はじめに
運命のドラフトも終わり、モントリオール・カナディアンズの1巡目指名選手の評判がやたらいいのと、逆にトロント・メープルリーフスの指名選手がやたら評価低いのが印象的。でも、一番話題になったのは、アナハイム・ダックスの全体3位指名選手の表情でしょう。
「何で僕が全体3位なの?ホントいいの?」みたいなことを言いながら、家族と喜びを分かち合うのもそこそこに、とにかく驚きの表情連発。最初の記者会見では少し落ち着いていましたが。ドラフト前、あまり評価の高くなかった選手、高順位指名に度肝を抜かれたのでしょう。
この1週間、カップ戦決勝あり、NHLアワードあり、そしてドラフトで終わりかと思えば、7月1日、これまた運命のフリー・エージェント市場が解禁となりました。これから続々ドラマが生まれる予定ですが、今回は、この波乱万丈の1週間に関する記事です。
カナダ代表監督も決まったし、来年以降のドラフト指名権を担保に、
トレードも頻繁に行われているようだにゃ。
あ、ドラフトで一番ダメだったのは、フィラデルフィア・フライヤーズかも。
不可解な指名権譲渡で損ばかりしていたような…。
引用元:Sportsnet.ca「Six thoughts heading into a crazy part of the hockey calendar」
パンサーズは確かに強いけど…
NHLの6月下旬〜7月上旬にかけて狂気とも言うべきカレンダーのおかげで、いくつかの注目すべきスケジュールの真っ只中に我々はいます。スタンレーカップが授与されたばかりで、昨夜はNHL授賞式、今夜はドラフト、そして月曜日にフリーエージェントが始まります。
今日のコラムでは、1つのトピックを取り上げるのではなく、あらゆることについて少しずつ意見を述べてみようと思います。それでは始めましょう。
フロリダのスタンレーカップ
パンサーズは優勝に値するチームであり、長年にわたりチームを取り巻くイメージを変えてきた、太陽の光が降り注ぐ州のマーケットの功績も称賛したいところです。
長い間、観客席の多くを黒いシートで覆い、選手たちはそこでプレーすることを避けるために全力を尽くす(=パンサーズから他のチームへ移籍を一生懸命考える)、というジョークが続いていました。
最近では、選手たちはすぐそこに行けません(パンサーズへの移籍は難しい)。(他チームの)選手たちは、特にそこで(パンサーズで)プレーするためだけに、(契約にある)トレード拒否条項を放棄してしまいます。
チームは何度もプレーオフで上位に進出し、会場は満員になっていて、カップ戦のチャンピオンにふさわしい存在であることを示すのに、十分な実力を見せつけています。
だが、しかし。
それはさておき、カナダ人として、彼らがフロリダでカップを掲げて行進する映像を見るのは、本当につらいシーンでした。その光景は、海に行きたくなるような素晴らしいものばかりです。
カップは大西洋を泳ぎ、彼らはカップを持って桟橋にいて、上半身裸でパーティーをしていました。しかし、どのシーンでも、カップはラブラドゥードル(従順な飼い犬)のようであり、休暇を過ごすとき、グループの近くにある別のオブジェにすぎません。
通りすがりの人がカップを見て、「あら、可愛いわね」と感想を述べたりしています。
フロリダにも、カナダと同じくらい本物のファンがいます。
しかし、その量は比較にならないほど少なく、特に国民一人当たりに換算すると、国境を越えて1(あるいは十数カ所の米国市場で)、テイラー・スウィフトのような待遇をカップが受けられないのは悲しいことです。来年はどうなるのでしょう?
GM諸君、NBAに水を開けられっぱなしじゃないか!
