はじめに
スーパースター、ジャスティン・ビーバーがトロント・メープルリーフスの大ファンであるのは、NHLファンのよく知るところです。このメープルリーフスというチーム、オリジナル・シックスの伝統チームでありながら、ここ数年、プレーオフであまり勝ち上がれません。
2019-2020シーズン(それでも2回戦負け)以外、1回戦負けの年が続き、今シーズンは珍しく?2回戦へと勝ち上がりましたが、スタンレーカップ決勝まで勝ち進んだフロリダ・パンサーズの前に屈してしまいました。
殻を破ろうともがくメープルリーフスが、このシーズンオフに大きくチーム改革を断行しようとしています。しかし、それもなかなかすんなり行かないらしく、かなりの障壁が眼前に立ち塞がっているようです。今回は、そんなチームの内情をお届けします。
この記事も連続モノになりますにゃ!いつもいつもすいません_| ̄|○。
引用元:ESPN.com「Seven hard lessons from the 2023 Stanley Cup playoffs」。
プレーオフは「学びの場」?
スタンレーカップ・プレーオフは、何はなくとも、教えを請う場です。あるシーズンで学んだことが、次のシーズンに影響を与えることがあります。
選手、監督、チームの幹部が、1年で最もプレッシャーに満ちた時期から間違った教訓を得るとしたら、来年の期末テストに失敗する運命にあるのかもしれません。
小さなレッスンもあります。例えばの話ですが、いくら「彼の方へ倒れこまずに、スティックを着地点にしたかったんだ」と言っても、両手でスティックの柄の部分を使って、相手をチェックしに行くファールであり、退場から免れることはできません。十分に注意してください。
レッスンによっては、より大きく、より微妙な違いもあります。ここでは、氷の上でも氷の外でも、これまでのプレーオフから得られた7つの厳しい教訓を紹介します。楽しんでください!
パンサーズのトレードは模倣すべきモノ?
教訓:マシュー・トカチュクのトレードは、今「リーグで模倣すべきもの」である。
マシュー・トカチュク(左ウィング、25歳)を獲得するためのトレードは、フロリダ・パンサーズに変革をもたらしました。
昨年夏、トカチュクを獲得するために、ディフェンスマンのマッケンジー・ウィーガー(29歳)とともにジョナサン・フーバードー(センター、29歳)をカルガリーへトレードし、トカチュクはフーバードーと比べ、ほぼ同数のポイント(109)、そしてより多くのゴール(40)をチームに与えています。
しかし、もっと重要なのは、フーバードーでは―彼の才能にもかかわらず―決して与えることのできなかった威圧感、自信、そしてしっかりとしたポスト・シーズンでのプレーを、トカチュクはチームにもたらしたのです。
パンサーズは、様々な理由で、スタンレーカップ初優勝の崖っぷちに立たされています。その中で最も重要なのはトカチュク効果です。
NHLは「模倣するリーグ」です。フィジカルなチームがカップ戦に出場するには?筋トレしてください。速さを売り物にするチームがカップ戦に出場するには?バーナーをラインナップに加えないといけませんね。
カップ戦出場のために、パンサーズがどんなプレーしたのか?マシュー・トカチュクをトレードで加えないといけなかったのです。
もちろん、トカチュク一人でチームが強くなるわけではないけど、
チームとの相性が良かったのか、全てが上手く回り始めた感じがしたにゃ。
真似しようとするチーム=リーフス?
フロリダのトレードは、現在「チームのDNAを、競争力あるモノに書き換えられるスター選手のために、チームのコアの一部を切り離す」ことを意味しています。
カイル・デュバスが、ポスト・シーズンの記者会見で、今年の夏にトロント・メープルリーフスの「コア4(チームの中心選手4名)」の1つをトレードする可能性について話題に上がった際、それについて言及したことに理由があるとしています。
※カイル・デュバス=カナダ、スー・セント・メリー出身の37歳。大学でスポーツ・マネジメントの学位を取得して卒業して以降、あっという間にチームの実権を握る位置にまで上り詰めた、若き野心家。今回、チームの屋台骨を揺るがす発言をした事が、裏目と出たのか…。
「先ほど対戦したチーム(パンサーズ)は、我々にとって素晴らしいテンプレートとして機能しています」とデュバスは語りました。「昨年、パンサーズは大統領杯を獲得しましたが、プレーオフ2回戦で敗れ、失望していました。
夏になって、パンサーズは中心選手2人を素晴らしい若手選手と交換したのです。それは大きな動きですが、急ごしらえではないと思います。スタンレーカップ優勝に役立つことなら、我々のグループ(メープルリーフス)では何でも検討します」と述べました。
もちろん、もはや「彼のグループ(メープルリーフス)」だけの話ではありません。これについては、後ほどご紹介します。
GM諸君、この3点に気を付けてるかい?
