はじめに
「今年こそ、あのベテランにカップを掲げてほしい!」そんな風に胸を熱くしたことはありませんか?🏆NHLのプレーオフは、単なる勝敗を超えた感動のドラマが詰まっています。
今回は、長年リーグを支えながらも、まだ一度もスタンレーカップを手にしていない「OGWAC(カップを持たないベテラン)」たちを大特集!✨
悲願の初優勝を狙う個性豊かな候補者たちの物語を一挙にご紹介します。彼らが氷上で見せる執念と、ファンを惹きつけてやまない魅力とは?
この記事を読めば、今年のプレーオフが100倍楽しくなるはずです!🏒
参照記事:ESPN公式サイト「The top OGWAC candidates for the 2026 Stanley Cup playoffs」
2026年スタンレーカップ・プレーオフ🏆「OGWAC」有力候補たち
まずは、どうしても忘れられない、ある感動的なシーンの話から始めさせてください。それは、ポール・モーリスが初めてスタンレーカップを頭上に掲げた、あの瞬間のことです。
モーリスは、1995年に若干28歳という若さでハートフォード・ホエラーズのヘッドコーチに就任しました。それ以来、ずっとNHLの舞台で指揮を執り続けてきた彼が、ついに「ロード・スタンレーの杯」を手にしたのは2024年のことでした。
「ロード・スタンレーの杯」
現在NHLの優勝チームに授与されるスタンレーカップ(Stanley Cup)のことであり、その起源は19世紀のカナダにさかのぼる。トロフィーは1892年、当時カナダ総督を務めていたFrederick Stanley, 1st Baron Stanley of Prestonによって寄贈されたもので、当初は「ドミニオン・ホッケー・チャレンジ・カップ」と呼ばれていた。
これはカナダ国内で最も優れたアマチュア・アイスホッケーチームに贈られる杯として構想されたもので、当時のホッケー界では珍しい“挑戦制(チャレンジカップ方式)”が採用されていた。すなわち、カップを保持するチームに対して他チームが挑戦を申し込み、勝利すれば王者が交代するという仕組みである。(historicalsocietyottawa.ca)
興味深いのは、このトロフィーの出発点が非常に質素だったことである。スタンレー卿がロンドンの銀細工店から購入したのは、現在の巨大なカップとは似ても似つかない高さ20センチほどの銀製ボウルにすぎなかった。価格は10ギニー(当時の約50ドル)で、いわば装飾用の銀鉢だったと言われている。
しかし優勝チームの名前を刻む習慣が始まると、刻印するスペースを確保するために台座やリングが次々と追加され、トロフィーは徐々に巨大化していった。こうして現在知られる円筒状の姿が形成されたのである。
20世紀初頭になると、ホッケーは急速にプロ化し、スタンレーカップは次第に北米最高峰のアイスホッケー選手権としての意味を持つようになった。1910年代には複数リーグの王者が争う形式となり、1926年以降は事実上NHLの優勝トロフィーとして定着した。現在でも、優勝チームの選手やスタッフの名前がカップの帯に刻まれる伝統が続いており、その刻印は数千人に及ぶ。
こうした「実物のトロフィーに歴代優勝者の名前が刻まれていく形式」は北米スポーツでは極めて珍しく、スタンレーカップが特別な存在とされる理由の一つでもある。
さらにこのカップには独特の文化と伝統がある。優勝チームの選手たちは順番にトロフィーを持ち帰ることが許され、家族と祝ったり、シャンパンを注いで飲んだりする習慣がある。
こうした儀式は、長く過酷なプレーオフを勝ち抜いた者だけが味わえる特権であり、スタンレーカップは単なる優勝トロフィーではなく、ホッケー文化そのものを象徴する“聖杯”として扱われている。(timescolonist.com)
その瞬間は、まさにドラマチックでした。スポーツ界で最も美しいと言われるあのトロフィーが、インタビューの真っ最中に彼のもとへ運ばれてきたのです。モーリスは話していた言葉をピタッと止め、カップをしっかりと手に取ると、力強く高く掲げました。
そして、スポーツの歴史の中でもこれほどまでに長く、そして心から満たされたものはないと思えるほど、深いため息をついたのです。
たとえあなたがフロリダ・パンサーズのファンではなかったとしても、あのときばかりはモーリスを心から祝福せずにはいられなかったはずです。なぜなら、彼はホッケーという競技に自らの人生を捧げ尽くし、ついに長年の夢を叶えた人物だったからです。
NHLの長い歴史を振り返ってみると、このように人々の記憶に刻まれる象徴的な優勝シーンがいくつか存在しています。
