4年で3度の異常事態!近代ホッケーで急増する「MVP無票王者」の謎🏒
「ハート賞の票を1票も得ずにスタンレーカップを制覇する」という現象は極めて異例でした。サラリーキャップ制が開始された最初の17年間において、優勝チームからは必ず1人以上のハート賞候補が選出されていました。過去の歴史を振り返りながらその希少性を検証していきましょう✨
近代NHLの歴史を見渡しても、MVP無票で頂点に立ったチームはわずか2例しかありません。1例目は1993年のモントリオール・カナディアンズで、延長戦での驚異的な勝負強さが光りました。2例目は1995年のニュージャージー・デビルズで、ロックアウト短縮シーズンという特殊な年でした。
当時の投票者数は1993年が50人、1995年がわずか15人でした。現在のように約200人の投票者が存在し、1,000枠近い投票枠が用意されている環境とは前提が異なります。1枠でも名を連ねることが容易になった現代において、無票での優勝は不可能と思われていたのです。
ところが近年、この常識を根底から覆す事態が続いています。2023年に初優勝を果たしたベガス・ゴールデンナイツを皮切りに歴史的な法則が揺らぎ始めました。ゴールデンナイツは圧倒的な組織力で頂点に立ちながら、ロスターの誰一人としてハート賞の票を獲得することができませんでした。
近年のMVP(ハート賞)無票でありながらスタンレーカップを制覇した、2023年ベガス・ゴールデンナイツの優勝決定戦(第5戦)ハイライトです。圧倒的なチームの層の厚さと組織力でゴールを積み重ね、頂点に!
【讃岐猫😺の深掘りコラム】拡大するメディアの網目:なぜハート賞投票者は「200人の巨大集団」へ変貌したのか
1990年代初頭まで、NHLの最高栄誉であるハート記念賞の選考は、ほんの一握りの限られた番記者たちによって執り行われていた。
1993年に50人、1995年のロックアウト短縮シーズンにはわずか15人にとどまっていた投票者数が、現在では約200人規模まで膨れ上がり、各投票者が上位5名を選出することで約1,000枠もの「得票チャンス」が生み出される時代へと変貌を遂げた。
この劇的な投票者数の増加と選考プロセスの膨張の背景には、北米スポーツメディアの構造的変化とプロホッケー記者協会(PHWA)による積極的な改革の歴史が存在する。
投票者数が急増した最大の理由は、NHLの全米・世界的展開に伴う「メディア環境の多様化と分散」である。1990年代までのホッケー報道は、各本拠地都市の伝統的な大手紙新聞記者を中心とする極めてクローズドなコミュニティに依存していた。
しかし、2000年代以降のウェブメディアの台頭やデジタルジャーナリズムの進化により、The Athleticなどの専門Webメディア、各チームのデジタル特派員、さらには国際放送を担当する海外の専門ジャーナリストたちが主要な報道陣としての地位を確立した。
PHWAはこうした時代の変化に応じる形で組織の門戸を広げ、全32チームの地元市場に所属するジャーナリストや国際放送関係者を網羅的に投票権者として組み込む方針へと転換したのである。
さらに、投票の「透明性と公明正大さ」の追求がこの潮流を後押しした。かつて少数の記者によって行われていた時代は、地域的な偏りや特定の有力ベテラン選手へのバイアスが付きまとっていた。
1人あたり3名選出から5名選出への変更(10-7-5-3-1のポイント制への移行)や、近年推進されている全投票者の個人票の完全公開制度(透明性ディスクロージャー)により、特定の偏向を防ぐために幅広いメディアの意見を集約する必要が生じた。
各都市の代表記者が均等に1票を投じる分散型投票システムが構築されたことで、結果として投票総数は200人規模へと拡大したのである。
しかし、ここに現代ホッケー論における皮肉な逆説が生まれる。理論上は、約1,000枠もの得票枠が存在すれば、優勝を果たすような強豪チームのロスターから最低1名くらいは「リーグで5番目に優れている」と認める記者が現れて然るべきである。
だが、多様化された200人の目が一過性のスーパースターの劇的なスタッツに集中する一方で、完全なチーム力と選手層の厚さでリーグを勝ち抜く王者たち(2023年のゴールデンナイツ、2025年のパンサーズ、そして2026年のハリケーンズ)は、個人の突出度が分散されるがゆえに誰一人として5位票すら得られない現象が常態化している。
メディア網の拡大が生み出した投票枠の膨大化は、皮肉にも「MVP無票のチームが最強である」という現代サラリーキャップ時代の新たな戦術的真理を、鮮明に浮き彫りにしているのである。
