はじめに
これからドラフトにかかる「金の卵達」に、避けて通れない難関があります。NHLスカウティング・コンバインがそれで、彼らの運動能力やメンタル面での成熟度具合を測定するものです。招待制なので、会場に訪れた選手達はまずドラフトにかかると見て間違いありません。
全体1位指名候補であり、サンノゼ・シャークスが指名すると見られているマックリン・セレブリーニ(ボストン大学、センター)も当然参加しているのですが、どうも数値があまり良くなかったようです。映像を見ると、注目の度合いも半端なく、緊張したのかもしれません。
それを差し引いても、「金の卵No.1」はあまりにも苦戦し過ぎのような気もするのですが…。今回は悩めるセレブリーニの悪戦苦闘ぶりを追いかけます。
何だかんだ言っても、まだ18歳の若武者、
「いい成績を挙げなきゃ」と変に気負っても仕方ないにゃ。
シャークスもその辺は織り込み済みだろうから、
育成プログラムとか組んでいるんじゃないかな。
引用元:Sports.Yahoo.com「How Celebrini stacked up in NHL Scouting Combine fitness tests」
精密に測るのもいいけれど…
2024年NHLスカウティング・コンバイン(ドラフト候補生に対する運動能力及びメンタル・テストの名称)のフィットネス・テストは、マックリン・セレブリーニが望んだようには始まりませんでした。
最初に身長の計測が行われ、セレブリーニの身長は6フィート(約183センチ)と記載されていたのですが、実際は5フィート11と3/4インチ(約180センチ、1フィートは12インチ)で、6フィートにわずかに足りませんでした。
切り上げてくれよ、坊や。
「ああ、あと少しだった。ちょっとがっかりしたよ」とセレブリーニは言い、悔しそうに首を振りながら言いました。
シャークスにまもなくドラフト全体1位指名されるこの選手は、Yバランス、握力、酸素摂取量(VO2)、立位高さ、両腕を広げた時の長さ(ウィングスパン1)、水平跳び、垂直跳び、ノーアーム・ジャンプ、スクワット・ジャンプ、ベンチプレス、
プロ・アジリティ・テスト(敏捷性)、懸垂、ウィンゲート・テストなど、10以上のテストを受けています。
これらのテストのほとんどは、メディアに公開されました。
以下に、各公開テストのビデオ(上記引用元参照のこと)、そしてセレブリーニと他の選手との比較を示します。
NHLは、Yバランス(片足立ちからの動的運動を測定する検査で、筋力、柔軟力、体幹力、体性感覚などがしっかりと機能しているかをチェック)を除く各テストのトップ25を公開しています。
持続力はあるみたい
VO2テストは昨日行われ、セレブリーニは有酸素フィットネス・テストで高い評価を受け、テスト時間(12:35)で24位(テストを受けている時間が長いほど良い)、 VO2 Max2 (63.0)で4位となりました。
セレブリーニは、左手と右手のどちらのグリップでもランクインしませんでした。
彼の体脂肪率は7.64で、コンバインでは20位と優秀です。
いずれにせよ、これらの個々の結果についてはあまり心配しないでください。シャークスの将来の顔は、どちらかといえば、彼のすべての部分の総合計で語られるべきなのです。
最も重要なことは、彼が素晴らしいホッケー選手だということです。
「改善すべき点がたくさんあることはわかっている」とセレブリーニは言いました。
心配するな、マックリン。
ちょっと体重オーバーかな?
