レンジャーズ対デビルズ戦は大混乱!開始早々乱闘で8選手が退場!

アイスホッケー名勝負

はじめに

 珍しく日本の一般的なニュースサイトでNHLのことを取り上げているな、と思ったら、「大乱闘」に関するニュースでした→「試合開始わずか2秒で選手8人が退場選手らの大乱闘に審判もぼう然」。もっと違う話題で取り上げてほしかったな、というのが正直なところ。

 普段、試合を見慣れている者からすると、「まあ、いつもの事ですが…」で世間の反応を冷静に見てしまいます。ニューヨーク・レンジャーズとニュージャージー・デビルズは、欧州サッカーにあるような「因縁のライバル・チーム」。これまでもバトルはありました。

 現地では「12年ぶりの大立ち回り」ということで、いろんな角度から、この乱闘劇を伝えているようです。今回はその中から3つの記事をピックアップし、どんな経緯で起きたのかを探ってみたいと思います。

讃岐猫
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引用元:The Athletic.com「Rangers-Devils game erupts into 10-player brawl 2 seconds after opening faceoff; 8 ejected

起こるべくして起こった乱闘

 水曜(4月3日)夜、ニューヨーク・レンジャーズとニュージャージー・デビルズは試合開始2秒で5対5の全面乱闘となり、ほとんどのファンが席に着く前に、両チームから4人ずつ、計8人の選手が退場させられるという荒々しい光景が始まったのです。

 一夜でセンセーションを巻き起こしたレンジャーズのマット・レンペは、おそらく今夜戦うつもりだったのでしょう。

 3月11日、両チームが前回対戦した際、彼はデビルズのディフェンスマン、ヨナス・ジーゲンターラーの顎に肘打ちを食らわせ、退場処分と4試合の出場停止処分を受けました。

 2月22日、(ニュージャージー州)ニューアークで(デビルズの)ネイサン・バスティアンに放ったボーダーライン上での(レンペによる)ヒットの件も加え、デビルズ、特にフォワードのカーティス・マクダーミドは、処分に対するレンペの報復があると思っていました。

 そのためか、今夜のラインナップにレンペとマクダーミドが名を連ねており、デビルズのトラビス・グリーン監督とレンジャーズのピーター・ラヴィオレット監督は、両選手を先発起用しました。第1ピリオド・オープニングのフェイスオフから花火が上がる予定だったのです。

全員がリンク上で大乱闘…

 予想外だったのは、氷上の他の8人のデビルとレンジャーも手袋を外して戦ったことでした。レンジャーズのフォワード、ジミー・ベイジーがデビルズのフォワード、カーティス・ラザールと対峙したのです。

 レンジャーズのセンター、バークレー・グッドロウがデビルズのディフェンスマン、ケビン・バールと取っ組み合いを始めました。

 レンジャーズのキャプテン、ジェイコブ・トルバとデビルズのセンター、クリス・ティアニーはしばらく格闘し、レンジャーズのディフェンスマン、カンドレ・ミラーとデビルズのディフェンスマン、ジョン・マリノも闘いを繰り広げていたのです。

 ファンはどこを見ればいいのか分かりませんでした。

乱闘のみの映像です。
讃岐猫
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全員退場、レンペに反省の色無し

 NHL規則46.7には、「最初の口論が始まった後に喧嘩をしたことで、重大なペナルティが課せられたプレーヤーには、試合上の不正行為ペナルティ(退場)が課されるものとする」と記載されています。

 当局は最初に始まったのはベイジー対ラザールの戦いであると判断し、その後に戦いに関与した者は退場させられました。

 つまり、両チームから4人の選手が試合開始2秒でリンクから放り出され(退場)、その中にはマディソン・スクエア・ガーデンの観衆に「レッツ・ゴー」(やってやったぜ!位の意味)のジェスチャーをして、口から血を流しながらアイスリンクを去ったレンペも含まれています。

