はじめに
NHLといえばスタンレーカップが注目されがちですが、実はその舞台裏では未来のスターを巡るドラフト戦線も激しく繰り広げられています。
2025年ドラフトの有力候補たちは、スカウティング・コンバインで実力をアピールするだけでなく、それぞれが背負う想いや背景も注目の的。
母を亡くしたマシュー・シェーファーや、木製ゴーリーと練習を重ねたポーター・マートンら、個性豊かな若者たちの「今」に迫ります😊。
参照記事:NHL公式サイト「Top prospects for 2025 Draft arrive in Buffalo for Scouting Combine」
🌟未来のNHLスター、マシュー・シェーファーの強さと思いやり
2025年のNHLドラフトで全体1位指名が予想されているマシュー・シェーファー。彼は今週行われているスカウティング・コンバイン1で、なんと16ものインタビューが予定されています😊!
でも、オンタリオ・ホッケーリーグ(OHL)のイリー・オッターズ2に所属するこのディフェンスマンにとって、本当に大切なのは、それだけではないんです。6月2日・月曜の午後、コンバインの合間には、同世代や年下の選手たちと一緒に、悲しみと向き合う時間を過ごしていました。
訪れたのは、ウェスタン・ニューヨーク・コンパッション・コネクション・グリーフセンター3。そこでは、母親や家族を失った子どもたちと深く語り合いました。彼は、どこへ行っても悲しみに暮れる子どもやティーンエイジャーの代弁者であることに誇りを持っており、悲劇の中で他人を助けることの価値をよく理解しています。
実はマシュー自身も、2024年2月に実母ジェニファーを乳がんで亡くし、そのわずか3か月前にはホストファミリーの“ビレット・マザー4”、エミリー・マットソンも亡くしているんです。
「ただ、いい人間でいたい。自分が経験したことを通して、他の人の力になりたいんです」とシェーファーは語りました。
「自分は他の人が経験していないようなことをたくさん経験してきたし、ここの子どもたちも似たような経験をしていて、同じ立場にいる。だから彼らと話せるのが本当に楽しみだったし、何かしら心の持ちようが少しでも変わってくれたら嬉しい。メンタル面では、自分の母親や、失った人たちのことをもっと話したいし、そうやって前向きになりたい」。
そんな彼の言葉には、並々ならぬ優しさと覚悟がにじみ出ていました。「母が遺してくれたものと、彼女がどれだけ素晴らしい人だったかを、これからも受け継いでいきたい」。
他者を支援することに加え、この17歳の左利きディフェンスマンは、今週のスカウティング・コンバインで得られる機会にも期待を寄せています。
「コンバインで一番楽しみにしているのは、一緒に戦ってきた友達とまた一週間だけ再会できることかな」とシェーファーは語りました。「一番大事なのは、NHLのチームと話せること。関係性を築いたり、シーズンを通してやりとりしてきた人たちと会えたりするのがポイントだね😊」。
💪氷上での戦いも再スタート
もちろん、リンクの上でもマシューは注目の的です✨6フィート2インチ(約188cm)、183ポンド(約83kg)の恵まれた体格に加え、攻守ともにバランスの取れたプレースタイル。NHLセントラル・スカウティングによる北米スケーター最終ランキング5で第1位に位置しています。
2025年IIHF世界ジュニア選手権6(オタワ開催)でカナダ代表として出場中、12月27日に鎖骨を骨折し、12月30日に手術を受けました。46試合(OHLプレーオフ9試合を含む)を欠場した後、5月1日に医師からコンタクトプレーの許可も出て、今は完全復活に向けて全力トレーニング中です🔥
5番の選手です。ケガがドラフト指名順に影響するかどうか、これはフタを開けてみないと分からない。
今季のOHLでは、たった17試合で22ポイント(7ゴール、15アシスト)、さらにプラス21という驚異的な数字を記録しました!
