NHL各チーム、オフシーズンの過ごし方を考える(パート4)

NHLチーム紹介

はじめに  

 プレーオフも、イースタン&ウェスタン、各カンファレンス決勝を迎えました。「昨年度プレジデンツ・トロフィー受賞チーム」 の勢いが止まりません。 

 レギュラー・シーズン中からブイブイ吹きまくっていたハリケーンも、パンサーの牙にガッチリ首根っこを抑えられてしまったようです。 

 無敵を誇った「今年度プレジデンツ・トロフィー受賞チーム」と言えば…、もうその話はやめておきましょう。  

 さて、ファースト・ラウンドで敗れた各チームの今シーズン点検も、 4回目を迎えました。今回は「ディフェンディング・チャンピオン」コロラド・アバランチと、「ベテランを集めてきたものの、その補強は失敗か?」ニューヨーク・レンジャーズをお届けします。 

 この2チーム、選手層を厚くする方法論について、ちょっと間違ってしまったチーム同士のようです。 

讃岐猫
讃岐猫

最新のプレーオフ情報だと、ベガス・ゴールデンナイツが

全くダラス・スターズを寄せつけない戦いぶりにゃ!

スターズ、このままズルズル行ってしまうのか!

引用元:ESPN.com「Keys to the offseason for NHL teams, including free agency plans」。

第1ラウンドで敗退チームを分析する! 

コロラド・アバランチ 

クラーケンと6試合戦い、敗退 

2023-24シーズンの予想キャップスペース:13,225,000ドル(日本円で約18億3千万円) 

2023年のドラフト指名:1位、5位、6位、7位 

選手層の薄さが敗因 

何が悪かったのですか? 

 選手層の厚さ。シアトル・クラーケンは分厚い束になっていましたが、ディフェンディング・チャンピオンは、スター選手以外で、安定したオフェンスへの貢献をした選手が限られていたようです。 

 このシリーズのクラーケンにおいて、14人の異なる選手が少なくとも一つのゴールを決めています。 

 一方、アヴス(アバランチの別称)には9人の得点者がいましたが、ネイサン・マッキノン(センター、27歳)やミッコ・ランタネン(右ウィング、26歳)のようなトップ6のフォワードか、ケール・マカール(ディフェンス、24歳)やデボン・トゥース(ディフェンス、29歳)のようなトップ4のディフェンスがほとんどでした。 

 結局のところ、その選手層のなさが仇となったのです。 

FA該当選手とケガ人をどうするか 

オフシーズンの鍵 

 このオフ・シーズンに答えなければならない質問が、アバランチのフロントにいくつかあります。 

 おそらく最も注目すべき点として、J.T.コンファー(左ウィング、27歳)がデンバーを離れて、他の場所でより有利なオファーを受ける資格を持つ、次の無制限フリーエージェントになる可能性を持つことでしょう。 

 過去数回のオフ・シーズンで、キャップ・スペースが限られているため、オープンになった移籍市場で、アヴスは重要なプレーヤー(特にこの夏のナゼム・カドリ〈センター、32歳〉。現在、カルガリー・フレイムス所属)を失っています。 

 2022-23シーズン、自己最多の52ポイントを記録したコンファーが、最終的にセカンド・ラインのセンターとして台頭しました。 

 アヴスには合計で9つの保留中のUFA(無制限FA)と、新しい取引を必要とする4つの保留中のRFA(制限付きFA)があります。2019年、1巡目で指名されたボーウェン・バイラム(ディフェンス、21歳)とアレックス・ニューフック(センター、22歳)は、保留中のRFAクラスに属しています。 

 健康なときであれば、バイラムはトップ4の選択肢でしたが、ニューフックはボトム・シックスのフォワードとして多くの時間を過ごしていました。 

 そして、ガブリエル・ランデスコグ(左ウィング、30歳)がいます。右膝の問題が長引いたため、アバランチのキャプテンはプレーオフと共に2022-23シーズンを全休しました。ランデスコグの回復時期について、来シーズンまでずれ込む可能性があります。 

