はじめに
長い長い熟慮?の末、サンノゼ・シャークスからピッツバーグ・ペンギンズへ移籍したエリック・カールソンの話題と同じくらい注目を集めていたのが、トロント・メープルリーフスのエース、オーストン・マシューズの移籍問題でした。
新シーズンに契約最終年を迎えるマシューズは移籍に傾いているのではないか、ともっぱら噂になっていましたが、彼は、お金でなく「チーム一丸となって、悲願のタイトルを取りに行く」ことを選びました。
プレーオフに出ても、なかなか1回戦の壁を破れないトロント。それを自らの力で浮上させたい!その思いがあまりにも切実で強かったため、マシューズは自分にやや不利な契約内容でも、書類にサインしたようです。
一部報道では、成績が飛び抜けて良いわけでないことから、
チームがマシューズに譲歩を迫った、とされているにゃ。
いろんなホッケー情報サイトを読んでいると、勉強になります。
引用元:NHL.com「Matthews made push for 4-year, $53 million contract with Maple Leafs」
メープルリーフス新GMの談話
トレーニングキャンプが開始されても、オーストン・マシューズ(センター、25歳)は、今シーズン以降のトロント・メープルリーフスでの自身の将来についての疑問が長引くことを望んでいませんでした。
彼とメープルリーフスのゼネラルマネージャーであるブラッド・トレリビングは静かに協力し、8月23日(水曜日)に発表された年平均1325万ドル、4年・5300万ドルの新契約に同意したのです。契約は2024-25シーズンに開始されます。
※ブラッド・トレリビング=カナダ、ブリティッシュコロンビア州ペンティクトン出身、54歳。現役時のポジションはディフェンスだが、NHLでのプレー経験はない。2023年4月17日、契約満了に伴い、カルガリー・フレームスを退団。5月31日、トロントの新GMに就任。
「この契約が結べたのは、オーストンがこのチームと契約したいと決めてくれたからだ」とトレリビングは25日(金曜日)に語りました。「それが現実だ。マネージャーである私は彼をバックアップできる。(マシューズの代理人である)ジャド・モルダバーの仕事に拍手を送りたい。
ここに来て以来、多くの時間をかけて取り組んだが、契約完了したのは、オーストンが言うように、『僕は契約交渉について終わらせたいし、もう問題にしたくないんだ。そして勝利に集中し、全エネルギーを氷上に注ぎたいと思っている』からです。
結局のところ、彼はその決断を下したのであり、私にとってはリーダーシップの表れだと思っている」。
あと5年、トロントでプレー
「私はオーストンに拍手を送りたい。彼は、明らかに自分のやらなければならない仕事があると言い続けていたが、それをチーム構成にどうフィットさせるか、どうすれば勝てるのか、そして、それが今後どのように機能するのかを重ね合わせて考えていたようだ」。
シーズン終了後に無制限フリーエージェント(FA)になる可能性のあったマシューズは、2019年2月5日に締結した5年契約(年平均1163万4000ドル)の最終年となる今シーズンを、トロントでプレーすることになります。
昨シーズン、ウィリアム・ナイランダー(右ウィング、27歳)と並んで40ゴールを挙げ、74試合で85ポイント(40ゴール、45アシスト)を記録しました。
ナイランダーとの2枚看板は、それなりに強力なんだけどにゃ。
ここ一番で勝てないのが玉に瑕。ところで、ナイランダーの契約はどうなったんだろ?
マシューズの談話
「ある日目が覚めたら(4年契約が)決まっていた、というようなことではなかったよ。家族、僕の代理人や親しい人たちと長い時間をかけて話し合ったね」とマシューズは語っています。
「自分のこれまでのプロセスを検討した結果、4年間で(チームとの間に)適切なバランスを見つかったという結論に達したんだ。この契約が終わるまで、合計12年間もチームにいるということになるね。
トロントでプレーすることが大好きだし、チームメイトやメープルリーフスに関する全てのことが大好きなんだ。この組織の一員であることは本当に光栄なことであり、絶対に当たり前とは思ってない」と述べました。
トレリビングは、ここまでのプロセスについて、交渉というよりもパートナーシップだと感じています。
「私にとって、これは共同作業だった」とトレリビングは述べました。「どちらにも合うものを見つけようとしている。肝心なのは、世界最高の才能の1人について話しているってこと。
彼の置かれていた状況であれば、彼がチームに加入してから得てきたものより、はるかに多くのものを要求する可能性があるということです」。
※交渉というよりパートナーシップ=今回の交渉について、他のメディアは以下のように報道している。
ESPN.comでは、ブラッド・トレリビングは、5月の就任当初から、マシューズの長期契約が優先事項であるとしていた。
マシューズ同様、契約最終シーズンを迎えているフォワードのウィリアム・ナイランダーとの契約延長交渉など、他の人事問題に関わる前に、マシューズのサラリーがどの程度になるのかを明確にする必要があったからである。
ナイランダーは「できる限り長くトロントにいたい」と述べつつ、急いで契約を結ぶつもりはないとチームに警告している。
2024-25シーズン、トロントには少なくとも1000万ドルのキャップヒットを持つ選手がいて、マシューズの他に、ジョン・タバレス(1100万ドル)とミッチ・マーナー(1090万ドル)がいる。
Yahoo!Sportsでは、マシューズにとっての最大の打撃はおそらく、彼が毎年数試合を欠場する傾向があり、シーズン中のメープルリーフスの全試合に出場したのがキャリアの中で2回だけだということだろう、としている。
TSNでは、新GMがマシューズをべた褒めである点と、次はナイランダー引き止めに尽力すると意思表示した点をに付いて触れている。