NHLドラフトの1位指名権は、5月5日のドラフト・ロッタリーで勝利したニューヨーク・アイランダーズが保有しています。彼は火曜日にアイランダーズの幹部たちと面会する予定7。「オフシーズン中も引き続き筋力を強化していくつもり」という彼の言葉からも、プロ入りへの本気度が伝わってきます。
🧊元NHL選手とのトレーニングでレベルアップ!
現在マシューは、トレーナーのブライアン・マーシャル8とともに体作りに励んでいます。さらに注目すべきは、守備の指導をしているのが、元NHLディフェンスマンのマーク・ジョルダーノ9であること!✨
「彼と一緒にたくさんスケートする予定だからすごく楽しみ😊!」と話す彼は、この夏、オンタリオ州ミシサガにあるカナディアン・アイスアカデミー10でトレーニング仲間として、アイランダーズのアダム・ペレッチとも一緒に汗を流す予定。
ペレッチもイリーの出身で(かつてイリーでもプレー)、同じトレーナーと指導を受けているという繋がりがあります。こうした縁も、プロへのステップに欠かせない力になりそうですね。
🏒「ハーゲンス、ホームに帰れ」地元ファンの熱すぎる愛
一方、もう一人の注目選手がジェームズ・ハーゲンス。ハーゲンスは、最近ソーシャルメディア上で増えつつある自分のファン層にはあまり気づいていないようです。
彼はニューヨーク州ホーパグ(ロングアイランド)出身で、生粋のニューヨーク・アイランダーズファン。NHLドラフト・ロッタリーでチームが9つ順位を上げて1位指名権を手にした翌週、ファンたちが作ったバンパーステッカーにはこう書かれていました:「ハーゲンス、ホームに帰ってこいよ(Hagens come home)」
「それ見たことあるよ。ロングアイランドの人たちがそれを車に貼って応援してるのを見るのはカッコいいし、特別な感じがする。自分がアイランダーズファンとして育って、チームが1位指名権を取ったのを見たときは、自然と嬉しくなったし、ワクワクした。誰だって特別な気持ちになるよね✨」と微笑むハーゲンス。
アイランダーズに指名されたら、それは夢のような展開ですが、彼は冷静な気持ちも忘れていません。
「ロングアイランド出身で、ずっとアイランダーズの周りにいたから、友達やファンのみんながどれだけ興奮してるかもよく分かる。もちろん、どのチームに選ばれても感謝しないといけないけど、[アイランダーズがロッタリーに勝ったのは]面白い展開だよね。ただ、ドラフト当日まで何が起こるかは誰にも分からない」。
サンノゼ・シャークスが2位指名権を、シカゴ・ブラックホークスが3位を、そしてユタ・マンモスが4位指名権を保有しています。
ハーゲンスは、NHLセントラル・スカウティングによる北米スケーター最終ランキングで第3位に位置しており、今季はボストンカレッジ(ホッケー・イースト11所属)の1年生として37試合で37ポイント(11ゴール、26アシスト)を記録しました。
アイランダーズは彼を指名するんじゃないかと思います。地元中の地元の選手だし、お客を呼べるプレーができますから。
アイランダーズに指名されなかった場合、失望するのでしょうか?「チームの周りで育ち、試合に通い、昔のアリーナ——ナッソー・コロシアム12での経験もある」と彼は語りました。「だからそこに行けたら本当にクールだと思うけど、NHLでどのチームに選ばれても感謝の気持ちは忘れちゃいけない。素晴らしいチームや素晴らしい街がたくさんあるからね」。
🥅木製ゴーリー“ジェフ”と練習した日々
次に紹介するのは、2025年ドラフトでトップ10入りが期待されているポーター・マートン。OHLのブランプトン13でプレーする18歳の右ウイングの特別な練習パートナーは、なんと木でできたゴールキーパー“ジェフ”くん🤣
