はじめに
野田サトル先生の渾身のアイスホッケー漫画、『ドッグスレッド』コミック第2巻がめでたく発売されました!パチパチ!近所の大きな本屋さんでも平積みでプッシュ!レジ横にも大量に置いてあって、さらにプッシュ!後は『マンガ沼』で取り上げられるだけかな^^;。
さて、漫画も熱いですが(ネタバレになるので、これで勘弁)、NHLもヒートアップ!余裕でプレーオフ進出でしょ、と思われていたバンクーバー・カナックスがややピンチです。それを裏付けるかのような試合が、2月19日のミネソタ・ワイルド戦。激しい点の取り合いの末、敗れました。
今回はその試合内容だけでなく、21世紀に入って以降、対戦したチーム共に大量得点を挙げた試合をリストアップしたものです。ここ数年は攻撃的なNHLも、少し前まで守備にウェイトを置いた試合が多かったのです。それもあって、大量得点試合はあまり多くないんですよね。
この試合で負けると、ミネソタもプレーオフ出場圏内、
ワイルドカード争いから大きく後退することもあって、序盤からガツガツ来てたにゃ。
選手達も疲れやプレッシャーもあって、そろそろ普段の動きができなくなる頃。
波乱含みの試合が増えてくるだろう。
引用元:The Hockey News.com「Top Five Highest-Scoring NHL Games In the 21st Century: Wild and Canucks Join List」
2月19日は、ハットトリックの日?
月曜日(2月19日)は、カナダでは家族の日、米国では大統領の日、そしてミネソタ州ではハットトリックの日だそうです。
ミネソタ・ワイルドとバンクーバー・カナックスは、ジェットコースターのような試合で合わせて3回のハットトリックを達成し、ワイルドがホームで5-2の劣勢から逆転して、10-7で勝利しました。ヤバい内容の試合です!
NHLの試合で2つのチームが合計17ゴールを達成するのは2000年以来4回目ですが、それは3シーズン連続で起きています。カナックスvs.ワイルドの得点は、21世紀に入ってから、1試合16ゴール以上を記録した5回目の出来事でもありました。
月曜の試合から始めて、5試合の詳細を紹介していきましょう:
どうした、バンクーバー。またも守備の乱れが…
2024年2月19日:ミネソタ・ワイルド(10)、バンクーバー・カナックス(7)
ハットトリックの話に戻りましょう。
カナックスのフォワード、J.T.ミラーが第1ピリオドで今シーズンの25点目を挙げて2-0とリードを拡げると、ワイルドのセンターであるジョエル・エリクソン・エクが第2ピリオド後半に反撃のゴールを入れて、2-1とします。
第2ピリオドでミラーがパワープレーでこの試合2点目を決めて、カナックスが4-1とし、(ミラーが)さらにハットトリックを達成してピリオド残り6分30秒で5-2としました。
ミネソタはこのピリオドの終盤に再び応戦しましたが、第3ピリオド開始29秒、エリクソン・エクが得点し1点差に詰め寄ります。
そのわずか1分後、キリル・カプリゾフが得点して同点に追いつくと、その21秒後、エリクソン・エクがハットトリックを達成してリードを奪いました1。
カプリゾフは2つのハットトリック(ゴールとアシスト)を達成し、第3ピリオド、エンプティネッターによる2ゴール(1つはカプリゾフ)を含む4ゴールを追加します。
ワイルドは第3ピリオドで7ゴールを決め、フランチャイズ記録を樹立しました2。
【付記1】両チームの監督の談話
ミネソタの監督、ジョン・ハインズ
「(第3ピリオドのブレイクアウト前、ロッカールームでチームに何と言ったのかと問われ、)全員のおかげだ。試合の中で、気の緩みがないことを感じていたんだ。4-1、5-2のときも、考え方はまだ同じだった。そして、ただその調子でやり続けることだけだったのさ」。
「(ウェスト・カンファレンスのトップチームとの戦い方について)今シーズン、勝たなければならないと思っているよ。勝つために、チームの競争力をベストに持っていかなければならないのは、この試合前から分かっていた。
僕にとって、どう考えていくかが最も重要なことなんだ。今後、それは良くなっていくよ」。
バンクーバーの監督、リック・トシェット
「プレッシャーの下でどうプレーするかを学ばなければならないな。これらは我々が学ばなければならない教訓だ。試合中、何度も我々はゲームをコントロールしていたが、スコアボードをコントロールできていなかった。
しかし、我々はリードしていた時間帯もあったし、ずっと話し合ってきた攻撃的ゲーム展開をすることはできていたと思う」。
「(7つのペナルティを受けて2連敗となった訳だが、ペナルティのほとんどが得点に結びついたことについて)本当に愚かなスティック・ペナルティだ。そんなプレーは普通できない。我々はこれも学ばなければならない、プレッシャーの下で慎重にプレーするってことをね」。
【付記2】両チームのゴールテンダー交代について
バンクーバーは連戦を考慮し、先発ゴールテンダーであるサッチャー・デムコをベンチに置いて休ませることを選択。代わりに先発したケーシー・デスミスを交代させず、最後までプレーさせたことが良かったのかどうか。
第3ピリオド開始前、ミネソタはゴールキーパーをフィリップ・グスタフソンからマルク=アンドレ・フルーリーに交代させていたのは、バンクーバーと比べると、効果的だったかもしれない。
付記・引用元:ESPN.com「Wild, at their ‘competitive best,’ outlast Canucks 10-7」
sportsnet.ca「Canucks completely lose control vs. Wild, allow seven goals in third period」
昨シーズン、絶好調シアトルも記録を作っていた!
