はじめに
NHLで今、再び注目を集めているのが「長期故障者リスト(LTIR)」とサラリーキャップ制度の関係です。特にベガス・ゴールデンナイツのマーク・ストーンの扱いをめぐっては、ルールの抜け道を利用しているのでは?という声も。
実際、LTIRとサラリーキャップの運用は密接にリンクしているため、チーム編成に与える影響は小さくありません。
参照記事:Vegas Hockey Knight1「A potential new playoff rule could devastate the Golden Knights」
ベガス・ゴールデンナイツに激震?NHLがルール改正を検討中🏒
NHLファンの皆さん、ちょっとした大波がやって来るかもしれません。なんと、NHLとNHL選手会(NHLPA)がプレーオフ時のサラリーキャップ導入を検討中という、ベガス・ゴールデンナイツにとって、非常に悪いニュースが飛び込んできました😲
これは、長年物議を醸してきたルールの抜け道を塞ぐための動きだと言われています。この話の中心にいるのが、そう、ベガス・ゴールデンナイツです。この話の背景を知らない方のために、少し説明しておきましょう。
ケリー・マクリモン2GM率いるゴールデンナイツは、長年にわたってこのルールを悪用していると非難されてきました。特に、マーク・ストーンはその象徴的存在です。ファンの間では「またベガスか」と笑い話にもなっていますが、もしこの変更が現実になれば、チームの編成方針に大きな影響を与えるかもしれません。
過去の事例と「疑惑」の中心選手たち🤕
そもそも、何が問題視されているのでしょうか?これまでにも、ベガスはマーク・ストーン3を長期負傷者リスト4(LTIR)に入れ、プレーオフで復帰させるという戦術を何度も使ってきました。例えば、彼は脾臓の裂傷などを理由にシーズン終盤を欠場し、プレーオフで元気に復帰するという流れが何度かありました。
ストーンはいい選手なんですよ。まあ、チームの方針だから仕方ないんですけど。
この戦術、実は他チームでも見られました。タンパベイ・ライトニングのニキータ・クチェロフ5も同じような使われ方をしています。しかし、冗談やミームの的になるのはいつも決まってベガスです😂
そして皮肉なことに、今ではベガスのライバルチームの一つが、このルールの悪用で調査を受けています。エドモントン・オイラーズのエバンダー・ケインにも調査が入っており、スタンレーカップ・ファイナルで敗退した後、彼の512万5000ドルのキャップヒットと彼自身がNHLからさらなる監視を受けているのです。
【追記】エバンダー・ケインが追加監視対象となっている主な理由は、以下の通り。
○長期負傷者リスト(LTIR)の利用:
ケインは、2024-25レギュラーシーズン全体を負傷のためLTIRで過ごした。腹部の手術を9月に、膝の手術を1月に受けていたと報じられている。○プレイオフでの復帰とリーグの調査:
ケインは、2025年のプレイオフ第1ラウンドの第2戦から復帰し、その後すべてのポストシーズンゲームに出場。NHLは、オイラーズがケインのLTIRをどのように利用したかについて、リーグの団体交渉協定(CBA)を遵守しているかを引き続き調査する意向。○オイラーズのサラリーキャップ状況とトレードの可能性:
オイラーズは現在、サラリーキャップに余裕がなく、エバン・ブシャールの大型契約が控えていることもあり、今後さらに厳しい状況に直面する可能性がある。ケインの513万ドルのキャップヒットは、残りの契約期間(2025-26シーズンまで)を考えると、チームにとって重荷になる可能性が高い。そのため、オイラーズは、プレイオフでの彼のパフォーマンスの不安定さや年齢(34歳)も考慮し、キャップスペースを空けるためにケインのトレードを検討していると報じられている。彼の契約には16チームへのトレード拒否権が含まれているが、それでもトレードされるかもしれない。
そんな状況もあり、ルールの曖昧さが再び注目を集めている訳です。
LTIR制度ってどうなってるの?📝
まず、今のルールを簡単に説明しますね。選手がレギュラーシーズンの10試合&24日間を欠場する見込みであれば、その選手は長期負傷者リストに登録できます。すると、選手が長期負傷者リスト(LTIR)入りしている間、チームはその選手の年俸分を“LTIRプール”として使え、実質的にサラリーキャップの上限を超えてチーム編成できるという仕組みです。
ただし!その選手が復帰してアクティブ登録される時点で、チームはサラリーキャップの枠内に収まるように調整しなければなりません。なので、プレーオフに間に合わせてギリギリまでLTIRに入れておく、というのが“お約束の手法”になっているわけです。
