はじめに
日本のプロ野球やJリーグでは、オフシーズンになると、チームや競技種目の垣根を超えて、合同自主トレを行うのが当たり前になってきました。いいものを盗むのであれば、たとえ他所のチームの主力からであっても、遠慮しない…ってギラギラ感は日本人選手になさそうです。
さて、NHLはオフシーズン真っ只中、契約交渉が早々と解決している選手は体をいたわりつつも、新シーズンに向けて自主トレに励んでいます。今やNHLの顔となったコナー・マクデイビッドも多くの仲間と共に、有意義なオフを過ごしているようです。
今回は、マクデイビッドと自主トレをしている、1人の若きディフェンスマンのインタビュー記事です。今夏、ロサンゼルス・キングスからアリゾナ・コヨーテズへの移籍(FAではない)も決まり、さらなる飛躍を期す若武者の声を聞いてみましょう。
その若武者の名は、ショーン・ダージと言うんだにゃ。
徐々に若返りを図ろうとしているキングスにとって、
この移籍はかなりの痛手かもしれないな。
引用元:NHL.com「McDavid’s offseason training regimen impresses Durzi 」。
「NHLの顔」から学ぶことは多い
過去2シーズン、ショーン・ダージ(ディフェンス、24歳)は、エドモントン・オイラーズのキャプテン、コナー・マクデイビッド(センター、26歳)をたくさん見てきましたが、ダージのいたロサンゼルス・キングスは、スタンレー・カップ・プレーオフの開幕戦で毎回オイラーズに敗退していて、それを目の当たりにしています。
6月24日、24歳のディフェンスマンがパシフィック・ディビジョン外のアリゾナ・コヨーテズにトレードされた後、ダージはマクデイビッドとあまり会うことはないでしょうが、このオフシーズン、2023年のハート・トロフィーを受賞し、NHL最優秀選手に選出されたマクデイビッドの別の一面を見られるようになったのです。
二人の氷上での戦いが終わった今、ダージは夏になった今、元NHLのフォワード、ゲイリー・ロバーツの監視の下、マクデイビッド、同じオイラーズのフォワード、ザック・ハイマン(左ウィング、31歳)とレオン・ドレイサイトル(センター、27歳)、タンパベイ・ライトニングのキャプテン、スティーブン・スタムコス(センター、33歳)らとトレーニングを行っています。
※ゲイリー・ロバーツ=カナダ、オンタリオ州ノースヨーク出身、57歳。現役時のポジションは左ウィング。フレームズ時代、オフシーズンの過ごし方について、監督から厳しい指摘を受けたことをきっかけに、栄養と体力維持を独学するようになった。
引退後、彼のトレーニング法を実践することにより、成績の上がった選手が続出。パーソナルトレーナーとしての彼の評判の高まりにより、オンタリオ州トロントに自らの名を冠したトレーニング施設を設立。現在、NHLの選手を含むジュニアおよびプロ選手がトレーニングに励んでいる。
そして今週、ダージは再びマクデイビッドと行動を共にしていて、今回はトロントの北にあるイーグルス・ネストで開催されるザック・ハイマン・セレブリティ・ゴルフ・クラシックに参加するためです。
※ザック・ハイマン・セレブリティ・ゴルフ・クラシック=オフシーズンになると、ハイマンはボランティア活動をしており、子供向け慈善団体のアスリート・アンバサダーでもある。
毎年夏、トロントのシックキッズ病院を含むエドモントンとトロントの慈善団体への資金を集めるため、セレブリティのチャリティーゴルフトーナメントを主催している。今年は7月31日に開催された。
トレーニング以外でも協力関係
これは、敵がいかに友人になれるかの一例です。
少なくとも来月、(各チームの)トレーニングキャンプが始まるまでは。
「初めて彼が僕と一緒にジムに入った時、僕たちはお互いの目を見て笑い始めたんだ。〈お互いに話すべきなの?〉という感じだったよ」とダージは笑いながら言いました。