例えば、最も有名なエピソードの一つに、2001年にレイ・ボークがコロラド・アバランチで優勝した時の場面があります。この時、チームのキャプテンを務めていたジョー・サキックは、普通なら真っ先に自分がやるはずの「カップを掲げる」という行為をあえてしませんでした。
彼はそのまま、優勝を待ちわびていたボークの手へとカップを渡したのです。これはホッケーの歴史において、今でも「最も有名なパス」として語り草になっています。
また1989年には、ラニー・マクドナルドがカルガリー・フレームスで優勝を飾り、最高の形で現役生活に幕を下ろしました。その時の写真は、私にとってこれまで見たホッケー写真の中でもベストの一枚です。※「ベストの一枚」は参照記事に掲載されています。
レイ・ボーク、ラニー・マクドナルド
2001年のスタンレーカップ優勝時に見られたレイ・ボークとジョー・サキックのやり取りは、NHLの歴史において勝利の瞬間を超えた「象徴的な儀式」として語り継がれている。
ボークは1979年のデビュー以来、ボストン・ブルーインズ一筋で20年以上プレーし、リーグ屈指のディフェンスマンとして数々の個人タイトルを獲得しながらも、スタンレーカップだけには届かなかった選手である。そのためキャリア晩年の2000年、悲願の優勝を求めてコロラド・アバランチへ移籍した。
この移籍は「レジェンドへの最後の贈り物」としてチーム全体に共有された強い物語性を帯びており、実際にアバランチは翌2001年に優勝を果たす。通常、キャプテンが最初にトロフィーを掲げるのが慣例だが、このときキャプテンのサキックはそれを行わず、まっすぐボークへカップを手渡した。
この行為は単なる敬意ではなく、「チームが一人の偉大な選手のキャリアを完成させるために戦った」という意思表示であり、ホッケー文化におけるリーダーシップと連帯の理想形として今も語り継がれている。
一方、1989年のラニー・マクドナルドの優勝は、まったく異なる文脈で語られる“完成された物語”である。マクドナルドは長年にわたりカルガリー・フレームスの象徴的存在としてプレーし、その特徴的な口ひげと情熱的なプレースタイルでファンから絶大な支持を受けていた。しかし彼のキャリアもまた、長く優勝に恵まれないまま続いていた。
1989年、36歳で迎えたシーズンは事実上ラストチャンスと見られていたが、フレームスはプレーオフを勝ち抜き、決勝でモントリオールを破って初優勝を達成する。マクドナルド自身も決勝戦で得点を記録し、そのままチャンピオンとして現役を引退した。
このとき撮影された、歓喜の表情でカップを抱く姿は、ホッケーにおける「忍耐と報酬」を象徴するイメージとして広く共有されている。そこには、長いキャリアの苦闘、幾度もの挫折、そして最後に訪れる解放感が凝縮されており、スタンレーカップという存在が単なる勝敗を超えた“人生の到達点”として機能していることを示している。
この二つのエピソードに共通しているのは、スタンレーカップが、選手のキャリアやチームの歴史、さらにはファンの記憶までも結びつける「物語の装置」として機能している点にある。
ボークのケースは“仲間が夢を叶える瞬間”、マクドナルドのケースは“自らの努力が報われる瞬間”を象徴しており、いずれもNHLにおける最も人間的で感情的な価値を体現した場面として、現在でも繰り返し語り継がれているのである。
スタンレーカップを勝ち取ることがどれほどまでに過酷な道のりであり、そしてようやく辿り着いたその場所で味わう至福がどれほどのものなのか、そのすべてが完璧に写し出されているからです。
そもそも「OGWAC」って何?選手たちの熱いストーリーに注目✨
毎年、アイスホッケーのプレーオフシーズンが近づくと、ファンたちの間である楽しみが生まれます。それは、まだ一度もスタンレーカップを手にしたことがないベテラン選手を見つけ出し、彼らを全力で応援することです。特に、自分が応援しているチームが惜しくもプレーオフに進めなかった場合などは、なおさらこうしたベテランたちの挑戦に熱が入るものです。
「この選手には、どんな心温まるストーリーがあるのだろう?」「これほど長くリーグで戦い、貢献してきたのだから、そろそろ報われてもいいのではないか?」。そんな風に思わせてくれる選手たちが注目を集めます。
こうした選手たちのことを、ファンの間では親しみを込めて「OGWAC」と呼んでいます。これは「Old Guy Without a Cup」の略称で、日本語にするなら「まだカップを手にしていないベテラン」といった意味になります。