──ね?シンプルでしょう。
では、なぜゴールデンナイツのファンが大騒ぎしているのでしょうか?いいえ、ファンたちは他に提案されているプレーオフ拡大案6に対して騒いでいるわけではありません。むしろ、その変更によってスタンレーカップ・プレーオフが薄味になり、面白さが損なわれると感じています。
1980年代7にリーグが同じようなことをしたのを覚えていますか?あれは暗黒時代でした、友よ。
新ルールでベガスはどうなる?⚠️
ゴールデンナイツのファンが懸念しているのは、プレーオフ時のサラリーキャップ導入の可能性です。もし導入されたら?ベガスにとってこれはかなりの痛手になる可能性があります。たとえば、950万ドルものキャップヒットを、プレーオフ期間中だけ“見なかったことにする”“そんな事あったっけ?ととぼける”のが不可能になるわけです。
【追記】プレーオフ時のサラリーキャップ導入
現在のNHLのサラリーキャップ制度では、以下の点が問題視されている。
○レギュラーシーズン中のサラリーキャップ適用:
NHLでは、チームの選手年俸総額が一定のキャップ(上限)を超えてはならないという「ハードキャップ」制度が導入されている。選手がLTIRに入ると、その選手のサラリーは一時的にチームのサラリーキャップ計算から外れる。これにより、チームはキャップスペースを確保し、他の選手を獲得したり、既存の選手と契約延長したりすることが可能。○プレイオフ中のサラリーキャップ非適用:
しかし、プレイオフに入ると、このサラリーキャップのルールは適用されなくなる←これが問題の核心。レギュラーシーズン終盤にLTIR入りしていた高額契約の選手が、プレイオフが始まった途端に「奇跡的に」復帰し、チームのロスターに加わるというケースが散見されることとなる。こうなると、そのチームはレギュラーシーズン中はサラリーキャップ内で運営していたにもかかわらず、プレイオフではキャップを大幅に超えた豪華なロスターを組むことができてしまう。
議論の焦点:
NHLとNHLPAの間の協議では、このLTIRの抜け穴をどのように修正するか、という点が主な焦点となっている。具体的な解決策としては、以下のような案が考えられるが、合意には両者の妥協が必要。
○プレイオフにもサラリーキャップを適用する: 最も直接的な方法ですが、怪我の予期せぬ発生に対応するための柔軟性が失われる可能性がある。
○LTIRからの復帰選手に制限を設ける: 例えば、LTIRから復帰した選手はプレイオフの特定ラウンドまで出場できない、あるいはサラリーキャップへの影響を考慮して一部の金額のみカウントするなど。
○独立した医師による負傷状況の厳格な評価: 負傷の真偽や回復見込みについて、より厳格な審査を導入する。
○プレイオフ中のLTIR利用に関する明確なルール設定: 現状のグレーゾーンをなくし、どのような場合にLTIR選手をプレイオフで使えるのかを明確にする。
NHLコミッショナーのゲイリー・ベットマンは、現在のシステムが「悪用されている」とは考えていないと公言しているが、GMや選手の間では、この問題に対する不満や変更を求める声が上がっている。これらの議論は、NHLの次の団体交渉協定(CBA)の交渉の一部として、今後も継続される予定。
でも、これに対して「そんなに心配する必要ある?」という声も。実際、NHLは過去にベガスを調査したことがありますが、不正は認められませんでした。つまり、ケリー・マクリモンGMの動きは、ルールの“グレーゾーン”内に収まっているということであり、従来通りのやり方が続けられる可能性もあります👍

サラリーキャップ制がある限り、北米大陸四大スポーツは大なり小なり「ルールの抜け道」を見つけて、いかに有利に運営していくかを考えなきゃいけない運命なんだにゃ。ただ、マーク・ストーンの場合、何回も同じ手を使っているのが問題であって、それを組織全体で許しちゃってるのが疑問点なわけで。改革案出しても、また抜けちゃうでしょ?ってのが大方の見方。
それでもマクリモンはやってくる?😏
それに、ケリー・マクリモンはいつだって、自分流の「サラリーキャップの曲芸」をうまく成立させてきました。ファンの間ではすっかり恒例になったミームや冗談があります。「マクリモンが次にLTIRに入れるのは誰?」「次のサプライズ補強は?」というお決まりのネタで盛り上がるのです。彼のキャップ操作術はまさに“曲芸”と言えるレベルです🎩
たとえば、アレックス・ピエトランジェロを長期負傷者リストに入れることになるかもしれません。あるいは、ニコラス・ヘイグの今後の去就8はどうなるのでしょう?
