17歳の中国のアイスホッケー選手、2024年NHLドラフトに登場!

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はじめに 

 久しぶりの前・後編記事でNHLの歴史を振り返った後、今度は「NHLの未来」を担ってくれそうな若手選手の記事をお届けします。しかも、我々日本人と同じアジアの同胞が、厳しい競争世界のNHLに堂々と乗り込もうとしているのです。 

 17歳のケビン・フー選手は、NHLの下部組織リーグで、フォワードとして申し分のない働きをしており、記事中にも出てくる現在の評価順位なら、おそらく3巡目辺りで指名される可能性を持っています。 

 もし指名された場合、ドラフト終了後、結構手厳しい「YouTube評論家」の皆さんがどんな評価を下すのでしょうか。 

讃岐猫
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引用元:NHL.com「Color of Hockey: He could be highest China-born player taken in NHL Draft

中国出身選手、2人目のドラフト指名となるか

 ウィリアム・ダグラスは、2012年からThe Color of Hockeyのブログを書いています。ダグラスは2019年にNHL.comに入社し、スポーツに関わる様々な人種について執筆しています。

 今回、オンタリオホッケーリーグのナイアガラ(・アイスドッグス)の17歳のフォワード(左ウィング)、ケビン・フーを紹介しています。中国生まれの選手としては、史上2人目のNHLドラフト指名選手となるかもしれません。

ケビン・フー、最初のドラフト指名選手と出会う

ケビン:「数年前、トロント郊外のフォード・パフォーマンス・センター(トロントメープルリーフスと、その傘下チーム、AHLのトロント・マーリーズの公式練習施設)でホッケー選手の練習を見て、驚きと誇りに満たされたことを覚えている」。

 「パフォーマンス・センターのジムでワークアウトをしていたら、大きなガラス張りの壁があり、誰が氷の上にいるかがわかるんだ」と彼は言いました。「覗いてみたら、『なんてこった。クレイジーだ』って」。

 そこには、NHLチームからドラフト指名を受けた初の中国出身選手、アンドン・ソン(ディフェンス、27歳)の姿がありました;ソンは2015年のNHLドラフト6巡目(全体172位)でニューヨーク・アイランダースに指名されています。

  「ある時、ソンが僕のコーチの一人と一緒に滑っているのを見たことがある」と彼は言いました。「それはかなりクールな瞬間だったね」。

 彼は、ソン以来の中国出身選手としてNHLドラフトで指名される可能性があり、おそらく史上最高位となるでしょう。

讃岐猫
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ケビンの現在の状況

 オンタリオ・ホッケー・リーグのナイアガラに所属する17歳のフォワードは、6月28〜29日にラスベガスで開催される2024年のNHLドラフトの対象となる、北米スケーターのNHLセントラル・スカウティング中間ランキング89位1にランクインしています。

 「それは僕と僕の家族にとって大きな意味があるだろう」と彼は言いました。「僕が若い選手たちのロールモデル(一般的に考え方や行動の規範になる人物)やインスピレーションになれることは、僕にとって本当に特別なことだと思うし、信じられないことだと思う」。

 ドラフトで指名されたとき、ローレンスビル(ニュージャージー)スクールの2ディフェンスマンだったソンは、NHLのレギュラーシーズンの試合に出場したことはありません。ケビンの方がチャンスがあると考えている人は増えています。

 ケビンは、昨シーズン、66試合で34ポイント(21ゴール、13アシスト)でチームのポイント・ランキング5位のスコアラーになった後、今シーズン、64試合で53ポイント(31ゴール、22アシスト)でナイアガラのポイント・ランキングのトップに並んでいます。

ケビンの映像です。

ケビン所属チーム監督の談話

 ナイアガラのベン・ブードロー3監督は、過去2シーズンで監督やコーチが何人か交代し、20チームあるOHLで最下位(17勝40敗7延長負け。ディビジョン、カンファレンス、リーグ、全てで最下位)に沈んでいるチームにおいて、ケビン(5フィート11=身長183センチ、182ポンド=体重83キロ)は明るいスポットになっていると語りました。

 「連敗中であろうと、悪い試合であろうと、ボコボコにされようと、どんな状況であろうと、ケビンの努力のレベルは変わらないよ」と、ライアン・クワバラ4が解雇された後、11月10日にナイアガラのコーチになったブードローは言っています。