 健康を取り戻したランデスコグがいれば、アブスに25〜30ゴールを決められるもう一人のフォワードを得ることとなり、トップ6の選択肢が強化されるでしょう。 

讃岐猫
讃岐猫

とにかく故障者の多さに泣かされ通しのシーズンだったにゃ。

取りこぼしが多かったのも、ここって時に、

メンバーが揃わなかった試合があったからかな。

2023-24シーズンの現実的な期待 

 アバランチはまだ優勝の可能性を残しています。ここ数年と比較して、この段階の可能性として異なるのは、キャップ・スペースの問題です。彼らのフロントは常にお金を意識してきました。 

 ただ、アバランチは今後、これらのキャップ・ドルをどう使うかについて、さらに創造的になる必要があると同時に、エントリー・レベルの契約を残したまま貢献できる、若手有望株獲得の方法を模索しなければなりません。 

エントリー・レベル契約=NHLチームと初めて契約締結した選手が対象。18歳から契約締結は可能であるものの、若手選手の大多数は、契約チームと提携しているマイナー・リーグのチームに所属するパターンを取る。 

 その際、表向き、その選手は「NHLのチームから解雇」となるため、他チームから接触されやすい状態となる。それを防ぐため、契約時の年令に応じた試合数、あるいは年数を経なければ、他チームは契約不可となる。 

 例えば18歳で契約した選手の場合、5年間または160試合のどちらか一方が過ぎなければ、他チームは契約できない仕組みとなっている。 

ニューヨーク・レンジャーズ 

デビルズと7試合戦い、敗退 

2023-24シーズンの予想キャップスペース:10,069,642ドル(日本円で約14億円) 

2023年のドラフト指名:1位(DAL)、3位(COL)、6位、6位(WPG) 

※DAL=ダラス・スターズ、COL=コロラド・アバランチ、WPG=ウィニペグ・ジェッツ。 

それぞれのチームから指名権を獲得。 

期待していたベテランがイマイチ… 

何が悪かったのですか? 

 ニュージャージー・デビルズは、ニューヨーク・レンジャーズを老けさせました(ように見えたのです)。 

 この第1ラウンドでは、若くてハングリーなデビルズのチームと、ダイナミックな相手の歩幅についていけず、2勝0敗とリードをしながらも(第1・2戦、両方とも5-1でレンジャーズの勝利)、消耗してしまったレンジャーズのグループが対戦したのです。 

 パトリック・ケイン(右ウィング、34歳)、ウラジミール・タラセンコ(右ウィング、31歳)、アルテミ・パナリン(左ウィング、31歳)などの優れた選手が名を連ねたメンバーが、第6戦でゲートをこじ開けるまで(5-2でレンジャーズの勝利。それまでレンジャーズは3連敗)、22歳の新人ネットマインダー、アキラ・シュミット(ゴールテンダー、23歳)を相手に、長い間ネットを揺らせなかったのはなぜでしょうか。 

 パワープレーでも、それらのスター選手はいつも揃って活躍できたわけでなく、第2戦では10-4でスタートし、第5戦では10-0、第6戦では4-1、第7戦では4-0でした。昨シーズン同様、レンジャーズはガス欠のように感じられたのです。 

讃岐猫
讃岐猫

ケイン、タラセンコ、パナリンなんて顔ぶれは、

2〜3年前なら、泣く子も黙るようなスター軍団だにゃ。

でも、プレーオフじゃ全然怖さがなかった。

あっさりデビルズにひねられたイメージしかない。

選手の体調管理に問題が… 

 レギュラー・シーズンで、ニューヨークはパックを挟んだ両サイド(守備も攻撃も)で安定しており、最後までイースタン・カンファレンスのヘビー級に君臨していました。イゴール・シェスターキン(ゴールテンダー、27歳)は、レンジャーズを救うために超人である必要はありませんでした。 

 GMのクリス・ドルーリーはタラセンコとケインを加え、ニューヨークに必要なプレーオフのためのパンチ力を与えましたが、これらの選手は期待通りにはいきませんでした(タラセンコはポストシーズンで3ゴール、ケインは1ゴールにとどまりました)。 

 シェスターキンの素晴らしいプレーは、レンジャーズの提供できなかったサポートに値するものです。 

 パンチといえば、レンジャーズはフィジカル面も弱くなりました。ニューヨークは選手のフィジカル面での調整を怠り、あまりに皮相的な方法を取っていたため、シーズンを通して体調を維持することはできませんでした;その代償として、初夏に向かって肉体面がしおれていったのです。 