NHLの氷外のドラマがヒートアップ
NBAは、過去5~10年間で、氷外のドラマに関して、NHLよりだいぶ先を行くようになりました。
正確には、「氷外での積極的なドラマ」と言うべきでしょう。具体的に「ドラマ」とは、ドラフト指名権の交換や選手のトレード、大型契約、スーパーチームなど、ファンが大好きなもののことを指します。
NHLはフラットキャップ(サラリーキャップの上限)によってひどく足かせをはめられてきましたが、ほとんどのファンはそれをわかっていないと思います。
トレードには必ず、給与の保持やドラフト指名権、将来のチーム構想や権利放棄などを含む「ルーブ・ゴールドバーグの装置」2が必要でした。GMの中にはほとんど努力をしていない者もいます。
まあ、キャップ上限はついに少し上昇し、プレッシャーがいくらか軽減されましたが、今後何年もの間毎年その状態が続くでしょう。COVID/エスクローの複雑さのため、上限はリーグの収益を反映していません。
上限が急上昇すると、チームは優秀な選手をキープし、他の優秀な選手とトレードし、余分な選手をロースターからすべて切り捨てる必要がなくなります。
今年の夏は、その楽しさを初めて味わえるような気がします。
サラリーキャップの上限額が高騰し続けると…
それに関連して:
持てる者と持たざる者が出て来るかもしれません。
サラリーキャップの上限と収益分配が低いため、収益と支出の点でリーグの下位にあるチームは、他のチームとほぼ同じ額を支出して競争力を維持できています。リーグ全体では、お金はほとんど問題になりません。
リーグに32チームが参加し、どのチームにもチャンスがあります。なんとも古風な趣です。
しかし、サラリーキャップが上がるにつれて、すべてのオーナーがそれにお金を使い切りたいとは思わないでしょう(上限まで支出する気がないチームを、リーグで所有すべきでないと思いますが)。
数年後に上限が1億ドル以上になった場合、上限まで支出できる一部のチームが、特に優勝争いからかなりかけ離れた位置にいて、小規模の取引しかしないチームに対して、最終的に優位に立つと思いませんか?私はそうなると思います。
無制限フリーエージェント選手の獲り方
私のUFA理論
7月1日に「買い物」をするのは、誕生日のお小遣いを持って、子供を店に連れて行くようなものです。もしかしたら、おもちゃ屋で20ドル使えるかもしれません。
子供は、A)20ドル相当の商品を一つ、またはB)20ドル相当の安っぽい小物をいくつか手に入れることができます(もちろん、子供は20ドル全額を使うでしょう)。
子どもたちがたくさんのものを欲しがるのと同じくらい、ずっと使い続けられる良いものに興味が向くよう、(親とすれば)彼らを促したいところです。
チームにキャップスペースがある場合、本当に欲しい選手を1人ターゲットにして、その選手にお金を払い、その後もっと価値の高い選手が出てくるのを待つ方がはるかに得策です。
リーフスがTJ・ブロディを1シーズン500万ドル・4年契約で獲得した時、それは素晴らしい買い物でした。
彼はその契約の最終年後半に苦戦しましたが(高齢のUFA選手を4年間で獲得すると、これは当然のことです)、残りの契約期間中はチームにとって価値ある存在だったと言えます。
しかし、ライアン・リーブスのような控え選手を他のチームより高く入札しても、価値ある選手を獲得したと言える可能性は低いでしょう。
どうしても必要な選手に少し多めに支払うのは問題ありません。しかし、3、4人の「まあまあ」な選手に50万ドルも浪費すると、結局は痛い目に遭います。
代表監督はツライよ
ジョン・クーパーとカナダ・チーム
これまで一緒にプレーしたことのない選手たちを、ほんの数試合だけ監督するために準備をするというのは、ユニークな仕事です。しかし、リーグ内でそれをこなせるコーチがいるとすれば、それはクーパー3(タンパベイ・ライトニング監督と兼任)です。
フォー・ネイションズ・フェイスオフでは、カナダ・チームは前線に選手を揃えていますが、自陣のゴールに近づくにつれて徐々に弱くなっていきます。そのため、2つの選択肢があります。
強力なポジショナル・プレーとチーム・ディフェンスに注力し、接戦で個々のスキルが発揮されるのを待つか、オフェンスに徹して(相手チーム)全員を打ち負かそうとするか、どちらかです。
私の考えでは、このようなトーナメントでは、ディフェンス面で完璧な選手などいないでしょう。お互いの居場所を把握する時間がないからです。プレーオフ・シリーズのような展開にはならないはずです。
したがって、カナダは、相手のミスがあることを承知で、自らの強みを生かし、ひたすら突き進むのがベストなのかもしれません。プレーオフを7勝6敗で勝ち抜くのは無理だとは言われていますが、短いトーナメントならできないわけではないです。
カナダ代表は、やっと「恋人」を監督に迎え入れたわけだにゃ。
現在率いているタンパベイのチーム状況から考えても、
記事にあるように、ひたすら突き進むホッケーをすると見た。
躍進著しい東欧勢に勝つには、彼しかいないでしょう。
GM達よ、もっと冒険をしよう!
