はじめに
今シーズンのクライマックス=スタンレーカップ決勝が華々しく開催されている最中、NHLは一つの団体として、様々な活動をし、それに伴うコメントを公表しています。今回、公表された5点はどれも興味深いものであるとはいえ、やや「小粒な内容」でした。
目玉である4ネイションズ・フェイスオフ・トーナメントにしても、もっと多くの国の参加を促すことはできなかったのか、つまり新鮮味に欠ける内容で、「あー、いつものメンツで、とりあえず国際試合やっとこうか」感がありありです。
まあ、それでもやらないよりかはマシでしょうか。他のトピックスにしても大きな変化ではありませんし、サラリーキャップに至ってはほぼ予想通りという面白みのなさを露呈し、NBAのシーズン中カップ戦のような斬新なものではありませんでした。
放映権の問題にしても、「何かある、何か起きる」といつも前フリばかりで、
結局何も起こらないのが常なんだにゃ。
NHLがワールドワイドな存在にイマイチなり切れないのは、
放送面での弱さであるのは分かりきっているのに、「井の中の蛙」状態なんだなぁ。
引用元:tsn.ca「Montreal, Boston selected as sites for hockey’s 4 Nations Face-Off tournament next season」
来年2月、4カ国対抗戦!
モントリオールとボストンが、2月に開催される4ネイションズ・フェイスオフ・トーナメントの開催都市になると、NHLは土曜日に発表し、イベントのスケジュールを発表しました。
モントリオールでは、カナダは2月12日にスウェーデンと対戦し(東部時間午後8時=日本時間13日・午前10時、TNT、SN、TVAS)、米国は2月13日にフィンランドと対戦し(東部時間午後8時=日本時間14日・午前10時、ESPN、SN、TVAS)、
2月15日にフィンランド対スウェーデン(東部時間午後1時=日本時間16日・午前3時、ABC、SN、TVAS)、米国対カナダ(東部時間午後8時=日本時間16日・午前10時、ABC、SN、TVAS)のダブルヘッダーが控えています。
ボストンでは、2月17日、カナダはフィンランドと(東部時間午後1時=日本時間18日・午前3時、TNT、SN、TVAS)、スウェーデンが米国と対戦する(東部時間午後8時=日本時間18日・午前10時、TNT、SN、TVAS)という別のダブルヘッダーからプレー再開となります。
優勝決定戦は2月20日に開催されます(東部時間午後8時、ESPN、SN、TVAS)。
NHLコミッショナーのゲーリー・ベットマンは、スタンレーカップ決勝第1戦の前に行われる恒例の記者会見の一部で、「両国の放映権者は、すべてこの試合を放送する」と述べました。「計画が進展し、それを実行に移せるだけの能力に我々は満足しています」。
ナショナルホッケーリーグ選手会のディレクター、マーティ・ウォルシュは、90人のNHL選手がトーナメントに参加すると述べました。各国連盟は6月28日に6人ずつ選手名簿の発表を開始し、残りの名簿は2024年末までに発表される予定です。
モントリオールとボストンが開催地の選択肢として際立っていた、とリーグは述べました。
「(モントリオールとボストンという)象徴的な2つの都市にしたのは、米国だけでなく、カナダにも枠を拡げていき、いくつか会場を設けることが重要だと考えたからだ」とNHLのビル・デイリー副コミッショナーは語っています。
【付記1】
4ネイションズ・フェイスオフの各チームは、カナダ・ホッケー協会、フィンランド・アイスホッケー協会、スウェーデン・アイスホッケー協会、米国ホッケー協会の各協会が選出した23人のNHL選手(スケーター20人、ゴールキーパー3人)で構成される。
出場するには、選手は2024-25シーズンのNHL契約を結び、12月2日時点でNHLのロースターに登録されている必要がある。
