いざ、NHLからKHLへ!新天地ロシアへ移籍する選手達を追う!

現役スター選手紹介

はじめに

 ロシアのプロホッケー・リーグ=KHL所属のディナモ・ミンスクが、メチャクチャ大補強を行っています。NHLでそれなりに実績のあった選手を根こそぎ獲得し、ここ数年、ディビジョンの中位を彷徨うチームをヘッドアップさせようと必死です。

 フリーエージェントのセンター、クリス・ティアニーがベラルーシのディナモ・ミンスクと1年契約を結びました。ところが、このチームと契約を結んだのは、彼だけでないのです。キャリアに新たな章を記すべく、多くの選手が参集していることに驚きです。

 もう一つ、KHLへの移籍絡みで、トニー・ディアンジェロはNHLの契約を得られなかったため、KHLのサンクトペテルブルクと1年契約を結びました。彼のキャリアは波乱に富んでおり、数々の浮き沈みを経て新たな挑戦に臨むことになりました。この2つのニュースを追いかけます。

讃岐猫
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引用元:prohockeyrumors.com(PRO HOCKEY RUMORS)「Chris Tierney Signs With Dinamo Minsk

NHLでは誰も引取ってくれなかったか…

 フリーエージェントのセンター、クリス・ティアニーがベラルーシのディナモ・ミンスクと1年契約を結んだと、チームが月曜日にテレグラム(セキュリティとプライバシーに特化したメッセージ・アプリ)で発表しました。

 30歳のティアニーは、昨シーズン、NHLで多くの出場時間を記録した3人のUFAセンター1の中の1人であり、プロのトライアウトでNHLのトレーニングキャンプに参加しなかった唯一の選手です。

 昨シーズン、彼はデビルズの4thラインの選手として活躍し、52試合で12ポイント、+3の評価を得て、キャリア最低の平均9分2秒の出場時間で57.2%のフェイスオフ勝率を記録しました。

ティアニーのプロキャリアの振り返り

 2012年にシャークスから2巡目指名を受けたティアニーは、2年後のプロ初シーズン終盤でフルタイムのNHL選手として成長し、後ろを振り返ることはないくらいだったのです。

 数年のうちに、彼はリーグ屈指の3rdラインのセンターの一人となり、2017-18シーズンにはキャリアハイの17ゴールと40ポイントを記録し、サンノゼでのキャリアを締めくくりました。

 その後、シャークスはオフシーズンにエリック・カールソン(当時、セネタース在籍)をベイエリア(サンフランシスコ、オークランド、サンノゼを中心に広がる地域。サンフランシスコ湾を取り囲む形で複数の都市や町が存在)に移籍させるため、大規模なトレードでティアニーはセネタースに放出されてしまいます。

 初めのうち、ティアニーはオタワのミドルシックス(2nd&3rd)の中堅選手として活躍し、最初の2シーズンで1試合平均17分以上の出場時間と0.56ポイントを記録しました。

セネタース71番の選手です。ごっつあんゴールが多いような気もするが…。

パンデミックの影響と契約の変遷

 しかし、パンデミックの影響で、ティアニーの攻撃力は低下していきます。2020-21および2021-22シーズンには125試合でわずか12ゴールと37ポイントにとどまり、それに伴い出場時間も減少しました。

 2年700万ドル(約1億5000万円)の契約が満了した後、ティアニーは2022-23シーズンにフロリダ・パンサーズとの2ウェイ契約(NHLとマイナーリーグでプレーする際の給与条件が異なる契約)を余儀なくされたのです。

 フロリダではパンサーズとAHLのシャーロット・チェッカーズでの短い期間を過ごした後、2月にウェイバー2でカナディアンズに拾われました。

 モントリオールでは23試合で7ポイントを記録し、少しながら評価を取り戻し、昨シーズン、ニュージャージー加わり、何とかNHLに残留したのです。

新たな挑戦と未来の展望

 しかし、この夏はそれほど幸運ではありませんでした。NHLからのオファーがないと思われる中、オンタリオ出身のティアニーはミンスクに降り立ち、キャリアを続けることになったのです。

