はじめに
トレード・デッドラインまで、後3日あるかないかになってきました。シーズン前からトレードの噂があって、そのせいもあってか、チーム内であまりしっくり行かない選手は結構います。
まして、制限無しFA(フリーエージェント)になりかかっている選手に対し、少しでも実入りの欲しいチームとしては、勝手に出ていかれては困るので、どんどんトレードの駒として使おうと、秘密裏にあっちこっちのチームへ売り込んだりもしてます。
今回の、ワシントン・キャピタルズのセンター、エフゲニー・クズネツォフは少し趣を異にしています。プライベートで問題を抱える彼を切りたいGMが遂に決断して、何と下部組織の育成チームへレンタル移籍させてしまったのです!
下部組織のチーム行きはさほど珍しいことじゃないけど、
カップをもたらしたベテランの中心選手クズネツォフとなると、話は別だにゃ。
まだまだ引退する年齢じゃないし(31歳)、
プレーのムラッ気さえ直せば超一級の選手なのに…。
引用元:NHL.com「Kuznetsov clears waivers, loaned to AHL by Capitals」
wjla.com「Longtime Capitals center Evgeny Kuznetsov is expected to join AHL Hershey after clearing w」
「ワシントンのお騒がせ男」、AHLへ
3月4日(月曜日)、エフゲニー・クズネツォフは、アメリカン・ホッケーリーグのハーシー(・ベアーズ)に移籍を届け出ました。前日にチームの権利放棄、即ち自由契約選手であると認められた後、ワシントン・キャピタルズからレンタルされることになったのです。
3月2日(土曜日)、この31歳のフォワードを別の場所で再出発させたいという(チームの)希望から、自由契約選手リストに入れられました。火曜日、彼はハーシーの選手と一緒に練習する予定です。
同日、キャピタルズのゼネラルマネージャー、ブライアン・マクレランは「彼は環境の変化を求めていた1と思う。そして、今回のレンタル移籍が、それを達成するための歯車を動かすかもしれない」と語りました。
健康を取り戻しつつあるが…トレード先は決まらず
クズネツォフは1月27日以来プレーしておらず、2月5日、NHL/NHLPAの選手支援プログラムに参加しています。土曜日の早い時間帯に練習再開の許可が下り2、選手支援プログラムのフォローアップケアの段階に入りました。
金曜日午後3時(東部標準時)の2024年のNHLトレード期限までに、キャピタルズはクズネツォフをトレードすることを含め、他の選択肢を引き続き検討するとマクレランは述べています。
クズネツォフには、2017年7月2日にワシントンと結んだ8年総額6,240万ドル3(日本円で約94億円。年平均780万ドル=約11億7千万円)の契約が、あと1シーズン残っています。
キャピタルズはクズネツォフを適切な取引でトレードするために、いくらかの年俸を保持する用意があるかもしれないとマクレランは述べました。
「彼の望むように4、(他のチームが)キャリアを続ける機会を与えてくれるものなら、何でも受け入れるつもりだ」とマクレランは語っています。
クズネツォフの年齢=31歳ってのが微妙なお年頃なんだにゃ。
他のスポーツだと老け込むような年齢ではないのだが、
このくらいの年齢でFA対象選手となると、
NHLでは「消費価値のあるうちに外へ出しちゃえ」となる。難しいのだ。
かつてはワシントンの大スターだったのに…
2010年NHLドラフト1巡目(全体26位)で指名されたクズネツォフは、キャピタルズでレギュラーシーズン723試合に出場、568ポイント(171ゴール、397アシスト)を記録し、そのうち4シーズンは20ゴール以上を記録しました。
彼はスタンレーカップ・プレーオフ87試合で67ポイント(29ゴール、38アシスト)を記録し、ポストシーズン(プレーオフ決勝)では32ポイント(12ゴール、20アシスト)でチーム・トップの成績を挙げ(スタンレーカップ決勝の得点王)、2018年のスタンレーカップ優勝に貢献しています。
しかし、クズネツォフはそれ以来、一貫性のなさでキャピタルズを苛立たせてきました。2017-18シーズンのレギュラーシーズン79試合でNHLキャリアハイの83ポイント(27ゴール、56アシスト)を記録した後、彼の成績は安定していません。
クズネツォフは2021-22シーズンに79試合で78ポイント(24ゴール、54アシスト)を記録しましたが、キャピタルズが2014年以来となるプレーオフ進出を逃した昨シーズン、81試合で55ポイント(12ゴール、43アシスト)と後退しています。
クズネツォフの今シーズンは、43試合で17ポイント(6ゴール、11アシスト)を記録し、12月4日のアリゾナ・コヨーテズ戦では好調でした。
クズネツォフが選手支援プログラムに参加するのはこれで2回目となります。彼はロシア代表として2019年のIIHF世界選手権に出場中、コカイン検査で陽性反応を示し、自ら進んでプログラムに入り、国際大会から4年間の出場停止処分を受けました。
また、クズネツォフは不適切な行為をしたとして、NHLから2019-20シーズン最初の3試合の出場停止処分も受けています。
再びワシントンのジャージを着るチャンスもあるが…
マクレランは、トレード・オプションがない場合、今オフシーズンにクズネツォフとの契約最終シーズンを買い取る可能性を排除しませんでした。
また、クズネツォフがハーシーで自分のプレーを再確認することができれば、キャピタルズに戻ってプレーする可能性も残しています。
「彼は私生活でいくつかのことを正し、賢明にプレーをしなければいけないと思う」とマクレランは語りました。
「彼は自分に最適なプレーレベルを見つけ出す必要があるんじゃないか。(ハーシーに)行って、そのチームで働くか、別のチームでプレーするか――彼が自分のプレーレベルを見つけるかどうかは分からないが、彼にとっては重要なことだと思うね」。
