2022-23年NHLのトレード期限についてGM達が語る!【中編】

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はじめに 

 今回は「2022-23年NHLのトレード期限についてGM達が語る!」の続編となります。そして、前回もお伝えした通り、元記事があまりにも長文で難解なため、今回だけで収まりきらず、次回の後編も含め三部作仕様にせざるを得ませんでした。それだけ、チーム間のトレードというのは、ナイーブな問題だということがわかります。

 前回以上に選手の実名が出てきますし、NHLでのトレードが単純に2チーム間の問題だけで済まないことが、記事中に出てきます。それもこれもサラリーキャップ制度という重い十字架が、GM達の背中にのしかかってくるからであり、それを少しでも軽減しようと彼らが悪戦苦闘している様子もうかがえます。

讃岐猫
讃岐猫

サラリーキャップ制度を撤廃すると、チーム間格差が拡大する一方だし、

リーグ戦の魅力が半減してしまうんだにゃ。何とも悩ましい…。

引用元:ESPN.com「What GMs are saying about the 2022-23 NHL trade deadline」。  

サラリーキャップ値上げに向けての攻防

 しかし、別の方法があります。NHLPA(選手の組合)の関係者が先月語ったところによると、100万ドルの値上げと、ベットマンが最初に言及した400万ドルの値上げという二つの上限の差を埋めることが内部で議論されており、団体交渉協定はそれを可能にしていると私に語ってくれました。

 私はその可能性を確認しましたが、その計画の実行について、NHLとの正式な話し合いはありませんでした。しかし、そうなる可能性もあります。

 また、この数字を埋めるために、誰がその取り組みを推進するのかという疑問もあります。

 それにはNHLPAの譲歩が必要なのか、それとも理事会の中で、これだけ多くのチームが上限を決めているのだから、選手との労働争議なしに2023-24年の数字を上げるよう、ベットマンに強制できるほどの支持が理事会内にあるのでしょうか。

 選手側の関係者の一人は「本当の問題は、上限を100万ドル上げて、これらすべてのプレーヤーとチームがその影響を受けた上で、(2024年から25年にかけて)上限を大幅に上げて、チームが酔っ払いの船乗りのようにお金を費やすことが正しいかどうかです」と語りました。

 「あるいは、来シーズンは300万ドル、その次のシーズンは300万ドルから400万ドルにもっと合理的に値上げしたいのだろうか」。

 このような決定は、明確な内容があれば、トレード期限に影響を与える可能性があります。

ドミノ倒しは起きるのか

 すべてのトレード・シーズン中、トレードによって、「機械が回転する」ように周囲が変化するプレーヤーがいます。彼らが市場を設定するか、彼らを逃したチームが代替案を探すかのどちらかです。

ボー・ホルバートの場合

 現在、バンクーバー・カナックスのセンター、ボー・ホルバート(センター、27歳)がその選手に当たります。月曜日、カナックスのジム・ラザフォードGMは、非常に率直な記者会見の中で、チームがホルバートとの契約を「ベストショット」としたことを認めています。

 しかし、フリーエージェント前のキャリア・イヤーに突入した今、そのベストショットは十分とは言えないかもしれません。

 「我々はここで窮地に立たされています。彼(ホルバート)はキャリアを積み重ね、出世し、彼はお金を求めているし、それに値する選手です」と述べました。

 ホルバートがトレードされるという考えは、バンクーバーでは、ブルース・ブードローの後任としてリック・トチェットがカナックスのコーチになるという考えと同じくらい、当たり前のことになりつつあります。このトレードが実現すれば、得点源を探している他の候補者(チーム)は、代わりの選手を探すことになります。

 しかし、ホルバートのユニークな点は、彼の市場が競争相手を限定していないことです。あるGMはこう語りました。

 「ホルバートのような男は、どこかのチームと長期的な契約をする気があれば、31チーム全てが彼と一緒にプレーすることができます。つまり、彼にとってはプレーオフに出場するチーム以外との契約も混ざっている可能性があるのです」と述べました。

ドミノ倒しはシカゴにも

 誰もが待ち望んでいる他のドミノ倒しはシカゴ(・ブラックホークス)に並んでおり、ジョナサン・トゥーズ(センター、34歳)とパトリック・ケイン(右ウィング、34歳)が、今夏のFAを控えて大型のキャップ・ヒット(平均年間価値1050万ドル、日本円で約14億円)を持っています。

 あるゼネラルマネージャーは「誰もがシカゴの様子を見ることになると思います。トゥーズやケインもそうだ」と述べました。

 他にもあります。エリック・カールソン(ディフェンス、32歳)とティモ・マイヤー(右ウィング、28歳)のサンノゼ・シャークス。マット・ダンバ(ディフェンス、28歳)とミネソタ・ワイルド。ライアン・オライリー(センター、31歳)とセントルイス・ブルース他多数。

