キングスの26セーブ完封勝利で、アイランダーズは6連勝でストップ

アイスホッケー名勝負

はじめに

 全米各地にNHLチームは存在しており、当然、世界を牛耳る大都市・ニューヨークにも、2チームがホーム・アリーナを置いています。一つはレンジャーズ、もう一つがアイランダーズ、前者は古豪であり、後者は後発ながら歴史に残る黄金時代を築いています。

 最近のアイランダーズはやや地味な感じですが、今シーズン、ここに来て、ぐっとワイルドカード争いに割って入ってきました。元々定評のある堅実な守備で地道に白星を重ね、プレーオフ出場圏内に手の届く所まで来ています。

 しかし、その前に立ちふさがったのが、西海岸の雄ロスアンゼルス・キングスです。大きな連敗のせいで監督が交代しても、しっかりとプレーオフ圏内に留まり続ける底力はハンパではありません。この両雄の一戦、リーグの今後を占う意味でも重要なものとなりました。

讃岐猫
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引用元:New York Post.com「Islanders’ cracks show as six-game winning streak ends with loss to Kings

    NHL.com「Rittich, Kings end Islanders’ 6-game winning streak

アイランダーズ、ワイルドカード圏内目前で足踏み

 アイランダーズが3月10日(日曜日)の大勝後、(試合内容への)不満の理由を見つけてしまい、(キングスに敗れた)月曜の夜以降、さらに多くの課題を抱えることになりました。

 サンノゼ戦とアナハイム戦で勝利したものの、試合中、部分的に見られた亀裂がキングス戦では完全なものとなり、キングスが3-0の勝利を収め、(アウェイ2連戦を終え)東海岸のホームへ戻ろうとするアイランダーズの連勝を6で止めました。

 主将のアンダース・リー(左ウィング、33歳)は1「リセットするには絶好の機会じゃないかな」と語っています。「今夜はベストを尽くせなかったし、ホッケーの試合に勝てなかったのには理由があるものさ」。

攻撃面での問題噴出

 カリフォルニアでの試合は3試合中2試合で勝利し、アイルズ(アイランダーズの愛称)はデトロイトと勝ち点で並び、2番目のワイルドカード枠を獲得していますが、月曜日にキングスがレギュレーションの試合で勝利してくれたおかげで、レッド・ウィングスはじりじりと差を詰めています。

 しかし、再び優勝争いに加わったとはいえ、アイランダーズにはまだ気を抜く余裕はありません。そして、ここロサンゼルスのダウンタウンでは嫌なことがたくさんありました。

 アイランダーズのブレイクアウト(守りから一気に攻撃へ転じること)は不足しており、フォアチェックは決してうまくいきませんでした。これがディフェンスゾーンで多くの時間を費やすことの原因でした。

 アイランダーズがオフェンスゾーンに入ると、ネットの存在感によって彼らは見放され、キングスのネットマインダー、デビッド・リティッチ(31歳)が特段の苦労をすることもなく、最終的に26セーブの完封勝利を収めています。

 丁寧にパックを扱いすぎてしまうことが多く、この傾向はここ数試合で顕著になっています。

讃岐猫
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パワープレーのチャンスも潰す

 ああ、パワープレー成功率は0勝5敗と惨憺たるものでした。

 第1ピリオド(12分58秒)に迎えた5人対3人のチャンスにしても、キングスのディフェンダー、ドリュー・ダウティ(34歳)が(相手に取らせまいと)パックに倒れ込んだ後、マット・バーザル(センター、26歳)が(無理やりパックを取ろうとして)ダウティに一撃をお見舞いしたため、無効にしてしまいました。

 「あのパックを狙うべきではなかった、とバージー(バーザルの愛称)は分かっていると思う」と監督のパトリック・ロイは語っています。

 その数分前、試合は5対5でほぼ互角だったことを指摘した後、ロイはアイランダーズが5人対4人で得点できなかった7分39秒のこと2を敗因として挙げました。

 「もちろん、我々のチーム皆がその様子を見ていたよ。パワープレーがカチッと正確に決まれば、状況は変わっていただろう」とロイは語っています。

 「もっとトラフィック(プレーヤーが相手ゴール前で戦略的に位置取りをして、ゴールを狙うこと)が必要だ。パワープレーでパックが思うように動いていないなら、派手なプレーは必要ないから、今までと違うことをして、ネット前にもっとトラフィックをかける必要がある」。