先ほどお話ししたポール・モーリスが初めて優勝した2024年にも、非常に有力なOGWAC候補がいました。それがカイル・オクポーソです。彼はニューヨーク・アイランダースとバッファロー・セイバーズで18年もの長いキャリアを積み上げた末、ついにフロリダ・パンサーズで悲願の初優勝を成し遂げました。
カイル・オクポーソ
彼のキャリアは、NHLにおける「報われにくい長期キャリア」の典型例として語られることが多い。彼は2006年のドラフトでニューヨーク・アイランダースに1巡目指名され、パワーとフィジカルを兼ね備えたウイングとして早くから主力に定着したが、在籍期間中のチームは再建期にあり、プレーオフ進出自体が限られていた。
そのため個人成績では20ゴール以上を複数回記録し、トップラインで安定した働きを見せながらも、優勝争いとは距離のあるシーズンが続いた。
2016年にバッファロー・セイバーズへ移籍すると、彼の役割はさらに変化する。ここでは単なる得点源ではなく、若手を支えるリーダーとしての価値が重視され、最終的にはキャプテンも務めることになる。しかしバッファローも長期的な再建に苦しむチームであり、オクポーソ自身はキャリアのピークを迎えながらも、プレーオフの舞台から遠ざかる時期が続いた。
加えて、2017年には重い病気によって一時的にキャリアが危ぶまれるなど、競技人生そのものを揺るがす試練も経験している。
そうした背景を踏まえると、2024年にフロリダ・パンサーズでスタンレーカップを獲得した出来事は、長年にわたり結果に恵まれなかった選手が、役割を変えながら生き残り、最後に頂点へ到達した稀有なケースとして位置づけられる。
パンサーズでは主役ではなく、下位ラインやロッカールームでの経験値が評価される立場での優勝であり、これは現代NHLにおけるチーム構築の考え方――スターだけでなく、経験豊富な補完戦力がいかに重要か――を象徴するものでもある。
それでは、いよいよ2026年のスタンレーカップ・プレーオフに向けて、今シーズン私が選んだ注目のOGWAC候補たちを紹介していきましょう。
ブレント・バーンズ(コロラド・アバランチ/ディフェンス)🧔
一人目の候補は、ブレント・バーンズです。NHLで最も立派で堂々とした「ヒゲ」の持ち主と言えば、すぐに彼の顔が浮かぶファンも多いでしょう。リーグ屈指の個性派キャラクターとして知られる彼にとって、今シーズンこそがその「運命の時」になるのでしょうか。
バーンズは現在、40歳を超えている数少ない現役選手の一人です。その年齢とこれまでの功績を考えれば、OGWACをめぐるファンの投票でも間違いなく多くの支持を集めるはずです。
彼にとって非常に心強い材料は、今所属しているのがコロラド・アバランチであるという点です。ブックメーカーのオッズ(DraftKings Sportsbookのオッズで+290)によれば、アバランチはスタンレーカップ優勝の最有力候補と目されており、その期待の高さが伺えます。
ブックメーカーのオッズ
ここで言及されているDraftKings Sportsbookの「+290」というオッズは、北米で一般的に用いられるアメリカンオッズ(moneyline)と呼ばれる表示形式であり、単なる順位や評価ではなく「賭け金に対してどれだけの利益が得られるか」を示す数値である。
具体的には「+290」は、100ドルを賭けた場合に290ドルの利益(合計390ドルの払い戻し)が得られることを意味しており、この数字が小さいほど市場からの期待値が高い、すなわち“優勝の可能性が高いと見られている”ことを示す。
裏を返せば、+290という数値は決して確実な優勝を意味するものではないが、複数チームが並ぶ中で最も低いプラス値に設定されている場合、それは実質的に「優勝候補筆頭」と評価されている状態を指す。
このオッズは単なる主観的な予想ではなく、チームの戦力、過去の成績、怪我人情報、さらにはベッティング市場における資金の流れといった多様な要素を反映してリアルタイムで調整されるため、いわば「市場全体の集合知」に近い性質を持つ。
特にNHLのようにプレーオフの波乱が多いリーグでは、レギュラーシーズンの順位だけでは測れない“実戦的な強さ”や“経験値”がオッズに織り込まれる傾向があり、強豪チームであっても状況次第で数値が大きく変動する。
【DraftKings Sportsbook】
米国を拠点とするオンライン・スポーツベッティングプラットフォームであり、スポーツイベントへの合法的な賭けを提供している。運営会社のDraftKings Inc.によって展開され、複数の州でライセンスを取得し、リアルタイムのオッズと多様なベット形式を特徴とする。
