はじめに
プレーオフ、カンファレンス決勝進出チームが続々と決まっています。フロリダ・パンサーズはまたもボストン・ブルーインズに苦汁をなめさせ、ニューヨーク・レンジャーズは3連勝のアドバンテージを活かして逃げ切り、ダラス・スターズは守備力で相手を上回りました。
さて、昨シーズンのチャンピオン、ベガス・ゴールデンナイツは、そのダラスに3勝4敗で惜しくも第1ラウンド敗退の憂き目に遭いました。いきなりダラスに2連勝して「さすがチャンピオン」と思わせましたが、それ以降、シーズン同様に尻つぼみ状態。
今回の記事は、やや精彩を欠いた前チャピオンにも、今シーズン、思い出深いシーンが多かったんだぞ!ということで、時系列に10の出来事を挙げています。開幕直後は「連覇間違いなし!」と言われていたのが懐かしい…。
ベガスって、チーム創設以来、プレーオフ進出率がハンパないんだにゃ。
拡張ドラフトでいい選手を獲れたってのもあるんだけど、
それを適材適所に配置できた歴代監督の手腕が光る。
ただ、若手の底上げがちと寂しいのが気になるかなぁ。
引用元:LAS VEGAS REVIEW-JOURNAL.com「Top 10 moments from Knights’ season: Banner raised, Pietrangelo honored」
連覇ならずとも…
ゴールデンナイツの2023-24シーズンは、2022-23キャンペーンほど記憶に残ることはないでしょうが、それでもファンが永遠に覚えている瞬間はありました。
ナイツのタイトル防衛は、ダラス・スターズとのプレーオフ第1ラウンドで惜しくも敗れ、浮き沈みの激しいジェットコースターのようなシーズンに終止符を打ったのです。
今シーズンのハイライトをいくつか紹介します。
序盤は調子良かった!
1.バナーを上げる:10月10日
キャプテンのマーク・ストーンは、T-モバイル・アリーナの氷の上で巨大なスロットマシンのレバーを引っ張ると、巨大なスタンレーカップ・チャンピオンシップ・バナーが垂木に向かい始めました。
ナイツにとって、シーズンのスタートを切るには絶好のものと言えます。
また、同日夜にはシアトル・クラーケンを4-1で破り、スタンレー・カップのディフェンディング・チャンピオンとしては、開幕から11勝0敗1延長負けと、スタンレー・カップのディフェンディング・チャンピオンとしては過去最高の成績を収めました。
「あれは一生忘れないよ」とブルース・キャシディ監督は言っています。「一昨年からやってきたことの最後のピース(優勝バナーを上げること)は、これから一生忘れることはないだろう。だって、そのためにプレーしているんだからね」。
2.コロラドに一方的に勝利:11月4日
ナイツは11勝0敗1延長負けの大勝を、圧倒的な勝利で締めくくりました。
T-モバイル・アリーナで行われたコロラド・アバランチ戦では7-0で勝利し、今シーズン初の完封勝利を収めています。
ゴールテンダーのアディン・ヒルはシーズン最高の41セーブを記録し、ストーン、センターのウィリアム・カールソン、そしてジャック・アイシェルはそれぞれ2得点を挙げました。
この勝利により、連覇とプレジデンツ・トロフィーの獲得が現実味を帯びてきたように思えたのです。しかし、ナイツは翌日の夜にアナハイムに4-2で敗れ、初めてポイントを落としました。
優勝バナー掲揚は、ベガスという土地らしい、いろんな趣向が凝らしてあって面白いにゃ。
感動的な場面もあったし。
チャンピオン・チームというのは、えてして出足につまづくんだけど、
ベガスは開幕ダッシュに成功したんだけどねぇ。
大統領にジョークを言ったり、家族でスケートしたり
3.ホワイトハウス訪問:11月13日
チャンピオンになると、いくつかの特典があります。
ナイツは11月13日にホワイトハウスを訪れ、スタンレーカップ優勝の栄誉を称えられました。チームは、ジョー・バイデン大統領に、ナイツのセーターと金色のホッケー・スティックを贈呈しています。