緊迫した試合内容は見応えあり

 緊迫したディフェンシブな試合で、アイランダーズは問題を抱えながらも、少なくとも勝ち点1を獲得して、ロサンゼルスから逃げ切るには十分な余裕があるように見えました。

 第2ピリオド・7分14秒、エイドリアン・ケンペ(右ウィング、27歳)のゴールが、この試合開始からの40分間で唯一の得点となった後、わずか1点差で第3ピリオドに突入していきます。

 しかし、第3ピリオド前半は幸先の良い展開を見せましたが、第3ピリオド・6分7秒、左ポスト側からトレバー・ムーア(左ウィング、28歳)のフィードを受けたフィリップ・ダノー(センター、31歳)が、(シュートを)スティックに当ててクリースに入れ込み、リードを広げたのです。※詳細は後述。

 アイランダーズは第3ピリオド中盤に2度のパワープレーのチャンスを得て、やっと(ゴールへの)扉がきしむように開いたかに見えたのですが、いずれも実を結びませんでした。

 残り2分22秒、ムーアがエンプティ・ネットにゴールして、試合を決定づけました。

 (アイランダーズの)ライアン・プロック(ディフェンス、29歳)は『The Post』紙に「相手チームの守りに入ってくる時間帯だとは思っていたんだけど、ロスアンゼルスは本当に良いペナルティ・キルを決めてきたね(アイランダーズのパワープレーを止めた)」と語っています。

 「キングスはしっかりと守備陣形を保っていたので、(アイランダーズが)もう少しシュートを打つことで、それを少し緩める方法を見つけなければならないと思ったよ。シーズンのここまで来ると、接戦になることは分かっていた。

 ほとんどの場合、かなり緊迫した5対5になるはずさ」。

この試合のハイライト映像です!
讃岐猫
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アイランダーズの今後の課題

 連戦後半(2連戦の2試合目)におけるアイランダーズの苦戦ぶりは依然として注目すべき問題であり、今回のような試合では0勝7敗となっています。

 今シーズン、連戦は4月1日(月)のフィラデルフィア・フライヤーズ戦、2日のシカゴ・ブラックホークス戦しか残っていませんが、プレーオフ争いが拮抗しているだけに、この2試合は重要な意味を持つでしょう。

 「時々、選手がうまく動かない場合があっても、何とかして道を見つけるんだ」とピュロックは語りました。

 「物事を少しだけ単純化して考えてみよう。(ペナルティで)選手が足りない時、効果的な別の方法を見つけなければならないかな。例えば(相手ゾーンへ)パックを深く入れたり、フォアチェックに行ったりとか、いろいろと試してみないとね」。

 もちろん、ここ数試合6勝0敗1延長負けの後に、警鐘を鳴らす人はいません。

 アイランダーズは過去2週間で見事に順位を上げた後も、その勢いは依然として残っています。

監督交代があっても、キングス、プレーオフ出場圏内はキープ!

引用元:NHL.com「3/11 FINAL – Kings 3, Islanders 0

 キングスは月曜日の夜、勝利を収め、ホームスタンド(クリプト・ドットコム・アリーナ)での5試合を3勝1敗1分の成績で締めくくりました。

 ニューヨーク・アイランダーズを3-0で完封し、キングスはベガス・ゴールデンナイツから2ポイントのリードを奪い返し、パシフィック・ディビジョンの第3シードの座を取り戻しています。

 月曜日、この試合の最初のゴールを決めるまでに27分14秒かかりましたが、それだけの価値はありました。

 上半身の負傷から復帰後2試合目の出場となったエイドリアン・ケンペは、完璧な位置取り(右サークル)からリストシュートで今季20ゴール目3を決めて、最終的にキングスに決勝点をもたらしています。

 今シーズン、ケンペは3シーズン連続で20ゴール以上を記録し、キングスのフランチャイズ史上、スウェーデン生まれの選手としては最多記録となりました。

 このゴールにより、ケンペ(2試合出場、2ゴール・0アシスト=2ポイント)は、ユハ・ヴィディング(5試合出場、2ゴール・2アシスト=4ポイント、1973-74シーズン)に並び、1シーズン中にアイランダーズ戦で2ゴールを決めた、2人目のスウェーデン生まれのキングスの選手となります。

讃岐猫
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攻守の歯車はガッチリ!

