フライヤーズでの成長を誓うジーグラス、移籍後の素直な言葉と未来への期待

現役スター選手紹介

はじめに

 アナハイムを離れ、フィラデルフィアで再出発するトレバー・ジーグラス。華麗な“魔法”と守備の成長、チームの期待が交差する今季――移籍の背景から仲間の証言、キャンプでの様子までをプロ目線でわかりやすくお届けします。

 なお、今回の記事は、前編・後編に分かれています。

前編はこちら。

参照記事:ESPN公式サイト「Post-Ducks crashout, how Trevor Zegras can recapture the ‘magic’ with the Flyers

新天地フィラデルフィアへ✈️

 アナハイム・ダックスで期待されながらも、なかなか本領を発揮できなかったトレバー・ジーグラス。彼はクローニンの下で過ごした期待外れの2シーズン、トレード候補リストの噂に常に名前が挙がり、周囲の雑音に苦しめられていました。

 ジーグラス自身も「初めての経験で、とにかくひどかった。本当に最悪だった。2年目は少し慣れたけど、最初の年は本当にきつかった。どこにでも噂があった。毎日のように、“あれだ”“これだ”と色々言われて、ちょっとしたことが大きな話題になった。

 考えないようにしていても、どこでも目にしてしまって、本当に嫌だった」と振り返るように、日々流れる噂は精神的にも大きな負担になっていたのです。

 そんな噂も、6月23日の現実の出来事で終わりを迎えます。ジーグラスはライアン・ポーリング1とドラフト指名権(2025年の2巡目、2026年の4巡目)との交換で、フィラデルフィア・フライヤーズへ移籍することが決まりました。

 アナハイムのゼネラルマネージャーであるパット・ヴァービーク2は、「結局のところ、トレバーはセンターとしてプレーしたがっていて、フィラデルフィアならそのチャンスを与えられると思う。彼をウィングに押しやる形は、彼の持つ“中央から攻撃を作る力”を十分に活かせなかった。チームの構成に合わなくなったんだ」と説明。

 「トレバーには、この6シーズンでの貢献に感謝している。トレードを決断するのは難しかったが、我々はロスターをより一体的にかみ合う形に作り替えようとしている」。

 つまり、チームの再編の一環として、彼との別れを決断したのです。

フライヤーズの期待とチャンス🔥

 他のチームと同じように、フライヤーズはここ2シーズン、何度もジーグラス獲得の可能性を探っていましたが、タイミングやダックス側が手放す準備ができていない、条件が整っていない等の理由により実現には至りませんでした3。ですが今回、ついに念願の補強が実現。

 チームのブリエールGMは、ジーグラスの成績が下がり、ようやく獲得可能になったと考えています。

 「トップ6(第1&第2ライン)の才能を持つ選手がNHLで獲得可能になることはめったにない。我々はリスクを取る価値があると感じた。隠すことでもないが、我々はセンターの層が薄い。彼が助けになってくれることを願っている」とコメントし、薄いセンター陣の補強として大きな期待を寄せています。

讃岐猫
讃岐猫

仲間が語る「ジーグラスの魔法」✨

 アナハイムのゴーリー、ルーカス・ドスタル4はジーグラスの“魔法”を間近で見てきたひとりです。先発でないとき、(練習中、)ドスタルはブレイクアウェイドリル5でゴールを守る役を務め、ジーグラスの“ビデオゲームのような動き”を間近で何度も体験しました。

 「正直、あれは好きじゃなかったよ。時々YouTubeで見るようなトリックを出してきて、『おい、真面目にやれよ!頼むから!』って言ったこともある」と笑いながら振り返ります。

何だか分からなくなるくらい上手い、ジーグラスのスティックさばきでした。

 ただ彼は、ジーグラスが誤解されている部分もあると指摘します。特に守備面での批判は不当だというのです。

 「多くの人は気づいていなかったかもしれないが、彼は2ウェイ(攻守両面)ホッケーをしっかり理解していたし、去年はその部分に本当に力を入れて取り組んでいたんだ。得点は思ったほど伸びなかったけど、守備に責任を持つホッケーの質は格段に良くなった。彼は本当にいいやつで、フィラデルフィアでも活躍してほしい」と語りました。

カチャックが見た新しい一歩💪

 オフシーズンには、オタワ・セネターズのブレイディ・カチャックとともにコネチカットでトレーニングを積んだジーグラス(ニューヨーク・レンジャーズの暴れん坊、マット・レンペも参加)。彼もまた、フィラデルフィアでの新たなスタートが再び輝きを取り戻す助けになることを期待しています。

 「特にトケットの下でやれるのは彼にとって最高だと思う。あそこには素晴らしいカルチャーがあって、ジーグラスもすぐに馴染めるはずだ」とESPNに語りました。

 さらにカチャックは、フライヤーズというチームそのものについても「フィラデルフィアと対戦すると、彼らは本当にハードにプレーする印象があったけど、同時にスキルを持った素晴らしい選手も多くて、“激しさ”と“巧さ”を兼ね備えたプレースタイルだった。

