はじめに
年明けから取り上げたい話題が目白押しで、すっかり後回しになっていましたが、2月18日(土)、ノースカロライナ州立大学カーター・フィンリー・スタジアムにて、スタジアム・シリーズ(野外試合)が行われ、好調ハリケーンズがオベチキンの記録達成に沸くキャピタルズを下し(4ー1)、歴史に名を刻みました。
NFLの試合ですら「あの巨大スタジアムでボール見えるのかな?」と思えるのに、さらに小さいアイスホッケーのパックはどうなんだろ?という心配(・・;)を他所に、今回も盛況の内に終了。
以前、お伝えしたウィンター・クラシック同様、試合用ユニフォームの他に、両チームは「趣向を凝らしたファッション」で観客を楽しませてくれました。この辺は、日本のプロ・スポーツであまり見かけませんね。
ウィンター・クラシックも、スタジアム・シリーズも、
ある意味「お祭り」だからにゃ。
観客も試合の勝敗より「娯楽優先」なのかもしれんね。
引用元:ESPN.com「Why the Hurricanes wore golf outfits to the Stadium Series」。
スタジアム名物・NHLのファッション・ショー?
NHLが屋外でホッケーの試合を行う時、選手達は印象的な服装をします。フェンウェイパークでの昔の野球ユニフォームであれ、ミネソタのビーチ・ウェアであれ、各チームはスタジアムでの試合の数週間前にユニフォームを決めます。
※フェンウェイパークでの昔の野球ユニフォーム=今年1月、同球場にて行われたウィンター・クラシックで、ボストン・ブルーインズの選手達が、地元MLBチームであるレッドソックスの1900年代初期のユニフォームを着用していたこと。
※ミネソタのビーチ・ウェア=昨年、ミネアポリスで行われたウィンター・クラシックで、セントルイス・ブルースの選手達が思い思いのビーチ・ウェアを身にまとい、さながら団体の海水浴客のようにチーム・バスから降りてきたこと。
今年流行のファッションは?
2月18日(土曜日)、ノースカロライナ州立大学カーター・フィンリー・スタジアムで行われた、2023年スタジアム・シリーズの試合では、ワシントン・キャピタルズが黄色いスクールバスで到着し、代表チームのジャケットを着て、フットボールを持ちながら現れました。
※ノースカロライナ州立大学=ノースカロライナ州ローリーにあるアメリカ合衆国の州立大学。1887年創立。大学の略称はNC State(記事中もこちらを使用)、NCSU。学生数約35,000人。近年、ノーベル賞受賞者を多く輩出する米国屈指の名門大学。
※カーター・フィンリー・スタジアム=1966年に開設。ハリケーンズの本拠地であるPNCアリーナの向かいにあり、収容人数は56,919人。
まず、大学の卒業生であり、スタジアム建設に多大なる貢献をしたハリーとWJ「ニック」カーターの兄弟にちなんで、カーター・スタジアムと呼ばれていた。
1979年、施設のフィールドハウスに資金を提供した、ローリーの慈善家「フィンリー」の名前が追加され、カーター・フィンリー・スタジアムとなった。
※ワシントン・キャピタルズが黄色いスクールバスで到着=その映像はこちら。
ホストのカロライナ・ハリケーンズは、ゴルフという別のスポーツを選びました。
ESPN.comにアップされている画像を見ると、
ハリケーンズの選手達は、アイスホッケーの選手というより、
ロックバンドのメンバーのように見える。おしゃれだにゃ!
ゴルフ・ウェアを選んだ理由
ケインズ(ハリケーンズの愛称)は、おそろいの帽子とネクタイで格子縞のニッカーズを身につけました。ゴルフクラブを持ち、手袋をしている人もいました。この衣装は、ノースカロライナ州とゆかりの深い故ペイン・スチュワートに敬意を表したものだったのです。
※ニッカーズ=ひざ下までの丈の裾口をベルト締めにしたスラックス。ニッカー・ボッカーズが正式名称。1920年代にゴルフ用のスラックスとして一般化。
※ペイン・スチュワート=ミズーリ州スプリングフィールド出身。メジャー大会3勝をマークしていたが、1999年の全米オープン優勝からわずか4ヶ月後、飛行機事故のため42歳で急逝。
スチュワートのゴルフ理念とチャリティ精神の後継者に授与される賞として、ペイン・スチュワート・アワードが設けられた。
スチュワートは、パインハースト・リゾートで開催された1999年の全米オープンで、15フィートのパー・パットを沈め、最終ラウンドでフィル・ミケルソンを一打差で破って優勝しました。パインハーストには、そのパットを祝うスチュワートの像があります。
※パインハースト・リゾート=アメリカのノースカロライナ州パインハーストにあるゴルフ場。
全部で8つのコースを持つ全米最大のゴルフコースであり、中国のミッションヒルズGCに次いで2番目の規模を誇る。
クラブハウス前には1999年の全米オープンで優勝した、スチュワートのガッツ・ポーズをした銅像がある。
スチュワートは、柄物のパンツなど、「スローバック(先祖返り)」と呼ばれるゴルフ道具を身につけていたことで有名でした。
※スローバック(先祖返り)=スチュワートのトレードマークは、古き良き時代を彷彿とさせるようなレトロなハンチングとニッカボッカ。
