フリーエージェントの夏は続く、動きそうなチームは?【その2】

NHLチーム紹介

はじめに 

 7月初旬から各チーム内で行われているFA選手との契約・移籍交渉、8月になってもまだ続いています。自らのサラリーや評価が正当であるかどうか審議する聴聞会も、そろそろ開かれる頃です。 

 そこまで行くと、後々交渉が進んで、何とか契約にこぎつけても、チームと選手の間にしこりの残るような気もするのですが。 

 そんな中でも、お金とにらめっこしすぎて眠ってしまったのか、じっと動かないチーム(GMをはじめとするスタッフ達)がいくつかあります。ベテランの処遇に悩む2チーム、好成績を収めたメンバーをいじった方がいいのか、悩んでいる1チームの実情をお届けしましょう。 

前回の記事はこちら→

讃岐猫
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引用元:ESPN.com「NHL free agency 2023: Five teams that still need to make a move 」。

外堀ばかり埋めて、中心へ行かない?

ミネソタ・ワイルド

 前回と同じように、ミネソタは今シーズンのスタートに向けて順調に進んでいます。

 (チームは)プレイヤーのコアを同じに保っています。春に別の結果があることを願っています。

 2022-23シーズンのワイルドはプレーオフ1回戦で敗退したため、この戦略はうまくいきませんでした。しかし、これまでのところ、オフシーズンのトレードとフリーエージェント(FA)の面で、ミネソタは活動していません。

 加えて、社内に解決すべき疑問符があります。GMのビル・ゲリンは忙しくなるに違いありませんよね?

ビル・ゲリン=詳細については、こちらの記事を参照のこと↓。

 ここまで、ミネソタは外堀ばかりを埋めてきました。マーカス・ヨハンソン(左ウィング、32歳。ワシントン・キャピタルズから)が400万ドル(日本円で約5億7千万円)の2年契約でチームに復帰しています。 

 ミネソタによる本当の取引と唯一言えるものは、7巡目の指名権をパット・マルーン(左ウィング、35歳。タンパベイ・ライトニングから移籍)と交換したことでした。 

 双方が仲裁を回避した後、ゲリンはRFA(制限付きFA)選手であるブランドン・デュハイム(右ウィング、26歳)を1年間110万ドル(約1億6千万円)でチームに固定しました。 

 しかし、RFAのフィリップ・グスタフソン(ゴールテンダー、25歳)は、8月4日に予定されている仲裁審問に署名していません。RFAのカレン・アディソン(ディフェンス、23歳)は仲裁権も新たな契約も持っていません。 

デッドキャップ問題 

 ゲリンが完全に手錠をかけられているわけではありませんし、現金の問題でもないのです。ミネソタには約600万ドル(約8億5千万円)のキャップスペースがあります。 

 グスタブソンとアディソン(マット・ダンバ〈ディフェンス、29歳〉がフリーエージェントとなり、この2人がワイルドのブルーラインの要となる)が優先されるでしょう。ミネソタは、そこから改善を続けるチャンスを逃すべきではありません。 

 2014-15シーズン以来、ワイルドはポストシーズンシリーズで勝利していません。 

 ライアン・スーター(ディフェンス、38歳。2021-22シーズン、ダラス・スターズへ移籍)とザック・パリス(左ウィング、39歳。2021-22シーズン、ニューヨーク・アイランダーズへ移籍)に与えられた過去の巨大な契約を解消するため、ゲリンはしなければならなかったことを実行しました(デッドキャップがミネソタの資金難の要因であるとしても)。 

デッドキャップ=過去に解雇した選手が残したサラリーのこと。この場合、前後の文脈から、分割支払をしているものと思われる。 

 彼は明らかにワイルドのコア・メンバーを信じています。 

 ミネソタにはもっと何かが必要です。それは大きな水しぶきでないかもしれませんが、多少の波紋で実害はありません。例えば、マッツ・ズッカレロ(右ウィング、35歳)やキリル・カプリゾフ(左ウィング、26歳)を補完する二次的得点源とか? 