 だから彼にとっては最高の環境になると思う。変化が彼にどう影響するのか楽しみだし、きっと良い方向に進むと思う」とコメント。新天地での変化を楽しみにしている様子でした。

新しいニックネーム「タコ」の誕生🌮

 フィラデルフィア・フライヤーズでのキャンプ開始時、ジーグラスは新しいニックネームを監督につけました。それは「タコ」です。

 トカットはフライヤーズのヘッドコーチとして今季が1年目。以前はバンクーバー・カナックスで3シーズン指揮を執っていました。トカットの選手時代、フィラデルフィアで11シーズンを過ごし、“タフで妥協しないウィンガー”として知られていましたが、多くの人々からはシンプルに「トック」と呼ばれてきました。

 今回、「タコ」というユニークな呼び名には思わず笑顔に。「そう、彼は俺のことを“タコ”と呼んでいるんだ。いつも笑顔で、ロッカールームにとっても良い雰囲気を作ってくれる」と語っています。

 その「タコ」という呼び名はどこから来たのか?ジーグラスによると、このニックネームは友人でありNHL選手仲間のジャック、クイン、ルークのヒューズ兄弟からヒントを得たものだそうです。「僕はヒューズ兄弟と仲が良くて、彼らはいつも『タコは元気か?』って聞いてくるんだ」と笑顔で話します。

ゴルフでも仲良し!⛳

 ジーグラスは夏の間、ヒューズ兄弟と一緒に過ごす時間が多く、ゴルフコースでも顔を合わせていました。ジーグラスは、自分がその4人の中で一番のゴルファーだと誇らしげに語っています。
そして彼はヒューズ兄弟のゴルフスタイルについて、こんな“スカウティングレポート”を披露しました。

 「ジャックのゴルフは好きだな。僕が今まで見た中で、彼は一番速くてせっかちなゴルファーだ。ティーを地面に差しながら会話を続け、そのままサッとスイングしてまた会話を再開する。一方クインは正反対で、10回も素振りをしてからようやく1打を打つんだ」と独特の観察を話してくれました。

新天地での挑戦と期待🌟

 ジーグラスは、ジャックとルーク・ヒューズ(共にニュージャージー・デビルズ)と同じディビジョン(メトロポリタン)に入ることを喜んでいます。その理由は、兄クイン(バンクーバー・カナックス)とは同じディビジョン(パシフィック)で対戦しなくて済むからです。

 「もう二度とクインとは対戦したくない。彼は史上最高のホッケー選手だよ」と冗談交じりに語ります。

 フライヤーズがジーグラスに求めるのは“史上最高の選手”になることではなく、彼の初期の頃に見せた創造性あふれるプレーと、センターとしての必要な堅実な2ウェイプレーを組み合わせることです。

 トケット監督は「彼も自分のプレーに改善が必要な部分を分かっている。学ぶ姿勢もある。指導しやすい選手だし、オフィスに来て映像を見たり、氷上でコーチの話をしっかり聞いたりしている。素晴らしい子だ」とジーグラスを評価しています。

 ブリエールGMも、ジーグラスをフライヤーズの若い才能と共に成長できる選手として見ています。「彼はモチベーションを持ってプレーするはずだ。彼の年齢を考えれば、うちの多くの若手と一緒に成長できる。私たちは彼を信じているし、最初の数シーズンで見せたあの“魔法”を取り戻せると信じている。さらに高いレベルに到達してくれるだろう」とコメント。

 チームは2020年以来のプレーオフ復帰を目指し、ジーグラスの存在に大きな期待を寄せています。

 一方でジーグラス自身は、移籍をポジティブに捉えています。これまでアナハイムでは思うように結果を残せなかったものの、新天地フィラデルフィアでは「センター」として本来の力を発揮できる可能性が広がるからです。

キャンプ初日の映像。新しい監督やチームメイトのトラビス・コネクニーと一緒に練習する中で、新しい気づきがあったと話しています。

 彼にとっては再スタートの舞台。新しい環境が彼のホッケー人生をどう変えるのか、多くのファンが注目しています。

 ジーグラスにとって、ブリエールが語る“魔法を取り戻す”という言葉は、ただ一つの意味しかありません。それは、かつて20歳でビデオゲームの表紙を飾ったときに象徴していたものと同じです。

 「楽しむこと。ただ、楽しむこと。そして今、最高に楽しんでいる。本当に素晴らしいよ。マトヴェイと一緒にプレーするのも楽しいし、ロッカールームの仲間たちも最高だ。早くリンクに来てみんなと過ごす時間が本当に楽しい」と笑顔で語ります。



 「もちろんアナハイムでも楽しい時間はあったけど、ここは違う。全然違うんだ。すべてが新鮮で、またゼロから始めるような感覚なんだ」と、新天地での挑戦を心から楽しんでいる様子でした🎉。

まとめ

 フィラデルフィアでの挑戦を通じて、ジーグラスは新しい仲間と共に成長の道を歩み始めました。攻守のバランスを磨きながら、若手と共にチームを前進させる存在となることが期待されています。

 フライヤーズでの新たな挑戦を迎えたジーグラス。彼の“魔法”が再び輝く瞬間を、私たちファンも楽しみに見守りたいですね!