「誰かとウェアがカブるなんてごめんだ」と思ったことから、体の線が出るようにしたポロシャツと、ニッカボッカのダボッとした膨らみでバランスを取ったファッションを思いついたとされる。
スタジアム・シリーズのゴルフ・ルックのきっかけとなったのは、ハリケーンのフォワード、ステファン・ノーセンでした。
もう一つ、候補があったけど…
「僕達は2つの選択肢を思いついたんだ」とノーセンは言いました。「誰かがペイン・スチュワートに敬意を表していると言っていてね。それで、僕達はいろいろとアイディアをまとめ始めたのさ。投票にかけ、多数決を取ることにしたんだよ」。
ノーセンは、Opulence Lifestyle Managementという総合案内の会社を所有しています。その会社は、ハリケーンズのスタジアム・シリーズ開催に必要なパートナーシップ実現に貢献しました。Golf Knickersはバギーパンツを作り、G/Foreが靴を作りました。
※Opulence Lifestyle Management=テキサス州ダラスにあり、観光・旅行、ホテル、レストラン、ウェディング等を扱う。
※Golf Knickers=ゴルフウェアのクラシックなスタイルの定番と言える海外ブランド。
※バギーパンツ=だぶだぶとしたゆとりのあるパンツのこと。「袋(bag)のような」という語源から派生したとされる。
※G/Fore=2011年、ロサンゼルスに設立されたラグジュアリー・ゴルフ・ブランド。Golf Knickersとこちらは日本でも購入可能。
「僕達はそれをつなぎ合わせただけさ。誰もがそれを気に入ってくれたよ」とノーセンは述べました。
フットボールへのオマージュ案が…
ハリケーンズのもう一つの選択肢として、ノースカロライナ州立大学フットボールへの賛辞があるだろうとノーセンは述べました。残念なことに、スタジアム・シリーズを主催した学校は、このアイデアにそれほど好意的ではありませんでした。
「物流面では、ノースカロライナ州立大学は何も助けてくれないよ。これが現状なのさ」とノーセンは述べ、ノースカロライナ大学とデューク大学の卒業生がハリケーンズの組織で働いていることを考えると、それが最善かもしれないと付け加えました。
※デューク大学=ノースカロライナ州ダーラムにある米国の私立大学。1924年設立の、国内でトップクラスの名門大学であり、年間10億ドル以上の研究費を投じている国内有数の研究大学でもある。第37代アメリカ合衆国大統領のリチャード・ニクソンも卒業生の一人。
「一部の職員との間で、いくつかの論争をしたよ」と彼は言っています。「ハリケーンズで働いてる大学OBを見捨てることなんかできないさ」。
どうして大学は非協力的だったんだろうにゃ。
良い宣伝にはなると思うのに…。
ストーム・サージと狼
ハリケーンズはゴルフギアを身に着けて、スタジアムに足を踏み入れました。しかし、氷の上を離れる前に、彼らはゴルフの腕前を披露しなければなりませんでした。
カロライナ(の選手達)はセンター・アイスサークルに立ち、ファンと共にリズミカルな手拍子をし、時にはコミカルな演出で儀式を締めくくる「ストーム・サージ」で有名になりました。
※ストーム・サージ=ハリケーンズが試合に勝利した後、必ずファンと共に行う儀式。元々の意味は、高潮とか風津波。今回のスタジアム・シリーズにおける「ストーム・サージ」の映像は、上記引用元を参照のこと(やや映像小さめ)。
スタジアムシリーズ「サージ」を締めくくるため、ハリケーンズの選手達がグローブを氷に投げつけ、スティックをクラブ代わりにして、リンクに叩きつけるというパフォーマンスを行いました。
ゴルフ・ショットの後、ハリケーンズはノースカロライナ州立大学の「ウルフパック」ハンドサインを掲げました。
※ウルフパック=ノースカロライナ州立大学アメフト部(NC State Wolfpack football)の呼称。部を代表するシンボル・マークにも狼が使用されている。
振り付けを担当したのは、ディフェンスマンのブレント・バーンズ。
「他の何人かの選手達がゴルフのことを考えていたので、僕達はゴルフをやることにしました」 と彼は言っています。
「そして、学校の周りにいる卒業生たちが狼のハンドサインをあげているのを見て、とても楽しくなったんだ。それに敬意を払うのは、とても楽しいことだったよ」。
まとめ
ノーセンの発言について、ノースカロライナ州立大学関係者はどう感じたのだろう…。まあ、ケインズとしては試合に大勝、大学にもオマージュを捧げた訳だし、観客も大喜びだったので、サラリと水に流し、大学側も苦笑いしながら成功を祝福といった感じかもしれません。
バーンズが「やばい!」と思って、「ウルフパック」ハンドサインをやろうと言い出した…なんて想像もしてます。
コヨーテズも、数年間、大学所有のマレット・アリーナで試合していきますし、今回のスタジアム・シリーズの件も含め、いかに米国の大学スポーツが巨大な存在感を持っているか、改めて思い知らされました。
それだけ育成に力を入れている証ですから、日本のスポーツがなかなか太刀打ちできないのも分かりますね。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!