4ネイションズ・フェイスオフのすべての試合は、NHLのルールに従って、NHLサイズのリンクで行われる。各チームは、従来の総当たり戦形式で3試合のトーナメント・ゲームをプレーする。
チームは、規定時間内に勝利した場合は3ポイント、延長戦またはシュートアウトで勝利した場合は2ポイント、延長戦またはシュートアウトで敗北した場合は1ポイント、規定時間内に敗北した場合は0ポイントとそれぞれ勝ち点を獲得する。
最も成績の良い2チームが1試合制の決勝戦進出。
決勝戦以外の試合の延長戦形式は、10分間の3対3のサドンデス戦、その後3ラウンドのシュートアウトとなる。決勝戦の延長戦形式は、いずれかのチームが得点するまで20分間の連続した5対5のサドンデス戦となる。
450万ドルのアップがどう影響するか
サラリーキャップ
NHLとNHLPAは、ベットマンの記者会見の直前に、来シーズンのサラリーキャップを8800万ドルとし、今シーズンから450万ドル増、12月の予測からわずかに30万ドル増にすると発表しました。
【付記2】
給与上限額は2017-18シーズンの7,500万ドルから2018-19シーズンの7,950万ドルへと450万ドル増加して以来、シーズンごとに400万ドル以上増加したことはなかった。
新型コロナウイルスのパンデミックによる経済的影響により、2019年から2022年までの上限は8,150万ドルだったが、過去2シーズンはそれぞれ100万ドルずつ増加し、2022年から2023年には8,250万ドルに増加した。
なお、NHLは12月にシアトルで開かれた理事会で、給与上限を8,770万ドルと予測していた。
【付記3】
コミッショナーは以下のように語っている。
「横ばいまたは緩やかな増加が続いた年数を考えると、COVID-19の期間中に過払い額とエスクロー(信頼の置ける第三者を仲介させて取引の安全を担保する第三者預託)が積み上がった額を取り戻す必要があったが、上限額は引き続き堅調に伸びていくと思う」。
選手たちは、NHL/NHLPA団体交渉協定に基づいて、ホッケー関連の収益を選手とチームの間で50対50で分配することを保証するため、給与の一定割合をエスクローに支払わねばならない。
2019-20シーズンはパンデミックのため中断されたが、選手たちは引き続き給与を受け取っていたため、約15億ドルのエスクロー債務を抱えていた。
「ゼネラル・マネージャーやチームが、より柔軟性を持てることに興味津々であるのは知っている」とベットマンは語っています。「そしてそれは、我々がずっとお伝えしてきたように、収益が堅調であることを意味している」。
下限は6,500万ドルに設定され、中間値は7,650万ドルとなりました。
ベットマンは「今後も上昇し続けると予測している」と付け加えています。
アイスホッケーは暑い所でするものではありません
マイアミの試合?
南フロリダでは、NHL が屋外試合を行うのに1適した気候を提供できる時期はありません。
ただし、マイアミ・マーリンズが本拠地とする、マイアミのリトル・ハバナ地区にある3万7000人収容のスタジアム、ローンデポ・パークのような屋内で行われる試合の場合は別です。
「私はまだ行ったことがないが、とても素敵で、屋根があり、エアコンも完備されていると聞いている」とベットマンは語りました。「今日は何も発表するつもりはないが、いつかはパンサーズが屋外の試合に出るのは良いことだと我々は考えている。
そのため、我々は選択肢を模索し続けている。…将来がどうなるかは推測することしかできない」。
これは突発的なアイデアではありません。マーリンズは、そのような試合のアイデアについて話し合ったことがあり、パンサーズと良好な関係にあることを認めました。
また、この球場が伝統的なウィンタースポーツの場として言及されたのは、これが初めてではありません。
昨年、サンアントニオ・スパーズがアラモドームでゴールデンステート・ウォリアーズと対戦し、NBA観客動員記録を更新すると聞いたとき、マイアミ・ヒートの監督、エリック・スポールストラは、NBAの試合で球場に10万人を詰め込むことを提案しています。