 「ケビンに欠けているのは、トップ争いをするチームでプレーして、スポットライトを浴びたことがなく、そのチームにいるようなハイエンドな選手と一緒にプレーできていないことだ」と、元NHLコーチのブルース・ブードロー5の息子であるブードローは言いました。

 「ケビンはその負担を一人で背負わなければならなかった。最終的に彼をドラフトする立場の人にとって、この選手は貴重な存在になるだろう。彼はインパクトのある選手になるはずさ。彼は間違いなくプロのホッケー選手になるよ」。

讃岐猫
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監督以外の評価は…

 NHLセントラル・スカウティング・ディレクター6のダン・マーによると、スピードとスケーティング能力が彼を魅力的な有望株にしていると語っています。

 「彼にはクイックネスと加速力があるから、パックを持ったら、相手を引き離すことができる」とマーは言いました。

 「そして、状況を変えるためのスピードもある。彼はそのチームのファースト・ラインに入れるはずだ。スケーティングとホッケーのセンスは、彼の2つの最大の財産です」。

 引退したNHLフォワードのアンソニー・スチュワート7は、2月に「ロッド・モーフッド(ナイアガラ出身で、20年以上地元スポーツのアナウンスと取材を担当)とのナイアガラ・スポーツ・レポート(ラジオ番組)」で「彼はNHLで20ゴールを決めるだろう」と語っています。

 「人々は派手さ、スピード、爆発性を見ますが、私にとって、成功するホッケー選手を判断する材料は、労働倫理を持っているかどうかだけです」とスチュワートは、トロント地域でのユースホッケー時代からの観察に基づいて、NHL.comに語りました。

「彼は、ジムから引きずり出したり、氷の上から引きずり下ろさなければならないような選手だ(つまり、歯止めをかけないと、ずっと練習し続ける真面目な選手)。

 …比較するつもりはないが、ヤロミール・ヤグルが試合に向けて細かい部分まで準備していたように、ケビンは試合に向けて小さなことをすべてやっている。ですから、彼が成功しているのはまぐれではないよ」。

ケビンをホッケーの道に誘ったのは父親

 彼のホッケーの旅は、彼の生まれた北京で始まりました。

 父親のジェイソン・フーは、定期的に息子をローラーブレードに連れて行っていたようです。ニューブランズウィックの大学在学中にホッケーの魅力にとりつかれた父親は、息子にスポーツ(ホッケー)をやらせたかったのです。

 4歳の時、父親に連れられて、北京のショッピングモールの小さなリンクでアイススケートを始めたと言いました。ケビンは、6歳の時、家族がモントリオールに引っ越した後、組織化されたホッケーを初めて味わったと言っています。

 「僕はいつも速かったし、顔を吹く風の感触が大好きで、特に子供の頃はエネルギーに満ち溢れていたんだ」とケビンは言いました。「飛べるような気がしたんだ。今日に至るまで、スケートは僕の最大の特長のひとつだと思うよ」。

 ホッケーのスキルを身につけることに加えて、北京では主に北京語を話していたため、カナダに到着したとき、2つの言語を学ばなければならなかったと言っています。

 モントリオールの学校でフランス語を学び、コネチカット州の親戚の家に数ヶ月住んだときに英語を学びました。

 「英語もフランス語も大変でしたが、若いうちはすぐに覚えるものです」と、今では3ヶ国語を流暢に話すケビンは言います。

 ケビンが12歳のとき、家族はトロントに引っ越し、そこで彼はノースヨーク(・レンジャーズ。オンタリオ・ジュニア・ホッケーリーグ所属)AAAプログラム(U-16の一部門)でエリートレベルのホッケーを始めました。

 ノースヨークのU-16 AAAチームの16試合で25ポイント(13ゴール、12アシスト)を記録した後、ナイアガラは、2022年のOHL優先選択ドラフトの第2巡目(全体25位)でケビンを指名しました。

 彼のプレーは、デトロイト・レッドウィングスのセンター、ディラン・ラーキンやニュージャージー・デビルズのフォワード、イェスパー・ブラットに似ていると言われています。