オフシーズンの鍵 

 レンジャーズはタラセンコとケインをレンタルで獲得しており、それをどう変えていくかです。いずれの選手も無制限のFA権を獲得しており、プレーオフでのチームとの相性や結果の悪さを考慮すると、ニューヨークで再契約する可能性は低いと思われます。 

 特にポスト・シーズンでフォワードのトップ6(トップ+セカンド・ライン)が精彩を欠いたため、このチームのフォワード・グループには、さらなる再構築が必要でしょう。ニューヨークは火力増強に加え、よりエッジの効いたものが必要です。 

 その両方ができる選手をターゲットにすることで、デビルズ戦では明らかに足りなかったレンジャーズの格を上げることができでしょう。 

活きの良い若手は多いのに、チームのやる気が… 

 その他の重要な契約交渉としては、ディフェンスのニコ・ミッコラ(ディフェンス、27歳。同じく無制限のFA権)とアンドレ・ミラー(ディフェンス、23歳。制限付きFA権)との交渉があります。後者は特に重要になるでしょう。 

 というのも、ミラーはニューヨークのバック・エンド(フォワードの後方を守るディフェンスマン)では欠かせない存在であり、23歳にして将来の重要な構成要素になるはずだからです。 

 彼の次の取引はどのようなものになるでしょうか、そして、それは今からニューヨークのブルーライン(オフサイド・ライン。ディフェンスマンはその後ろにポジショニング)を再形成する上で、どのような影響を与えるでしょうか。 

 ミッコラのプレーオフでの成績は芳しくありませんでしたが、この27歳の選手は、フィジカル面で費用対効果の高いオプションとなり得るので、引き留められれば、チームにとってプラスになります。 

 そして、多くのチームがそうであるように、アイデンティティの問題があります。レンジャーズは自分たちを見失ったのでしょうか?ポスト・シーズンの結果を見れば、疑問に思わないわけがありません。 

 チップ(給料)が下がったとき、ニューヨークからの反発はあまりなく、チームが逆境を乗り越えるのを見たことはありませんでした。選手控室での化学反応に懸念がある場合、芽を摘む必要があります。 

讃岐猫
讃岐猫

チーム全体がどことなく冷めていて、スター選手に任せとけば、

取り敢えず何とかなるか…みたいな空気があるってことかにゃ。

監督はともかく、キャプテンシーの高い選手は多いと思うのだが…。

2023-24シーズンの現実的な期待 

 ニューヨークのフォワードには素晴らしい若い才能があり、ノリス・トロフィー(シーズンで最も優秀なディフェンスマンに贈られる賞)受賞者がブルーラインを先導し、トップ・クラスの選手で、ヴェジーナ(シーズンで最も優秀なゴールテンダーに贈られる賞)にふさわしいゴールテンダーが、ゴール周りを担当しています。基本的にレンジャーズは問題ないはずです。 

 このポスト・シーズンの失望は、ますます競争が激しくなっているメトロポリタン・ディビジョンで(他のチームと)歩調を合わせるため、フランチャイズがいかに進化しなければならないかのスローガンでもあります。 

 そう、ニューヨークは変化を起こさなければならないのです。しかし、このチームの骨格は、彼らを競争者の地位へ戻すために役立つでしょう。 

まとめ 

 アバランチもレンジャーズもチームの屋台骨自体はしっかりしていて、後はどれだけプラスアルファの要素を有機的に付加していくか、だけだと思います。ただ、記事にもあるように、レンジャーズの選手のフィジカル管理に、やや不備な点を見せているのが気になります。 

 サラリー・キャップにあまり余裕のない割に、高給取りのベテランが多いのも、レンジャーズの悩みの種です。 

 ドラフトも近いとなると、2巡目、4巡目、5巡目指名権を持たないチームとしては、トレードでベテランの余剰人員を吐き出し、上記3つの指名権を確保しに行くかもしれません。 

 この辺の駆け引きが、ドラフト当日に出ると、かなりスリリングな展開になるのではないでしょうか。 

讃岐猫
讃岐猫

ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!

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