ピエトランジェロとストーンのコンビネーション・プレー。まあ、大ベテラン2人に頼らざるを得ないチーム構成に問題ありだと思うけど。
【追記】アレックス・ピエトランジェロの現状
2024-25シーズン中、様々な怪我や病気で欠場することがあり、特に下半身の負傷が報じられている。2025年の4 Nations Face-Offトーナメントへの出場を、体調を整えるために辞退。
NHLインサイダーのエリオット・フリードマンが、ピエトランジェロの健康状態について繰り返し懸念を表明しており、「2025-26シーズン開始時に健康ではない可能性がある」と示唆。彼がプレイオフでも負傷を抱えてプレイしていた可能性も指摘されている。
具体的な怪我の種類は明かされていないが、「膝、股関節、鼠径部など何でもあり得る」といった憶測も出ている。
ベガス・ゴールデンナイツは、現在サラリーキャップスペースが非常に限られており、さらにドラフト指名権も少ない。ピエトランジェロは高額な契約(キャップヒット約880万ドル)を結んでおり、まだ2シーズン契約が残っている。
もし彼が長期的に欠場するような状態であれば、彼をLTIRに入れることでその分のキャップヒットを一時的に外し、新たな選手(例えば、ミッチ・マーナーのような高額契約のスター選手)を獲得するためのキャップスペースを創出できるかもしれない。
──いや、そもそもそんなことは重要なんでしょうか?
ファンたちはもう、自分たちのGMが「NHLに納得される形で巧妙に調整してくる」のを見慣れています。そんな想像が飛び交うのも、ベガスらしさのひとつ。仮にプレーオフ・サラリーキャップが導入されても、マクリモンなら何かしらの方法を編み出してくるはず…という期待(?)もファンの中では健在です🤣
──それはそれで、かなり面白いことになりそうです。
まとめ:ルール改正は正義か、それとも…?🤔
抜け道を塞ぐためのルール改正。それ自体はフェアな試みかもしれません。でも、そのルールを最も巧みに使ってきたベガス・ゴールデンナイツが、真っ先に影響を受けるというのも皮肉な話です。
今後の議論の行方、そしてもしルールが変わった場合にマクリモンがどんな“魔法”を使ってくるのか、注目は尽きません✨

ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- ラスベガス・ゴールデンナイツ専門のニュースサイトで、FanSidedネットワークの一部として運営されている。チームの最新ニュースや分析、選手の怪我情報、噂などを詳しく扱い、ファンコミュニティの交流の場にもなっている。
主な執筆者はJacob Waltersで、信頼性の高い情報源をもとに正確な報道を心がけている。SNSでも多くのフォロワーを持ち、ファンとの積極的な交流が特徴。
↩︎ - 1988年にブランドン・ウィート・キングスのアシスタントコーチとなり、1989年にはGMに就任。1992年には、ウィート・キングスの少数株主となり、フランチャイズの3分の1を購入した。
26シーズンをブランドン・ウィート・キングスで過ごした後、2016年8月2日、マクリモンは新NHL拡張チームであるベガス・ゴールデンナイツの初代アシスタントGMに任命された。2019年5月2日、GMに昇進し、以前のGMであったジョージ・マクフィーは社長となる。
マクリモンは、ゴールデンナイツをビジネスのスタートアップのように構築し、勝利の文化を築くことに重点を置いたと述べている。
↩︎ - ストーンは、ここ数シーズンで繰り返しLTIRに登録→プレーオフで復帰する、というパターンをとっているます。具体的には:
2021–22シーズン:腰の怪我でLTIR入り → プレーオフ初戦で復帰
2022–23シーズン:背中の手術でレギュラーシーズン後半を欠場 → プレーオフ第1戦から復帰
2023–24シーズン:またもや背中の問題でLTIR → プレーオフで元気に復活
