NHLトレード戦線の主役は、キングスか?理想的なトレードを考える。

NHLチーム紹介

はじめに

 日本人で唯一のNHLプレーヤー福藤豊選手(現在、H.C.栃木日光アイスバックス)が所属したチーム、ロサンゼルス・キングス。今シーズン、やや苦戦気味。パシフィック・ディビジョン4位ですが、2位のベガス・ゴールデンナイツを充分射程圏内(勝ち点差4)に捉え、プレーオフ出場権に繋がるワイルドカードのトップでありながら、何だかな、なのです。

 年末から年明けにかけて8連敗、2024年1月は3勝12敗と大きく負け越してしまいました。2月6日、GMはトッド・マクレラン監督を解任し、ジム・ヒラーを暫定監督に据えて、どうにか持ちこたえているのが現状です。記者会見で、GMは「チームはバラバラだ」と言い切っていて、かなり重症のよう。

 その記者会見で、チームのラインナップの刷新、いくつかのトレードの可能性もGMの口から明言されています。今回は、悩める優勝候補・ロスアンゼルスが誰をトレードに出し、誰を新たにチームに招き入れるかについて、ファンからのリクエストを集め、有識者が評論している記事です。

 かなり辛口ですよ。

讃岐猫
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引用元:The Athletic.com「Who says no? Evaluating your Kings trade proposals for Zegras, Markström and others

調子の上がらないキングスに必要なトレードとは?

 読者にL.A.キングスのトレードの可能性を呼びかけたところ、多くの反響が寄せられ、その提案に対する反響もありました。もっともらしいものもあれば、実に滑稽なものもあり、その中間のものも少なくありません。しかし、そのほとんどに共通するものがありました。

 すでにチームがトレードしたい選手(ピエール=リュック・デュボア〈センター、25歳〉)、トレードしたくないが、することに価値を見出す選手(マット・ロイ〈ディフェンス、28歳〉)、トレードできないかもしれない選手(ブレイク・リゾット〈センター、26歳〉)、

 トレードを要求したかどうかわからない選手(アーサー・カリエフ〈左ウィング、22歳〉)のいずれかです。

 現実問題として、キングスのゼネラルマネージャー、ロブ・ブレイクが作り上げたサラリーキャップの制約を考えると、実行できるトレードはないかもしれません。

 そして、この「誰が(移籍について)ノーと言うか」という一連の動きの中で、サラリーキャップのために最初から破滅的なものになるかもしれません。3月8日の締め切りまでにトレードが成立しなければ、トレードの話をする意味はありませんよね?

 まあ、トレードの話はどんな形であれ関心を生むものです。そこで、我々はGMの椅子に座った皆さんに、創造力をかき立ててもらい、自由度が限られていても、キングスが検討すべきトレードを考え出してもらうことにしたのです。

立ちはだかるサラリー・キャップ制

 現在、キャップ・フレンドリー(NHL各チームのサラリー・キャップを計算しているサイト)によると、キングスのキャップヒットは86,025,439ドル(日本円で約130億円)です。

 8,350万ドル(約83億5千万円)の限度額をはるかに上回っていますが、フォワードのブレイク・リゾットとカール・グルンドストローム(右ウィング、26歳)、ゴールキーパーのフェニックス・コプリー(32歳)が長期の負傷者リストに入っています。

 このトリオの(サラリー)キャップ・ナンバーは合計447万5000ドル(約6億7千万円)で、キャップ・ナンバー全体にはカウントされません。

 コプリーは前十字靭帯(ACL)断裂で、今シーズン絶望です。しかし、キングスがグルンドストローム(130万ドル、約1億9千万円)やリゾット(167万5000ドル、約2億5千万円)をアクティブ・ロースターに戻した場合、彼らをキャップ・ミックス(サラリーキャップ合計)にも戻さなければなりません。

 また、トレード条件に含める前に、どちらかの選手をアクティブ化する必要があります。火曜日のコロンバス戦で下半身の負傷で離脱を余儀なくされた、ヴィクトル・アービッドソン(左ウィング、30歳)の状態(以前受けた背中の手術の影響もあり、長期離脱の可能性が高い)も注目されます。