 グリーンは明らかにレンペ以外のレンジャーズ選手の戦いに批判的でしたし、ラヴィオレットはそのコメントを高く評価していません。

 乱闘とその後の退場により、両チームにとってベンチは広々としていました。

 デビルズはプレーオフ出場権争いからの敗退が目前に迫っており、レンジャーズはリーグのレギュラーシーズンのトップチームに贈られるプレジデンツ・トロフィーを争っているのですが、以上のようなわけで、今夜はこれらの闘いが最大の見どころとなってしまったのです。

引用元:Sportsnet.ca「All 10 skaters brawl off opening faceoff at start of Devils-Rangers game

この乱闘の伏線

 水曜日の夜に行われたニューヨーク・レンジャーズ対ニュージャージー・デビルズの試合は、いつもよりも劣ったスタートとなったと言っても過言ではありません。

 両ライバル・チームの間にはすでに多くの険悪な関係が存在しているため、レンジャーズの監督であるピーター・ラヴィオレットとデビルズの暫定監督であるトラビス・グリーンは、それぞれのエンフォーサー(アイスホッケーの試合でファイティングを担う選手)を先発メンバーに入れることで火遊びをすることにしました。

 そして、爆発はまさに彼らによってもたらされたものです。

 試合序盤から、両チームの間で本格的な5対5のラインによる乱闘が勃発し、その中にはレンジャーズフォワードのマット・レンペとデビルズのディフェンスマン、カーティス・マクダーミドの予想された闘いも含まれていました。

 この2つのライバルチームが最近対戦したのは3月11日で、その時はレンペがデビルズのディフェンスマン、ヨナス・ジーゲンターラーに肘打ちをしたために退場処分を受けています。

 マクダーミドはプレー後にレンペと戦おうとしましたが、関係者によって制止されています。レンペはアイスリンクから離れるとき、マクダーミドに手を振って嘲笑しました(この仕草をすると「臭い」という意味となり、相手に対してとても失礼)。

 「物事には正しいやり方と間違ったやり方があるんだ」とマクダーミドはレンジャーズが3-1で勝利した後、記者団に語っています。

 「今夜は彼に対する尊敬の念をかなり失ってしまったね。このリーグの中で彼は若い方の選手で、まだ学ぶべきことがたくさんあるはずだ。特にリーグに入って1年目で、あのようなことはしない。

 さっきも僕が言ったように、今夜は彼に対する尊敬の念をかなり失ってしまったよ」。

 ヨナス・ジーゲンターラーは最終的に脳震盪を起こし、レンペはリーグから4試合の出場停止処分を受けました。

 両チームの別の対戦時、2月22日、レンペは、デビルズのフォワード、ネイサン・バスティアンの頭部を殴打したとして退場処分を受けています。21歳のルーキーは試合でペナルティを受けましたが、このヒットで出場停止処分は受けませんでした。

 ですから、このような経緯を考えると、最終的には水曜日に何かが起こるのは必然です。

讃岐猫
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第1ピリオド最初だけじゃなく、後半にも…

 最初の闘いは、厳密に言えば、レンジャーズのフォワード、ジミー・ベイジーとデビルズのフォワード、カーティス・ラザールの間で行われました。

 レンジャーズのレンペ、バークレー・グッドロウ、カンドレ・ミラー、ジェイコブ・トルバ、そしてレンジャーズのマクダーミド、クリス・ティアニー、ケビン・バール、そしてジョン・マリノの8人が退場となっています。

 その結果、合計18のペナルティが科され、両チームは試合の残り時間でディフェンスマン2名とフォワード2名を失うことになりました。

 しかし、戦闘はそこで終わらず、第1ピリオド後半にはドーソン・マーサーとウィル・クイルも殴り合いを交わしています。

引用元:theScore.com「8 ejected after Devils-Rangers opens with line brawl

不思議なルール

 おっと、ニューヨーク・レンジャーズとニュージャージー・デビルズの間には、多くの険悪な関係が存在しています。

 水曜日の試合開始後、本格的なライン同士の乱闘によって中断されました。

 レンジャーズのマット・レンペ、バークレー・グッドロウ、カンドレ・ミラー、ジェイコブ・トルバに加え、デビルズのカーティス・マクダーミド、クリス・ティアニー、ケビン・バール、ジョン・マリノの8人の選手がゲームから退場しています。