出典リスト
PHWA, “PHWA reveals 2025-26 NHL awards ballots“, 2026年6月12日
NHL Records, “Hart Memorial Trophy“
PHWA, “About the PHWA – Professional Hockey Writers Association“
さらに2025年に頂点に立ったフロリダ・パンサーズ、2026年に制覇を果たしたカロライナ・ハリケーンズも全員ハート賞票ゼロのまま頂点に立ちました。過去何十年もの間でわずか2回しか起きなかった現象が、直近のわずか4年間で3回も多発するという異常な事態となっています。
これほどの頻度で発生することは統計上あり得ない事態です。ちなみに直近4年間で唯一ハート賞の票を獲得して優勝したチームが、2024年のパンサーズでした。しかしその内実を細かく紐解いてみると、リスト入りを回避できたのは実に紙一重の差であったことが分かります。
2024年のパンサーズが無票リスト入りを免れた唯一の理由は、サム・ラインハートがわずか1票の5位票を獲得したからに過ぎません。このたった1票があったからこそ、彼はキャピタルズの守護神チャーリー・リンドグレンと並び、かろうじて「全員無票」の事態を回避することができたのです。
もしラインハートが得た「たった1票」の5位票すら存在しなかったとすれば、歴史上誰も目撃したことがない「4年連続でハート賞無票のチームが制覇」という前代未聞の記録が誕生していました。これは単なる偶然と片付けるにはあまりに偏った数値であり、大きな謎を残しています。
この驚くべきデータは単なる確率の悪戯なのか、それともホッケー界で構造的な変化が起きている前兆なのか議論を呼んでいます。個人の圧倒的なスター性以上に、チーム全体の完成度と層の厚さが勝利を決める時代へと本格的に移行した証拠なのかもしれません。

サラリーキャップの弊害としていいのかどうか、それでもセレブリーニのようなスーパースターが生まれてくるわけだから、やっぱり監督の手腕次第じゃないかにゃ。ホッケーIQの高さも云々されるけど、それがあまりにも高いと監督と衝突するだろうし。監督が落とし込もうとする戦術に合った選手を連れて来れるフロントの力も試されていて、要するに、選手だけが高みにいる図じゃなくて、フロント・監督・選手の三位一体の図が綺麗に描けるチームが勝つんだろうな。
MVP賞は不要?バランス型チームが示す現代ホッケーの優勝法則🏒
なぜ現代ホッケーにおいて、これほどまでに「MVP投票で無票のチーム」がスタンレーカップを制覇する現象が相次いでいるのでしょうか。この極めて奇妙な統計データの背景には、単なる確率の偏りだけでは説明しきれない、現代ホッケー界の深い構造変化が隠されている可能性があります✨
もちろん最も単純で合理的な説明は「サンプル数が少ないことによる統計的な偶然」という考え方です。長年の歴史の中で偶発的なデータの偏りが発生したに過ぎず、深い意味を見出す必要はないとする見解も当然存在します。しかし、それ以外の興味深い説についても真剣に検証してみる価値があります。
考えられる一つの要因として、投票者である記者たちの心理的なバイアスが挙げられます。ベガスやフロリダ、カロライナのように毎年安定して強いチームに対しては、その圧倒的な強さや安定感が当たり前の存在として受け止められ、かえって過小評価されやすいという傾向が存在するのかもしれません。
常に勝利を重ねる常勝軍団に所属する名選手たちは、その高いパフォーマンスが日常化してしまうことで、投票者に新鮮な驚きを与えにくくなります。その結果、レギュラーシーズンで目覚ましい個人成績を残していたとしても、ハート賞の投票において上位に選出されにくくなるという盲点が生まれます。
あるいは因果関係が逆であり、戦力均衡(パリティ)の時代が極限まで進化を遂げた現代ホッケーの必然的な結果なのかもしれません。かつてのように1人の超人的なスーパースターに依存する構造よりも、穴のない優秀な選手を数多く揃えたバランス重視のチームの方が優勝しやすい時代に入ったのです。
「セバスチャン・アホがチーム最高の選手で優勝できるのか?」という問いは、ホッケーファンの間で長年語られてきたテーマですが、実はひっかけ問題でした。突出したMVP級の個が存在しなくても、アホのような一流選手を擁する層の厚い組織があれば、十分に世界一の称号を手にすることができるのです。