 さて、トレードの提案ですが、どんなものが出てくるかを見てみましょう。
 ※長文記事なので、一部割愛しました。

讃岐猫
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アナハイムの貴公子強奪計画

マット・ロイ(ディフェンス、28歳)、アーサー・カリエフ(右ウィング、22歳)、アレックス・ラフェリエール(右ウィング、22歳)、そして2024年3巡目指名権をアナハイムへ、(アナハイムから)トレバー・ゼグラス(センター、22歳)を獲得。-ジェームズ・S

 キングスは「ノー」と言うはずです。これは、ブレイクとキングスの上層部が2019年のドラフト5位でゼグラスを指名できたにもかかわらず、代わりにアレックス・ターコット(センター、22歳)を選んだ、というような単純な話かもしれません。

 そして、当時、ゼグラスを自分たちの求めるタイプの選手とは見ていなかったという噂を信じていますが、それなのに、なぜ今になって「違う」と思うのでしょうか?

 また、ロイのキャップヒット315万ドル(約4億7000万円)、カリエフとラフェリエールのルーキー契約(3シーズンのエントリーレベル契約)は、ゼグラスのキャップ・ナンバー575万ドル(約8億7000万円)を相殺するものではありません。

 グルンドストロームやリゾットもおそらく移籍を余儀なくされるでしょうが、LTIR(Lost Time Incident Rate。長期負傷者リストと、負傷者のサラリー・キャップ救済システム)の数値は、ロースターの柔軟性を高めるのに役立っています。

 そして、ダックスもこれをしないと思います。理論的な可能性を秘めた若いウインガーは歓迎されるでしょうが、ロイはフリーエージェントでかなりの高給を得る可能性があり、(ダックスの)トリスタン・ルノー(ディフェンス、20歳)のような選手の育成阻止を望むかどうかはわかりません。

 それに、彼(ダグラス)がアナハイムとの再契約を望むかどうかなんて誰にもわかりません。ダックスがゼグラスをトレードするのは、あなたがここで提示しているものよりも、より血統の良い若手選手とはるかに良いドラフト指名権だけだと思います。

 現状では、ラフェリエールが最も魅力的な選手でしょう。カリエフが、パワープレーのスペシャリスト以上の選手になることを信じなければなりません。

ファンの希望は、ゴールキーパー獲得か

アーサー・カリエフ、カム・タルボット(ゴールキーパー、36歳)、ジョーダン・スペンス(ディフェンス、22歳)が、ジェイコブ・マークストローム(ゴールキーパー、34歳)と交換でカルガリーへ。-ダグ・K

 キングスは、(マークストロームの)600万ドル(約9億円)のキャップナンバーを相殺するために、より多くのサラリーを支払わなければ、これを成し遂げることはできません。

 というのも、マークストロームはあと2年契約しているため、現在、そして当分の間、真のNo.1ゴールキーパーとしての力を提供するだろうと思われるからです。

 しかし、彼もまた34歳で、今シーズンは素晴らしい活躍を見せ、以前にも高い評価を得た時期はありましたが、コナー・ヘレブイック(ゴールキーパー、30歳。ウィニペグ・ジェッツ所属)のように、一貫して優れた成績を収めているわけではありません。

 しかも、ロサンゼルスに、あのポジションに、オールスタークラスの選手は必要ないかもしれないと思うのです。そして、フレームズは、再建や大幅な改造に向かうと思われるため、より高い天井を持つ(より大きな可能性を持つ)若いプレーヤーを求めるでしょう。

讃岐猫
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ボストンのキーパーにもターゲット、ロックオン!?

マット・ロイ、アーサー・カリエフ、カム・タルボットをボストンへ、ライナス・ウルマーク(ゴールキーパー、30歳)またはジェレミー・スウェイマン(同、25歳)と交換。-ゲヴォルク・C

 スウェイマンの名前が出れば、ブルーインズは電話を切り、次のフロントオフィスの集まりで笑い話にするでしょう。この先、彼(スウェイマン)が彼ら(ブルーインズ)の仲間であることに疑いの余地はありません。

 30歳のウルマークの方がやや現実的ですが、来シーズンまでの契約を結んでいるという堅実なトレード・チップを手に入れています。

 ウルマークを契約満了のベテラン2人とトレードするなどの別の状況であれば、ブルーインズにとって、この話はもっと化けるかもしれませんが、今のところ、あまり価値のない若手フォワード1人のために、彼をトレードすることはないでしょう。