 しかし、ケビンがもっと若い頃、1991〜2003年までバンクーバー・カナックス、フロリダ・パンサーズ、ニューヨーク・レンジャーズでNHL702試合出場、779ポイント(437ゴール、342アシスト)を記録した殿堂入りフォワードのパベル・ブレ8を手本にしようとしました。

 「僕の父はホッケーをたくさん見ていて、パベル・ブレは彼のお気に入りの選手でした」と、4月30日に18歳になるケビンは言っています。

讃岐猫
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ケビンの目標は…

 「僕と父は一緒にブレのハイライト映像を見始め、彼のスケーティング能力は信じられないほどでした。彼がカナックスで成し遂げたことは、ほとんど並外れたものでした」。

 スチュワートが議長を務める非営利団体であるHockey Equality(ホッケーというゲームのあらゆるレベルで多様性を生み出すことを目的とする組織)のボランティアとして、ケビンは、将来の世代の選手を鼓舞するために働いています。

 その使命は、若いBIPOC(様々な人種)の選手、少年少女に影響を与える財政的およびその他の障壁を指導し、引き下げることにより、このスポーツを成長させることです。

 「尊敬する選手がたくさんいるんだ。例えば(ダラス・スターズのフォワード)ジェイソン・ロバートソンとか、そういう選手のことさ」とケビンは言いました。

 「尊敬する人や指導してくれる人を求めている若い選手たちのため、それこそが、僕がその一員(尊敬されるような選手の一人)になりたい理由のひとつなんだ」。

まとめ

 アイスホッケーの競技人口が減っているのは、アジア・日本だけでなく、各国の悩みの種らしいです。17歳のケビンが「若い選手たちのために」と言っているのは、おべんちゃらでも何でもなく、この競技の存続を賭けた闘いに身を置いている人の言葉なんじゃないでしょうか。

  NHLはケビンの母国・中国を強化対象にしており、この流れとケビンのドラフト指名→リーグでの活躍がドッキングすれば、中国では一気に盛り上がりを見せるかもしれません。人口の多い国ですし。

 韓国も元々リーグを持っていて、力を入れている競技のはず。アジアにおける、そういうアイスホッケーの良いニュースが日本にバンバン流れてくる状況になれば、また変わってくるような気もします。まずは日本代表、頑張ろう!海外での公式戦勝利が1番の薬なのです。

讃岐猫
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【註釈】

  1. 詳しくはこちら→
    ↩︎
  2. ニュージャージー州のローレンスビル・スクールで3年間(2012〜15)、その後マサチューセッツ州アンドーバーのフィリップス・アカデミーのチームで1年間、ソンはそれぞれプレーしている。

     2018-19シーズンからECACのコーネル大学に加入する前、2016年のUSHLエントリードラフトで総合160位に指名され、マディソン・キャピトルズで2シーズンプレー。それ以降の記録が不明で、残念ながら引退したものと思われる。
    ↩︎
  3. カナダ、オンタリオ州出身の39歳。現役時のポジションはセンター。NHLだけでなく、AHLの下部リーグにあたるECHLでのプレー経験もほとんど無い。ECHLのフォートウェイン・コメッツをリーグ優勝させた実績を買われ、アイスドッグス監督に就任。
    ↩︎
  4. 元日本代表、桑原ライアン春男のこと。51歳。カナダ、オンタリオ州出身。父親が日本人、母親がカナダ人。コクドや日本製紙クレインズの他、イギリスや韓国でもプレー経験がある。ナイアガラは初監督チームだった。
    ↩︎
  5. 現在、NHLで絶好調のバンクーバー・カナックスの前監督。2022-23シーズン途中に成績不振のため解任。900試合以上を指揮した監督の中で、NHL史上2番目に高い勝率を誇る。詳しくはこちら→
    ↩︎
  6. シーズン中の特定の時期にNHLエントリードラフトの候補者をランク付けするNHL内の部署。選手は、NHLのプロの試合にどれだけうまく適応できるかに基づいてランク付けされる。1975年設立。
    ↩︎
  7. カナダ、ケベック州出身、39歳。現役時のポジションは右ウィング。NHLやKHLでもプレーしているが、AHL等の下部リーグが中心。2010-11シーズン、アトランタ・スラッシャーズ在籍時がキャリアハイ(80試合出場、14ゴール、25アシスト)。
    ↩︎
  8. 詳しくはこちら→↩︎
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