 ジミー・ベイジーとカーティス・ラザールもこの騒動に巻き込まれ、このプレーで重大なペナルティを課せられましたが(5分間のペナルティボックス行き)、しかし、この2人の一戦が1大混戦の最初のものと見なされたため、2人はアイスリンクからの門前払い(=試合から完全に退場)を免れています。

 両チームとも何らかのドラマを予想していたようで、マクダーミドとレンペを中心とした第4ラインを先発させました。

 3月中旬、デビルズの後衛(ディフェンス)ヨナス・ジーゲンターラーの頭を、レンペが肘打ちしたとして退場処分を受けて以来、2人の選手の間には敵意が芽生えていたようです。マクダーミドは襲撃の報復としてレンペを追いかけようとしましたが、当局が介入しました。

 試合後、マクダーミドは、レンペの行動のせいで「彼に対する敬意をかなり失った」と語っています。

 水曜日の試合で序盤から気合を入れていたのは、選手たちだけではありませんでした。監督のピーター・ラヴィオレットとトラビス・グリーンは、それぞれのベンチから口論していたのです。

 しかし、楽しみはそれだけにとどまりませんでした。試合開始時の乱闘からわずか数分後、レンジャーズの新人ウィル・クイルとデビルズのフォワード、ドーソン・マーサーもグローブをアイスリンク上に投げつけています。

讃岐猫
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不名誉な記録あれこれ 

 両チームは第1ピリオドだけで合計162分間のペナルティタイムを記録しました。 

 ちょうど12年前2、デビルズとレンジャーズの衝突も、今回と同様に血なまぐさい形で始まりました。 

 水曜日の対戦は、今シーズン、メトロポリタン・ディビジョンのライバル同士が対戦する最後の試合です。 

 デビルズとのキャリア3試合で、レンペはアイスタイムをわずか5分03秒しか記録しておらず、毎回退場させられています。 

この試合のハイライト映像です。

まとめ 

 21歳のレンペが、過去の因縁とかを踏まえた上で、乱闘をけしかけているとは到底思えません。あるいは過去の因縁話を聞いて、「やっても、チームもファンも許してくれる」と甘えている可能性もあります。その辺について、監督の指導が必要なのではないでしょうか。 

 レンジャーズもデビルズも大事な一戦のはずなのに、乱闘しろと言わんばかりに、わざわざ該当選手のいる第4ラインを先発させたのは、監督として、さらにチームを鼓舞するためだったのでしょうか。 

 プレーオフ進出の可能性の低さから、デビルズにフラストレーションが溜まっていたのは容易に想像できます。とはいえ、その憂さを乱闘で晴らすというのは、今の御時世を鑑みても、あまり褒められたものではありません。猛省を期待します。 

讃岐猫
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【註釈】

  1. 乱闘に関して暗黙のルールがあり、必ず1対1で行なわなければならない。もしそれ以外の選手が加わったら、その選手には重いペナルティが課せられる。

     また、お互いが口頭やジェスチャーで相手に参戦の意思があるかどうかを確認してから、乱闘を始めなければならない。つまり、騒ぎに乗じて、イレギュラーに相手に暴力を振るってはならない、というルールに逆らったため、8人は試合からの退場処分となったのである。
    ↩︎
  2. デビルズとレンジャーズのライバル関係は、ハドソン川の戦いとしても知られていて、レンジャーズのホーム、マンハッタンのミッドタウンにあるマディソン・スクエア・ガーデンと、デビルズのホーム、ニューアークダウンタウンのプルデンシャル・センターはハドソン川を挟んで非常に近い位置にあることから、お互いのライバル関係が生まれた。
     
     記事にある2012年以来、今回の乱闘騒ぎまで何も起こらない状態が続いていた。12年前、レギュラー・シーズン開幕から両チームの対戦3試合のうち、2回は第1ピリオドのフェイスオフ直後に乱闘開始となっており、今回のものと類似している。 ↩︎
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