はじめに
NHLの100年の歴史を辿っていくと、新旧の選手がいろいろな所で影響し合っているのが分かります。このブログで何度も取り上げた規格外の新人、コナー・ベダード(シカゴ・ブラックホークス)にも(まだ10代ですが)幼少時に影響を受けた選手がいます。
それが、今シーズン、カルガリー・フレームスからダラス・スターズに移籍したクリス・タネフです。ベダードはフォワード、タネフはディフェンスとポジションが違うのに、なぜ?と思われますが、タネフのスター性や献身的なプレーに惹かれたのでしょう。
日本スポーツ界にもある、シーズンオフの合同自主トレで2人が顔を合わせている、というのは、今回初めて知りました。お互いの印象や感想がどんなものか、ちょっと意外な組み合わせのようにも思えるがゆえに、すごく興味をそそります。
「英雄は英雄を知る」ってヤツかにゃ。タネフはカルガリーを出される際、
恨み言一つ言わず、若返りを目指すチームのために身を引いたとも報道されている。
スター選手であるのに、それを鼻にかけていないナイスガイだ。
引用元:The Athletic.com「Why Chris Tanev is one of Connor Bedard’s favorite NHL players」。
ベダードは憧れの選手と自主トレ
ダラス・スターズのディフェンスマン、クリス・タネフは、毎年夏にトロントのジムで、元NHL選手からハイ・パフォーマンス・コーチに転身したゲイリー・ロバーツ1と一緒にトレーニングをしています。
ウェイト・リフティングをしたり、シャトルラン(往復持久走)に参加したり、バトルロープ(2本のロープ(綱)を持って波打たせることで体幹などの全身の筋肉を鍛えるトレーニング)を使ったりしている間、彼の周りには、NHLで何百試合もプレーしている選手たちが普通にいます。
しかし、グループの新しい仲間の一人が、タネフの大ファンとして育ったのだとしたら、また話は特別なものになります。バンクーバー・カナックスでの10年間、ブルーラインをパトロールしていたタネフのディフェンスの存在感と身体能力の高さを彼は見守り、賞賛していました。
その仲間の名前は、コナー・ベダードと言います。
憧れの選手と「やっと」初対戦
「あんなにいい選手で、明らかにリーグで長く活躍しそうな選手にそう思ってもらえるなんて、かなりクールだよ」とタネフは語ってくれました。土曜日(4月6日)、シカゴとダラスが2ユナイテッド・センターで対決する時、ベダードとタネフは初めて対戦します。
タネフとベダードの対戦は、長い延期の後に実現します。前者がまだカルガリー・フレームズの3メンバーだった1月に、彼らは対戦する予定でした。しかし、その数日前のニュージャージー・デビルズ戦でベダードが顎を負傷し、対戦が延期されています。
この試合では、一風変わったコントラストが披露されます。辣腕の攻撃的ダイナモが、彼のお気に入りの選手の一人、同世代最高のディフェンスマンと対戦します。
「プレーしているとき、そんなことはあまり考えない」とタネフは言いました。「でも、たまには人からそう言われるのもいいものだ」。
パワープレーとはいえ、タネフ師匠の前でゴールを決めたベダードの心は、
特別な思いでいっぱいだったろうにゃ。ダラスの連勝は8でストップ、
そういうポイントになりそうな試合でゴールを決めるベダードは、
やはり持っている選手なんだな。
ベダードはカナックス・ファンだった
ベダードの攻撃の素晴らしさを考えると、例えば、ほぼ止められないドラッグ&ドライブのリストショット、スロットを突破する大胆なダイブ、洗練されたノールック・バックハンド・パス—を考えると、
バンクーバーに住んでいた子供の頃、ベダードが最も好きだったカナックス選手は、セディンの双子兄弟4、ボー・ホルバット(現在、ニューヨーク・アイランダーズ)、ブロック・ボーザー、さらにはエリアス・ペターソン(そう、ベダードはそんなに若い選手なのだ)だったと考えてもよさそうです。
しかし、ベダードは、いつもタネフの特有のスキルに惹かれていました。
「彼はまるでパックに食らいつくように見えたね」とベダードは言っています。「必要であれば、毎晩彼はパックの前に顔を出していた。だから、彼のプレーを見ているだけで、尊敬の念を抱いたよ。セディンのことも好きだったけど、(タネフのプレーは)かなりクールだと思った。
ああいうチームをいつも見ていると、ああいう選手がいることに気づくんじゃないかな」。
タネフの憧れの選手とは
この対比は、どの選手にも当てはまります。子供の頃に好きな選手を聞かれると、タネフはためらうことなくスティーブ・アイザーマン5と答えていました。
「僕はずっとレッドウィングスの大ファンだった」とタネフは言います。「祖父がレッド・ウィングスのファンでね。僕をレッドウィングスに夢中にさせたんだ。90年代半ばから後半にかけて、彼らはとても良かったし、その頃から僕はホッケーを少し理解し始めたんだ。