起源と発展
DraftKings Sportsbookは、2018年に米国でスポーツベッティングが合法化された後、同年8月にニュージャージー州で最初にオンラインベッティングを開始した。母体のDraftKings Inc.はもともとデイリーファンタジースポーツ企業として2012年に創業され、合法化の流れに乗り、Sportsbook事業で急速に拡大した。
提供サービス
利用者はNFL、NBA、MLB、NHLなど主要スポーツのほか、大学スポーツや国際的な大会に賭けることができる。マネーライン、スプレッド、パーレイ、プロップベットなど多様な形式を提供し、ライブベッティング機能も備える。DraftKingsのアプリは直感的な操作性と統合型ウォレットを特徴とし、カジノゲームやファンタジースポーツとも連携している。
規制と市場展開
DraftKings Sportsbookは、米国内の各州ごとに規制機関のライセンスを取得し、責任あるギャンブル施策を導入している。ニュージャージー、ペンシルベニア、ネバダなど多くの州で展開し、カナダや欧州市場への進出も模索中である。
影響と評価
同社は、米国スポーツベッティング市場の主要プレイヤーとして、競合のFanDuelと並び業界をリードしている。モバイルアプリの利便性とプロモーション戦略により、利用者数と売上は年々拡大している。
バーンズはかつてサンノゼ・シャークスで決勝の舞台を経験しましたし、カロライナ・ハリケーンズでもプレーオフで素晴らしい戦いを見せましたが、あと一歩というところで優勝には届きませんでした。しかし今、彼はリーグ屈指の強力な布陣を誇るチームでプレーしています。ついにあの重厚なカップを掲げるチャンスが、目の前まで来ているのです。
今シーズン、バーンズは1500試合出場を達成。その記念の年にカップを掲げて、キャリアの最晩年を飾ることができるか。いや、彼はまだまだやれる!

バーンズは確実にプレーオフに出て、コロラド・アバランチの精神的支柱として活躍するだろうにゃ。ただ、レギュラー・シーズン中にボロ勝ちするチームは、プレーオフになると、不思議と勝ちグセを忘れてしまって勝てなくなるのが、NHLのあるあるでして…。ファースト・ラウンドの相手がどこになるか。今のままでいけば、相手はシアトル・クラーケン。それほど難しくない相手だと思うけど。
兄弟で狙う最高の瞬間と、チームの象徴が懸ける想い🏒
続いて紹介するのは、もし実現すればホッケー界にとってこれ以上ないほど素晴らしい物語になるであろう、こちらの選手たちです。
ニック・フォリーニョ/マーカス・フォリーニョ(ミネソタ・ワイルド/フォワード)👬
ニック・フォリーニョは、これまでの長いキャリアの中で、コロンバス・ブルージャケッツとシカゴ・ブラックホークスという2つのチームでキャプテンを務めてきたほど、誰もが認める素晴らしいリーダーです。しかし意外なことに、1シーズンのプレーオフで10試合以上に出場した経験はまだ一度もありません。
彼は2023年、レギュラーシーズンで歴史的な記録を打ち立てたボストン・ブルーインズのメンバーでもありました。しかし、その最強チームをもってしても、プレーオフ1回戦でフロリダ・パンサーズに敗れるという劇的な展開を経験しています。
また、トロント・メープルリーフスにいた頃には、プレーオフで倒れていたジョン・タバレスに対し、コリー・ペリーの膝が結果的に大きなダメージを与える形となって接触をした直後、真っ先にペリーへ向かってグローブを落とした(つまりケンカを仕掛けた)こともありました。まさに現代のスポーツ界を代表する、熱きリーダーの一人なのです。
真っ先にペリーへ向かってグローブを落とした
この出来事は、2021年のスタンレーカップ・プレーオフ1回戦、トロント・メープルリーフス対モントリオール・カナディアンズの試合中に起きたものである。試合序盤、キャプテンのジョン・タバレスがパックを追う中で転倒し、その直後に高速で戻ってきたコリー・ペリーの膝が頭部付近に接触するという、極めて危険なアクシデントが発生した。
タバレスは氷上で意識を失い、自力で立ち上がれない状態となり、そのまま担架で搬送される深刻な状況に至った。このプレー自体は意図的なものではなく、不運なタイミングと回避不能な動きが重なった結果と公式にも判断されているが、試合の空気は一瞬で緊張と怒りに包まれることになる。
