24-25シーズン、パフォーマンス低下しそうなNHL選手は誰か?

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はじめに

 どんなスポーツでも、あるシーズンに抜群の成績を収めた選手が、いろんな要因のせいで、次のシーズンにガクッと成績を落とすのはよくあることです。今回取り上げた選手達は、2023-24シーズンに当たりに当たりまくった選手ばかりです。

 フロリダ・パンサーズのサム・ラインハートは、昨シーズン57ゴールを記録し、ユタ・ホッケークラブのマイケル・カルコーネやカルガリー・フレームスのマッケンジー・ウィーガーも、チーム内に確固たる地位を築きつつあります。エドモントン・オイラーズのザック・ハイマンとバンクーバー・カナックスのJ.T.ミラーは、昨シーズンに驚くべきパフォーマンスを見せました。

 彼らは昨シーズンに素晴らしい成績を残しましたが、再現するのは容易ではありません。新シーズン、彼らのこれまでの成績をおさらいし、特にゴール数減少のリスクがあるのではないか、について考えていきます。

讃岐猫
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引用元:nytimes.com(The Athletic)「Who are the NHL’s top 10 regression candidates for 2024-25?

パフォーマンスの変動要因〜2024-25シーズンのリスク

 選手の実際の能力は年ごとにあまり変わらないかもしれませんが、彼らの統計やパフォーマンスはシーズンごとに大きく変動することがあります。これは、得点に影響を与える要因が多いことを示しています。

 氷上にいる時間や総合的なチャンス、(パックが来るか来ないかの)運、ラインメイトの質、チームの質、システムなど、さまざまな要素が関わっています。

 これらの文脈上の要因を深く見ていくことで、昨シーズンの高みを再現できない選手について警告を発することができます。今日は、2024-25シーズンに成績を後退させるリスクがある10人の選手を探求していきます。

 これには、キャリア最高のシーズンを繰り返すことが難しいスター選手や、チームでの役割が小さくなり攻撃の機会が減少することで得点が先細りになる選手、またはブレイクアウトした選手が本当の自分のレベルに戻る可能性がある選手が含まれます。

 このリストに名を連ねた選手が「悪くなっている」、または実際の能力が低下しているわけではないと強調することが重要です。このリストに載っている選手のほとんどは本当に優秀ですが、2023-24シーズンに達成したオフェンシブな数字を再現することは難しいでしょう。

 ここでは、昨シーズンよりも得点数が減少するリスクのある10人(このブログでは5人)の選手を紹介します

「黄金時代」は続くのか?

サム・ラインハート(センター、28歳)、フロリダ・パンサーズ

 ラインハートが触れるすべてのものは、過去12ヶ月間で金のように輝きました。

 彼は驚異的な57ゴールを記録し、ゲーム7でスタンレーカップ決勝のゴールを決め、セルケトロフィー(最優秀ディフェンシブ・フォワード賞)の投票で4位に入り、キャリア最高額の契約に署名しました(8年間6900万ドル、約10億3500万円)。

 昨シーズン、ラインハートがアレクサンダー・バルコフ(センター、29歳)とのラインを形成し、フルタイムでプレーした初めてのシーズンであり、エリートセンターと共にプレーすることで、彼の得点が大幅に増加した理由の一部が説明できます。

 ラインハートは注目に値する選手であり、バルコフのウィングで重要なゴールやポイントを積み上げ続けるでしょうが、彼が再び60ゴール近いペースで得点すると期待するのは非現実的です。

 ラインハートは2023-24シーズン、彼のシュートの24.5%を得点に結びつけ、これは50試合以上出場した全NHL選手の中で圧倒的に高いシュート率でした。ほぼ25%のシューティング効率を長期にわたって維持するのは事実上不可能です。

 参考までに、レオン・ドライサイトル(エドモントン・オイラーズ)はNHLで最も効率的なフィニッシャーであり(サンプル内で少なくとも2,500分プレーしたフォワードの中で)、過去3シーズンで19.9%のシュート成功率を維持しています。

 昨シーズンまで、ラインハートのキャリアハイは33ゴールだったため、57ゴールは明らかに大変な異常値です。確かに、ラインハートは昨シーズン、キャリア最高のシュートや得点機会を生み出しました — 彼は本当に人生で最高のホッケーをプレーしていました —

 しかし、運も彼を助けました。例えば、彼が昨シーズンのシュートを15.6%のキャリア平均で決めていた場合、57ゴールではなく36ゴールにとどまっていたでしょう。

 ラインハートは新シーズン、ロケット・リシャール(最多ゴールスコアリング賞)を争うのではなく、40ゴール近くになると予想してください。

負け犬の物語?