 結論:ワイルドに完成は感じられません。彼らにはもっと多くのやるべきことがあります。 

讃岐猫
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新人監督を迎えたが…

ワシントン・キャピタルズ

 ワシントンは岐路に立たされています。

 GMのブライアン・マクレランと同社は、トレード期限になってベテラン契約や期限切れの契約を破棄し、キャップスペースに関しては現在赤字です。

ブライアン・マクレラン=カナダ、オンタリオ州グエルフ出身、64歳。現役時代のポジションは左ウィング。現役時代は5チームを渡り歩き、3チームでプレーオフに進出。2000年にキャピタルズのフロント入り、14年にGM就任から4年後、スタンレー・カップをもたらす。

 しかし、ワシントンはいくつかの動きを見せ、マックス・パチョレッティ(左ウィング、34歳。カロライナ・ハリケーンズから移籍)に2年契約を結ばせ、モントリオールとの間で、ディフェンスのジョエル・エドマンドソン(30歳)を獲得しました(エドマンドソンとの契約の50%をカナディアンズに保持させたことは、マクレランによるきちんとしたビジネスでした)。

 しかし、キャピタルズにはもっとやるべきことがあるようです。

 ワシントンはNHLに新たな息吹を吹き込むため、新人ヘッドコーチのスペンサー・カーベリーを招聘しました。彼らのロースター構成は、今後もそれに倣うべきではないだろうか?

スペンサー・カーベリー=カナダ、ブリティッシュコロンビア州ビクトリア出身、41歳。現役時のポジションは左ウィング。NHLでの選手歴はなく、下部リーグでプレー。NHLでのコーチ歴も、2シーズン(2021-22、22‐23)、トロントでアシスタントを務めたのみである。

ベテラン、危機一髪!

 キャピタルズは、エフゲニー・クズネツォフ(センター、31歳)を手始めとして、もう1人か2人のベテランを処分するため、トレード市場を探っているに違いありません。

 31歳のクズネツォフは移籍を希望し、近年、クズネツォフのプレーは衰えていますが、それでもリーグのどこかでトップナインのポジションに滑り込む可能性があります。

 マクレランはクズネツォフを「積極的に」移籍させようとしていると伝えられていて、キャンプへ入るまでに、それを可能とする滑走路が準備されているらしいです。その過程でワシントンが若返られれば、彼らにとって良いことです。

 これは、クズネツォフ以外の取引にも当てはまります。キャピタルズはある段階から別の段階へと移行していますが、それは昨年の冬のマクレランの決定によって明確に示されました。

昨年の冬のマクレランの決定=2022年末から23年1月にかけて、クズネツォフをトップ9(第3ライン)より下に落とすなど、ベテランと若手のポジション・チェンジが多く見られた。それに伴い、フロントはチームから整理する選手のピックアップに入ったとされている。

 もしワシントンが来シーズンのプレーオフ候補になることを望むなら、信頼できるフォワードの選手層が必要です。

 キャピタルズの前線を改善するために、マクレランがどのような取引を完了させるにしても、少なくともイースタン・カンファレンスの混戦の中、ワイルドカードの可能性を秘めたチームとしての地位を確保するために大いに役立つでしょう。

 マクレランは以前に私たちを驚かせました。彼は間違いなく、また何かをやり遂げる力があります。

讃岐猫
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楽しみな選手が新加入してきているが…

シアトル・クラーケン

 シアトルは昨シーズン、プレーオフ進出が終わったとき、何かの瀬戸際にあると感じていました。

 GMのロン・フランシスには、彼らを正しい方向にさらに動かす時間がまだあります。

ロン・フランシス=詳細については、こちらの記事を参照のこと↓。

 不安定な1年目に続き、シアトルの2年目は見ごたえのあるものとなりました。スター選手はいなくとも、集団としての力を発揮したクラーケンに、諦める時などなかったのです。最近のNHLでは珍しいことです。それがシアトルを特別なものにした理由です。 

