はじめに
2025年のNHLドラフトに向けて、補強が急がれるフライヤーズ。注目されているのが、トレードの噂が浮上している若きセンター、マルコ・ロッシの存在です。
小柄ながら高い得点力と知性を持つ彼に対して、ネットではさまざまな声が飛び交っていますが、実際のデータを見ると、その印象は大きく変わるかもしれません。NHLは、数字を追いかけるだけでも十分に楽しめるスポーツなんです📊
参照記事:The Hockey Writers.com「Flyers Trade Rumors: Refuting 4 Misconceptions About Marco Rossi」
フライヤーズが狙う!? 注目のセンター、マルコ・ロッシを巡る4つの誤解
2025年のNHLドラフトで3つの1巡目指名権を持つフィラデルフィア・フライヤーズ。センターの補強が急務とされる中、トレード市場に名前が挙がっているのが、ミネソタ・ワイルドの若きセンター、マルコ・ロッシです。
身長175cm(5フィート9インチ)とサイズは控えめながら、23歳という若さと高いポテンシャルを併せ持つロッシ。現在は制限付きフリーエージェント(RFA)1の状態で、ワイルドが放出を検討しているとの噂も出ています。そんな中、オレンジ&ブラック(チームの愛称)が獲得に動くのでは?と注目が集まっているわけです👀
Daily Faceoff2のアンソニー・ディ・マルコによると、フライヤーズはフォワードのタイソン・フォースター、あるいは1巡目後半の指名権(22位指名権、またはスタンレーカップ・ファイナルの結果次第3で31位か32位指名権)との交換には難色を示したとのことです。
でも、ロッシにはいくつかの「誤解」も付きまとっています。もしダニエル・ブリエールGMとフライヤーズがロッシを獲得する場合に備えて、今回は、そんな4つの誤解について、データをもとに一つひとつ反論していきましょう!
ファンもロッシの動向に大注目です!
【追記】上記のビデオは、以下のように伝えています。
ミネソタ・ワイルドの23歳のセンター、マルコ・ロッシは、2025年7月1日に制限付きフリーエージェント(RFA)となる見込み。現在、複数のNHLチーム(フィラデルフィア、バッファロー、ピッツバーグ、シカゴ、シアトル、モントリオール)がロッシに関心を示している。
ワイルドは彼をトレードするか、契約延長するかの判断を迫られており、オファーシート(他チームからの契約提示)のリスクを避けるため、7月1日までにトレードされる可能性もある。
ロッシは今季24ゴール36アシストを記録し、次の契約では年平均468万〜702万ドルが予想される。この金額帯のオファーシートが成立すると、対価として1巡目+3巡目指名権が必要。チームは将来的なサラリーキャップ管理(特にカプリゾフ選手の契約など)も考慮する必要があり、ロッシの動向は今オフシーズンの注目トピックとなっている。
誤解その1:ロッシは“ミドルシックス(第2・第3ライン)”レベルの選手?
「第2ラインか第3ラインくらいが限界じゃない?」そんな声が一部にあるロッシ。でも実際はどうなのでしょうか?
2024–25シーズン、彼は82試合(フル出場)で24ゴール・36アシストをマーク。これは立派な第2ラインセンター4の成績であり、将来性も備えていると言えるでしょう✨彼は決してモーガン・フロスト(今の第2ラインセンター)の「次の存在(控え)」ではないし、「ミドルシックス止まり」というレッテルは、ちょっと失礼かもしれません。
ジュニア時代、特にOHL(オンタリオ・ホッケーリーグ)では、ロッシは大暴れ。ドラフト前年には1試合平均1.23ポイントを記録しています。ちなみに、2024年にフライヤーズが13位指名したジェット・ルチャンコは1.22ポイント。数字だけ見ても、ロッシの才能がどれだけ抜きん出ていたかがわかりますね。
現所属チームであるワイルドは、2020年のドラフトで全体9位という好位置から、素晴らしい有望株を獲得したのです。
そしてNHLでも結果を残しています。今シーズン、60分あたりのポイントでは「2.41ポイント」という高水準を記録。これはFA市場で注目されているトップセンター候補の、ブロック・ネルソン(コロラド・アバランチ)やサム・ベネット(フロリダ・パンサーズ)を上回る数字です(ネルソンは契約延長の可能性もあります)。
ネルソンは隣にそれほどのタレントがいなかった一方で、ベネットは常にマシュー・カチャックと一緒にプレーしていました。
この点、ロッシが「キリル・カプリゾフ頼みでは?」という声もあるかもしれませんが、ロッシが好成績を残した今シーズン、カプリゾフは大半をケガで欠場していました。むしろ“自力”で結果を出したと言えるでしょう👍
さらに、ロッシがリンクにいる時といない時5で、チームのパフォーマンスに明確な差があったこともデータが示しています。ロッシがベンチにいる間、ワイルドの成績は悪化していました。つまり、彼はトップ6の中で代えが利かない存在だったのです。
正直言って、超スター選手。フライヤーズに来てくれるかどうかはかなり際どい。
誤解その2:1巡目後半の指名権は高すぎる?