2022年11月29日:シアトル・クラーケン(9 OT)、ロサンゼルス・キングス(8)
ロサンゼルス・キングスのキャプテン、アンゼ・コピタルは試合開始16秒でゴールを決め、この試合の流れを作ります。
しかし、クラーケンのフォワード、マッティ・ベニアーズとジャレッド・マッキャンのゴールでシアトルがリードを奪ったのは、そのわずか8分半後でした。
このNHLパシフィック・ディビジョンの試合では、2ゴール以上連続で得点したチームはありません。ヴィクトル・アルビッドソンが同点に追いつくと、ウェンベルグが再びクラーケンにリードをもたらしました。
ガブリエル・ビラルディによって、キングスが再び同点に追いつくと、シアトルのベニアーズがこの試合2点目を決めます。クラーケンは2得点して5-5の同点に追いつくと、その後も両チームとも得点を奪い合い、8-6でシアトルが第3ピリオドに突入しました。
ホームで、キングスはディフェンスマンのショーン・ダージとマイキー・アンダーソンの貢献により同点に追いつき、延長戦に持ち込みます。
しかし、アンドレ・ブラコフスキーがパワープレーで得点し、クラーケンに6連勝をもたらしたので、追加ピリオド(延長戦)はわずか1ショットで済みました。
これはNHL史上5度目のスコア9-8の試合であり、延長戦が必要だった試合の中では最も得点の多い試合となります。
取られたら取り返す、それが有言実行でできていたのが、昨シーズンのシアトルだったにゃ。
それとは真逆な今シーズン、イマイチ調子の上がらない両チーム、
このままプレーオフ出場圏内争いから脱落していくのか…。
大量補強前のデトロイトも必死に食い下がっていたのだが…
2022年2月26日:トロント・メープルリーフス(10)、デトロイト・レッドウィングス(7)
メープルリーフスのウィンガー、ミッチ・マーナーは、NHLオリジナル・シックス・チーム同士の試合・第2ピリオド、当然のようにハットトリックを達成しました。これにより、トロントは試合途中でレッドウィングスに対するリードを6-1に広げます。
サム・ガグナーとオーストン・マシューズが得点を奪い合い、7-2でリーフスが第3ピリオドに突入しました。
試合は終わったかに見えましたが、結果は逆となるのです。フィリップ・フロネクが最終ピリオド開始35秒で得点し、カーター・ロウニーがその後2分強で得点しました。そのまま行けば、普通、7-4でリーフスの勝利となるはずです。
ジョー・ベレノのリストシュートで7-5とし、マイケル・ラスムッセンがレッドウィングスの4点目のゴールを決め、1点差に詰め寄りました。
ゴールの欲しいデトロイト、ルーカス・レイモンドがそれに応え、試合終了まで10分を切ったところで8-7としますが、それがデトロイトの最後の得点となるのです。メープルリーフスは2ゴールを決め、マーナーがこの試合4点目を挙げました。
17ゴールを挙げたのは、10年以上ぶりのこととなります。
「NHL新人チーム」にやられるフィラデルフィアって…
2011年10月27日:ウィニペグ・ジェッツ(9)、フィラデルフィア・フライヤーズ(8)
ウィニペグ・ジェッツは、アトランタからの移転後、NHLに復帰してわずか9ゲーム目で、フィラデルフィアでのこの得点争いに巻き込まれました。
スコット・ハートネルがフライヤーズに先制点をもたらしましたが、その後ジェッツが調子を上げていきます。
ランディ・ジョーンズ、ジム・スレーター、カイル・ウェルウッド、タナー・グラス、ニック・アントロポフがそれぞれ得点し、第2ピリオドでジェッツに5-1という圧倒的なリードを与えました。
クロード・ジルーとイベンダー・ケインも得点を加え、ウィニペグが6-2とします。
フィラデルフィアの飛ぶ時が来ました。ダニエル・ブリエール、マックス・タルボット、再びブリエール、マット・リード、ジェームズ・ファン・リムスダイクらが、フライヤーズに5連続ゴールをもたらし、7-6とリードを奪います。彼らのリードは28秒続きました。
(ウィニペグの)3ゴールの後、ジェッツは9-8で勝利したのです。最終的なシュート数は、48-25でフライヤーズに軍配が上がりました。
48本もシュート打って勝てないところとか、盛り返すタイミングの遅さとか、
今のフィラデルフィアと変わらないにゃ^^;。