【讃岐猫😺の深掘りコラム】MVP不在の王者を支える「究極の200フィート・センター」:セバスチャン・アホの本質
北米のホッケーメディアやホッケー評論家の間で、セバスチャン・アホという選手は「リーグで最も信頼性の高い、万能型1番センター(1C)」として定義づけられている。
1シーズンで50ゴールや100ポイントを叩き出し、リーグ最高峰の個として最優秀選手賞(ハート賞)争いを牽引するコナー・マクデイビッドやオーストン・マシューズのような、ド派手な存在ではない。
しかし、北米専門メディアの評価において、アホは、5オン5だけでなくパワープレーやペナルティキル(PK)に至るまで、氷上のあらゆる状況で最高度のプレーを遂行する「200フィート(リンク全域)・プレーヤー」の完成形として絶大な支持を得ているのである。
評論家が分析するアホの最大の強みは、卓越したホッケーIQと戦術的柔軟性にある。
体格的には決してリーグ屈指の巨漢ではないものの、先読みに優れたアイスビジョンと不屈のコンペティティブレベル(闘争心)を備え、相手のブレイクアウトを詰ませる守備意識の高さと、瞬時に得点機を創出するプレーメイク能力を完璧に両立させている。
特にロッド・ブリンダムール監督が植え付けた、厳しいフォアチェックと運動量を重視する戦術システムにおいて、アホはその戦術概念を氷上で体現する絶対的軸として機能してきた。
一枠の個人賞投票者からは派手なスタッツに目が奪われがちで過小評価を受けやすいものの、相手チームの主力ラインを封じ込めつつ毎年安定して1試合あたり1ポイント前後の生産性を叩き出すその存在は、現場の監督やスカウトから「どのチームも喉から手が出るほど欲しい最優先のセンター」と評されている。
「アホがチーム最高の選手で優勝できるのか」という問いに対し、メディアの解説は明確な答えを出している。それは、彼が「個人のスタッツでチームを強引に引き上げるタイプの怪物」ではなく、「チーム全体のレベルを引き上げ、欠点のない圧倒的な層の厚さを成立させる触媒」だからである。
年俸サラリーキャップ下でのチーム構築において、単一のスーパースターに超高額年俸とプレー時間を極度に集中させる構造は、プレーオフの激しい消耗戦において脆さを露呈することが少なくない。
対照的に、アホのように攻守両面で穴がなく、全局面で最高水準のプレーを提供できるトップセンターを軸に据えることで、チームはラインの厚みと高い完成度を維持することが可能となるのである。
個人賞の輝きはなくとも、卓越した組織力と層の厚さで頂点を極める現代ホッケーにおいて、セバスチャン・アホこそが最も理想的な「王者のファーストセンター」であると評価されている。
出典リスト
NHL.com, “Aho’s consistency paying off for Hurricanes ahead of 4 Nations Face-Off“, 2025年2月6日
Carolina Hurricanes (NHL.com), “Sebastian Aho Ranked League’s 13th-Best Center By NHL Network“, 2025年8月21日
The Hockey Writers, “It’s Time to Call Hurricanes’ Sebastian Aho a Superstar“, 2023年12月3日
ここから得られる最大の教訓は、レギュラーシーズン終盤におけるファンの振る舞いです。応援するチームの看板選手に対して、「どうかMVPの投票で彼を選んでほしい」と記者へ熱烈な圧力をかける行為は、チームのジンクスという観点から考えると、むしろ逆効果になってしまうのかもしれません。
ジンクスを気にするのであれば、むしろ記者たちに対して「どうかうちの選手には投票しないでください」とお願いする方が、優勝への縁起としては好ましいと言えるでしょう。
現代のホッケー界においてスタンレーカップを勝ち取るためには、何よりもあきらめない熱い心(Heart)が必要です。
一方で、個人の栄誉であるハート賞(Hart)は勝利のためにまったく必要がない、という皮肉な真実が浮き彫りになりました。
ハート賞・ノリス賞・ヴェジーナ賞の投票で誰1人として票を得ることなく優勝を果たした、史上最高のチームはハリケーンズなのでしょうか。その興味深い検証については、また時間をかけてじっくり調べてみたいところです。現代ホッケーの深い魅力を感じさせる歴史的なデータ分析となりました。