ここでは、ディ・マルコの報道を額面通りに受け取ってみましょう。ロッシ獲得に対して、タイソン・フォースターかフライヤーズが持つ2つの遅めの1巡目指名権(22位と31位か32位のどちらか)が必要だと言われています。
でも実際はどうでしょう?
ここで言う「1巡目後半の指名権」とは、フライヤーズが保有しているコロラド・アバランチの22位指名権を指すと仮定します。2015年から2020年のドラフト(ロッシの世代)において、22位から1巡目最後までに指名されたフォワードのうち、60ポイントシーズンを記録した選手はわずか3人しかいません。それは全体の7.5%です。
つまり、1巡目後半の指名権だけでロッシのような選手を獲得できるのはかなり“お得”な取引だと言えます✨
一般的に、1巡目指名権は過大評価される傾向があります。そのレンジから、ロッシの昨季のような成績を残す選手が出てくる可能性はかなり低いのです。もしロッシを22位指名権だけで獲得できるのであれば、フライヤーズはミネソタの希望を喜んで叶えるべきでしょう。
ただ、ここで疑問が湧きます。なぜミネソタはそんな小さな対価でロッシを手放そうとしているのか?何か理由があるのか?当然ながら、何か裏があるはずです。その点は次の誤解で見てみましょう。
誤解その3:ロッシの契約は高すぎる?
ロッシが大型契約を求めていることが、放出の理由かもしれません。長期契約へのコミットメントは簡単ではありません。ワイルドは長期契約に慎重ですが、The Fourth Period6のデイヴィッド・パニョッタによると、彼の契約要求は「7年契約、年俸700万ドル相当」とされています。
「700万ドル?高い!」と思うかもしれませんが、急速に上昇しているサラリーキャップを考慮すると、実際の負担感はそれほどでもありません。
例えばフライヤーズのトラヴィス・コネクニーは、2019年に22歳で年俸550万ドルの6年契約を結びました。当時のサラリーキャップ上限に対しては6.75%の割合です。契約期間中、サラリーキャップはほとんど変動がなかったにもかかわらず、彼の契約はチームにとってお買い得なものでした。
仮にロッシが同じ条件で7年700万ドルの契約を結ぶと、2025–26シーズンのキャップ上限の7.33%に相当。もしこの契約をコネクニーと同じ年に結んでいたとしたら、年俸は700万ドルではなく597万ドル相当となり、実質的にはほぼ同等の価値になります。契約年数が1年多いことを考慮すれば、むしろ妥当な内容です。
特に、コネクニーの契約期間中(2019年から)サラリーキャップの上限は650万ドル(7.98%)しか上がらなかったのに対し、2025–26シーズンから2027–28シーズンの間には、上限が1,800万ドル(18.85%)上昇すると予測されている点を考慮すればなおさらです。
契約時点の比較でも、コネクニーはドラフトから4年目、NHLでのキャリアハイ82試合で49ポイント。対してロッシはドラフトから5年、今季82試合でキャリアハイ60ポイント。成績面でも遜色ありません。

コネクニーとロッシのポテンシャルを比較するなんて…ロッシに失礼だにゃ^^;。ウィングの方がロッシに向いているような気もするけど、フライヤーズはウィング余りまくってるんで、その選択肢はないでしょ。パンサーズからベネットを獲得して、勝利のDNAをチームに注入するって考えはフロントにないのかな。
誤解その4:フェイスオフ勝率は気にするほど悪くない!