選手の命と権利を守るために
耐切創性素材(→スケートの刃から、選手の身を護る用具の研究)
特定の耐切創用具の着用義務化に関する協議は現在も続けられています。この議論は、昨年11月2、イギリスでの試合中、アメリカのアイスホッケー選手アダム・ジョンソンが、スケート靴の刃で首を刺されて死亡した事件を受けて、スポーツ界で加速していきました。
NHLとNHLPAは、スケート靴のカットによる傷害と、その軽減および回避方法について長年研究してきています。
「明らかに、今シーズンの出来事は皆の目を開かせ、より大きな焦点を当てることになったと言うこと以外、最新情報はない」とデイリーは語りました。
いつ実現するのやら、大口との契約…
メディアの権利(放映権)
ベットマンはNHLに加入するずっと前から、NBAの顧問弁護士兼上級副社長(会社に複数いる副社長の上席者のこと)を務めていました。 – NBAは、11年間にわたり、総額700億ドル以上になると予想される、新しい一連の放映権契約 を締結しつつあるリーグです。
それはNHLや他のスポーツにとっても素晴らしいことだ、とベットマンは言いました。
「この数字は、長年の悲観的な予測にもかかわらず、スポーツ・コンテンツの市場がかつてないほど活況を呈していることを示しています」とベットマンは語っています。
「4大スポーツの1つとして、我々は非常に価値のあるコンテンツを持っているので、今後の展望も非常にエキサイティングなものになると思う」。
まとめ
言うはやすし、行うは難しで、放送分野におけるNHLの価値が本当に上がってるのかどうか、かなり疑わしいものがあります。エキサイティングなスポーツであることに間違いはないのですが、「国際大会の旨味」が弱く、サッカーやバスケの後塵を拝する理由はここにあると思います。
冬季五輪でのアイスホッケーが「通常の形」で開催されるかどうか、未だに危うい状況の中で、国内リーグ戦の活況のみ、つまり片翼飛行で大きな放映面での展開を望むのは非常に酷であり、現状ではコミッショナーの思わせぶりなセリフで、放映権者を刺激するしかないでしょう。
同じく代表戦のないNFLのように、海外開催試合を増やして売り込んでいくか、NBAのように、新たなカップ戦で目先を変えていくか。パンサーズとオイラーズの激闘の裏で、苦悩するリーグ=NHLもまた苦闘しているのです。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- 屋外試合が行われる1月の平均気温は18度から25度、夜間は15度前後。 日中はTシャツやショートパンツなどの夏服でも過ごせるが、夜間は薄手のジャケットやセーターが必要。つまり、気温差が激しい地域である。
また、フロリダは日差しが強いので、帽子やサングラス、日焼け止めなども必要。 1月は雨も多く、傘やレインコートもあれば、なおよい。
↩︎ - 正確には2023年10月28日、8,000人の観客の前で行われたノッティンガム・パンサーズ(ジョンソン所属)vs.シェフィールド・スティーラーズ戦で、試合開始35分、スティーラーズの選手マット・ペトグレイブのスケート靴がジョンソンの喉を切った。
ビデオを見ると、別のパンサーズの選手と衝突した後、ジョンソンが倒れ始めたとき、ペトグレイブの左スケート靴がジョンソンに向かって蹴り上げられているのが映っていた。
衝突後、ジョンソンは出血しながらチームベンチに向かってスケートをしようとしたが、その後、氷上で倒れた。
救急隊員がジョンソンの負傷の手当をしている間、他の選手たちが腕を組んでジョンソンの周りに保護用の輪を作った後、保護シートが上げられ、選手たちはロッカールームに戻り、観客はアリーナから退出するよう求められた。
ジョンソンはシェフィールドのノーザン総合病院に搬送され、そこで死亡を確認。ジョンソンの死は翌朝まで伝えられず、ジョンソンの親族のみに報告されたとされている。 ↩︎