はじめに
どのチームも開幕から10試合ほど消化し、予想外の成績を収めて上位に行くチームもあれば、その逆に予想に反してイマイチ調子の上がらないチームもあります。やはり、補強と育成のバランスが上手く行ってるチームほど、ランキングも上という感じになっています。
そして、予想通り成績の上がらないチームもチラホラ…。その筆頭格は、いまだに勝利のないサンノゼ・シャークス。そして、開幕直前、電撃的に監督交代を行ったコロンバス・ブルージャケッツがそれに続くのではないでしょうか。
強制的に選手のプライベートを探ろうとした前監督解任の後、新指揮官となったのはパスカル・ヴィンセント。フィラデルフィア・フライヤーズの監督と同様、ドライな彼はザクザクとチームにメスを入れ、新たなスターを発掘しているようです。
成績が振るわないと、シーズン終盤に少しずつ若手を起用していって、
来季に備える…ってのが定石なのに、
ヴィンセントは早くもチーム改造に取りかかってるんだにゃ。
この人、ホント容赦ない。
引用元:sports.yahoo.com「Columbus Blue Jackets: Gaudreau’s benching tops 4 things we learned in loss to Capitals」
調子の悪い選手には容赦ない新監督
ブルージャケッツのトレーニングキャンプ初日、パスカル・ヴィンセント1は、プレー時間の基準を設定しました。
アイスタイムは与えられるものでなく獲得するものであり、それはすべてのプレーヤーに適用されます。そのパフォーマンス基準を確立して以来、NHL初監督である彼は、何度か行動で言葉を裏付けてきました。
2021年NHLドラフト全体5位指名されたケント・ジョンソン2は、11月3日(金曜日)、AHLにプレーの場を移す前、ヘルシー・スクラッチ3として2回登録されています。
ジャック・ロスロビッチ4はヘルシー・スクラッチとして1試合に登録され、第4ラインから第1ラインへ上がるための努力を必要とされています。
6月に8年・総額5,000万ドル(日本円で約75億円)の契約を結んだデイモン・セバーソン(ディフェンス、29歳)は、(キャピタルズ戦の)第3ピリオドを全休(リンクに出してもらえなかった)しています。
昨シーズン、ルーキーとして21ゴールを記録したキリル・マルチェンコ(右ウィング、23歳)は、序盤の得点力不振のため2試合欠場しました。
大スター選手にも容赦なし!
これらは開幕からの10試合中に起こったことなので、11月4日(土曜日)の夜、キャピタル・ワン・アリーナで、ワシントン・キャピタルズに2-1で敗れた11試合目・第3ピリオドに起こったことは、大きな驚きではないはずです。
ジャケッツが1点ビハインドで迎えた2度のパワープレーを含め、最後の16分7秒、ヴィンセントは、苦戦していたスター選手、ジョニー・ゴードロー(左ウィング、30歳)をベンチに座らせました。
そのメッセージは、またしても明確だったのです。
「私がチームを指導しているんだし、出場すべき選手が出場するはずだ」とヴィンセントは言いました。
「すべては自分で勝ち取らなきゃいけない、試合が始まると名前なんて関係ないよ。大事なのは、チームのジャージを着る前に何をすべきか、チームの中の誰が勝つチャンスを与えてくれると確信できるか、なんだ」。
ブルージャケッツが勝つためには、ゴードローの最善の努力が必要です。今は完全停止の状態なのです。
昨シーズンもゴードローはチームに馴染めていたかと言えば、そうでもなかったにゃ。
スーパースターで実力のある選手なだけに、
最近振るわないコロンバスでイライラが募っているのか。
「彼のプレーは嫌いです」
これまでのところ、彼は1ゴール(エンプティ・ネット)、4アシストにとどまっており、金曜日のコロンバスでの練習を私用で休んだため、ワシントンでチームに合流することを余儀なくされました。
その後、ゴードローは(ワシントン戦で)わずか11分55秒しか滑らず、第3ピリオドでは2シフト(2回)しかリンクに入れず、チームはキャピタルズの猛烈な勢いを持ったゴールキーパー、チャーリー・リンドグレン(35セーブ。30歳)相手に同点ゴールを目指していました。
ヴィンセントの評価でいけば、ゴードローの努力はチームに十分貢献していると言えなかったので、これまでのところ、苦戦してきた他のブルージャケッツのメンバーと同じ扱いを受けています。
ゴードローのスター選手としての地位と、7年・6800万ドル(約102億円)の契約は、1オンスも重くのしかかってきませんでした。