マイケル・カルコーネ(左ウィング、28歳)、ユタ・ホッケークラブ

 カルコーネの「負け犬の物語」は称賛に値します。

 彼は身長5フィート9インチ(約175センチ)の左ウィンガーで、ドラフト指名されず、AHLで5シーズン苦労した後(4チームを渡り歩くジャーニーマン!)、2021-22シーズン、25歳の時にアリゾナでNHLデビューを果たしました(21試合、4ゴール・2アシスト)。

 翌シーズンには再びAHL(ツーソン・ロードランナーズ)に戻され、65試合でリーグ最多の85ポイントを記録してチームを沸かせています。

 その圧倒的なパフォーマンスにより、昨オフには人生を変える2年間のワンウェイ契約1延長を勝ち取りました。カルコーネはフルタイムのNHL選手としてだけでなく、重要な得点者としてもブレイクし、昨シーズン、コヨーテズで74試合に出場し21ゴールを挙げています。

 しかし、2024-25シーズン、カルコーネが一歩後退する可能性が高い、主な理由は大きく分けて2つあります。まず第一に、ユタでトップナイン(ファースト〜サード・ライン)の出場時間を得る道のりは険しそうです。

 彼は明らかにアンドレ・トゥーリニ監督の全面的な信頼を得ておらず、昨年の1試合平均出場時間はわずか11分16秒にとどまりました。

 また、ディラン・グエンサー(右ウィング、21歳)が2フルシーズンを過ごすことになった今、そしてジョシュ・ドーン(右ウィング、22歳)の3昨シーズン後半の台頭により、クラブはウィングの選手層が厚くなっています。 次に、カルコーネは昨シーズン18.9パーセントのシュート成功率でした。彼は才能あるスナイパーですが、そのようなフィニッシュ効率を維持できる可能性は低いです。

 (シーズン中)一貫してトップナインの役割を確保するための厳しい戦いと、シュート成功率の低下が見込まれる中、カルコーネが再び20ゴールの大台に乗せるのに苦労するでしょう。

先日のプレ・マッチでオウン・ゴール?監督からの信頼が…

ディフェンスマンが20ゴールするのは辛いのよ

マッケンジー・ウィーガー(ディフェンス、30歳)、カルガリー・フレームス

 ケイル・マカー(コロラド・アバランチ)、ロマン・ヨシ(ナッシュビル・プレデターズ)、エリック・カールソン(ピッツバーグ・ペンギンズ)、そして全盛期のブレント・バーンズ(カロライナ・ハリケーンズ)は、過去10年間で20ゴールのシーズンを複数回記録した4、とても貴重なディフェンスマン達です。

 確かに、20ゴールの大台を一度達成したディフェンダーは他にもいますが、比較的短期間で、それを2回達成するのはどうでしょうか?それを成し遂げられたのは、今の世代の最高の攻撃的スーパースターたちだけです。

 ウィーガーに対して敬意を表しつつ言いますが、彼は優れたオールラウンドのトップフォー(1st&2ndライン)・プレーヤーであるものの、攻撃面でのエリートな貢献者ではありません。2023-24シーズンの20ゴールを再現するのは非常に難しいでしょう。

 ウィーガーはこれまでのキャリアで、1シーズンで2桁のゴールを記録したことはなく、15ゴールや20ゴールに至っては言うまでもありません(最高は21-22の8ゴール)。彼は2023-24シーズン以前の過去3シーズンを合わせると、215試合で18ゴールしか決めていませんでした。

 彼は2022-23シーズンと比べてほぼ2倍のパワープレイ時間を与えられ、今シーズンもその使用率の増加が見込まれていますが、それでも、彼の20ゴールのうち、パワープレイから生まれたゴールはわずか3ゴールでした。

 言い換えれば、パワープレイの時間が増えたからといって、この得点爆発を説明することはできません。

 ウィーガーは昨シーズン、急上昇とも言うべき9.6パーセントのシュート成功率を記録しました。これはほぼ確実に元の水準に戻るでしょう。なぜなら、マカーだけがリーグで(150試合以上出場)過去3年間に9パーセント以上のシュート成功率を維持しているディフェンダーだからです。

 もしウィーガーが昨シーズンのシュートをキャリア平均5.7%で決めていたら、20ゴールではなく11〜12ゴールにとどまっていたでしょう。

 ウィーガーは二刀流のトップペア・ディフェンダーとして非常に魅力的な選手です。40〜50ポイントは楽に達成できるでしょうが、再び20ゴールに近づいたら私は驚くでしょう。

かなりのファイターです。

2年連続50ゴールは超難関

ザック・ハイマン(左ウィング、32歳)、エドモントン・オイラーズ

 昨シーズン、31歳のハイマンが昨シーズン54ゴールを記録すると、誰が思ったでしょうか?オイラーズの気骨あるトップラインのウィンガーは、ほとんどの選手が衰えていく中で、20代後半から30代前半にかけて継続的に成長を遂げ、老化曲線を逆らってきました。