この直後、ニック・フォリーニョが取った行動が象徴的だった。彼は新加入ながらチームの精神的支柱として振る舞い、試合再開後すぐにペリーへ向かってグローブを落とし、ファイトを挑んだ。これは単なる報復行為ではなく、ホッケー文化における「チームメイトを守る責任」と「試合の感情を整理する役割」を果たす行動として理解されている。
特にプレーオフという極限状態では、こうした行為がチームの結束を高め、動揺した空気を引き締める意味を持つとされる。
結果として、この一件はフォリーニョのリーダーシップを象徴する場面として広く評価されることになった。彼はキャプテンではなかったものの、最も危機的な瞬間に“何をすべきか”を即座に判断し、行動で示したのである。
そんな38歳のニックが、今シーズン、34歳の弟マーカスと初めて同じチームでプレーしています。彼らが所属するミネソタ・ワイルドは、今まさに戦力が充実しており、球団史上初となるスタンレーカップ獲得を本気で狙える位置にいます。
もしもこの兄弟が二人で「ロード・スタンレーの杯」を空高く掲げる光景が実現すれば、それはアイスホッケーの歴史に永遠に刻まれる名シーンになるに違いありません。
兄・ニックと弟・マーカスが揃い踏みした番組から。近年になく戦力充実のワイルド、ひょっとしたひょっとするかも。
ジェイミー・ベン(ダラス・スターズ/フォワード)🌟
次にご紹介するのは、ダラス・スターズのキャプテン、ジェイミー・ベンです。彼は、これまでのNHLキャリアのすべてを一筋に同じチームで過ごしてきた選手として、ファンから絶大な支持を集めています。まさに、このフランチャイズの「心臓」とも言える存在です。
このリストに並ぶ他のベテランたちと比べれば、36歳の彼はまだ比較的若い部類に入るかもしれません。しかし、彼はこのオフシーズン、ダラスでもう一度カップを勝ち取るために、1年100万ドルという非常に献身的な契約を結びました。
1年100万ドルという非常に献身的な契約
「1年100万ドル」という契約は、NHL特有のサラリーキャップ制度とキャリア終盤の選手の意思決定が交差した結果として理解する必要がある。NHLではチームごとに年俸総額の上限が厳格に定められており、優勝を狙うチームほど主力選手に高額契約が集中するため、ロースター全体のバランスを取るためにはベテラン選手が報酬を抑える必要が出てくる。
ベンは長年ダラス・スターズの主軸として高額契約を結んできたが、年齢とともに役割が変化する中で、自身の市場価値よりもチームの競争力を優先する選択をしたと考えられる。
このような契約は北米スポーツでは「チームフレンドリー契約」と呼ばれ、特に優勝を狙う終盤のキャリアにおいては象徴的な意味を持つ。つまり選手が個人の収入最大化ではなく、「優勝という実績」を最優先に置いた判断であり、キャリアの評価軸が“年俸”から“レガシー(遺産)”へと移行したことを示している。
実際、ベンはすでに長年キャプテンを務め、チームの顔として十分な実績と報酬を得てきた選手であり、この契約は不足を補うものではなく、むしろ「最後の挑戦」に向けた戦略的な選択といえる。
さらに重要なのは、この契約がチーム構成に与える影響である。低年俸で主力経験者を維持できることは、他のポジションに資金を回す余地を生み出し、結果としてロースター全体の層を厚くする効果をもたらす。すなわちベンの決断は個人的なものにとどまらず、チーム全体の優勝確率を引き上げる要素として機能している。
この文脈において、もしDallas Starsが優勝を果たした場合、キャプテンとして最初にカップを掲げるベンの姿は、「自らの価値を再定義し、チームのために最適な選択をしたベテランが最後に報われる瞬間」として、極めて強いカタルシスを生む場面となるのである。
もしスターズが優勝することになれば、それは言葉では言い表せないほど感慨深い瞬間になるでしょう。なぜなら、キャプテンであるベンが、最初にコミッショナーのもとへと滑り寄り、重厚なトロフィーを一番に受け取る役目を果たすことになるからです。
彼は2020年にチームをスタンレーカップ決勝へと導き、さらに過去3シーズンではすべてカンファレンス決勝まで駒を進めてきました。ベンがようやくカップを頭上に掲げる姿を見て、残念に思うホッケーファンなどまずいないはずです。
頼れる用心棒と、ノルウェーが生んだ誇り高きベテラン🛡️
続いては、チームメイトやファンから絶大な信頼を寄せられている、二人の個性豊かなベテラン選手をご紹介します。
ライアン・リーヴス(サンノゼ・シャークス/フォワード)💪