「いつも大笑いさ。氷上で敵同士になれるなんて面白いよね。分かるだろ?お互いに激しく一生懸命プレーし合っているのに、今は友人となって、このようなイベントを一緒に支援しているんだから」とコメントしています。
しかし、ダージとマクデイビッドが互いに抱いている尊敬の念は、シックキッズ財団やUJA連盟を含む、子供たちのための慈善団体の資金を調達する、ハイマンのイベントへのサポート以上に深いものがあります。
※シックキッズ財団=正式名称はHospital for Sick Children(HSC)で、SickKidsはブランド名である。カナダのオンタリオ州トロントのユニバーシティ・アベニューにある主要な小児科教育病院。
トロント大学医学部と提携しているこの病院は、2021年、ニューズウィーク誌によって世界でトップの小児病院にランクされた。このクラシックからの寄付は、特に腫瘍学と白血病研究に向けられるものである。
※UJA連盟=慈善活動、ボランティア活動、専門的なリーダーシップを通じて、カナダのユダヤ人コミュニティとコミュニティ全体の生活の質を維持し、強化することを目的とする。
NHLに限らず北米四大スポーツの選手は、
オフシーズンになると、トレーニングをしながら、
慈善事業にも積極的に参加しているんだにゃ。
こういう場での選手間の協力関係は、
日本人選手も大いに参考にすべきだと思う。
マクディビッドが他の選手と違う点
過去2回のポストシーズンで、ダージは、8シーズンで5度NHLの得点王に輝いているマクデイビッドを封じ込めるという、不本意な(うらやましい?)任務にかなりの時間を費やしました。
今では、マクデイビッドのトレーニング方法を詳しく見た結果、何が彼を動かしているのかがよくわかってきています。
「仕事熱心さが際立っているんだ」とダージは述べました。「彼と一緒に、あるいは彼らと一緒に氷の上に立ち、毎日ジムでお互いを刺激し合えるんだけど、僕が見てきた中では、どこにも引けを取らない練習をしているよ。今のところ素晴らしいグループだね。
僕たちは毎日、お互いを高め合い、向上するために少しずつ努力している。世界最高の選手たちがいて、彼らがどれだけ一生懸命働いているかを見ることは、グループ全員にとって良いモチベーションになる」。
「(マクデイビッドとは)ただ競争心があるだけだよ。僕たちは毎日笑っているんだ、ミニゲームをやっていて、まるで(プレーオフの)第7戦であるかのように戦っているからね。負けて氷から離れるときはいつも少し胸が痛むけど、勝った後は気分が良くなるよ」と語りました。
いい意味でのライバル意識
そんな中でも、相手を打ち負かそうという意志は変わりません。
「ああ、ライバル関係は夏になってもまだ続いていて、冗談を言い合ったり、毎日少しずつお互いを刺激し合うために頑張ったりしているかな」とダージは語りました。
「彼らと一緒にトレーニングできるのは素晴らしいことだし、トレードされてからは波乱に満ちた夏になったね。みんなにちょっとずついじられているんだ」。
「トレード後もライバル意識は残っている」と述べました。
ダージがコヨーテズにとって魅力的な選手となったのは、こういう競争心と持ち前の技術があったからであり、頻繁にキングスと対戦する中で、コヨーテズは彼の多くを直接目にしていたのです。
コヨーテズのフロントは、ずっとスカウティングしていた訳だにゃ。
コヨーテズは財政的規模の小さいチームだけど、若手育成に定評がある。
いい移籍だと思う。
コヨーテズGMの談話
2018年のNHLドラフトの第2巡目(全体52位)でトロント・メープルリーフスに指名されたダージは、キングスでの2シーズンを通して、レギュラーシーズン136試合で65ポイント(12ゴール、53アシスト)、プレーオフ13試合で4ポイント(2ゴール、2アシスト)を記録しました。
2022年9月5日、ロサンゼルスと契約した2年340万ドル(平均年俸170万ドル。日本円で約4億8千万円)の契約が1シーズン残っており、今シーズン終了後に制限付きFAとなる可能性があります。