 ドミノ倒しが始まったら、他のドミノ倒しもそれに従うべきだ―ただしサラリーキャップが許す限り。

サラリーキャップの解決策

 サラリーキャップの上限を突破する(ごまかす?)方法はいくつかあります。最も一般的な方法は、チーム全体のサラリーキャップから選手のキャップ・ヒット(給料のこと)を一時的に取り除く長期負傷リザーブです。

 1月18日(水曜日)の時点で、LTIR(Long Term Injured Reserve=長期負傷者リザーブ・リスト)にプレーヤーがいるチームが18もありました。

 Cap Friendlyによると、このリストに最も多くの選手が名を連ねている上位5チームのうち、セントルイス・ブルース、モントリオール・カナディアンズ、ベガス・ゴールデンナイツ、トロント・メープルリーフスの4チームの予想キャップ・スペースはゼロとなっています。

 しかし、ブルース、ナイツ、カナディアンズはいずれもLTIRを利用すれば、現在440万ドル以上のキャップ・スペースを保有していることになります。

Cap Friendly=NHLのビジネス面を専門とするカナダのホッケー・ウェブサイト。このサイトには、サラリーキャップ・データベース内におけるNHLプレーヤーとコーチの契約情報、およびNHL労働協約に関する事項が分かるようになっている。

 私が話を聞いたゼネラルマネージャーは皆、トレードの期限までの不確定要素として、怪我を挙げました。キャップ・スペースを作るか、取引する必要があるか悩んでしまう理由がこれです。

讃岐猫
讃岐猫

うーん、このやり方が今、NHLで最もポピュラーなのが残念だにゃ。

いわゆる「虚偽の負傷申告」をして長期休暇…ってこともできてしまう。

サードパーティのブローカー?

 しかし、彼らが取引を行うために利用できる、より予測可能なサラリーキャップの解決策があります:サードパーティのブローカー(第三者の仲買人)です。

 2013年のCBA(Collective Bargaining Agreement=NHLと選手組合との間に交わされた選手契約や待遇などに関する協約)では、トレードにおける給与保持が問題になりました。チームは選手をトレードする際、キャップヒットの50%まで保持することができます。

 しかし、「最終目的地(本来のトレード先)」に移動する前、その選手を「サードパーティーのチーム(第三者の別チーム)」にトレードすることで、そのサードパーティーのチームも彼の給料の最大50%を保持することができます。

 その選手が新チーム(「最終目的地」、本来のトレード先)の登録メンバーになる頃には、彼のサラリーキャップ・ヒットは当初のわずか25%程になっています。

デビッド・サバードの場合

 デビッド・サバード(ディフェンス、32歳。現在はカナディアンズに在籍)がタンパベイ・ライトニングにたどり着いた方法を思い出してください。映画『マトリックス』の主人公・ネオが真のコードを見るように、(ライトニングは)サラリーキャップ・システムを見るチームでした。

 ブルージャケッツは年俸の50%(212万5000ドル、日本円で約2億8千万円)を残して、サバードをデトロイトにトレードしました。レッドウィングスはその年俸の50%(106万2500ドル、日本円で約1億4千万円)を残して、彼をライトニングにトレードしました。

 ブルージャケッツとレッドウィングスはチームの財政援助のためにピック(将来のドラフト指名権)を獲得し、ライトニングはブルーライナー(ディフェンスマン)を獲得し、サバードは「もう一つのカップ(スタンレーカップ)」獲得に貢献しました。

讃岐猫
讃岐猫

こんな方法が成立するなんて驚きだにゃ。

選手が納得してるんなら、それもアリだけど、

チームの駆け引きの道具にされちゃたまらん!

 2023年のトレード期限までに、これらのような取引がいくつか期待できますか?

 「キャップスペースを確保している優れたチームはいくつかあるかもしれないが、大多数のチームはそうではありません。

 したがって、チームのロスターに選手を増やし続けるには、第三者にあたるチームがキャップヒットを減らし続けるように手助けする必要があるのです」と、あるゼネラルマネージャーは言いました。「これらの取引は10件もありません。それらを実行できるチームは、できる数に制限があります」。

まとめ 

 NHLのトレード市場は3月まで続くので、まだまだ時間はあるため、終盤に向かうレギュラー・シーズンの成績次第によっては、大きく動く可能性があります。特にプレーオフに進出できるかどうかギリギリのチームにとって、「大金を積まないマネー・ゲーム=ルールを逆手に取った取引」という選択肢を取らざるを得ないでしょう。

 それを楽しむべきなのかどうか、サラリーキャップに馴染みのない日本人には、やや分かりかねる部分ではあります。我が愛するフライヤーズも、トルトレラ監督主導で大量の血の入れ替えをするという噂もあります。チームにも選手にもわだかまりのないトレードになってほしいのですが…。

讃岐猫
讃岐猫

ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!

 

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