そして最後に、
「ドラフトで」という話はもうやめましょう
トレード期限前後になると、関係者がいつもこう言うのを耳にします。「32チームすべてが参加するドラフトで、(ドラフトの場で、直接話し合わないと分からないから)該当選手をもっと高く買い取ってくれるかどうか見極めるために、その選手を保有し続けるかもしれない」。
一般的に、私はこの言い回しを、トレード先が見つかっていないか、所属選手との関係で、チームの方が不利な立場に立たされているGMの言い訳だと見ています。
それでは、見てみましょう!ドラフトが始まり、カップ戦の決勝戦が終わり、キャップの上限が上がり、一部の関係者は、今シーズンの狂気の時期になるかもしれないと言っています。
NBAチームは、プロテクトされていない4人分の1巡目指名権を41人の選手とトレードしていますが、これは正気の沙汰ではありません。しかし、より保守的なスポーツ(NHL)のGMの中には、リスクを1つや2つ背負う勇気を奮い起こす人もいるのではないでしょうか。
楽しい週末になりそうです。Real Kyper and Bourne5は来週、月曜日の3時間のフリーエージェント・ショーを含め、さらに3つのショーを予定しています。そのときに話し合うことがたくさんあればいいのですが。
まとめ
NBAとNHLの「格差」を感じさせる記事でした。人気ではMLSに抜かれたんじゃないか、と言われているNHLですが、各スポーツサイトではまだまだ「北米四大スポーツの一角の座」を死守しています。スタンレーカップ決勝戦の扱われ方などを見ても、やはりひと味もふた味も違います。
NBA=バスケ、MLS=サッカーは何と言ってもワールドワイドなスポーツ。一方、アイスホッケーはお世辞にもメジャーとは言えませんし、盛んに行われている国がかなり限定されているのが難点です。NHLと双璧をなすはずのKHLが、国際情勢もあって認知度がますます低くなっているのが、今後ネックになってくるような気もします。
NHL人気回復のために、レギュラー・シーズン中に別なカップ戦設置案が出されていましたが、どうなったのか。下部組織チームの選手も含め、アンダー23の選手限定とかにすれば、育成も込みでいかがかな、と。ドラフトで指名された選手の腕試しにもなるし。NHL関係者の皆さん、検討してみてください!
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- カナダと比べて、米国のホッケー熱の低さを揶揄した表現か。「十数カ所の米国市場で」とは、NHLチームを保有する州の数を表したものと思われる。
↩︎ - 1910年代にアメリカの漫画家ルーブ・ゴールドバーグが考案した連鎖反応する機械的装置。ゴールドバーグは非常に複雑で実際的でないからくりの複雑な図を描いたが、ほとんど、あるいは、まったく完成しなかったと言われている。
ここでは、非情に複雑な契約内容を揶揄した表現として使われている。
↩︎ - 2021年8月9日、クーパーは北京で開催される2022年冬季オリンピックのカナダ代表チームのヘッドコーチに任命されていたが、COVID-19パンデミックの影響でNHLが大会から撤退したため、最終的には不参加となった。
2024年6月25日、クーパーは2026年冬季オリンピックとNHL フォー・ネイションズ・フェイスオフの両方で、カナダ・チームのヘッドコーチに任命された。
↩︎ - ブルックリン・ネッツが、(やや出番を失いつつある)スター選手のミカル・ブリッジスを、ライバルのニューヨーク・ニックスへのトレードしたこと。
ブルックリンは、見返りとして2025年、2027年、2029年、2031年のプロテクト無しの1巡目指名権4つ、2028年のプロテクト無しの1巡目指名権、2025年のミルウォーキー・バックス経由の条件付きトップ4指名権、2025年の第2巡目指名権を獲得した。
↩︎ - Sportsnetが運営しているポッドキャストやYouTubeチャンネルの総称。ニック・カイプレオスとジャスティン・ボーンの2人のホッケー有識者が、メイプルリーフスとNHLについて語るのが主な内容。
ジャスティン・ボーンは、42歳のアメリカのスポーツライター。元プロアイスホッケー選手で、プロのコーチとしても活動しており、最近ではアメリカンホッケーリーグのトロント・マーリーズでアシスタントコーチを務めていた。
ニコス・「ニック」・キプレオスは、カナダ出身の元プロアイスホッケーの左ウィンガーで、58歳。NHLでハートフォード・ホエーラーズ、ワシントン・キャピタルズ、ニューヨーク・レンジャーズ、トロント・メープルリーフスで8シーズンにわたりプレー。
現在は、スポーツネットでホッケー解説者を務める。 ↩︎