※注 本文における「2025-26シーズンのハリケーンズは、ハート賞・ノリス賞・ヴェジーナ賞の投票で誰1人として票を得ることなく優勝を果たしたのか」という検証について
1. 2025-26シーズンの結果とスタンレーカップ優勝
2025-26シーズンのハリケーンズは、レギュラーシーズンを53勝22敗7敗(勝ち点113)で終え、メトロポリタン・ディビジョンおよびイースタン・カンファレンスで1位を獲得した。
プレーオフではオタワ・セネターズ(4勝0敗)、フィラデルフィア・フライヤーズ(4勝0敗)、モントリオール・カナディアンズ(4勝1敗)を相次いで破り、2026年6月のスタンレーカップ決勝にてベガス・ゴールデンナイツを4勝2敗で退け、フランチャイズ史上2度目となるスタンレーカップ優勝を果たした。
2. ハート賞・ノリス賞・ヴェジーナ賞の投票結果と検証
レギュラーシーズンの活躍を対象とする主要3賞(NHL Awards)の投票結果は以下の通りである。
ハート賞(Hart Memorial Trophy / レギュラーシーズンMVP)
受賞者: ニキタ・クチェロフ(タンパベイ・ライトニング)
ファイナリスト / 上位得票者: コナー・マクデイヴィッド(エドモントン)、ネイサン・マッキノン(コロラド)、マックリン・セレブリーニ(サンノゼ)、ジェイソン・ロバートソン(ダラス)、ディビッド・パストルナック(ボストン)等。
ハリケーンズ選手の状況: チーム内最多得点者のセバスチャン・アホ(80ポイント)を含め、上位得票リストおよび主要な得票圏内にハリケーンズの選手は含まれていない。
ノリス賞(James Norris Memorial Trophy / 最優秀DF)
受賞者: ザック・ウェレンスキ(コロンバス・ブルーブランケッツ)
ファイナリスト / 上位得票者: モリッツ・ザイダー(デトロイト)、ラスムス・ダーリン(バッファロー)、レーン・ハトソン(モントリオール)、ケイル・マカー(コロラド)、クイン・ヒューズ(バンクーバー)等。
ハリケーンズ選手の状況: ディフェンスの要であるジェイコブ・スレイヴィン(Jaccob Slavin)らは守備面で高い評価(※スポーツマンシップ等を評価するレディ・ビング賞等で言及)を受けているものの、攻撃的スタッツが重視されがちなノリス賞の主要投票争いからは外れている。
ヴェジーナ賞(Vezina Trophy / 最優秀GK)
受賞者: アンドレイ・ヴァシレフスキー(タンパベイ・ライトニング)
ファイナリスト / 上位得票者: イリヤ・ソロキン(NYアイランダーズ)、ジェレミー・スウェイマン(ボストン)等。
ハリケーンズ選手の状況: フレデリック・アンダーソン(Frederik Andersen)やピョートル・コチェトコフ(Pyotr Kochetkov)の守護神陣はチームの失点数の少なさ(リーグ5位)を支えたものの、各チームGMによる投票枠(1位~3位票)の上位争いには食い込んでいない。
3. 結論
得票の有無について
2025-26シーズンのハリケーンズは、ハート賞・ノリス賞・ヴェジーナ賞の主要3賞においてトップファイナリスト(得票上位者)に1人も名を連ねることなくスタンレーカップ優勝を果たした。
厳密な全記名投票データ(末尾の記名1票レベルまで含めた集計)において完全に「0票」であったかについては、過去の事例(2005-06シーズンに4~5位票を1票のみ獲得した事例など)と同様に僅小な票が入った可能性を排除しきれないが、実質的に「主要賞レースの得票争いから完全に無縁なまま頂点に立った」という評価は事実である。
ホッケー界における意味合い
2025-26シーズンのハリケーンズの優勝は、特定のMVP級フォワード、得点力の高いスターDF、あるいは賞レースを独占する絶対的守護神に頼らず、ロッド・ブリンダムール監督のもと「全4ラインの層の厚さ」と「徹底された組織的システム」によって頂点に立った現代ホッケーの理想的な集大成として評されている。
まとめ
カロライナ・ハリケーンズのMVP無票での優勝をきっかけに検証した今回のデータ分析はいかがでしたでしょうか?絶対的な超スーパースター不在であっても、選手個々の強みを引き出す圧倒的な組織力と結束力があれば、最高峰の頂点に立てることが証明されました🏆
勝利に必要なのは個人の栄誉(Hart)ではなく熱い心(Heart)です。今後も変化し続ける現代ホッケーの新たな進化と深みにぜひ注目していきましょう✨

ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!