讃岐猫
讃岐猫

【註釈】

  1. 1999年、アメリカ出身の選手で、ポジションはセンター。2017年NHLドラフトでモントリオール・カナディアンズに1巡目25位で指名され、プロ入り。デビュー戦ではハットトリックを達成するなど話題を呼んだ。

     モントリオール時代はAHLとの往復を繰り返しつつも経験を重ね、2022年にはピッツバーグ・ペンギンズへトレード。その後2023年にはフィラデルフィア・フライヤーズと1年契約を結び、翌年には2年延長。

     国際舞台でも2019年の世界ジュニア選手権ではMVPとベストフォワードに選出され、アメリカ代表として活躍。2025年6月には、トレバー・ジーグラスとのトレードでアナハイム・ダックスへ移籍。
    ↩︎
  2. 1964年、カナダ出身の元プロホッケー選手で、現在はダックスのゼネラルマネージャーを務めている。

     選手時代は1982年のNHLドラフトでニュージャージー・デビルズから43位指名を受け、20年以上にわたり5チーム(デビルズ、ハートフォード・ホウェーラーズ、ニューヨーク・レンジャース、ダラス・スターズ、デトロイト・レッドウィングス)で活躍。1999年にはダラスでスタンレーカップを獲得。

     ヴァービークは“Little Ball of Hate”(リトル・ボール・オブ・ヘイト)というニックネームで知られ、これは1995年にレンジャース時代のチームメイトによって付けられたもの。

     彼は選手引退後、スカウトやコーチング、選手育成といった立場を経て、タンパベイ・ライトニング(アシスタントGMなど)を経由し、2022年2月からダックスのGMに就任。

     なお、NHL史上500ゴールを超えた選手の一人でありながら、ホッケー殿堂入りはまだ実現していない選手の一人。
    ↩︎
  3. 過去2シーズンにわたり、トレバー・ジーグラスの獲得に関心を示したチームはフライヤーズだけではなかった。2024年6月には、シカゴ・ブラックホークス、ニューヨーク・レンジャース、モントリオール・カナディアンズなど、少なくとも8チームがジーグラスに対して真剣な関心を示していたと報じられている。

     しかし、ジーグラスのパフォーマンスの低下や契約状況、そしてダックス側のトレードに対する姿勢などの要因が影響し、これらのチームとの交渉は実を結ばなかった。最終的に、2025年6月23日にフライヤーズがジーグラスを獲得することとなり、ジーグラスは新たな環境での挑戦を迎えることとなった。
    ↩︎
  4. 2000年6月22日、チェコ共和国のブルノ生まれ、ポジションはゴールテンダー。2018年のNHLドラフトでアナハイム・ダックスから全体85位で指名され、同チームに所属。

     ドスタルは、チェコのHCコメタ・ブルノのユースチームでキャリアをスタートさせ、2017年にはプロデビュー。その後、フィンランドのリーガ(Liiga)に所属するイルヴェス・タンペレにレンタル移籍し、2019–20シーズンではリーガのゴールテンダー・オブ・ザ・イヤーに選ばれるなど、注目の若手ゴールテンダーとして評価を高めた。

     2020年11月、ドスタルはダックスのプレイング・ライトを行使され、北米でのプレーが決定。2020–21シーズンはAHLのサンディエゴ・ガルズでプレーし、20歳で初の3連勝を達成するなど、順調なスタートを切った。

     その後、2021年からはダックスのゴールテンダーとしてNHLデビューを果たし、2024–25シーズンでは23勝を挙げ、チームの最多勝利記録を樹立。

     2025年7月、ドスタルはダックスと5年契約を結び、年平均650万ドルの契約となった。この契約は、ダックスが将来を見据えたゴールテンダーとしてドスタルに大きな期待を寄せていることを示している。
    ↩︎
  5. アイスホッケーにおける練習の一環で、攻撃選手がゴールキーパーと1対1の状況でシュートを試みる局面を再現するもの。このドリルは、選手がゴール前でのプレーを効果的に行うための技術や判断力を養うことを目的としている。

     具体的には、攻撃選手がディフェンダーをかわしてゴール前に進入し、ゴールキーパーとの1対1の状況を作り出す。この際、攻撃選手はシュートのタイミングや角度、フェイントなどを駆使してゴールを狙い、ゴールキーパーはその攻撃を防ぐためのポジショニングや反応を練習する。

     このようなドリルは、試合での実戦的な状況を想定しており、選手の技術向上や戦術理解を深めるために重要な役割を果たしている。また、ゴールキーパーにとっても、シュートの予測や反応速度を高めるための貴重なトレーニングとなる。

     ジーグラスがこのドリルで見せた「ビデオゲームのような動き」とは、通常のプレーでは見られないような創造的で独特なフェイントやシュート技術を指しており、彼の個性やスキルの高さを象徴するエピソードとして語られている。
    ↩︎
タイトルとURLをコピーしました