードを漂わせてるのが気がかり。得点できないと、今の攻撃的NHLじゃやっていけないんですよね。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- 12月11日現在、平均は3.54とやや下がっているが、現在も4位をキープ。1位はバンクーバー・カナックスで3.82。バンクーバーはゴール数もトップである(107)。ニュージャージーは5位タイの92。
↩︎ - 12月11日現在、平均は3.62とやや下がっているが、現在も2位。サンノゼの失点率は4.04で、32チーム中、唯一の4点台である。最も失点率の低いのが、ここでもバンクーバーで2.61である。
↩︎ - 12月11日現在、10勝5敗(延長負けは無し)、平均失点率3.49、セーブ率.879とほぼ横ばい状態。なお、cbssports.comの成績一覧を見ると、失点率は全体46位、セーブ率では全体51位となっている。
↩︎ - このブログでも以前触れている。詳しくはこちら→☆。
↩︎ - このブログでも以前デュバス解任劇について触れている。詳しくはこちら→☆。
↩︎ - このブログでも以前、デュバスカールソン獲得に熱心だった件について触れている。詳しくはこちら→☆。
↩︎ - 12月10日現在、平均ゴール数の順位は18位と上がっているが、2.88と数値は下がっている。またチームは4連敗中。過去10試合で完封負けも1試合ある。
↩︎ - 12月10日現在で9.5%。ピッツバーグより悪いのは、セントルシスの8.8、ワシントンの8.2(最下位)となっている。
↩︎ - 11月上〜中旬のチーム5連勝中、連続ポイントを記録していたがそれ以降、3試合連続ポイント無しが2回あり、11月28日のナッシュビル・プレデターズ戦以降、6試合連続ノー・ゴールである。
↩︎ - ジャリー自体も、平均失点率2.48で全体10位と悪くない。 ↩︎