ストーンとバイデンの2人とも、ホワイトハウスのイーストルームでの式典で発言し、ナイツのキャプテンはバイデンの故郷についてジョークを飛ばしました。
「デラウェア州1に敬意を表して申し上げます、大統領閣下」と前置きして、彼はラスベガスを「世界のエンターテイメントの首都」と呼んでいます。
4.ウィンター・クラシックでプレーする:1月1日
ナイツにとって、NHLのレギュラー・シーズン最大のイベント、そして2021年以来の屋外ゲームの経験は、ポジティブな結果に終わりませんでした。
それにもかかわらず、それはまだ印象に残っています。
選手とその家族は、大会前日にシアトル・マリナーズのT-モバイル・パークに建設されたリンクで一緒にスケートをしました2。ゲーム自体は素晴らしい雰囲気でした。
騎士団のパフォーマンスだけが物足りない唯一のものとなったのです。ゴールテンダーのジョーイ・ダコードのシャットアウトのおかげで、彼らはクラーケンに3-0の完封負けでした。
大統領の生まれ故郷をジョークにしたのは、やり過ぎかもにゃ。
ゴールデンナイツは、
スタンレーカップ決勝でワシントン・キャピタルズに敗けたことあるから、
それもジョークの裏ネタかもしれない。
キャプテンの離脱が痛かった
5.ストーン、ハットトリックを記録:1月15日
ストーンは、どういうわけか、レギュラー・シーズンでの初ハット・トリックの前に、2023年のスタンレーカップ決勝の第5戦を含む2つのプレーオフ・ハットトリック3を記録しています。
ホームでのナッシュビル・プレデターズ戦、4-1で勝利し、彼は3得点を挙げ、垂木から優勝バナーが落ちてしうまうかのような活躍を見せました。
その後、レギュラー・シーズンで1ゴールを挙げただけで、脾臓に裂傷を負ってしまいます。彼はプレーオフの第1戦まで戻ってきませんでした。
6.ブリッソンが初ゴールを決める:1月20日
ブレンダン・ブリッソンのNHL初ゴールは完璧なタイミングで生まれました。
ナイツの若手期待の有望株は、ピッツバーグ・ペンギンズに3-2で逆転勝利を収め、試合の勝者となったのです。
このゴールは、ブリッソンの父パットが代理人を務めるペンギンズのセンター、シドニー・クロスビーという、この22歳にとって憧れの選手との対戦から生まれたものでもありました。
また、ナイツが、T-モバイル・アリーナに帰還した左ウイングの(元ゴールデンナイツの)ライリー・スミス4を称え、ブリッソンに(スミスのゴールデンナイツ時代の背番号)19番を着ける許可を与えたのと同じ夜に起こったことです。
強豪と互角の試合はしていた
7.ヒルがニューヨークを支配:1月23日~26日
ヒルは下半身の怪我で2ヶ月近く欠場しましたが、しかし、1月23日に復帰してからは、一歩も引かないプレーを見せてくれたのです。
ニューヨーク・アイランダーズに3-2で勝利し、40セーブを挙げました。それに続き、ヒルは3日後のニューヨーク・レンジャーズ戦に5-2で勝利し、さらに36セーブを挙げています。
それは驚くべき成長と言えるものでした。ヒルにとって残念なことに、レギュラーシーズンの残りはすべて下り坂となってしまったのです。プレーオフでも好プレーを見せるまでは、7勝10敗、セーブ率.882の成績を残しました。
8:エドモントンの連勝を止める:2月6日
オールスター・ブレイク明け、ナイツには簡単な仕事を与えられていなかったのです。
最初の対戦相手は16連勝中のエドモントン・オイラーズでした。オイラーズは、1992-93シーズン、ピッツバーグ・ペンギンズが打ち立てたNHLの連勝記録に並ぶまであと1勝と迫っていたのです。
騎士団は臆することなく、そこで闘いました。ホームでの10日ぶりの試合は3-1で勝利し、ヒルは30セーブを挙げています。
個人的に、今シーズンのゴールデンナイツで印象に残っているのは、これかにゃ。
老獪さが若さを止めた感じ。
上り調子で誰も止められないと思われていたオイラーズを、
下り坂のベガスが止めたシーンに、前年度チャンピオンの意地を見たね。
チーム創成期を支えた選手達に栄光あれ
9.1,000試合出場を祝うピエトランジェロ:2月12日