クズネツォフをトレードする可能性に加えて、キャピタルズは(トレード・)デッドラインまでに他の選択肢を模索していますが、これらの決定は、プレーオフ・レースでの順位によって影響を受けることはない、とマクレランは述べました。
少なくとも、マクレランは「クズネツォフ=往年のように動けない」と
判断しているみたいだにゃ。
今シーズン前からトレード要員に挙げられていて、
ずっとチームとの間にわだかまりのあった選手。
ワシントンに戻る気はないんじゃないか。
GMは若手に切り替えたようです
ワシントン(28勝23敗9延長負け)は日曜日にアリゾナ・コヨーテズに5-2で敗れ、2試合を残してメトロポリタン・ディビジョン3位フィラデルフィア・フライヤーズとの勝ち点差は6のままです。
デトロイト・レッドウィングスとタンパベイ・ライトニングとは7点差にとどまりました。イースタン・カンファレンスからプレーオフへ出場するため、ワイルドカード獲得に向けて、キャピタルズはライトニングと3試合、レッドウィングスと1試合を残しています。
「我々は混戦の中にいると思う」とマクレランは語りました。「プレーオフ進出の可能性は低いという考えも理解できるが、他チームから助けを得られるかもしれない(他力本願で勝ち上がる)。いくつかの決断を下すまであと1週間ある。
我々の優先事項はあくまでクラブの将来だ(目先の勝利ではない)。すべての決定は(それ)に基づいて行われる。〈おい、俺たちはプレーオフのために選手をレンタルするつもりだ〉なんて言わない。私たちはトレードゲームには参加していないのさ」。
「我々は、より多くの若い選手を見つけ、より多くの若い選手をロースターに加え、競争する機会を探すためにここにいる。そして、ずっと競争し続けていくんだ」。
マクレランは、キャピタルズがディフェンダーのジョエル・エドマンドソン、フォワードのアンソニー・マンサ(日本時間で3月6日午前中、ベガス・ゴールデンナイツへのトレード決定。2つのドラフト指名権と交換)、マックス・パチョレッティ、ニコラス・オーブ=クーベルなど、今シーズン終了後、無制限フリーエージェントになる可能性のある選手をトレードするかどうか、
まだ確信が持てていません。
「もし何かが我々にとって理にかなっているなら、それが良い取引であり、それが良い価値である。または我々の組織に役立つなら、それを考慮する必要があると思うね」とマクレランは言いました。
「しかし、やみくもにこの選手たちを全員排除するだけだと言うなんて、我々はそんなつもりもないし、そんなことはしない」。
【付記】
NHL公式サイトの最新記事では、ワシントンのGMの談話しか掲載されていないが、他の記事では現場を預かる監督談話が掲載されているものもある。
日曜日、スペンサー・カーベリー監督は「一人の人間として彼を思い、この結果がクズネツォフと彼の家族にとって最善のものであることを願っている。それが私の期待していることだ」と述べている。
カーベリーは週末、他の選手たちとクズネツォフが自由契約になることについて話しており、これは10年以上キャピタルズの中核として重要な役割を果たしてきた選手への敬意を表している。
「このチームに長く在籍している人物で、我々のロッカールームにいる多くの選手や、その中の何人かは、11年間ずっとクズネツォフと一緒にいる」とカーベリーは語りました。「私は彼に借りがあるような気がしているんだ」。
まとめ
「私は彼に借りがあるような気がしているんだ」という監督の言葉が気になりますね。長年の功績に対して報いてあげられなかったことを指すのか、あるいは新人監督であるが故の経験不足で、上手くクズネツォフを起用できなかったことへの反省なのか。
いずれにしても、彼が健康体であれば、大記録を目指すアレックス・オベチキンの相棒として、まだまだ活躍できていたはずです。GMの言葉通り、果たしてAHLでかつての輝きを取り戻すことができるでしょうか。まずは試合勘を取り戻さねばならないでしょう。
このままワシントンがズルズルとワイルドカード争いから後退していくと、新人監督のクビ切りどころか、容赦なくスター選手を切ったGMの責任問題も問われます。オベチキンの記録挑戦も停滞気味だし、ワシントンの前途はあまり明るくないようです。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- 同日、クズネツォフがキャピタルズの練習に参加できるレベルまでプログラムが進んでいることを、NHLと選手組合が明らかにした数時間後、チームから自由契約選手リスト行きを通告されている。
ゼネラルマネージャーのマクレランは、チームと代理人を含むクズネツォフ側は状況の変化を模索しているとも述べており、ややきな臭い雰囲気はある。
↩︎ - 練習参加はオッケーだが、NHL/NHLPAの選手支援プログラムに基づいて治療を受けながら、試合でプレーする許可がまだ得られていないため、クズネツォフが試合に参加できるようになるまで記者団と話すことはない、とチームは述べている。
↩︎ - 現在、7年目のシーズン。2024-2025シーズン、チーム(ワシントンとは限らない)はクズネツォフに約800万ドルを支払う義務がある。
そのため、他の31チームが、43試合出場でわずか17ポイントしか残していないクズネツォフの獲得を主張しなかったのは当然のことで、その年俸に見合う活躍が計算できないからである。
↩︎ - 「我々は共に歴史を歩んできた。クズネツォフに新たなスタートを切る機会を与えることが、我々が達成しようとしていることの主要テーマだと思う。
我々にとっても、新たなスタートを切り、彼にキャリアを継続する機会を与えようとするチャンスだ」ともマクレランは述べており、意地悪く解釈し過ぎかもしれないが、早くクズネツォフを切りたくて仕方ないような口ぶりにも取れる。 ↩︎