プレーオフで、もしレンジャーズがレッドウィングスと激突していたら?

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はじめに 

 白熱した戦いの続くNHLプレーオフ、その真剣勝負の場から、早々と去ってしまったのがワシントン・キャピタルズ。まさかの4戦ストレート負けで、ニューヨーク・レンジャーズに全く歯が立ちませんでした。相手は年間最多勝チーム、貫禄の試合運びでした。 

 自慢の攻撃力を有しながらも、2枚目のワイルドカードをワシントンに渡してしまったのが、デトロイト・レッドウィングス。シーズン通して、あまり強さを感じさせなかったワシントンに座を譲ったのは、ちょっと意外な展開だったと思います。 

 今回は、レンジャーズに敗れ去ったワシントンの敗因と、「もし、プレーオフでデトロイトがレンジャーズと対戦していたら…」のシミュレーションが記事の主な内容です。レンジャーズ、決勝まで駆け上がって行きそうだな…。 

讃岐猫
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引用元:The Hockey News.com「Could the Red Wings Have Met a Different Playoff Fate than the Swept Washington Capitals?

キャピタルズとレッドウィングスの微妙な関係

 昨夜、ニューヨーク・レンジャーズが、ワシントン・キャピタルズのシーズンを終了させました。

 プレジデンツ・トロフィーを勝ち取った(シーズン最多勝)チームは、(第1ラウンド)シリーズを通して、どちらが優れたチームであるかについて疑いの余地を残さず、キャピタルズにリードを許した時間は240分中3分21秒、つまり試合時間全体の1.4%に過ぎなかったのです。

 スコアは僅差だったかもしれませんが、このシリーズはレンジャーズの圧勝でした。

 ワシントンはプレーオフに参加する権利を獲得したチームに違いありません。たとえレッドウィングスと同じ勝ち点(91)だったとしても、レギュレーションと延長戦での勝利はワシントンの方が上でした(Regulation plus Overtime Winsはワシントン36、デトロイト38だが、Regulation Winsでは32、27となるため)。

 シーズン最後の数週間で、ワシントンはデトロイトを直接対決で破っています。ワシントンは、レンジャーズに負ける権利を獲得するために必要なことはすべてやりました。

 しかし、議論のために、レッドウィングスが、ニューヨークに対して、ワシントンより良い運命をたどったかどうかを考えてみる価値はあります。

2チームのレギュラー・シーズン記録を比較

 レッドウィングスがキャピタルズに勝って、プレーオフに進出すべきだったと言っているわけではありません。これは、プレーオフのルール変更に関するものでもありません。しかし、少なくとも統計的に見て、デトロイトはワシントンよりもバランスの取れたチームでした。

 レッドウィングスはオフェンスの厚みを増していて、キャピタルズの6人に対し、30ゴール以上のスコアラーは12人でした。

 デトロイトのチーム得点数はNHLで9位にランクされましたが、攻撃部門でトップ10入りしたチームの中で、プレーオフを逃した唯一のチームとなっています。

 しかし、ワシントンは守備を上手くこなし、少なくともゴールテンダーのチャーリー・リンドグレンの英雄的な活躍によってパックを止めました。

 コルシ率146.67(Moneypuck2によるとリーグで7番目に悪い)を記録したチームで、彼は平均2.67ゴール、セーブ率.911という成績を残しています。レッドウィングスは守備の問題を克服しようとし、ワシントンは得点の問題を克服しようとしました。

 どちらのチームも、特にリーグ首位のニューヨークと直接比較すると、それほど良いチームではありません。

讃岐猫
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キャピタルズ苦戦の要因を考える

 それでは、これらすべての比較は、レンジャーズとのシリーズにどのように反映されるのでしょうか?シリーズにおけるキャピタルズの最大の苦戦は、ニューヨーク戦で挙げた得点に見られます。