ディフェンスマンのアレックス・ピエトランジェロは、ミネソタ・ワイルドに5-3で敗れた試合で、1,000試合目に出場を達成しました。
スタンレーカップで2度優勝(ベガス以外では、18-19シーズン、セントルイス・ブルース在籍中)した彼は、この敗戦でアシストを記録しています。彼は試合前、家族とともに表彰され、過去と現在のチームメイトが出演している、賛辞に満ちたビデオを見ました。
「自分の仕事が大好きだけど、周りのみんなのことも大好きさ。今日までの長い時間の中で、多くの良い人達に会ってきたよ」とピエトランジェロは言っています。
「友情がなければ、このキャリアまででプレーすることなんてできないし、妻と子供がいなければ、今の自分はないと思っているよ…そして、すべてのチームメイトと僕が長年にわたって出会ったすべての人も同じさ」。
10.フルーリーと対戦する:4月12日
ナイツはミネソタに7-2で勝利し、旧友を相手に57シーズンぶり6度目のプレーオフ進出を決めました。
ゴールテンダーのマルク-アンドレ・フルーリーは、T-モバイル・アリーナでプレーするのが最後と思われていた試合に先発出場したのです。NHL史上2番目の勝利数を誇るゴールテンダーは、後に現役最後のシーズンとなる来シーズン、氷上に戻ってくることを発表しました。
センターのトーマス・ハートルを含む7人のナイツが得点しています。3月8日の期限直前にサンノゼ・シャークスからトレードされた後、新チームでの初ゴールとなりました。
まとめ
ベガスの今シーズンを振り返ってみると、良くも悪くもキャプテンであるマーク・ストーンのチームなんだと思います。彼が内臓の負傷から復帰して、チームの士気も上がったはずですが、いかんせん彼の元気の無さがチームに影響した故の1回戦敗退でした。
今シーズン開幕前、あまり戦力補強をしなかったツケが、シーズン中盤での息切れに繋がったのは明白。数年間、プレーオフは諦めて、若手への切り替えに舵を取るか、現有戦力に少しの即戦力を加え、来シーズンもプレーオフ進出を狙うか。
ここのGMの選手を見る目に疑問符なんで、この2つの選択肢どちらもあやしい、のが気掛かりです。6月のドラフトでのチョイスがGMからのメッセージとなるので、まずはドラフトの行方を観察していきます。日本で放送されないのが残念…。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- 米国内で2番目に小さい州であり、日本で言えば、千葉県と同じくらいの面積。しかし、人口密度が高く、米国内で6番目なのは、独特の会社法の影響で法人が会社設立を行いやすい点が要因の一つと思われる。合衆国入りした最初の州でもある。
ちなみに、ラスベガスのあるネバダ州は、面積で言えば、全米7位。ただし、人口密度は10.9でデラウェア州の10分の1である。合衆国入りしたのは36番目。おそらく、ストーンは、州の大きさとバイデンのいるワシントンをネタにジョークを飛ばしたと思われる。
↩︎ - これ以外にも多くのイベントが開催されており、それについて、このブログでも取り上げている→☆。
↩︎ - 2019年4月14日、スタンレーカップ・プレーオフ第1ラウンド・第3戦、サンノゼ・シャークス戦で記録(スコアは6-3で勝利)。ストーンは、プレーオフでハットトリックを記録した最初のゴールデンナイツの選手となる。 ↩︎
- 2023年6月28日、スミスは2024年のNHLドラフト3巡目指名権と引き換えに、ゴールデンナイツからペンギンズにトレード。新戦力であるフォワードのイワン・バルバシェフをキープするため、放出されたと言われている。
スミスは、後述のアレックス・ピエトランジェロと共に副キャプテンを務めていた。
↩︎ - 2017-18シーズンから20-21シーズンまで、フルーリーはゴールデンナイツに在籍。拡張ドラフトでペンギンズから移籍し、先発ゴールテンダーとして活躍。チーム創設初年度、17-18シーズンのスタンレーカップ決勝進出に貢献する。 ↩︎