 彼は、ディロン・デュベ、3ジョーダン・グロス、ドミトリー・コロボフ、ニコラス・メロッシュ、ザビエル・ウエレ、ヴァディム・シパチョフ、アレクサンダー・ヴォルコフに続く、ディナモのロースターでNHL経験を持つ8人目の選手になりました。

 これがティアニーのNHLキャリアの終わりを示すものであれば、彼は649試合のレギュラーシーズン出場で80ゴール、168アシスト、248ポイント、-70の評価を残すことになります。

引用元:foreverblueshirts.com(FOREVER BLUESHIRTS=レンジャーズ専門情報サイト)「Controversial former Rangers defenseman leaves NHL, signs to play in Russia

昨シーズンのパフォーマンス〜KHLへの移籍



 トニー・ディアンジェロは今シーズンNHLに残る契約を結ぶことができなかったため、この元ニューヨーク・レンジャーズのディフェンスマンはKHLのサンクトペテルブルクと1年契約を結びました。

 28歳の彼は昨シーズン、カロライナ・ハリケーンズで31試合に出場し、11ポイント(3ゴール、8アシスト)を記録しています。ハリケーンズはメトロポリタン・ディビジョンでレンジャーズに次いで2位となっていて、彼はチームに貢献する働きをしました。

 スタンレーカップ・プレーオフの序盤にブレット・ペッシェが負傷した際、ディアンジェロはハリケーンズのブルーラインでレギュラーの役割を担っています。彼はポストシーズンで9試合に出場、1試合平均19分以上のアイスタイムを記録し、2アシストを挙げました。

 ディアンジェロは2回戦のレンジャーズ戦で6試合全てに出場しています。彼はニューヨークでの第2戦の延長戦でアシストを記録し、ホームでの第4戦(試合は勝利)でも1アシストを挙げました。

 それにもかかわらず、ハリケーンズは今オフシーズンにディアンジェロと再契約しませんでした。ペッシェ(ニュージャージー・デビルズへ移籍)とブレイディ・スキー(ナッシュビル・プレデターズへ移籍)の両方をフリーエージェントで失ったにもかかわらずです。

 ディアンジェロは元ハリケーンズのチームメイト、エフゲニー・クズネツォフとともにサンクトペテルブルクに加入します。2015-16シーズンにプロに転向して以来、これが彼にとって北米外での初めてのシーズンとなります。

 「昨年、’クージー(クズネツォフのこと)’と一緒にプレーしたので、ここには知っている選手が数人いるんだ。だから、ちょっと楽になったんだ」とディアンジェロは言いました。

 「歴史や街にまつわるすべてのことについてたくさん聞いているので、周りを見て回るのが楽しみだよ。…ここに来られて嬉しいよ」。

レンジャーズでの複雑な経歴

 トニー・ディアンジェロはレンジャーズ在籍中に浮き沈みがあった。

 この夏、NHLのフリーエージェント市場で、同年代の他の選手が契約を結び大金を稼いだ一方で、ディアンジェロは冷遇されました。彼は依然としてスキルのあるパックムーバーとして腕を振るい、371試合で210ポイント(48ゴール、162アシスト)を記録しています。

 しかし、ディアンジェロは、ジュニア時代から始まり、4プロキャリアにまで続く物議を醸す発言や行動の歴史を抱えています。

讃岐猫
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 彼のレンジャーズでの在籍期間は複雑なものでした。

 2017年のNHLドラフト前、ディアンジェロは、ダレク・ステパンとアンティ・ラーンタを砂漠の地(アリゾナのこと)へ送るトレードの一環として、アリゾナ・コヨーテズから獲得され、2018-19シーズンにはトップフォーのディフェンスマンとなりました。