 彼らはプレーオフで最悪の1試合あたり1.75ゴール(4試合を通しての数字。トロント・メープルリーフスと同じ、と付け加えておきます)に終わり、1試合での最多得点は3ゴールでした。

 ゴールキーパーのイゴール・シェスターキンはあまり試練に立たされることなく、プレーオフで2番目に良い失点率(1.75)と3番目に高いセーブ率(.930)で、ワシントン戦をスイープで終えています。

 言い換えれば、レンジャーズは相手をスイープするために派手なゴール数を挙げる必要はなく、キャピタルズはチャンスを得ても、十分な得点を奪えなかったのです。

 分析的に言えば、おそらくワシントンはもう少し攻撃的になるべきだったのかもしれません。Moneypuckの記録によると、氷上で5対5の場合、予想ゴール率は54.79%(それだけゴールの可能性が高かった)で、プレーオフ全チーム中4位でした。

 キャピタルズはまた、シリーズでのコルシ率52.03%となっています(それだけ相手ゴール前でシュートを試みてはいた)。つまり、ワシントンはチャンスで得点した以上に、より多くのチャンスを掴んでいたのです。

結局、チャンスをモノにできるかどうかが鍵

 しかし、レンジャーズが非常にうまくやったのは、確実にチャンスをものにすることでした。

 この大文字を使用3(冗談ではありません)した一文は、スペシャル・チームで特に顕著でした。2つのショートハンド・ゴールと6つのパワープレー・ゴールを記録し、プレーオフ中、ニューヨークはスペシャル・チームのゴール数で8-2とリードしているのです。

 このシリーズの51分間が5人対4人でプレーされたことを考えると(全シリーズの中で最多)、スペシャル・チームのプレーは、プレーオフではあまり見られない形で、このシリーズの結果に大きく影響しました。

讃岐猫
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レッドウィングスがレンジャーズと対戦していたら…

 デトロイトはここで違いを生むことができたでしょうか?レッドウィングスのパワープレー(23.1%、9位)とペナルティキル(79.6%、14位)はどちらもキャピタルズのユニット(パワープレー20.6%、18位、ペナルティキル79.0%、19位)を上回っています。

 もしデトロイトとニューヨークが、レンジャーズvs.ワシントン戦と同じくらいペナルティ・エリアにいた場合、レッドウィングスのユニットがレギュラーシーズンの成績を維持していれば、この違いはいくつかの異なる結果を出すことに貢献していたかもしれません。

 レギュラーシーズン中のレッドウィングスとキャピタルズのオフェンスの成績とスペシャル・チームの違いを考えると、デトロイトがプレーオフに進出していたら、ワシントンよりも多くの得点を挙げていただろうと考えるのは不当な仮説ではないと思います。

 プレーオフでの成功を予感させる攻撃陣の厚みを考えると、その層の厚さがレッドウィングスの得点につながるだろうと容易に推測できます。キャピタルズの得点力がマイナスだったとしても、デトロイトにとってのそれが同程度でなかったと思います。

プレーオフで実力を発揮できたかどうか

 しかし、デトロイトの得点力が、シリーズにどれだけの違いをもたらしたのかは未知数です。レッドウィングスは、レンジャーズとのレギュラーシーズン3試合で、12-8の得失点差で全敗しましたが、キャピタルズは9-9の同点でレンジャーズと4試合をタイに持ち込みました。

 これは、イーブン・ストレングス、パワープレー、ペナルティキルなどにより、より多く点を取ることがニューヨークに勝つ方法でないことを示しているのかもしれませんが、ワシントンのプレーオフ4試合敗退は、そのディフェンスも標準に達していないことを示しました。

 レンジャーズのオフェンスは、創造的で臨機応変なトップ6(第1・第2ライン)とローテーションを遵守し研ぎ澄まされたボトム6(第3・第4ライン)とが相まって、さまざまな方法で得点することができます。