「いつのことか正確には覚えてないけど、たぶん5年くらい前だったかな。父が僕と妹のために、バックヤードに木で作ったゴーリーを作ってくれたんだ」とマートンは語りました。
「最初の“ジェフ”はあまり長持ちしなかったけど、その後いろいろ補強してパーツを交換して…今でも庭にあって、今でも相手にしてる。ネットの大部分を占めてるから、その“ジェフ”に向かって何度もパックを打ち込むことで、コーナー狙いの精度を上げる練習になってるよ」。
「(質問:“ジェフ”って名前はどこから来たの?)妹が名付けたんだと思う……そもそもその名前だって知らなかったんだけど、妹に言われて知ったんだ」とマートン。「家の裏窓から見たらすぐ分かる存在で……ずっとそこにいる感じだね」。ちょっと微笑ましいエピソードですよね。
マートン(6フィート3インチ、208ポンド)は、NHLセントラル・スカウティングによる北米スケーター最終ランキングで第6位。今週のコンバインに参加することを非常に楽しみにしています。
「今の時期は本当にワクワクするよ」と彼は言いました。「スカウティング・コンバインは、NHLドラフト直前の最後のイベントみたいなもので、僕らみんなが集まって、チームと面談して、それぞれの組織や運営スタイルを知れる。すごくクールな体験さ」。

公式サイトに“ジェフ”の写真が掲載されているんだけど、うーん、ボロボロになっていて、何が何だか分からなくなってるにゃ^^;。それだけ練習に打ち込んだってことかな。マートンの最終ランキングが6位、順当に行けば、この順位の指名権を持っているフライヤーズが指名するはずだが…。あのGM、また周囲をびっくりさせるかもしれない。
🇺🇸アメリカ代表育成プログラムからも逸材が続々
USAホッケーのNTDP14(ナショナル・チーム・ディベロップメント・プログラム)のU18チームからも、9人の精鋭たち(うち5人がフォワード、4人がディフェンスマン)がこのコンバインに参加しています。
注目選手として、ウィル・ムーア(6フィート2インチ、175ポンド)は、その中で1巡目指名が予想される3選手のうちの1人で、他には左ウイングのジャック・マータフとセンターのコール・マッキニーがいます。
マッキニー(6フィート、200ポンド)はセントラル・スカウティングの最終ランキングで32位に位置し、今季はNTDPで60試合に出場し、チームトップの61ポイント(27ゴール、34アシスト)を記録。パワープレー・ゴールはチーム内で2位の6得点でした。
ムーア(6フィート2インチ、175ポンド)はランキング29位で、64試合で59ポイント(27ゴール、32アシスト)を記録しチーム2位。マータフ(6フィート1インチ、200ポンド)は30位で、パワープレー・ゴールでチーム1位の7得点、56試合で53ポイント(22ゴール、31アシスト)を挙げ、チーム内で3位タイと、それぞれ得点源として大活躍!🔥
最終ランキング32位のマッキニー、11番の選手です。この順位で行けば、もしかしたら、フライヤーズが指名するかも…。
進学先もすでに決まっていて、ムーアは2025–26シーズンからボストンカレッジ、マータフはボストン大学、マッキニーはミシガン大学へ。将来のNHLスター候補が、こうして頭角を現しているのは頼もしい限りです💫
「NTDPでプレーするのは本当に信じられない経験でした……他の選手たちがどれだけ努力しているかがわかるし、同世代の最高レベルの選手たちと一緒にスケートできる。それが毎日自分を刺激してくれるし、短期間での成長につながると思う」と語るマッキニーの言葉から、NTDPでの経験がどれだけ濃密だったかが伝わってきます。
🏁まとめ〜未来を背負う若者たちの姿に胸が熱くなる!