「ジョニーがスケートをしている時や、チームに関わっている時に違いを生み出せると知ってるが、今夜、彼がそこにいないように、僕には感じられたね」とヴィンセントは言っています。
「誰であろうと関係ない。ブルージャケッツというチーム全体について言ってるんだし、彼のプレーは好きじゃなかった」。
このような淡々とした評価を耳にしたブルージャケッツのメンバーは、ゴードローが初めてではないし、最後でもないでしょう。基準は決まっていて、どのブルージャケッツの選手も同じです。
生まれ変わったゴールーキーパーの将来は明るい
ワシントンで学んだことを3つ紹介します5。
エルヴィス・メルスリンキンスは、コロンバス・ブルー・ジャケッツでのトップフォームを着実に取り戻しています
ゴールキーパーのエルヴィス・メルスリンキンス(29歳)が着実に成長していることは、ブルージャケッツにとって最も心強い進展の1つです。
29歳の彼はキャリアの中で最悪のシーズンを終え、夏が過ぎて、観客を変に煽る男から、ファンの歓声やブーイングなどもはや気にしない男へと変貌を遂げようとしています。また、彼の背後を通り過ぎようとしたゴールは、だいぶ外へうまく転がされるようになりました。
これは間違いなく、ゴールキーパーにとって最も磨くのが難しい「技術」です。
メルスリンキンスは(パックの)バウンドを受け止めることを学び、”悪い”ゴールは消し去りました。
29歳…ゴールテンダーとしては一番いい時期であり、一番重要な時期かもしれないにゃ。サッカーと同じでキーパーの選手寿命は長い。
この年齢をどう過ごすかで、この先10年間が決まると思う。
メルスリンキンスはいい変化をしていると言えるだろう。
成績は昨シーズンよりアップ
メルスリンキンスは2021年に5年・2700万ドル(約41億円)の契約延長したことで、ブルージャケッツ期待のナンバーワンGKに成長しているようです。
キャピタルズ戦では、試合開始20秒の素晴らしい2セーブ、トム・ウィルソン(右ウィング、29歳)のペナルティショット6を止め、第3ピリオドでのアレックス・オベチキン(左ウィング、38歳)に対するガッツあふれるプレーなど、重要なセーブを何度も決めています。
「プレシーズンから(ワシントンのことを)覚えているし、正直に言うと、試合前、ここ(ベンチ)に座って『エルヴィス、準備しろ、すぐに(相手が)襲い掛かってくるから』と自分に言い聞かていたんだ」とメルスリンキンスは語りました。
「彼らは時間を無駄になんかしない。…すぐに(私を)襲ってくるのはわかっていたよ」。
27本のシュートで25セーブを記録したメルスリンキンスは、昨シーズンの自己ワースト(平均失点数4.23、セーブ率.876)から大幅に改善された平均失点数2.86、セーブ率.905を記録しています。
「僕はただ楽しくホッケーをして、そんな自分を楽しんでいたいね」とメルスリンキンスは言いました。「季節は早いもので、それは…まばたきを1回すればクリスマスだね。2回まばたきしたら、もうオールスターだし、それは出るか出ないかのどちらかさ。
そして、もう1回まばたきをすれば、もう35歳になっていて、プレーオフでプレーしたいと思うようになってるかもね。カップを勝ち取りたいな。これが、僕たちにとってホッケーをしている主な目的さ。というか、少なくとも、そのためにプレイしているんだ。
いつかあのカップを掲げたいよ」と話しています。
そのゴールは、まだブルージャケッツにとって遠い先のことのようですが、トップゴールキーパーが再びNo.1バック・ストップとしてプレーすることは大きなことです。
22歳のパワーフォワードがチームの危機を救うか
コロンバス・ブルージャケッツ、イゴール・チナホフをパワーフォワードと見る
イゴール・チナホフ(右ウィング、22歳)は、NHLでの最初の2シーズンを怪我で欠場し、7今年の夏には背中の張りでトレーニングキャンプ、プレシーズン8試合すべて、そしてレギュラーシーズンの開幕を欠場しました。
キャピタルズとの試合は(彼にとって)昨年12月以来のNHLでの試合であり、チナコフは良い意味でコーチングスタッフの注目を集めたのです。
彼のスケーティング・ストライドは最高の状態(歩幅の大きい状態)に戻り、パックへの強さは印象的でしたし、チナホフのリストショットはいつだって(相手にとって)絶叫ものです。
弱冠22歳で、2020年の全体21位指名の彼は、好奇心を掻き立てる何かと潜在能力を秘めています。いったいどんなフォワードなのでしょうか。彼はブルージャケッツの(将来に向けての)計画のどこに当てはまるのでしょうか。彼の能力の最高値と最低値はどれくらいでしょうか。