 彼の成長は素晴らしいストーリーですが、今後はおそらく40ゴール台に近づくのがやっとでしょう。

 歴史はハイマンにとって不利に働いています。2002-03シーズンから2022-23シーズンの20年間で、50ゴールを超えたNHL選手は18人います。

 その18人のうち、次のシーズンに再び50ゴールを超えたのはアレックス・オベチキン(ワシントン・キャピタルズ。3シーズン連続を2回達成)、レオン・ドライサイトル(21-22シーズン、22-23シーズン。順に55ゴール、52ゴール)、ダニー・ヒートリー5の3人だけです。

 ハイマンはキャリア最高の確率でシュートと危険なチャンスを生み出していて、これはまぐれな攻撃力の爆発ではありませんでした。しかし、キャリアで最高のホッケーをプレーする一方で、彼は膨れ上がったかのような18.6%のシュート成功率の恩恵も受けました。

 ハイマンがコナー・マクデイビッドと一緒にプレーし、しばしばバックドアでのタップイン6を決めているため、多くの人は、この素晴らしい得点効率を続けていくはずだと主張するでしょう。

 それは確かに妥当な意見ですが、エドモントンでマクデイビッドとプレーしていた最初の2シーズンでは、ハイマンは13%を超えたことがありませんでした。

 ハイマンの54ゴールのシーズンは、2021-22シーズンのクリス・クレイダー7による52ゴール(21-22シーズン)を少し思い出させます。

 両者は優れたネットフロント・フィニッシャー(主にゴール前やネットの近くで得点を狙う選手)であり、スター選手と一緒にプレーし、ファーストユニットのパワープレーで活躍し成功を収めました。

 どちらも以前はエリートなゴールスコアラーとは見なされていませんでした。クレイダーはその後の2シーズンで35〜40ゴール辺りまでしか記録していません(22-23シーズンは36ゴール、23-24シーズンは39ゴール)。

 マクデイビッドの存在のおかげで、ハイマンがクレイダーよりもやや高いレベルの数値を出すと私は思いますが、再びロケット・リシャールレースでトップ3に入るとは思えません。

讃岐猫
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ラインメイトが自分と同じように好調じゃないとね

J.T. ミラー(センター/左ウィング、31歳)、バンクーバー・カナックス

 ミラーは、リック・トチェットがカナックスのコーチに就任してから、エリート選手として復活しました。

 この熱血漢の31歳のフォワードは、ブルース・ブードロー(前監督)時代にはしばしば守備に対する批判を受け、センターとしての能力まで疑問視されていましたが、今では他のスター選手に対してマッチアップで勝利を収めています。

 その上、昨シーズンはキャリアハイの37ゴールと103ポイントを記録しました。

 トチェットの下でのミラーの輝きは本物です — 彼は正真正銘のファーストラインセンターとしてのパフォーマンスを続けるべきですが、彼の攻撃面での数字は下がる可能性があります。

 最初の危険信号は、ミラーの氷上でのシュート成功率8です。氷上のシュート成功率というものは、特定の選手が氷上にいる時、その選手がシュートを打っているかどうかに関係なく、チームがどれだけのシュートをゴールに変えたかを見ます。

 調査によると、NHLにおいて、氷上での高いシュート成功率が翌年に再現されるなんてことは稀です。

 これは重要なことです。なぜなら、ミラーは昨シーズン、5対5で700分以上プレーしたNHL選手の中で2番目に高い氷上シュート成功率を記録したからです。つまり、ミラーは昨年素晴らしいプレーをしましたが、彼のライン全体もいくつかのパックの幸運の恩恵を受けていたのです。

 ミラーの最も一般的なラインメイトであるブロック・ボーザー(右ウィング、27歳)は、2022-23シーズンの18ゴールから昨シーズンにはキャリアハイの40ゴールに達しました。

 ボーザーはこれまで30ゴールを超えたことがなく、シュート成功率も高かったため、新シーズンはゴール数を減らす可能性が高いです。これは、昨シーズン、ボーザーの挙げた40ゴールのうち、ミラーが25回もアシストをしているため、彼のポイント数にも悪影響を及ぼします。

 個別に見ても、19.1%という、とても跳ね上がったシュート成功率で、ミラーはシュートを打ちました。

 ミラーは平均以上のシュート力を持っていますが、バンクーバーにいる間は非常に一貫して14~16%のシュート成功率を記録していたため、彼自身もゴール数を減らしてしまう可能性があります。