ストーンの キャップヒット(年俸換算額)は約950万ドル と非常に高額。LTIRに入っている間はこの分を他の選手の補強に使えるため、チームとしては戦力アップが可能。そして、プレーオフにはサラリーキャップの制限がないため、ストーンをそのまま復帰させても違反にはならない。
↩︎ - IR(Injured Reserve):最低7日間の欠場が必要。サラリーキャップには影響なし。LTIR(Long-Term Injured Reserve):最低24日間 or 10試合以上の欠場が必要。チームはキャップ超過が一時的に認められる。つまり、LTIRは戦力補填が可能になる代わりに、復帰時にキャップ調整が必要な“便利だがデリケートな制度”となる。
↩︎ - 最も有名な例の一つが、2021年にスタンレーカップを制したタンパベイ・ライトニングである。スター選手であるニキータ・クチェロフがレギュラーシーズンを全休するほどの怪我でLTIR入りしていたが、プレイオフ初戦に合わせて復帰。
これにより、ライトニングはレギュラーシーズン中にクチェロフのサラリー(約950万ドル)をキャップに含めることなく、他の選手を補強・維持でき、プレイオフではキャップを約1800万ドルも超えるロスターを組んだと指摘された。
↩︎ - NHLのプレイオフ拡大については、近年様々な議論がされているが、現時点(2025年6月)で具体的な拡大は決定していない。過去には、ワイルドカードチームの追加や、より多くのチームが参加する「20チームプレイオフ」の構想などが報じられた。
しかし、現在の16チームによるプレイオフ形式からの拡大には、リーグとして積極的ではないという見方が強い。リーグ全体の拡大(新フランチャイズの追加など)については検討されているものの、プレイオフフォーマットの変更については大きな動きは見られない状況である。
↩︎ - この期間のNHLは、ゲームの魅力を高め、収益性を向上させるための様々な改革を行っている。主な動きとしては、攻撃的なプレイを奨励し、得点数を増やすためのルール変更(例:ゴールテンダーのレッグパッドのサイズ制限)があった。同時に、暴力行為の抑制にも力を入れ、乱闘などの抑制ルールを導入。
また、ビジネス面では、ライバル・リーグだったWHAとの統合によるリーグ規模の拡大(1979)、フランチャイズの移転、そしてリンクボードへの広告導入による新たな収益源の確保など、商業的な成功を追求する戦略が目立った。この時期は、NHLが北米4大プロスポーツリーグとしての地位を確立し始めた重要な転換期と言える。
1989年、NHLが今後10年で21チームから28チームに拡大する計画を発表しており、1990年代にかけて積極的なチーム増設が進むことになる。WHAとの統合から10年後、さらにチーム数を増やしたことにより、リーグ戦及びプレーオフの面白みが半減するとの声もあった。
↩︎ - ヘイグは2024-25シーズンで現在の契約が満了し、制限付きフリーエージェント (RFA) となる。RFAは、所属チームが選手と再契約を交渉する優先権を持つが、他のチームからのオファーシートを受け取る場合もある。
ヘイグは、ゴールデンナイツのドラフトで指名された大型の左利きディフェンスマンであり、堅実なプレイを見せてきた。彼は次回の契約で年俸の大幅な引き上げを求めていると予想されており、それがゴールデンナイツのキャップ状況にとって負担となり得る。よって、ゴールデンナイツはキャップスペースを確保するために、ヘイグのトレードを模索していると広く報じられている。
多くのNHLインサイダーやメディアが、モントリオール・カナディアンズ、ピッツバーグ・ペンギンズ、フィラデルフィア・フライヤーズ、デトロイト・レッドウィングスなど、複数のチームがヘイグの獲得に強い関心を示していると伝えている。
ヘイグは、6フィート6インチ(約198cm)のサイズと堅実な守備力、そしてまだ26歳という若さから、多くのチームにとって魅力的な補強対象である。特に、今オフシーズンのUFA(無制限フリーエージェント)市場には質の高いディフェンスマンが少ないため、彼の価値はさらに高まっている。 ↩︎