 そして2019-20シーズンには、レンジャーズで68試合に出場し、NHLキャリアハイの15ゴールと53ポイントを記録しました。

 しかし、次のシーズンはうまくいきませんでした。彼のニューヨークでの「最後の戦い」(喧嘩のこと)は、コロナウイルスのパンデミックで遅れて始まったシーズンの2021年1月30日に起こりました。

 ディアンジェロとゴーリーのアレクサンダー・ゲオルギエフは、ピッツバーグ・ペンギンズとの延長戦で誰がパックを扱うべきかについて誤解が生じました。その直後、シドニー・クロスビーがレンジャーズの5-4の敗北を決定づけるゴールを決めました。

 ザ・ガーデンのロッカールームに戻ると、デアンジェロとゲオルギエフは言葉を交わしましたが、事態は悪い方へエスカレートしました。

とにかく審判とのバトルの多い選手なのです。

トラブルとその影響

 「当然、それは『ジョージー』との事件以外にも、もっと多くのことがあった」とディアンジェロは今夏の「モーニング・カッパ・ホッケー5(最新の試合の分析、選手のパフォーマンス、リーグの動向などをカジュアルに議論するスタイルが特徴)」ポッドキャストで説明しています。

 「少し時間を巻き戻すと、それは選挙の時期で、つまり大統領の交代時期のことだったんだけど、僕が出した疑わしいツイート6で問題を起こして、一部の人々やシーズンチケットホルダーを不快にさせてしまったことがあったね。

 そのことについては、再度言うけど、完全に自分の非を認めているよ」。

 彼はまた、当時の監督、デビッド・クインに態度悪さを問題視され、シーズン序盤にベンチに座らされました。ゲオルギエフとの事件は、彼のレンジャーズでの運命を決定づけました。

 「それは僕にとって、もし最初から正しいことをしていれば、最初のトレーニングキャンプからちゃんと始めていれば、こうなっていなかったと思う状況だったんだ。しかし、あのシーズンはうまくいかなかったね。

 僕が唯一後悔しているのは、その後の出来事さ — どれだけ自分自身の制御を失ってしまったか — そして、もっと早く真実に辿り着けるはずだったのに、先手を打つことができなかったことなんだ」。

レンジャーズ以降の経歴〜パッとしない…

 2020-21シーズンはディアンジェロにとって失われたシーズンで、彼はわずか6試合しかプレーしませんでした。シーズンの終わりに、彼の契約はレンジャーズによって買い取られました(バイアウトされ、チームから放出された)。

 彼は2021-22シーズンにハリケーンズで64試合に出場し、51ポイント(10ゴール、41アシスト)を記録して復活し、2022-23シーズンにはフィラデルフィア・フライヤーズでプレーし、昨シーズンはハリケーンズに戻りましたが、彼の役割分担は減ってしまったのです。

 今、ディアンジェロはロシアで新たなスタートを切っています。もしかしたら、そこから長期的なキャリアを築くかもしれませんし、NHLへの復帰の第一歩かもしれません。

まとめ

 ティアニーは649試合のNHLキャリアを経て、80ゴール、168アシストという成績を残しましたが、ディナモ・ミンスクでの新たな挑戦が彼にどのような未来をもたらすのか。多くのNHL経験者が在籍するチームなだけに、思わぬ化学反応を起こして大活躍するかもしれません。

 ディアンジェロはキャリアの中で多くの困難を経験しながらも、スキルを磨いてきました。KHLでの新たな挑戦が彼にとっての転機となるか。技術的にトップレベルの選手ですから、最初が肝心、スッとチームに溶け込めるかどうかでしょう。そうなれば、彼の行動や発言も落ち着いてくると思うんですけどね。

讃岐猫
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【註釈】

  1. 他の2人は、シカゴ・ブラックホークスからFAとなったレム・ピトリック(27歳)、エドモントン・オイラーズからFAとなったサム・ガグナー(35歳)である。
    ↩︎
  2. この移籍リストに載るのは通常24時間となっており、他のチームがその選手を獲得する意向を示すことができる。ウェイバーにかけられた選手を獲得する場合、他のチームはその選手の残りの契約を引き継ぐことになる。

