2022-23年NHLのトレード期限についてGM達が語る!【後編】

その他のNHLネタ

はじめに 

 NHLのトレード期限をめぐる三部作、いよいよ完結です。前回はNHLだけでなく、北米四大プロスポーツを苦しめる(?)サラリー・キャップ制の「抜け道」について触れました。

 まさか「サードパーティのブローカー(第三者の仲買人)」を間に入れて、三角ベース(懐かしい!)ならぬ三角トレードを画策しているとは驚きました。

 今回もその話の続きから始まるのですが、三角トレードにも制限がかかるようです(当たり前か)。同時に、サラリー・キャップの仕組みの複雑さについても少しく触れておきます。

 そして、ドラフトが近づくにつれて、その存在がますますクローズアップされてきている神童コナー・ベダードを巡るGM達のコメントもお届けします。ベダードの存在もトレードに関わるようですよ。

讃岐猫
讃岐猫

GMの中には、

「この仕事が面白い!」と感じてる人が多いみたいだにゃ。

それについても記事に出てくるよ!

引用元:ESPN.com「What GMs are saying about the 2022-23 NHL trade deadline」。

キャップヒットとは?

 各チームは、最大3つの給与留保取引しかできません。

原文にある「retained-salary transactions(給与留保取引)」のうち、「retained-salary」とは、チームがプレーヤーをトレードする場合、そのプレーヤーのサラリーとキャップヒットの一部を保持することができる。

 そうすることによって、トレード先のチームに、「オタクの財政事情から考えて、これくらいの安いサラリーを出してくれればいいですよ」と話を持ちかけやすくなり、よりトレードする選手を魅力的に見せることができる。

 チームは契約期間中、プレーヤーのキャップヒットとサラリーの両方を維持することが可能。さて、キャップヒットとは、1人の選手の給料中、チームサラリーを食い込んでくる金額のことをいう。サラリーキャップで難しいのは、「1人の選手のキャップヒットの額はいくらか?」にある。

 キャップヒットの計算方法の基本は「ベースとなるサラリー+サインボーナス(契約時に契約金や契約の更新料などとして支払われる報酬やボーナスの総称)を契約年数で等分割した額」であるが、この計算方法がかなり難解であり、契約で揉める元となる。

 サラリーキャップというルールの原則が「契約選手のキャップヒットの総額が、チームサラリーを越えてはならない」であるだけに、かなり重要なのである。

 なお、前回ブログ記事でサラリーとキャップヒットを混同した記事となってしまい、誠に申し訳ない。

 別のGMは「交換できるドラフト指名権は限られており、チームが年俸の一部を受け取ることのできる回数も限られています」と話しました。

 ドラフトといえば…。

「コナー・ベダード」という要因

 たとえば、コナー・ベダードという子をご存知ですか?

 針の穴を通すようなシュートを放つ驚異的なプレーメーカーであり、フランチャイズの未来を形作る世代交代を可能とする才能のことですか?

コナー・ベダード=このブログにも再三出てきている、弱冠17歳の「アイスホッケーの未来」。現在はウエスタン・ホッケー・リーグ(WHL)のレジーナ・パッツに所属。ポジションはセンター。2023年のNHLエントリー・ドラフトの対象選手で、全体1位指名されると予測されている。

 シカゴ・ブラックホークスとアリゾナ・コヨーテズはベダードの指名権を得るため、公然とタンキング(球団が積極的に補強を行わないことなどで戦力を落として勝率を下げ、ドラフトでの上位指名権を狙うこと)を行っていると言われている。

GMたちの反応

 GMたちはベダードのことを聞いたことがあるはずです。チームのオーナーも同様です。そして、そのうちの何人かは、親切なことに、ベダードをドラフト指名するチャンスを最大化できるよう、ロスターを設計している人もいます。

 「それを気にするのは、経営者と所有者達です。コーチも選手もそうではありません。彼らは毎晩勝ちたがっているからね」と、あるGMはくすくす笑いながら言いました。

 「彼らはドラフト指名なんか気にしちゃいないよ、本当にしてないんだ。それくらい、経営者は本当に大変なんだ。でも、僕は大好きだよ、それがこのスポーツの美点なんだ」。

 トレード期限にベダード効果はありますか?率直に言って、既にありました。

トレードに出されるドラフト指名権

 これまでに2023年のドラフト1位指名権をトレードしたのは、昨シーズン、ベン・チアロットディフェンス、31歳現在、デトロイト・レッドウィングス在籍とのトレードで条件付き1位指名権をモントリオール・カナディアンズに送った、フロリダ・パンサーズだけであることを考慮した方がいいでしょう。