トレードの季節になると、名前の出る2人

ピエール=リュック・デュボア(センター、25歳)、アーサー・カリエフ、エリック・ポルティージョ(ゴールキーパー、23歳)、そして2024年の1巡目指名権と交換で、ナッシュビルからジュゼ・サロス(ゴールキーパー、28歳)とコルトン・シソンズ(センター、30歳)を獲得。-セディ・M

 プレデターズはこれをしません。デュボアが退団することで、(サラリー)キャップの観点からもうまくいくし、彼の完全移籍禁止条項が発動する前に1移籍させることができます。

 しかし、ナッシュビルのバリー・トロッツGMが、彼のような波瀾万丈の経歴を持つ2センターに、そこまでコミットするとは思えません。

 サロスの後釜としてヤロスラフ・アスカロフ(ゴールキーパー、22歳)が用意されていたとしても、彼(デュボア)は、1番手あるいは2番手センターというような、より確実なポジションを望んでいるに違いありません。

 そして、このトレードを行うと、長期的なゴールキーパー候補の育成という点で、キングスはまた振り出しに戻ることになります。

 -ゴールキーパー候補の育成がキングスの大きな関心事なのか、それともいわゆる後継者としてのポルティージョに固執しているかはわかりませんが(ただし、ハンプトン・スルキンスキー〈2023年ドラフト4巡目指名、総合118位。ゴールキーパー〉は長期的に見ていくべき選手でしょう)。

讃岐猫
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チクルンを欲しがるチームって多いんだな

マット・ロイ、ブレイク・リゾット、アーサー・カリエフ、2025年の1巡目指名権をオタワへトレードし、ヤコブ・チクルン(ディフェンス、25歳)を獲得。-マーク・F.

 キングスはそんなことをしません。ロイから何も得ることなく(移籍金もなく)フリーで出ていかれることを、チームが望まないのは理解できます。

 しかし、(ロスアンゼルスの)ウラジスラフ・ガブリコフ(ディフェンス、28歳)が来シーズンまで在籍する以上、チクルンを乗せた船は(ロスアンゼルスに寄らず)航海し続けていると思います(チクルンがまだ25歳で、リーグに8シーズンも在籍していると信じがたいですが)。

 もしかしたら、セネターズがカリエフを獲得すれば、もっと多くのことができるかもしれませんが(実際、ウラジミール・タラセンコ〈右ウィング、32歳〉を移籍させれば、彼はより多くの機会を得ることができるかもしれません)、このトレードの中で、1巡目指名権だけが最も魅力的なピースです。

【付記】上記以外に寄せられた意見については、以下に要約を載せる。

ピエール=リュック・デュボアを(キングスが350万ドルのキャップヒットを保持したまま)ピッツバーグに移籍させ、レイリー・スミス(右ウィング、32歳)を獲得。-ジェームズ・P

 他の選手用にキャップヒット保持枠を1つ使っていることと、スミスは得点感覚に優れているが、年齢(32歳)を考えると、デュボアと上手くやった方が得策である(たとえチーム在籍期間が短くなっても)。

2024年4巡目指名権+マルコ・スキャンデラ(ディフェンス、34歳)と交換でセントルイスへ。-ジョーダン・M

 トレード自体は悪くない。スキャンデラはサード・ディフェンスで使えるし、経験値も高い。しかし、これ以上サラリーを増やすことはできない(スキャンデラのキャップヒットは327万5000ドル、4億9000万円)。

 また指名権を使っていると、今年のドラフトの1巡目から5巡目までの指名権はなくなってしまう。

アーサー・カリエフ+2025年5巡指名権と交換で、フィラデルフィアからニック・シーラー(ディフェンス、30歳)を獲得。-ライアン・T

 ファンから低評価のフィラデルフィアGMチャック・フレッチャーの、数少ない?良い仕事が、2021年、シカゴとの契約解除後、シーラーを引き抜いたことである。ジョン・トルトレラ監督もシーラーを絶賛している。