「リーボ(Reavo)」の愛称で親しまれるライアン・リーヴスは、これまで彼が所属してきたすべてのチームのファンから、熱烈な支持を集めることになるでしょう。なぜなら彼は、過去のシーズンにおいても常にスター選手を守るために自らの体を張って戦ってきた存在だからです。
そして39歳になった今シーズンも、マックリン・セレブリーニやウィル・スミスといったシャークスの若き才能たちをしっかりと守り抜く役割を果たし続けています。
若き才能たちをしっかりと守り抜く役割
ライアン・リーヴスが「スター選手を守る存在」と評される背景には、NHLにおける“エンフォーサー”という役割の歴史と実践がある。彼のプレースタイルは得点やアシストといったスタッツよりも、フィジカルコンタクトや威圧感、そして必要に応じたファイトによって試合の力学そのものを変える点に特徴がある。
実際、ベガス・ゴールデンナイツやセントルイス・ブルース在籍時には、相手チームが自軍のエースに対してラフプレーを仕掛けた直後に前面へ出て対抗する場面が繰り返し見られ、結果として相手側が過度な接触を控える“抑止力”として機能してきた。
この「守る」という行為は単なる乱闘ではなく、戦術的な意味合いを持つ。NHLでは明確にスター選手を狙ったハードヒットが試合の流れを変える要因となるため、チームはそれに対抗する存在をロースターに組み込む傾向がある。
リーヴスのような選手が氷上にいるだけで、相手は報復のリスクを考慮せざるを得なくなり、結果的にエース級の選手がより自由にプレーできる環境が生まれるのである。これは数値化されにくいが、試合の質やチームの心理的優位性に直結する重要な要素とされている。
さらに近年はリーグ全体でスピードとスキルが重視される傾向にある一方で、若手中心のチームほどフィジカル面での保護が必要とされる側面も強い。そうした中で、サンノゼ・シャークスのように再建期にあるチームでは、マックリン・セレブリーニやウィル・スミスといった将来の核となる若手が安心してプレーできる環境づくりが不可欠となる。
リーヴスが担っているのはまさにその役割であり、接触の多い局面で前に出る姿勢や、ベンチ内での精神的支柱としての振る舞いを通じて、チーム全体の競争強度を底上げしている。彼の価値は単なる「戦う選手」にとどまらず、スターを活かすための“見えない土台”として機能している点にある。
リーヴスには、プレーオフでの輝かしい実績もあります。2018年、ベガス・ゴールデンナイツに所属していた彼は、ウェスタン・カンファレンス決勝でチームを勝利に導く決定的なゴールを決め、球団をスタンレーカップ決勝へと押し上げました。
最終的にはワシントン・キャピタルズに敗れ、相手のエースであるアレックス・オベチキンに初優勝を譲る形となりましたが、彼の勝負強さは折り紙付きです。
現在のシャークスは、見ていて非常に楽しいチームであり、多くのホッケーファンにとって「自分のチームの次に気になる存在」という、いわば第2の応援チームのようなポジションを確立しています。
もしサンノゼがこのまま勢いに乗ってプレーオフ進出を決めるようなことがあれば、チーム全体への注目と共に、OGWAC候補としてのリーヴスにも大きな声援が送られることは間違いありません。
マッツ・ズッカレロ(ミネソタ・ワイルド/フォワード)🇳🇴
驚くべきことに、ミネソタ・ワイルドにはこのOGWACリストに名前が挙がる候補選手が複数存在しています。その一人が、マッツ・ズッカレロです。
彼は2014年、ノルウェー出身のNHL選手として初めてスタンレーカップ決勝の舞台に立つという快挙を成し遂げました。当時はニューヨーク・レンジャーズの一員として戦いましたが、惜しくも優勝には手が届きませんでした。彼が「ブロードウェイ・ブルーシャツ」の愛称で知られるレンジャーズを去ってから、すでに7年という月日が流れています。
それでもなお、一部のレンジャーズファンは今でもズッカレロに対して特別な思いを抱き続けており、彼がいつかカップを掲げる姿を見たいと願っているのです。
もし今年、ワイルドが悲願の優勝を果たしたとしたら、チーム内で誰から順番にスタンレーカップを自宅に持ち帰るかという「特権」の順番待ちで、ズッカレロはかなり前の方に並ぶのではないかと私は推測しています。おそらく、キャプテンのジャレッド・スパージョンのすぐ次くらいになるのではないでしょうか。
誰から順番にスタンレーカップを自宅に持ち帰るかという「特権」の順番待ち
スタンレーカップ優勝後に語られる「誰が最初にカップを自宅に持ち帰るか」という順番は、NHLに長く根付く極めて象徴的な伝統に基づいている。