 新シーズン、ミラーが80〜90ポイントくらいの結果を出し、100ポイントの大台を超えることはないだろうと私は予想します。

まとめ

 ラインハートは昨シーズンのパフォーマンスが運に恵まれた部分もあり、新シーズン、40ゴールに達するかどうかでしょう。苦労人・カルコーネはフルタイムのNHL選手としての地位を確立しましたが、シュート成功率の低下と出場時間の確保が課題で、再び前途多難かも。

 ウィーガーは過去の実績から、再び20ゴールを達成するのは難しいと見られている一方で、ハイマンは昨シーズン、キャリア最高の54ゴールを記録し、今後もゴール数を伸ばす期待が寄せられていますが、過去の成功を踏まえた慎重な展望が必要です。

 ミラーもキャリアハイの成績を残しましたが、シュート成功率の変動が彼のパフォーマンスに影響を与える可能性があるため、新シーズンの成績には注視が必要です。

 こうしてみると、今回取り上げた選手達の未来は、チーム環境や個々の状況、そして運によって大きく左右されることが分かります。彼らの能力自体が低下しているわけではありませんが、アイスホッケーは状況変化によって結果に影響のかなり出るスポーツと理解しておくべきなのです。

讃岐猫
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【註釈】

  1. One-way contractのこと。この契約をした選手は、NHLチームとの契約期間中、どのような状況でもNHLのチームに所属し続けることが保証される。たとえ選手がパフォーマンス不振で下部リーグに降格される場合でも、NHL契約の金額を受け取る権利がある。

     また、契約期間中は、契約した金額が必ず支払われる。ツーウェイ契約の場合、NHLとAHLで異なる給与が設定されるため、選手が降格した場合は低い給与となる。
    ↩︎
  2. 2024年1月7日、ツーソン・ロードランナーズからリコールされたグエンサーは、2-6で敗れたとはいえ、ジェッツ戦でゴールを挙げてロースターに定着。最終的に45試合出場、18ゴール・17アシストを記録している。
    ↩︎
  3. 2024年3月25日、ロードランナーズからリコールされたドーンは、翌日のコロンバス・ブルージャケッツに6-2で勝利し、フランチャイズ史上初のデビューで複数のゴールを記録した選手となる。最終的に11試合出場、5ゴール・4アシストを記録している。
    ↩︎
  4. マカーは21-22、23-24の2回(順に28、21ゴール)、ヨシは21-22、23-24の2回(どちらも23ゴール)、カールソンは13-14、14-15、22-23の3回(順に20、21、25ゴール)、バーンズは13-14、15-16、16-17の3回(順に22、27、29ゴール)。
    ↩︎
  5. スコアリング能力とパワフルなプレースタイルを持つフォワードとして、名を馳せた。2000年にNHL入り以降、特にオタワ・セネタースでの活躍が目立ち、彼は数回オールスターゲームに選出され、得点王争いにも参加している。

     国際大会でも活躍し、カナダ代表としてIIHF世界選手権やオリンピックに出場。若い頃に自動車事故に巻き込まれ、その後のキャリアに影響を与えたとされている。連続50ゴール以上は、05-06シーズン、06-07シーズンに達成しており、どちらも50ゴールである。
    ↩︎
  6. ゴール前でパスを受けた選手が、ゴールの裏側から出てきた際に素早くショットを決めるプレーのこと。特にパワープレーや速攻時に見られることが多い。
    ↩︎
  7. ニューヨーク・レンジャーズの左ウィングで副キャプテン、33歳。ボストン大学でプレーし、2012年のドラフトでレンジャーズから全体19位指名。速攻やパワープレーでの効果的な得点力が特徴。フィジカルなプレースタイルも持ち味。
    ↩︎
  8. 引用元文中の「オンアイス・シューティング・パーセンテージ(On-ice shooting percentage)」とは、特定の選手が氷上にいるとき、その選手のチームがシュートを放った際の成功率を示す。計算方法は以下の通りである。

     シューティングパーセンテージ = (成功したゴール数) ÷ (放ったシュート数) × 100

     選手が氷上にいるとき、その選手のチームがどれだけ得点しているかを示すため、その選手のプレースタイルやプレーの質を反映するものとなる。

     この数値は、選手だけでなく、チーム全体の攻撃力やシュートの質にも影響を受けるため、個々の選手のパフォーマンスを評価する際には他の数字と併用することが重要となる。

     また、この数値は試合ごとに変動しやすく、選手がどのようなチームメイトと一緒にプレーしているか、相手チームの守備力、ゴールキーパーのパフォーマンスなど、さまざまな要因に影響される。

     よって、オンアイス・シューティング・パーセンテージは、選手の影響を評価する上で有用ではあるが、個々の選手のシュート成功率を示す「個人シューティングパーセンテージ」とは異なるため、相互に理解しながら分析することが重要となる。 ↩︎
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