 フィラデルフィアは彼との再契約を検討するはずなので、このトレードは成立しない。

アーサー・カリエフ+2024年の1巡目指名権と交換で、コロンバスのブーン・ジェナー(センター、30歳)と2024年3巡目指名権を獲得。-デビッド・S

 ブルージャケッツのキャプテンは、キャップヒット375万ドル(約5億6000万円)で、今シーズン終了後さらに2年の契約期間がある。ロサンゼルスの選手層を厚くするために、彼は本当にいい選手であるが、キャップの問題がある。そして、より多くの年俸を支払う必要も出てきそうである。

ブレイク・リゾットとアーサー・カリエフがバッファローへ、交換でジョーダン・グリーンウェイ(左ウィング、27歳)を獲得。-リチャード・N

 グリーンウェイは、自分の6フィート6(約198センチ)の身長を活かしたプレーができ(いつもではないが)、ポストシーズンで充分活躍できる。今季と来季のキャップナンバーは300万ドル(約4億5000万円)。

 グルンドストロームも出て行けば、何とかなるし、ドラフト指名権が戻ってくるかもしれない。ただ、バッファローの左ウィングは固定されており、すぐにリゾットやカリエフのようなポジションの重なる選手を起用するとは思えない。

エイドリアン・ケンペ(右ウィング、27歳)、アーサー・カリエフ、2024年1巡目指名権、2025年2巡目指名権、カム・タルボットまたはデイビッド・リティッチ(ゴールキーパー、31歳)をナッシュビルへ、ジュゼ・サロスを獲得。-ユーリ・M

 キングスはノー、ノー、ノーと言うだろう。一方、もしこれが実現したら、ナッシュビルGMトロッツは嬉し涙が止まらないかもしれない。

ピエール=リュック・デュボアをウィニペグに移籍させ、ガブリエル・ヴィラルディ(センター、24歳)、アレックス・イアファロ(左ウィング、30歳)、ラスマス・クパリ(センター、23歳)、ドラフト2巡目指名権を獲得する。誰がノーと言う?-ギャレット・オー。

ピエール=リュック・デュボアをニューヨーク・レンジャーズへ、イゴール・シェスターキン(ゴールキーパー、28歳)を獲得。-ジェームズ・E.

※この2つについては、あまりにも実現性が乏しいため、ほとんど取り合っていないような表現を使用していると読めたが…。

 特にジェッツとのトレードは不可能。2023年6月27日、上記3人及びドラフト指名権と引き換えに、デュボアはジェッツからキングスにトレードされた。デュボアは8年間、6800万ドル(約102億円)の契約にサイン。

まとめ

 アリゾナ、カロライナ、オタワと渡り歩いたチクルン、今度はロス行きか…。この記事だと、選手3人+1巡目指名権と交換するほど、凄い選手と考えてはなさそうです。25歳、ひと皮もふた皮もむける可能性を持っていると思うんですけどね。彼も若いのに、腰が落ち着きません。

 ファンのトレード希望・予想のほとんどをはねのけている記事中、「ちょっと興味がある」と食いついたのが、トロント・メープルリーフスのウィンガー、ニック・ロバートソン(左ウィング、22歳)とアーサー・カリエフのトレード。

 2人共、トップ6に入れる・入れない当落線上の選手。環境を変えると、一気に化けると見たのでしょう。

 サラリー・キャップ残高カツカツのロスアンゼルスとしては、もうひと花咲かせられる、やや下り坂のベテランを獲ろうにも、レンタルか、ドラフト指名権を相当数手放さないと無理なのです。

 名前の出た選手をフルに移籍させるのか、それとも最小限に留めるのか。トレード・デッドラインまであと2週間、チームの勝敗とにらめっこしながらの取引市場での結果は…。

讃岐猫
讃岐猫

【註釈】

  1. 別名ノー・トレード条項。サービスタイム(アクティブ・ロースターに登録されていた日数)が10年以上、かつ現所属チームに5年以上在籍している選手に適用される。デュボアは新加入選手のため、発動前にトレード可能となる。
    ↩︎
  2. デュボアは、これまでコロンバス、ウィニペグに在籍していたが、契約締結後にトレードを要求してみたり、勝手に契約満了後の移籍先(モントリオール)を決めたりと、チームの中核として働ける選手であるにもかかわらず、腰を落ち着けることを知らない選手である。 ↩︎
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