身長/両腕を広げた時の長さ(ウィングスパン)
セレブリーニは、身長が6フィート弱の5フィート11と3/4インチだったことに、明らかにがっかりした様子でした。体重は190ポンド(約86.2キロ)と公称されていましたが、それより重い197ポンド(約89.4キロ)を計測しています。
彼のウィングスパンはトップ25に入りませんでした。
水平跳び
セレブリーニは97.75インチのジャンプを成功させていますが、ここでは平均以下かもしれません。ディフェンスのEJ・エメリーが123.0でトップでした。
垂直跳び/ノーアーム・ジャンプ(腕の振り無し)/スクワット・ジャンプ(しゃがみ姿勢からの垂直跳び)
セレブリーニのジャンプは15.81インチを記録していますが、これはトップのエメリーの垂直跳び(27.23)やノーアーム・ジャンプ(23.57)には程遠いものでした。フォワードのジャック・プリダムは19.52のスクワットジャンプでトップに立っています。
これは、セレブリーニのバスケットボール・スキルに関する主張に、疑問を投げかけるものでした。
「かなりいいと思うよ」とセレブリニは言っています。
しかし、ゴールデンステート・ウォリアーズのスポーツ医学およびパフォーマンス担当ディレクターである彼の父、リック・セレブリーニは、もう少し批判的でした。
「でも、僕がプレーするたびに、父はバスケットボールをしているホッケー選手のようだと言うんだ」とマックリンは言っています。
敏捷性に欠ける…体重のせい?
ベンチプレス
セレブリーニは6月13日現在18歳で、年齢の割には肉体的に成熟していると言われており、ベンチプレスのパワースコア6.51がそれを証明しているようです。
それで彼は20位になりました。
プロ・アジリティ・テスト3
セレブリーニは左に4.8秒、右に4.73秒というタイムを記録しており、ここにも改善の余地が残っています。ディフェンスのスティアン・ソルベルグは、左に4.12秒、右に4.08秒というタイムで、皆を驚かせました。
プルアップ(懸垂)
しかし、セレブリーニはここで堅実なプレーを見せ、懸垂は10回で2桁に到達しています。
セレブリーニは11回できていれば、トップ25に入っていました。ディフェンスのジーヴ・ブイウムが16回でトップに立っています。
「挑戦したかった」とセレブリーニは、なかなか手に入らなかった「11回」について語りました。「でも、もう何も残っていなかったよ」。
ウィンゲート・テスト4
ウィンゲートは無酸素フィットネス・テストで、選手のパワーと疲労を測定します。
セレブリーニは、3つのカテゴリーのうち、平均パワー出力(センターのジェット・ルチャンコがトップ、12.9)とピークパワー出力(フォワードのAJ・スペラシーがトップ、18.3)の2つでトップ25位以内に入りませんでした。
セレブリーニは平均を下回る13.4ピークパワーを生成しました。
しかし、セレブリーニは疲労指数で47.0と高ポイントを出し19位にランクインしています。
まとめ
ウィンゲート・テスト等を見る限り、セレブリーニに持久力・耐久力は備わっているようです。問題なのは、それ以外の測定値があまり高くないことで、ベスト20に入るのが精一杯という状況をどう見ればいいかです。全体1位指名候補としては、やや心許ないかも。
まあまあの体力を補えるだけのクレバーなプレーができるかどうか。相手の動き、パックの行き先を読む力、味方の動きにどれだけ合わせられるかも要求されるでしょう。まだ18歳、今後のトレーニング次第でいくらでも成長するはずから、心配するのは野暮かもしれません。
攻撃力に難を抱えるシャークスは、多少のことに目をつむり、セレブリーニを全体1位指名するはず。ただ、2巡目以降の指名をどうするかがカギになってきそうです。隠れた逸材を見つけているかどうか、シャークスのスカウト陣の腕の見せ所です。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- 両腕を左右に水平に広げたとき、片方の腕の指先からもう片方の腕の指先までの長さ。
↩︎ - この値が高いほど、より効率的に体内で二酸化炭素を排出できるようになる。その結果、赤血球が運び込む酸素量も増え、筋肉の収縮運動を持続できる。
VO2 Maxを上げるトレーニングをすれば、筋肉中の毛細血管も発達し、筋肉に取り入れる酸素を増加させることとなる。
↩︎ - 5m、10m、5mの順に方向転換動作を2回行い、合計20mの距離をできるだけすばやく移動する所要時間を測定し、敏捷性を把握するために活用されている。
↩︎ - 30秒間全力で自転車を漕ぐというテスト。30秒間自転車を漕いでいる間のパワーを計測し、分析する。 ↩︎