 1-0のまま第3ピリオドに入ると、キングスは6分7秒、トレバー・ムーアがパックをゴール前にセンタリングし(鋭角のシュートという記事もあり)、フィリップ・ダノーへと繋ぎ、タップインゴール(近距離から軽く当てて決めるゴール。最初にソローキン(ゴールキーパー、28歳)のスティックにパックが当たり、それをダノーが押し込んでゴール)を決めてリードを2倍にしました。

 その後、試合残り2分22秒、ムーアはエンプティネット・ゴールを決め、この夜の2点目を獲得しています。

 このゴールにより、ムーアはシーズン25ゴールを記録した球団史上13人目のドラフト外スケーターとなり、1993-94シーズンのウェイン・グレツキー(38ゴール・92アシスト=130ポイント)以来の記録となりました。

 今シーズン2度目の完封を決めたキングスのゴールネットには、26本のシュートをすべて止めたデビッド・リッティッチがいた4のです(完封は今シーズン2度目、NHLでは6度目)。彼は現在10勝4敗3延長負けの戦績を残しています。

 5人対3人あるいは4人対3人のパワープレーを含む、5回のアイランダーズのパワープレーを、キングスがすべて阻止したことは特筆すべきです

【付記】
注:キングスのディフェンスマン、マイキー・アンダーソン(24歳)は、上半身の負傷により8試合を欠場した後、復帰し、氷上時間18分59秒でシュート1本、プラス/マイナス評価でプラス1を記録しました。

…アイランダーズのフォワード、マット・マーティン(左ウィング、34歳)は下半身の負傷のためプレーしていません。彼は日々回復に向かっています、と監督のロイは言いました。

…ディフェンスマンのドリュー・ダウティがダノーのゴールで2点目のアシストを決めています。これは1,159試合で660ポイント(155ゴール、505アシスト)となり、ブッチ・ゴーリングを抜いてキングス史上8位となりました。

まとめ

 同じニューヨークのチーム、レンジャーズが別ディビジョンで破竹の勢いを見せているだけに、アイランダーズとしては「俺達も負けていられない!」って気持ちになるのは当然です。ただ、それが空回りしてしまっては、せっかくの勢いを削いでしまいます。

 それだけに、プレーオフ圏内常連チームでもあるロスアンゼルスに完敗の内容は、今後のチームの行く末を考えると、チーム関係者やファンに不安を与えそうです。つまり、上位陣に歯が立たないとなると、プレーオフ争いの中で強豪との大一番に勝てない、ということです。

 一気に順位を上げてきた勢いをキープするには、無駄なペナルティを減らし、攻撃に転じる時のアイディアを増やしていくことでしょう。大都会ニューヨークの2チームが揃ってプレーオフに行けるかどうか、NHL盛り上げのためにも重要なことなのです。

讃岐猫
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【註釈】

  1. 試合後のインタビューで、次のようにも語っている。

     「今日の僕らの試合は、ここ数試合ほど鋭くなく、(チーム内で)鮮明じゃなかった部分もあったと思う。しかし、僕ら本当に良いホッケーチームと対戦しているわけだし、緊迫したホッケーの試合だったんじゃないかな。

     リンクのアウトサイド(外周)にプレーできるスペースはあまりなかったし、リンク中央にもそれはなかった。僕らは何かプレーを創造することも、リンク中央へパス1本を入れることもできなかったんだ」。
    ↩︎
  2. 約1分前、アイランダーズGKへの不必要な干渉行為のため、キングスのエイドリアン・ケンペは2分間の退場。その間のパワープレー(5人対4人)で、アイランダーズのブロック・ネルソンのスラップショットが、相手GKに止められたことを言う。
    ↩︎
  3. ケンペのゴールについて、ロサンゼルス暫定監督、ジム・ヒラーは次のように語っている。

     「このリーグでは、(リンクの)アウトサイドから得点するのは本当に難しい。(アイランダーズの)ソローキンと試合する時、彼から得点するには素晴らしいショットが必要になるだろう。

     (パックを)リリースする時、ケンペはある程度のパワーとクイックネスを持っているから、どうしてくるかを読むのは難しい。リーグのエリート・シューターでもない限り、ああいうシュートは滅多に入らないものさ」。
    ↩︎
  4. 試合後のインタビューで、次のように答えている。

     「完封できたのは素晴らしいことだけど、初めての時(2月10日のエドモントン・オイラーズ戦で4-0)、僕は完封するためにここにいるのではなく、勝利を得るためにここにいる、そしてそれだけだとも言ったよね。それが重要なんだ」。

     「先日のダラス戦(土曜日、4-1で敗戦)が最高の夜じゃなかったのはわかっていたので、何をすべきかはわかっていたさ。我々は本当に強くなった。全体的に守備面では素晴らしい仕事ができたと思うね。
     好守備で知られるアイランダーズとの対戦で、僕らも同じような姿を見せられて良かった」。 ↩︎
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