しかし、トカチュクのトレードをテンプレートとして見ているゼネラル・マネージャーは、デュバスだけではないでしょう。このレッスンの中にある3つのサブ・レッスンを無視しているように思えます:
(1)ブラッド・マーシャン(左ウィング、35歳。ボストン・ブルーインズ所属)以来の攻撃的な洞察力と鋭さを併せ持ち、マウス・ガードのように相手を噛み砕く選手(リンク上で相手選手にキスしたりすることへの皮肉?)は、200フィートすべてをプレーする25歳、マシュー・トカチャックただ一人です。
(2)マシュー・トカチュクは新しい契約交渉を1年後に控えており、カルガリー残留を希望していなかったため、(パンサーズは)獲得可能だったのです。
(3)つまり、「トカチャック・トレード」の機会を探すには、(a)現在のチームを離れたいと思っている人、(b)市場において、契約延長に署名することをいとわない人を見つける必要があります。フロリダは、変化のための変化ではなかったというのが、ここでの最大の教訓でしょう。
「大きなトレードだ、という観点で考えてはいませんでした」とフロリダのGMビル・ジトは私に語りました。「唯一無二の財産(トカチュク)があったのです。言ってみれば、〈ユニコーン〉です。では、それを手に入れるために、どうすればよかったのでしょうか?」。
※ビル・ジト=米国、ペンシルベニア州ピッツバーグ出身、58歳。元々は、ホッケー選手の契約交渉を担当するスポーツ・エージェント、即ち代理人である。 ブルージャケッツの下部組織チームのGMからスタートし、2020年にパンサーズのGMとなる。
メープルリーフスはプレーオフで十分な成功を収められず、「コア4」を解体するかもしれません。フロリダは、無形資産と同様にビジネスのためにトカチャックのトレードを行いました。フーバードーは6月に30歳になり、ウィーガーは来年1月に30歳になります。
どちらも新しい長期契約が予定されていて、カルガリーはそれらの契約を供給したのです。フロリダは、まさかそうなると思っていませんでした。トカチュクが出場できるようになると、パンサーズはなんとか若返り、お金を貯めることに成功したのです。それが今回の動きの核心でした。
それから正しい教訓を得てください、模倣者の皆さん。
つまり、パンサーズ・サイドはあくまでビジネスライクにトレード打診してみたら、
思いの外、上手くいった訳だにゃ。
リーフスで気がかりな点
リーフスには興味深い点があって、マシュー・トカチュクの時のように、実は「トレードの相手側」になるかもしれないということです。
オーストン・マシューズ(センター、25歳)は来年の夏にUFA(制限付きFA)になります。彼の移籍禁止条項はこの夏に発動します。彼はトロントに残りたいと思っているはずです。また、今シーズン以降、チームが劇的に変化してしまったことも知っています。
もし、彼がチームに戻ってこないと決めたらどうするのでしょうか?GMはスタンレーカップ決勝進出のためにチームを強化すべきでしょうか?それとも、チームにとってのフベルドーとウィーガーを探すのでしょうか?
リーフスGM解雇の真相
教訓:プロスポーツのどのチームよりも早く、リーフスは「パレードの計画」から「通夜の準備」に進めてしまう。
※パレードの計画=スポーツにおいて、チームが優勝候補となる積極的なトレードや選手獲得を行うときに使用される表現。NHLのトロント・メープルリーフスがスター・フォワードのフィル・ケッセルを獲得した後に計画された、トロントを巡るスタンレーカップ・パレードを指す。
このフレーズは皮肉を込めてよく使われる。
メープルリーフスは4月29日にタンパベイ・ライトニングを敗退させ、2004年以来のプレーオフシリーズの勝利を収めました。
5月23日、チームをまとめたゼネラル・マネージャーのカイル・デュバスは、”私の出発の経緯“について「具体的な内容には触れない」と説明する声明を発表しました。ただし、チームを去るのは、彼の選択ではありませんでしたが。
人生は早いと言われています。リーフスには光速で迫ってきます。
ある時、中心選手たちと驚異的な存在であるGMがついにプレーオフで力を発揮し、1967年以来となるスタンレーカップを目指していました。
次の瞬間、GMが解雇され、コアが崩壊する可能性が出てきたのです。そして、数年ごとにフランチャイズを全滅させるというリーフスのライフ・サイクルが、実は破綻しておらず、今も継続していると判明したのです。
このGM解雇のニュースは、ちょっと驚いたにゃ。
まあ、チームが一つの壁を突き抜けるためには仕方ないかもしれないけど、
その内幕はかなり複雑なようで…。
GMの権利を守ろう!
カイル・デュバスの去就について、真実でないと願うのは次のようなことです:
次のキャリア・ステップについて家族と相談したと公表したこと―そして、リーフスでの仕事が家族に与えた負担も–は、実は球団社長のブレンダン・シャナハンによって、弱気と揺らぐ決意の表れとして処理されたものでした。
※ブレンダン・シャナハン=カナダ、オンタリオ州エトビコ出身、54歳。現役時代のポジションは左ウィング。1987年度NHLドラフト指名全体2位という、超エリート選手。20年以上の現役キャリアで650以上のゴールを叩き出し、同時に2000以上のファールをした史上唯一の選手。
「カイルが表明したように、彼は我々のチームでGMになりたくないかもしれない」とシャナハンは述べています。「そして、それを真剣に受け止めなければならない」。
メンタル・ヘルスの観点から、これはひどい話です。
今まで以上にNHLの選手、コーチ、役員の人生の全容についてコメントすることに、私たちは時間を費やすようになってしまいました。デュバスが、トロントの仕事に対して「すべてを注ぎ込んでいた」訳ではなかったと主張する人がいるのは、これらのコメントのせいだと聞いています。
トロント・メープルリーフスのゼネラル・マネージャーのように極めて重要な仕事であれば、個人の福利への懸念など関係ない、どうでもいいということです。とんでもない話です。
まとめ
球団社長・シャナハンの言動や処置は、GMの人権を蔑ろにしているような気がします。「チームを強くするためには、多少の痛みは仕方ない」とよく言われますが、それも度を超すと、「オフィス内の陰湿なイジメ」に過ぎません。
今後、このチームがどうなっていくのか、については、次回以降の記事になりますが、辛口のESPN.comの事ですから、きっとバッサバッサと切り捨てていくのは容易に想像つきます。
今回のテーマ=「チーム強化の手本」はこれまで色々あったと思いますが、上辺だけ真似してもチームは強くならない、とするESPN.comの見解に大きく頷けるのは確かです。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!