優勝直後、氷上ではまずキャプテンがカップを受け取り、そこから選手やスタッフへと手渡されていくが、その後オフシーズンに入ると、カップは1日単位でチーム関係者に貸し出され、それぞれが自分の故郷やゆかりの地で祝う機会を与えられる。
この順番は明文化されたルールがあるわけではないが、実際にはチーム内部での序列や貢献度、在籍年数、さらには人間関係までを含めた“暗黙の合意”によって決まることが多い。
たとえばミネソタ・ワイルドのようなチームで優勝が実現した場合、キャプテンであるジャレッド・スパージョンが最初にその栄誉を得るのはほぼ確実とされる。その次に誰が来るかは、単純な成績ではなく「チームへの象徴的な貢献」が強く影響する領域であり、長年チームに在籍し文化を支えてきたマッツ・ズッカレロの名前が挙がるのは自然な流れである。
さらにニック・フォリーニョのようなリーダーシップを発揮してきた選手も上位に位置すると考えられるが、ズッカレロが優先されるという見方は、在籍期間の長さとチーム内での象徴性が評価されているためだと解釈できる。
この“順番”が特別なのは、それが単なる儀式ではなく、選手それぞれのキャリアやチームへの献身が可視化される瞬間だからである。カップをどのタイミングで受け取るかは、言い換えれば「その優勝において誰がどれだけの意味を持っていたか」を静かに物語る指標でもある。
だからこそ、もしミネソタ・ワイルドが初の優勝を果たした場合、その順番はファンや関係者にとっても大きな関心事となり、単なる祝賀イベントを超えた“物語の完結編”として受け止められるのである。
これまでのミネソタでの在籍期間や彼の年齢を考えれば、そのすぐ後ろにニック・フォリーニョが続く形になるのが自然だと思われます。
記録を持つ男と、再び頂点を狙うスターたち✨
最後に、メインのリストとは少し毛色が違いますが、今シーズンのプレーオフでどうしても注目しておかなければならない選手たちを「特別編」としてご紹介します。
ジェフ・スキナー(フリーエージェント/フォワード)🏒
このリストに、ジェフ・スキナーの名前を加えないわけにはいきません。現在33歳でフリーエージェントの彼は、プレーオフ進出を目指すチームに加入して力添えをする資格を今も持っています。
プレーオフ進出を目指すチームに加入して力添えをする資格
ジェフ・スキナーがフリーエージェントでありながら、「プレーオフを目指すチームに加わる可能性がある」とされる背景には、NHL特有の補強タイミングとスコアラーの市場価値が大きく関係している。
スキナーは長年にわたり安定して得点を重ねてきた純粋なフィニッシャー型フォワードであり、特にパワープレーやセカンドラインでの得点力に課題を抱えるチームにとっては、短期契約でも戦力として機能する可能性が高いと評価されてきた。
近年のデータ分析においても、彼のような“シュート創出能力”に優れた選手は、出場時間が限定されても得点期待値を押し上げる効果があるとされている。
一方で、実際の獲得可能性は単純ではない。33歳という年齢は決して高齢ではないものの、スピードや守備貢献が重視される現代NHLにおいては、ワンディメンション(攻撃特化型)と見なされるリスクも伴うため、チームは起用法を明確に設計する必要がある。
また、プレーオフ争いをしているチームほどサラリーキャップの余裕が限られており、既存戦力とのバランスやロッカールームの役割分担も考慮されるため、単に得点力があるだけでは即契約には結びつかないのが現実である。
それでもなおスキナーが注目され続ける理由は、「短期的に得点力を補強できる数少ない選択肢」である点にある。実際、過去にもシーズン終盤やトレード期限前後に、ベテランスコアラーが優勝候補に加わり重要な役割を果たした事例は多く、特にプレーオフでは1点の価値が極端に高まるため、経験と決定力を兼ね備えた選手は市場で独特の価値を持つ。
したがってスキナーの去就は、「どのチームが得点力の最後のピースを求めるか」という状況次第で大きく動く余地があり、完全に選択肢から外れているわけではなく、むしろ条件が噛み合えば一気に契約へと進む“待機状態の戦力”として位置づけるのが実態に近い。
他のベテラン候補たちと比べれば少し若く感じるかもしれませんが、彼を甘く見てはいけません。スキナーは、ファンからの感情的な支持、いわゆる「同情票」を間違いなく集める存在だからです。というのも、彼は「レギュラーシーズンに1000試合以上出場しながら、一度もプレーオフに出たことがない」という、前代未聞の記録をNHL史上初めて作ってしまった選手なのです。