契約年数と年齢との闘い
2022年にNHL最優秀選手としてハート・トロフィーを獲得したマシューズが、最大8年契約をしなかったことは、短期的にはメープルリーフスの助けとなります。トレリビングは、長期契約が合意された場合、年間平均サラリーが高くなっていたであろうことを否定しませんでした。
※最大8年契約=NHLのFA制度で言えば、新規契約は最長で7年間までと期限がある。マシューズの場合、2019年締結の契約期間5年の残り1年があるため、彼が最長の7年間を要求する可能性も充分考えられたのである。
新しい契約はマシューズが30歳の時に切れます。さらに34歳になるまでの4シーズンは、最盛期ではないかもしれませんが、マシューズのような選手が高い生産性を維持し続け、サラリーキャップが上昇し続ける場合、より高い給料を受け取るに値すると期待することは、不合理と言えません。
しかし、今から5年後のシーズンを考慮すると、契約開始がサラリーキャップの大幅な引き上げ前となれば、メイプルリーフスは財政的に手詰まりとなります。
マシューズとしては最大8年契約まで持っていき、
じっくり腰を据えて、チーム強化に乗り出す手もあったわけだにゃ。
ただ、年齢と彼の怪我がそれを許すかどうか。その狭間で悩んだんじゃないかな。
新GMが強調するのはバランス
「我々の置かれている状況を見なければならないし、選手の状況も見なければならない」とトレリビングは言っています。「私たちは皆、今後しばらく大きな成長があると考え、期待している。
だから、すべてがフィットし、選手にとって機能し、ベストプレーヤーを中心にした柔軟な編成を続けられるようなバランスを見つけようとしているんだ。みんなが手を取り合って動く。
ここまでの過程を通して感じたのは、マシューズとチームは、バランスの取れた契約年数に落ち着いたということです」と述べました。
マシューズがすでにエントリーレベルからメープルリーフスと2つの契約を結んでいることを、すでに5年先を心配している人たちに対し、トレリビングは思い出させています。
※2つの契約=最初は2016年7月21日、マシューズは、パフォーマンス・ボーナスの最大配分を含む3年間のエントリーレベル契約に署名。当時のトロントGMは新人のパフォーマンス・ボーナスに否定的であったが、最終的には要求を受け入れたことになる。
2回目は2019年2月5日、マシューズはトロントと新たに5年5817万ドル(日本円で約85億2千万円)、年平均1163万4000ドル(約17億円)相当の契約を結んでいる。
トレリビングは「この契約は大きなものだが、彼の前の契約も覚えている」と話しました。「5年後、その後はどうなるのかって?
時が来たら(次の契約に)対処するつもりだが、考えてみてくれ、オースティンは別の契約に署名したばかりで、このプロセスを通じて、彼はこのチームにコミットし、この都市にコミットしていると繰り返していたんだ。
いい落とし所を見つけたと思っている。オーストンはもっと違う場所(もっと高給を要求or違うチーム)に行ける立場にいたし、それはもっと難しかったかもしれないね。
彼がリーダーシップを発揮してくれたからこそ、我々はこの案件(契約延長交渉)を完成させることができた。そして、交渉成立となった契約内容と金額に、我々は驚いてもいるんだ」。
マシューズの語る「未来」
今後少なくとも5シーズン、メープルリーフスに残ることになったマシューズは、フランチャイズの記録を書き直す機会を得ました。
299ゴールを達成した彼は、その後の5年間でシーズン平均24.2ゴールを記録すれば、メープルリーフスの最多ゴール記録(420ゴール)を持つマッツ・スンディンに追いつくことができます。
※マッツ・スンディン=スウェーデン、ブロンマ出身、51歳。現役時のポジションはセンター。チーム史上初となるヨーロッパ出身のキャプテンであり、8季連続チーム内ポイント王。
1989年のNHLドラフト全体1位でケベック・ノルディックスに指名され、NHL史上初の全体1位で指名されたヨーロッパ生まれの選手でもある。
ポイント獲得数でメープルリーフス11位にいるマシューズが、もしその期間にシーズン平均89ポイントを獲得すれば、メープルリーフス最多ポイント(987ポイント)のスンディンにまたも追いつくことができます。
「(これまでの記録は)時々頭の片隅に浮かぶし、ネット上で目にしているものだね」とマシューズは言います。
「メープルリーフスの一員としての僕の最大の優先事項は、最高の選手でありチームメイトであること、そしてこのチームを目指すところへ連れて行くためにできることをするだけさ。
その他の称賛は、この組織の一員となり、今後5年間ここでプレーすることを誓い、腰を据えて取り組むことで得られるものだ。もしそうなれば、それは素晴らしいことだが、明らかに僕らはみんな一つの目標を追い求めているし、それが間違いなく最も重要なんだよ」。
まとめ
当初、マシューズは、近い将来のサラリーキャップ上限増額に合わせた形での最長7年契約を希望していたと思います。やり手GMカイル・デュバスのままだったら、マシューズの希望通りで大型契約をしていたでしょうが、他の選手とのバランスがどうなっていたか、不安です。
マシューズとしても早く結果を出し、5年後の契約延長交渉で大幅アップへ持っていく方にシフト・チェンジしたのでしょう。昨シーズン、久しぶりに2回戦へ進出したトロントは、その戦力をベースにしつつ堅実路線を歩むようです。
彼のリーダーシップがチームの路線とマッチし、今回の契約に落ち着いたのでしょう。5年は長いようで短い。柱のできたトロントが、今後、どうチームを作っていくのか。フロントの腕の見せ所は、むしろこれからかもしれません。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!