     一般的には、選手がマイナーリーグに降格する際や契約を解除する際に使用され、ウェイバーを利用して選手を獲得する場合、チームの順位によって獲得の優先順位が決まる。下位のチームが優先されるため、上位チームがウェイバーを通じて選手を獲得するのは難しい。
    ↩︎
  3. ディロン・デュベ(フォワード、26歳)は2024年7月1日、1年契約でサインし、カルガリー・フレームスから移籍。ジョーダン・グロス(ディフェンス、29歳)は6月28日1年契約でサインし、ナッシュビル・プレデターズから移籍。

     ドミトリー・コロボフは、 2013-14シーズンの3試合に出場してNHLデビュー(タンパベイ・ライトニング)を果たしているが、2014年7月1日、フリーエージェントでKHL復帰を選択。アトラント・モスクワ・オブラストと2年契約を結んだ。

     様々なチームを渡り歩く、典型的なジャーニーマンで、今回の24-25シーズンのミンスク移籍は3回目となる。

     ニコラス・メロッシュ(ディフェンス、27歳)は2023年10月4日、KHLのサラバト・ユラエフ・ウファと1年契約を結び(前所属はAHLのカルガリー・ラングラーズ)、翌年8月1日に金銭トレードでミンスクに移籍。

     ザビエル・ウエレ(ディフェンス、31歳)は、2022年7月13日、ピッツバーグ・ペンギンズと2年間の2ウェイ契約を結び、その契約終了後、2024年6月3日、ミンスクと契約。

     ヴァディム・シパチョフ(センター、37歳)は、元々KHLのサンクトペテルブルクでプレー後、2017年、NHLのラスベガス・ゴールデンナイツと契約。しかし、3試合しか出場せず、翌シーズン、KHL復帰。ミンスクでプレーするのは新シーズンから。

     アレクサンダー・ヴォルコフ(左ウィング、27歳)は、2021年10月26日、アナハイム・ダックスから無条件のウェーバー対象となり、 翌日にKHLのSKAサンクトペテルブルクと4年契約を結んだ。同チームで2シーズンを過ごした後、2023年5月17日、ミンスクに移籍。
    ↩︎
  4. ジュニア時代から競争心の激しい選手として知られており、OHLでプレーしていた2013-14シーズン、審判への暴力行為やチームへの暴言で3度の出場停止処分を受けている。

     2014年ドラフト全体19位でタンパベイ・ライトニングに指名されて以降も、問題行動が多く、特に審判への暴力が多かった。レンジャーズ時代、当初、監督のデイビッド・クインとの関係は良好だったが、反スポーツマン行為のペナルティが重なり、記事中のゲオルギエフとの諍いが起きてしまう。

     この諍いの前に、ゼネラルマネージャーのジェフ・ゴートンから、もしまた問題行動があった場合、ウェーバーにかけられると言われていた。すぐにウェーバーにはかからなかったが、ディアンジェロはしばらく練習参加のみでロースターには入らない状態が続くこととなる。
    ↩︎
  5. ジョニー・ラザラス(アイスホッケーに関する情報を提供するポッドキャスト・ホストやコンテンツ・クリエーター)とコルビー・コーエン(NCAAのボストン大学やコロラド・アバランチでプレーした元ディフェンスマン)による、毎週月曜日から木曜日の午前9時(東部標準時。日本時間で午後11時)、デイリーフェイスオフのYouTubeチャンネル等で見られる番組。
    ↩︎
  6. 2021年の米国議会議事堂襲撃を受けて、当時のトランプ大統領がツイッターの使用を禁止された後、ディアンジェロは自身のアカウントを非アクティブ化し、代わりに保守系ソーシャルメディア・プラットフォームのパーラーに参加すると発表している。 ↩︎
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