彼は2010年にリーグ入りしましたが、プレーオフのユニフォームを着るまでには、実に15年もの月日が必要でした。ようやくエドモントン・オイラーズの一員として昨年の決勝進出に貢献し、5試合で1ゴール・1アシストを記録しましたが、惜しくもフロリダ・パンサーズの前に涙を飲みました。
もし今シーズン、どこかのチームが彼を獲得し、そのまま優勝まで駆け上がるようなことがあれば、それはとてつもない物語になります。きっと多くのファンが、彼の味方になって応援することでしょう。
セイバーズ時代のスキナー。ファンからも絶大なる人気、これで今シーズンのプレーオフで活躍したら、バーンズを凌ぐ「史上最大のストーリー」になるだろう。
特別の視線を集める二人のスター🌟
また、厳密には「まだカップを持っていないベテラン(OGWAC)」という定義には当てはまりませんが、この春の優勝争いで大きな話題となるであろう選手が他にも二人います。
一人目は、コリー・ペリーです。現在40歳の彼は、2007年にマイティダックス・オブ・アナハイムですでに優勝を経験しています。しかし驚くべきことに、彼は過去6シーズンのうち5回もスタンレーカップ決勝まで進みながら、そのすべてで敗れているという、あまりに過酷な事実を抱えています。再び頂点を目指す彼には、特別な注目が集まっています。
過去6シーズンのうち5回もスタンレーカップ決勝まで進みながら、そのすべてで敗れている
コリー・ペリーが「過去6シーズンで5度のファイナル敗退」という特異な経歴を持つ理由は、彼がキャリア後半において“優勝候補チームを渡り歩くベテラン戦力”として機能してきた点にある。
具体的には、2019-20シーズンにダラス・スターズでファイナル進出を果たすもタンパベイ・ライトニングに敗北し、翌2020-21シーズンにはモントリオール・カナディアンズに移籍して再び決勝へ進むが、同じくタンパベイに連敗する結果となった。
その後も、2021-22シーズンにはタンパベイ・ライトニングの一員として3年連続ファイナルに到達するものの、今度はコロラド・アバランチに敗れ、4年連続でカップを逃すという極めて稀なケースとなる。
さらに2023-24シーズンにはエドモントン・オイラーズに加わり、再びスタンレーカップ決勝の舞台へと辿り着くが、今度はフロリダ・パンサーズに敗北し、これで直近のファイナル成績は「5度進出・全敗」という、統計的にもほとんど例のない記録が刻まれることになった。
通常、これほど高頻度でファイナルに到達する選手はその過程で複数回の優勝を手にするケースが多いが、ペリーの場合はそのすべてがあと一歩で途絶えている点が際立っている。
この現象は偶然だけでは説明しきれず、彼の役割にも関係している。ペリーは若い頃の得点王タイプから、現在はプレーオフでの駆け引きや前線でのスクリーン、精神的な圧力を与える“ダーティワーク”に価値を持つ選手へと変化しており、優勝を狙うチームが経験値を求めて獲得するケースが増えている。
その結果、強豪チームに所属し続けることでファイナル進出の確率は高まる一方、短期契約での移籍が続くため、チームのコアとして長期的に優勝サイクルを築く立場にはないという構造的な側面も見えてくる。
それでもなお彼が注目されるのは、この連続した“あと一歩”の歴史が、単なる不運ではなく「どのチームでも優勝に手が届く位置まで引き上げる存在」であることの裏返しでもあるからだ。
だからこそ、もし再び頂点に立つ瞬間が訪れたとすれば、それは2007年以来の優勝という事実以上に、「長年積み重ねてきた未完の物語がようやく完結する瞬間」として、強烈な意味を持つことになる。
そしてもう一人は、コナー・マクデイビッドです。特にオリンピック以降、彼には「いつも花嫁介添人の役ばかりで、主役の花嫁にはなれない(=あと一歩で優勝を逃す)」という物語がつきまとっています。29歳の彼は、文句なしに「地球上で最高のホッケー選手」と認められていますが、最高であるがゆえに、優勝への渇望も人一倍強く感じられます。
さらに昨秋、彼がチームの将来を考えて結んだ「チームフレンドリーな契約」も、彼に対するファンの期待をより一層高める要因となっています。
まとめ
スタンレーカップを巡る戦いには、ベテランたちの人生を懸けたドラマが詰まっています。今回ご紹介した「OGWAC」候補たちの背景を知ることで、試合観戦の深みは一気に増すはずです。🏆ぜひ彼らのプレーに注目して、心揺さぶる感動の瞬間を一緒に見届けましょう!
あなたの応援が、彼らの悲願を後押しする力になります。🏒

ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!