 どんなゴールテンダーでも、たとえ熱血漢のリンドグレンであっても、ニューヨークとの対戦は難しいでしょう。

 もし、プレーオフの失点数とセーブ率において、レンジャーズがリンドグレンをワースト4位のゴールテンダーに変えることができたとしたら、レッドウィングスのゴーリーたちも同じような状況に陥っていたでしょう。

 キャピタルズvs.レンジャーズのシリーズ展開を踏まえると、レッドウィングスがニューヨーク戦で得点を決めて、勝利を収めることができたかもしれないと思います。

 プレーオフ出場権争いの重要な局面で見せたように、アレックス・リオンとジェームス・ライマーがより多くのゴール・サポートを演じれば、デトロイトもどこかで勝利をつかめたかもしれません。しかし、デトロイトがシリーズをひっくり返すことはないと思います。

讃岐猫
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完敗でも、プレーオフに出ること自体にメリットあり!

 今シーズン、2枚目のワイルドカードは、レンジャーズに第1ラウンド敗退の権利を入手する可能性が高かったのですが、レッドウィングスが何らかの魔法を使い、ニューヨークで番狂わせを起こすのにふさわしいプレーをすることができたか、という仮説は常に存在します。

 誰もがわかるように、その可能性はありえないし、わずかなものでしたが、それでもチャンスはあるわけで、それこそがポストシーズン進出のためにチームが戦うことなのです。

 デトロイトもまた、レンジャーズを相手に一矢報いるには、どのようなレベルのプレーが必要かを知ることができました。来シーズン、レッドウィングスが優勝候補となるチームを作る際、このレベルを真似する可能性があります。

 レンジャーズに撃破された時、無駄をしたと感じるかもしれませんが、この場合、スイープでさえ、まったく無益というわけではありません。

 しかし、デトロイトはニューヨークとのプレーオフ・シリーズをプレーする権利を獲得できず、対戦した際に出てきた微妙な差に関係なく、レンジャーズは「プレーオフを勝ち取った」ワシントンに勝ちました。

 仮説が何であれ、それらの事象は、どうあるべきかでなく、(プレーオフで)どんなことが起きるのかを考えるための材料になります。

 たとえキャピタルズがスウィープされたとしても、彼らはレギュラーシーズンのプレーを通して、(プレーオフで)スウィープされる権利を獲得したことに変わりありません。

 (プレーオフの)どこかで勝利を収めたかもしれませんが、結局、デトロイトはそのような(プレーオフ進出の)名誉を獲得できなかったのです。

まとめ

 この記事が言いたいのは、「プレーオフで敗れ去っても、そこで何らかの学びはある。とにかくガムシャラにでも良いから、出場権を取りに行くべし!」だと思います。ギリギリで逃そうが、ダントツの最下位であろうが、出なければ皆同じ…という考え方なのです。

 ワシントンやナッシュビル・プレデターズ、ニューヨーク・アイランダーズに顕著だったように、最終盤に連勝して滑り込みで出場権獲得チームが多かった今シーズン。前半戦、これらのチームはほとんど存在を消してました。チーム体力的に1シーズンを戦えていない。

 それには色んな要素が考えられるものの、チーム・ビジョンが一定していないから、勝ちを拾えなかったんだと思います。チームの色が決まったら、それを押し通すくらいの強引なコーチング、これが一番必要なんじゃないですかね。

讃岐猫
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【註釈】

  1. 氷上の両チームが同じ人数でプレーしている場合、両チームのシュート・アテンプトの差を測定したもの。つまり、7番目に悪いパーセンテージを持つワシントンは、対戦チームからシュートを打たれやすいチームということになる。
    ↩︎
  2. NHLの試合をライブでフォローし、リアルタイムでオッズの変化を見るサイト。プレーオフのオッズや、選手とチームのスタッツも分かる。
    ↩︎
  3. 原文の〈But〉の部分。「But what the Rangers did very well was make their chances count.
    This capitalization (no pun intended) was especially prominent on special teams.」となっている。 ↩︎
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