 フロリダの2022年の指名権はトップ10外であり、トレードの条件として、モントリオールは代わりにフロリダの2023年の指名権を獲得しました。

フロリダの2022年の指名権はトップ10外=つまり、1位指名で良い選手は取れないと判断し、さっさと1位指名権を手放し、後述するように、トレードで計算できるベテラン選手を獲得したということか。

 それ(フロリダ)以外のチームはすべて、ベダードというパワーボールのジャックポット(カジノのゲーム等における大当たりのこと)を手に入れるためのチケットを握っています。

パワーボール=アメリカ合衆国の45州とアメリカ領ヴァージン諸島、プエルトリコ、コロンビア特別区で発売されている数字選択式宝くじ。全米宝くじ協会が運営。日本国内では購入不可。

 あるゼネラルマネージャーは、ベダードをドラフト指名する可能性は、このトレード・シーズンにも「絶対に」影響を与えるだろうと感じていました。

 「彼は特別な選手になりそうだね」と語りました。「ごくごく少数のチームが彼の指名(抽選)に参加するつもりらしいが、今度のドラフトは非常に強力なものを持っているので、各チームは指名権を手放すのを非常にためらうだろう」。

ベダードを指名できそうなら…

 当時のパンサーズはレギュラーシーズンで圧倒的な強さを誇っていて、スタンレーカップの本選出場に向けて、数人のベテラン選手が必要ということで勝負に出ました。

 同じトレード期限までにチアロットとクロード・ジルー(右ウィング、35歳。現在、オタワ・セネタースに在籍)を獲得したのです。フロリダはなんとかプレーオフに進出しましたが、2回戦で敗退しました。

 しかし、順位表の「泥沼」にあるチーム(真ん中辺り、プレーオフに出場しないチーム)があまりにも多いため、このトレードの期限までに、抽選によって選ばれる可能性があると知りながら、どれだけのチームがシュートを打つ(トレードに踏み切る)のでしょうか?

 あるNHLのGMは、「もし、そのようにチーム間で指名権を回し始めたら、(指名順の早い方に)入らなかった時にどうするのですか」と尋ねてきました。「(抽選のために)順位が上がらなくてもいい、(プレーオフに出場できそうな)12位あたりを選ぶことに変わりはないさ」。

讃岐猫
讃岐猫

一応、プレーオフにも出場できて、ドラフトもまあまあの指名順なら、

収支的にもトントンになるからいいや、

って考え方なんだにゃ。ちょっとつまんないなぁ。

ドラフトはバランスを取る行為

 これはコナー・ベダードのドラフトに関する話ですが、ドラフト指名候補選手の数は上位指名以降も絶対的に多いことを忘れてはいけません。そして、サラリーキャップのあるリーグでは、若い才能を安価な契約で持つことが、持続的な成功の鍵となっています。

 「このドラフトはトレードに影響すると思う。でも、正直に言えば、どのドラフトもそうだ」と、あるゼネラルマネージャーは言いました。

 「我々が置かれている環境を見渡してほしい。若い選手が必要です。指名権を交換すると、それを持っていないために、チームのシステムにダメージを与えます。若い選手を指名することは、本当のチーム・バランスをとる行為なのです」と述べました。

 それがトレードまでに行われる行為、すなわちバランスをとる行為なのです。

 小切手帳とサラリーキャップのバランス、あるいは現在のニーズと将来のニーズのバランスをとる。そして、リーグ幹部連中にとって「今年こそは」という楽観的な見方と、(自チーム以外の)31チームにとってはそうでないという現実とのバランスをとることが重要なのです。

 願わくば、NHLの現在の状況が、そのようなチャンスを得ることを可能にし、退屈な準備期間を経て、活気のあるトレード期限を迎えることを期待します。

まとめ

 トレードで目先の勝利を取りに行き過ぎると、パンサーズのように長続きせず、トレードを敢行した翌シーズン、低迷するという「未来」が待っている場合もあります。とはいえ、若い選手を安価で獲得し、育った頃にバンバン市場に出して、その利益だけでチームを存続させるというのも、何だかつまらない気もします。

 日本のプロ・スポーツと比べ、移籍やトレードがドライに行われる北米四大スポーツにおいて、勝敗よりもチーム財政優先とドライに割り切るチームが出てきてもおかしくはありません。あのイチローや松井ですら「コマ」として扱うくらいですから(MLBの場合、引退後のフォローは手厚いですが)。

 さて、3月までに大型トレードが実現するのでしょうか、それともベダード狙いで波乱なしとなるのか。ドラフト指名順決定の抽選も含め、目が離せません。

讃岐猫
讃岐猫

ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!

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