豪快な5連続ゴールとか、今シーズン中に見たいねぇ。
プレーオフ圏内で踏ん張っているけど、スカッと勝った試合があまりないんだよね。
得点も多けりゃ、乱闘も多かった試合
2001年11月13日:オタワ・セネターズ(11)、ワシントン・キャピタルズ(5)
このリストにあるすべての試合の中で、この試合が接戦だったのは最初の3分だけでした。
セネターズのフォワード、ショーン・マクイーチャーンが試合開始79秒で得点し、続く6分間でマリアン・ホッサがさらに2点を追加し、オタワがキャピタルズに3-0とリードします。
キャップス(キャピタルズの愛称)で、セルゲイ・ゴンチャルが応戦すると、オタワはキャプテンのダニエル・アルフレッドソンとラデク・ボンクの活躍でさらに2点を追加しました。
ゴンチャルは第2ピリオドでも反撃しましたが、アルフレッドソンも同様にゴールし、セネターズが6-2とします。
キャピタルズのクリス・サイモンが点差を3点に縮めますが、オタワはマックイーチャーン、トッド・ホワイト、アルフレッドソンのゴールで再び反撃し、アルフレッドソンはハットトリックを達成しました。
両チームとも2回得点を奪い合い、最終スコア11-5でオタワに軍配が上がります。この試合では、サイモンの2回とクリス・ニールの「ゴーディ・ハウのハットトリック3」を含む、4回も氷上で乱闘がありました。
この試合のオタワの監督は、現在の暫定監督、ジャック・マルティンです。
まとめ
名選手の名前がハットトリックの単位になるとは、驚きです。しかも、ハウの代名詞・ゴールだけでなく、乱闘や守備時の相手へのチェックまで含まれているなんて…。
それはさておき、アイスホッケーはサッカーとよく似たルールではあるものの、サッカーは人数の多い分、例えば1人欠けても守備偏重シフトを引きやすいですが、アイスホッケーの場合、そうは行きません。展開によって、肉を切らせて骨を断つ試合運びになりかねません。
最後のオタワvs.ワシントン戦はそんな感じだったのかもしれませんが、記録を見ると、「Fighting」の文字が並びすぎです^^;。前へ前への思いが強すぎたんでしょうね、その割に自チームには点入らないし。イライラも募りがちです。
北米のホッケー・ファンからすれば、ジャカスカ点は入るし、ホッケーのあだ花・乱闘もたくさん見られるしでお腹いっぱいだったかも。でも、チームもファンもやはり平常心で行きましょう、イライラしていても勝てませんよ。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- バンクーバーは第2ピリオドまで6つの小さなペナルティを受けていたが、その影響は少なかった。しかし、第3ピリオドに入り、バンクーバーはペナルティにより2人少ない状態でスタートし、エリクソン・エクとカプリゾフにいいようにやられる形となった。
↩︎ - J.T.ミラー、エリクソン・エク、カプリゾフが3得点以上を記録し、1992年以降では、初めて1試合で3回のハットトリックを達成したことになる。
カナックスは第3ピリオドで10本のシュートで7ゴールを許し、今シーズンの対戦で6ゴール以上を許したのは初めて。ワイルドの10ゴールのうち4ゴールは、マン・アドバンテージによるもの。
第2ピリオド終盤から第3ピリオドのミネソタは5分45秒以内に6得点を挙げており、1999年2月3日、ワシントンが4分47秒間に6得点を挙げて以来の速い記録となった。また、チーム史上最速の連続4ゴールを記録し、すべてパワープレーで2分17秒の間に決めており、第3ピリオドの早い段階で6-5とリードした。
カナックスはエリアス・ペターソンがチームトップとなる29点目を挙げ、イアン・コールが先制ゴールを決めたりしていたが、試合開始から15分以上もの間、グスタフソンを襲う枠内シュートは、ゴールを決めたわずか2本のみだった。
↩︎ - アイスホッケーのハットトリックのバリエーションで、プレーヤーが同じゲーム内でゴール、アシスト、ファイトをそれぞれ1回以上、計3回以上行うと達成。殿堂入り選手のゴーディ・ハウにちなんで名付けられた。ハウ自身は2回達成。
ハウの息子・マーティは「ゴーディ・ハウのハットトリックは実際にはゴール、アシスト、そして顔面へのクロス・チェックであるべきだ。そのほうが正確かもしれないね」と述べている。 ↩︎