今回紹介した若きホッケー選手たちは、それぞれが困難や葛藤を抱えながらも、目の前の目標にまっすぐ向かっています。
プロになるためのスカウティング・コンバインは、単なるフィジカルチェックではなく、“人間としての中身”も試される場所。氷上の戦いに加えて、人生の苦しみや別れとどう向き合うかという姿勢は、多くの人に勇気を与えてくれます。
これからNHLのリンクで彼らの名前が呼ばれる日を、心から楽しみにしたいですね!🏒✨

ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- NHLドラフト前に行われる選手評価イベントで、身体測定や体力テスト、チームとの面談を通じてドラフト候補の実力や人間性を多角的にチェックする場。今シーズンはニューヨーク州バッファローで開催。
↩︎ - NHLドラフト候補が多く所属するカナダのジュニアリーグ・OHLのチームで、アメリカ・ペンシルベニア州を本拠地とする。コナー・マクデイビッド(エドモントン・オイラーズ)などを輩出した育成力の高いチーム。
↩︎ - ニューヨーク州ランカスターにある、愛する人を失った子どもや家族のための無料グリーフサポートセンターで、ピアグループ(同じような立場・経験・年齢などを持つ人たちの集まり)を通じた心のケアや癒しの場を提供。
↩︎ - ジュニアリーグの選手を家庭で受け入れ、生活面で支えるホストファミリーの母親的存在を指す。選手にとっては第2の家族のような存在。
↩︎ - NHLのスカウト部門で、毎年のドラフトに向けて世界中の若手選手を評価・ランキングしている。特に「North American skaters」は、北米(主にカナダとアメリカ)のスケーター(フォワードやディフェンス)を対象としたランキング。最終ランキングはこちら→☆。
↩︎ - カナダ・オタワで2024年12月末から2025年1月初旬に開催された。未来のNHLスター候補が集う大会で、アメリカが優勝。選手たちの成長や大会の雰囲気を知る上で重要なイベント。
↩︎ - NHLスカウティング・コンバインでチーム関係者と面会する理由は、選手のスキルや身体能力だけでなく、性格やコミュニケーション能力、メンタリティなど人間性を直接評価するためである。ドラフトでの指名は単なる実力だけでなく、チームに合うかどうかも重要。面接を通じて、選手の人柄や将来の成長可能性を見極め、より良い選択をするために行われる。
↩︎ - NHLのバンクーバー・カナックスで長年トレーナーを務め、ロンドン・ナイツやトロント・メープルリーフスなどでも経験豊富なパフォーマンスコーチ。自らのトレーニングプログラムや栄養サポートも提供し、多くの選手から信頼されている。
↩︎ - カナダ出身の元NHLディフェンスマン。2006年にカルガリー・フレームスでNHLデビューし、15シーズン活躍。2019年には最優秀ディフェンスマンに贈られるノリス・トロフィーを受賞。2015年、2016年、2020年にオールスター選出され、2018-19シーズンにはNHLオールスター・ファーストチームにも選ばれた。
2021年にシアトル・クラーケンの初代キャプテンに就任し、後にトロント・メープルリーフスへ移籍。NHL歴代最多のブロックショット数記録保持者でもある。チームや地域社会でのリーダーシップと貢献が評価され、2020年にマーク・メシア・リーダーシップ・アワードを受賞。
↩︎ - オリンピックサイズのリンクやフィットネスセンターなどを備え、スケート、フィギュアスケート、アイスホッケーの各分野で初心者からプロ志望者まで対応。NHL経験者を含む指導陣による本格的なトレーニングが特徴で、NHL選手やオリンピック選手も輩出している。
↩︎ - NCAAディビジョンIに所属するアメリカ北東部の大学アイスホッケーリーグ。1984年設立で、ボストン大学やメイン大学など名門校が加盟。多くのNHL選手を輩出し、カレッジホッケー界で最も注目されるカンファレンスの一つ。
↩︎ - ニューヨーク州ロングアイランドにある1972年開場の多目的アリーナ。NHLニューヨーク・アイランダーズの旧本拠地として知られ、数々の名試合や大物アーティストの公演が行われた。現在は閉鎖され、再開発計画が進行中。
↩︎ - オンタリオ州ブランプトンには、かつてのバタリオン(1998–2013)に続き、2024年に「ミシサガ・スティールヘッズ」が移転し「ブランプトン・スティールヘッズ」として再出発。新本拠地はCAAセンター。地域に根差したホッケー文化が盛んで、再びOHLの舞台となった。
↩︎ - 1996年に設立された、アメリカ代表選手育成のためのエリート育成プログラム。U17・U18の2チーム構成で、ミシガン州プリマスを拠点に活動。多くのNHL選手や五輪代表を輩出している。 ↩︎