ロッシのキャリア通算フェイスオフ勝率は45.84%で、リーグの下位25%ほど。もしフェイスオフが試合の勝敗に決定的な影響を与える要素であれば、これは確かに問題です。しかし、実際にはそれほど重要ではありません。確かに一定の価値はありますが、過度に重視すべきものではないのです。
まずはデータを見てから、それを論理的に解釈しましょう。実際、過去10年のスタンレーカップ優勝チームのポストシーズンにおけるフェイスオフ勝率7はほぼ平均的ですし、プレーオフの勝利とフェイスオフ勝率との間に、正でも負でも有意な相関関係は存在しません。レギュラーシーズンにおいても同様です。
では、状況別ではどうでしょうか? ロッシはペナルティキルには出場しませんから、その点は考慮外とします。ただし、1点リードの重要な場面では平均以上の成績を残しています。
そのような5対5の状況下、100分以上プレーしたチームメイトのフォワード12人の中で、ロッシは予測得点率・実際の得点率の両方で平均以上を記録しています。さらに、シュートオンゴール差は+22でチーム内トップ。フェイスオフの負けが彼のプレーに影響しているとは言えません。
この結果は論理的にも説明がつきます。フェイスオフ後はすぐにポゼッションが入れ替わることも多く、ドローの結果が無効化されることが多いのです。ドローでパックを獲得すれば有利にはなりますが、試合中、パックの所持権は頻繁に入れ替わります。フェイスオフ勝利が直接得点に結びつくことは稀です。
ロッシの勝率が平均以下であっても、彼は対戦相手よりも多くのチャンスを作り出しています。つまり、この懸念は実質的には無意味なのです👍
ちなみに、センターにおいて体格が重要かどうかという議論は続いていますが、ここではそれには触れません。ただし参考までに言えば、ロッシは身長・体重ともに、ホッケー殿堂入り確実のブラッド・マーシャン(フロリダ・パンサーズ)とほぼ同じです。
まとめ:ロッシはフライヤーズにピッタリの補強候補!
フライヤーズが本当に狙っているかは分かりませんが、もしリストに入っているなら、絶対に歓迎すべき存在。彼のスキルとホッケーIQは、チームのロスターに非常によくフィットする可能性があります。ロッシがチームに加われば、確実に攻撃の幅が広がりますよ⚡️

ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- 契約満了後も所属チームが一定の交渉権を持つ若手選手のステータス。他チームと交渉は可能だが、元のチームには契約を引き留める(マッチする)権利がある。また、他チームに移籍する場合は、元チームにドラフト指名権などの補償が支払われる。契約条件に応じて選手側が給与仲裁を申請できるケースもある。
↩︎ - NHLの最新ニュースやライン予想、先発ゴーリー情報、ファンタジーホッケー分析を提供する専門メディア。元TSNのフランク・セラヴァリらが中心となり、分析記事やポッドキャスト番組も多数配信している。試合前の情報収集やファンタジー戦略に最適な情報源。
↩︎ - フライヤーズが、ファイナルに進出したどちらかのチームの1巡目指名権を保有(トレードで獲得)していた場合、そのチームが優勝するかどうかで、31位になるか32位になるかが決まる。
現在、フライヤーズはエドモントン・オイラーズから一巡目指名権を獲得しており、オイラーズが優勝すればその指名権は32位、負ければ31位になる。なお、フライヤーズが24−25シーズンの順位に基づいて入手した指名権は6位、文中の22位はコロラド・アバランチからトレードで獲得。
↩︎ - 得点力と守備力の両方を兼ね備えた「万能型」選手が担うことが多く、チームの中軸として非常に重要な存在。トップラインに次ぐ得点源であると同時に、相手の強力なラインとマッチアップする守備的役割も持つ。
↩︎ - 氷上にいる両チームの人数が5対5の場合、ゴール期待値と得失点差で見ると、ロッシが氷上に出ている場合、どちらも50%を優に超えている。つまり、ロッシが氷上にいると、確実に得点できるか、あるいは得点の機会が多くなっている上に、守備も安定していることになる。
逆にいない場合、どちらも5割を切っているため、得点のニオイがあまりしないし、失点の可能性も増していると考えていい。
↩︎ - NHLのトレード情報やパワーランキング、選手動向などを扱うホッケー専門メディア。ポッドキャストやSiriusXMでの番組も展開しており、分析重視の報道スタイルで知られる。ホッケーに特化した信頼性の高いニュースソースのひとつ。
↩︎ - 上位チーム:52〜55%、下位チーム:45〜48%とされており、下位チーム並みだったのが、最近の例で言えば、2020、2021年と連覇を果たしたタンパベイ・ライトニング(両年共に48.5%)、2022年のコロラド・アバランチ(47.6%)等がある。 ↩︎