チナホフが健康でいなければ、その答えは出ませんが、ジャケッツのコーチング・スタッフと経営陣は早い段階でその(将来への)イメージを持っています。
ジョンソンといい、チナホフといい、
コロンバスには若手のいいシューターが揃っているにゃ。
どうりで「ゴードローは好きじゃないんだ」って監督が言うわけだ。
でも、ゴードローもまだ30歳なんだけどね…。
冷徹な監督もメチャクチャ期待している
「彼は強い男なので、スキルのあるパワーフォワードになれると思うよ」とヴィンセントは言いました。「スケートができるし、強くパックを撃つことができる。おそらく我々のチームで、彼は最高のリストショットを持っている、パワフルなんだ。しかも、正確なのさ。
だから、彼は得点できるんだけど、試合の厳しさはそれ以上のものだ。チームでの役割の中で、彼が圧倒的な力を発揮する瞬間を見てきたから、彼がNHLで何ができるか、我々はまだ評価中なんだよ」。
チナホフはブルージャケッツに戻ってきたことを嬉しく思っており、イワン・プロヴォロフ(ディフェンス、26歳)のちょっとしたアシストを受けて、初めて英語のみのインタビューで、チームへの帰還について言及しました。
「7ヶ月も(NHLで)プレーしていなかったので、とても嬉しいよ」とチナホフは述べています。「(故障明けの)スタートは大変だけど、日々改善されていくと思う」。
まとめ
3人の若手が順調に育てば、コロンバスの未来は明るいものと言えます。しかし、大型契約で獲得したゴードローをはじめとする「昨シーズンのレギュラー・クラス」と、新監督との間で何かトラブルが起こらなければ…という条件付きです。
一旦、トラブルが起きてしまうと、 どんなに監督をはじめとするスタッフが種をまき、水をやっていたとしても、その努力よりチーム内を落ち着かせる方が優先されますから。チームが空中分解してしまっては、冷静な判断で行われる育成計画も水の泡と化します。
シカゴ・ブラックホークスのコナー・ベダードに勝るとも劣らない才能を持った、アダム・ファンティリもいるコロンバス。彼らを育てる役割について、ベテラン達とじっくり話し合うことを、ヴィンセントが必要だと思って欲しいところです。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- カナダ、ケベック州ラヴァル出身、52歳。現役時のポジションはセンター。NHLでのプレー経験はなく、2011年、ウィニペグ・ジェッツのアシスタント・コーチ職がNHL初登場となる。2021年からコロンバスに移り、2023年9月監督に就任。
↩︎ - 21歳のセンターで、昨シーズン、79試合に出場し、16ゴール・24アシストを記録している。今シーズンは開幕から不振続きのため(9試合、1ゴール・2アシスト)、AHLのクリーブランド・モンスターズへ降格となっている。
ヘルシー・スクラッチに登録されたということは、チームに帯同しているが、ほぼ「試合で使えない選手」扱いとなる。
↩︎ - ロースター登録には含まれているものの、負傷など健康状態に問題がないにもかかわらず、試合に出場できるアクティブ登録には含まれない選手のこと。通常、試合日のアクティブ登録から外されるのは故障者であることが多い。
↩︎ - 26歳のセンターで、昨シーズン、77試合に出場し、11ゴール・33アシストを記録している。ヘルシー・スクラッチだけでなく、第4ライン行きは監督のファースト・チョイスになっていない現状を指す。
↩︎ - 引用元では、3番めに前述ケント・ジョンソンのAHL降格を記事としているが、長くなるので今回はカットとした。
記事の内容を要約すると、ジョンソンがトレードに出されるのではないかとの悲観的意見の多い中、監督は「彼の将来のために行ったこと、彼を信じている」と答えている。ジョンソンはAHLで結果を出しており、NHL復帰もさほど遠くないと言われている。
↩︎ - オフェンス側に決定的な得点チャンスがあった場合、ゴールテンダーの反則により得点できなかったと主審が判断した場合に与えられる。
しかし、アイスホッケーの場合、サッカーと異なり、ゴールテンダーのプレーは護られ優先されるため、よほど悪質な反則でない限り、他のプレーヤーを2分間退場させることが多い。よって、試合中、ペナルティショットはほとんど見られない。
↩︎ - 2021-22シーズンからNHLでプレー、同シーズンは62試合出場、7ゴール・7アシスト、22-23シーズンは30試合出場、4ゴール・9アシスト。
次のパンサーズ戦(日本時間11月7日午前中)に続けて出場するかどうかが、現地では話題となるくらい、期待の若手選手なのである。 ↩︎