私はすでにウィングスのファンになっていたね。アイザーマンを好きになるのは簡単だった。スタンレーカップ。どれだけ彼が一生懸命プレーし、どれだけ熟練していたか」。
プレーオフになかなか進出できなかったレッドウィングスの
「デッド・シングス」時代を打ち破ったのが、アイザーマンなんだにゃ。
タネフだけでなく、多くの少年のハートを捉えた90年代のNHLを代表するビッグ・スター。
フロント入り後も、チームを支え続けた名選手だ。
「みんな同じ人間だからね」
ベダードは夏にトロントでタネフと練習し、知り合えたことは「クール」だったと語っています。子供の頃のヒーローが、大人になってから同業者となり、さらにはチームメイトや友人になるのは、若い選手にとって成長の過程でいつも不思議なことです。
ベダードのNHLでのキャリアは、開幕戦のフェイスオフでシドニー・クロスビーと対戦したことから始まりました。また、コナー・マクデイビッドやオーストン・マシューズとも2度対戦しています。
すでに何年もスポットライトを浴びている18歳でさえ、ウォームアップや夏のトレーニング・セッションでのちょっとしたおしゃべりにせよ、最初は少し畏敬の念を抱くかもしれません。「最初は少しね」とベダードは言いました。
「でも、結局のところ、みんなただの人間なんだよね。(子供の頃に)見て育った人に出会うと、その人は自分と同じだったり、いろんな意味でみんなと同じだったりする。そう、誰もみんな人間なんだ。もちろん、それは素晴らしいことだけど、すぐに理解できるようになるさ」。
スーパースターの通るべき道
タネフはワークアウト・セッションの時からベダードのことを褒めており、彼の謙虚さと労働倫理を称賛し、彼が若くしてスーパースターとなったプレッシャーにどのように対処すべきか、についても言及しました。
「あれはゲームの一部だ。マクデイビッドにも、クロスビーにも起こった。(アレックス・)オベチキン、(マルク=アンドレ・)フルーリーにも起こったことだ」と彼は言っています。「数え上げればきりがない。
スーパースターで、ドラフトされる何年も前から噂されるようになれば、それは当然のことだと思う。彼らはそれを理解していると思うし、11歳、12歳の頃から対処してきたから対処する能力があるんだと思う。彼らは他の誰よりもずっと早く成熟しなければならなかったんだ」。
少なくとも、ベダードはあまり厳しく事前スカウトを見る必要はないでしょう。ベダードが見て育った男・タネフに関して、特にそうです。
「何人かの選手については、確かにそうだ」と彼は言う。「彼らのちょっとした傾向とか何となく知ってるだろ。しかし、試合中、何が起こるかはわかりません。ただ、最高の選手たちと競い合うのも、ベンチから見ているだけでも楽しい。
NHLでプレーするために何が必要かについて、間違いなく多くのことを学ぶことができる」。
まとめ
シーズン中に顎の負傷があって休んでも、ベダードはペースを落とすことなく、シカゴの中心選手として君臨したことが凄い。ドラフト全体1位指名は伊達じゃないと同時に、その順位で指名される選手のポテンシャルは並大抵じゃ無いことも分かります。
タネフが彼の才能を見抜いていて、認めているのが記事からもうかがえます。さらに、これからも学び続けること、最高の選手達の中でもっと揉まれることも、先輩として指摘しているのが重要点。有頂天になるな、天狗になってはいけない、とやんわりと述べていますね。
古豪復活のために、シカゴは新たな選手を招き入れるでしょうから、2年目以降、チームでのステータスも変わり、ベダードにチームを引っ張る責任もかかってくるはず。シーズン終了後、ベダードが先輩達から何を学び、さらに大きくなるか。
今からそれを楽しみにさせてくれる選手、ベダードはやはり「スーパースター」なのです。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- 彼については、このブログで以前触れている。詳細はこちら→☆。
↩︎ - 4月6日の試合結果は、3-2でシカゴ・ブラックホークスの勝利。タネフのアイスタイムは18分14秒、この試合ではチーム3位。ベダードは、第2ピリオド・4分48秒にチームの先制点を挙げている(パワープレー)。
↩︎ - 2024年2月28日、ニュージャージー・デビルズも関与した3チーム間で、タネフはダラス・スターズにトレードされている。まず、カルガリーによってコール・ブレイディとのトレードでニュージャージーへ。
2026年NHLドラフト第4巡目指名権と交換で、ニュージャージーからダラスへトレード。このトレードについては、ブログで以前触れている。詳細はこちら→☆。
↩︎ - 彼らについては、このブログで以前触れている。詳細はこちら→☆。
↩︎ - 彼については、このブログで以前触れている。詳細はこちら→☆。 ↩︎