コヨーテズのゼネラルマネージャー、ビル・アームストロングは以前からダージのファンであり、彼のために大きな計画を立てています。
※ビル・アームストロング=詳しくはこちら→☆。
アームストロングは「この選手が違いを生み、最初のユニットのパワープレーで勝負できると我々は考えている」と語りました。
「彼は非常に多くの機会でパックを動かせる選手でもある。そういう類の選手を見つけるのは難しいんだ。彼はパックを動かして、局面を変えられる」。
「我々はそういうプレーにワクワクしているんだ」。
コヨーテズのチームメイトと接触
コヨーテズのフロントは、彼の性格について同じように感じています。
アームストロングは語っています、「彼がどんな人間で、どんな選手なのか、チームは下調べしたよ。そして我々は、選手としても、アイスリンクから離れた1人の人間としても、彼に惚れ込んだのさ」。
一方のダージは、新しいチームに関して、まだ足慣らしの段階だと言っています。先日行われたフィル・ケッセル(右ウィング、35歳)のスタンレー・カップ・パーティーで、彼は新しいチームメイトたちに会いました。
※フィル・ケッセル=現在、無制限のフリーエージェント選手。ケッセルは2023年プレーオフ1回戦・第5戦に欠場し、レギュラーシーズンとポストシーズンを合わせても、この欠場が2009年10月31日以降初めての試合となった。
ちなみにレギュラーシーズンに限定すると、連続試合出場続行中である。2012年から毎年ワールドシリーズ・オブ・ポーカーに出場するほどの腕前を持つ。
カップチャンピオンのベガス・ゴールデンナイツに所属していたフォワードのケッセルは、2019-22年までコヨーテズに在籍しています。
「実は、ケッセルは、僕の育った家のご近所さんと一緒に暮らしているんだよ。二人の間には子供がいる」とダージはケッセルのパートナーであるサンドラ・ペレイラに言及しました。
※サンドラ・ペレイラ=カナダ出身、グルメ愛好家、動物愛好家、そして音楽愛好家であると公言。インスタグラムにはグルメブログも開設されているが、それ以外に主だった活動を知る手がかりはない。1985年生まれ説もあるが、不明。ケッセルと正式に結婚していない。
「世界がいかに狭いかがわかるよね。コヨーテズの何人かがそこにいて、冗談を言って笑ったりしていたんだ」。
人間性までチームに必要と評価されたら、そりゃ気持ちは移籍に傾くにゃ。
早速新チームメイトと打ち解けているみたいだし、
大きな飛躍を期待できそうだ。
「クールなイベントだったし、あの人たちと出会えたのもクールだったな。でも、繰り返しになるけど、この夏全体は、トレードやその他もろもろでいつもと違っている。アリゾナに行って全部見てみると、もっとリアルに感じられると思うね」。
「わくわくしているんだ」。
NHL.comのスタッフライターであるジョン・レーンが、このレポートを寄稿しました。
まとめ
コヨーテズはレギュラー・シーズン中に多くの主力を移籍させていて、一時はどうなることかとヤキモキさせられましたけど、このオフシーズン、若手有望株数名と契約を結んでおり、来る新シーズンだけでなく、それ以降を睨んでの補強は順調と言えるでしょう。
ダージは、以前からの記事にもありますように、新シーズン、かなりジャンプアップしそうな選手と早くから言われていました。ディフェンスでありながら攻撃面での貢献度が高く、得点力不足に泣かされてきたコヨーテズには持って来いの人材です。
注目は、どのラインに入るか、です。今のところ、チームにどれだけ馴染むかが未知数なため、ディフェンスのサード・ラインとされていますが、開幕前のトレーニング・キャンプでのアピールによっては、もう1ランク上がると思っています。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!