 にもかかわらず、フランシスはこの集団を維持しませんでした。シアトルはRFAモーガン・ギーキー(センター、25歳。ボストン・ブルーインズへ移籍)とダニエル・スプロング(右ウィング、26歳。デトロイト・レッドウィングスへ移籍)を引き止められなかったのです。 

 UFAカーソン・スーシー(ディフェンス、29歳。バンクーバー・カナックスへ移籍)はただで歩いて出ていきました。 

 フランシスはRFAのヴィンス・ダン(ディフェンス、26歳)と4年・2940万ドルの契約を結び、またRFAのウィル・ボーゲン(ディフェンス、26歳)とケール・フルーリー(ディフェンス、24歳)とも2年間の契約を結んでいます。 

 それ以外のフランシスへの(中程度の)ダメージは、ベテラン・ディフェンスマンのブライアン・デュムラン(31歳。ピッツバーグ・ペンギンズから移籍)を2年契約で、フォワードのカイラー・ヤマモト(右ウィング、24歳。エドモントン・オイラーズから移籍)を1年契約で獲得するという、公開移籍市場のおかげでもたらされました。 

カイラー・ヤマモトの移籍=ESPN.comは、未だに「デトロイト・レッドウィングス移籍選手」として選手履歴を掲載しているが、NHL公式はシアトル・クラーケン移籍選手となっている。 

讃岐猫
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いまだに解決しないゴールテンダー難 

 これらの細かな追加要素はいずれも、議論の余地のないほどトップクラスの、ポストシーズン挑戦者にシアトルを押し上げるものではありません。しかし、そうなる可能性もあります。彼らの取り組める分野の一つはゴールテンディングです。 

 フィリップ・グルバウアー(31歳)は、主要なNo.1ネットマインダーとしてよりも、他の選手と連携してうまく機能するタイプです。 

 そして、グルバウアーとUFAマーティン・ジョーンズ(33歳)の間の不安定なゴールキーピングが、昨シーズンのクラーケンの大きな障害となりました。 

 7月中旬までに、クラーケンはグルバウアー、クリス・ドライジャー(29歳)、ジョーイ・ダコード(26歳)の3人で連携パイプの間を埋めてはいたのです。 

 フランシスは、少なくとも9月までに別の選択肢を探ったほうがいいでしょう。 

 シアトルには、マッティ・ベニアーズ(センター、20歳)、ジョーダン・エベール(右ウィング、33歳)、ジャレッド・マッキャン(左ウィング、27歳)などのスケーターがいて、フランチャイズにとって非常に強力な基盤があります。 

 今、クラブの栄光や過去の成功に安住している場合ではありません。 

 フィリップ・グラバウアーを支える真のNo.2がシアトルにいると、あまりにも楽観視していると、この先のシーズン中、彼らがウェスタン・カンファレンスを揺り動かし続けた張本人として、誰かに衝撃を与える可能性はほとんどなくなるでしょう。 

まとめ 

 シーズン中からずっと言われていたクラーケンのゴールテンダー問題は、まだ続きそうな予感をさせています。 

 攻撃陣は活きのいい若手を揃えている反面、ややディフェンス面に不安を残すチーム。ここを強化しないと、昨シーズンのような快進撃どころか、また下位に低迷するかもしれません。 

 サラリーキャップから派生してくる問題=デッドキャップは、契約交渉の際、相当な足枷になりますし、それを残してでも、期限切れ間近のベテラン選手を切って、若手を入れようとするチームは多いです。 

 サラリーキャップはリーグ全体で見直される方向のようですが、ただ上限額をアップさせるだけでなく、細かい契約条項への言及も同時にしないと意味ないような気もするのですが。 

讃岐猫
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