はじめに
「NHLって何?」という方も、少し立ち止まってこの物語に触れてみてください。これは、氷上で繰り広げられる奇跡のようなストーリー。
アメリカ・ミズーリ州のセントルイスを本拠地とするプロアイスホッケーチーム「セントルイス・ブルース」が、今シーズンどれほどのサプライズを見せてきたか、そしてこれからも見せ続けていけるのかをご紹介します✨
参照記事:N.Y.Times「Can Blues force Game 7 against Jets? It wouldn’t be surprising, but they’ve got work to do」
驚きの連続!セントルイス・ブルースが再び魅せるか?
プレーオフの第6戦を目前に控えたブルース。相手はウィニペグ・ジェッツという強豪チーム。シリーズは7戦中4勝で勝ち抜けというルールで、現在ジェッツが3勝2敗とリード中。ブルースにとっては「絶対に負けられない一戦」が迫っているのです🔥
しかし、今シーズンのブルースはただの挑戦者ではありません。どんなに苦しい状況でも立ち上がり、何度も観客を沸かせてきました。
想像してみて…ホームでの勝利の瞬間を
目を閉じて想像してみてください。ゴールキーパーのジョーダン・ビンニントンの元に、仲間がスケートで駆け寄り、マスクの上を軽くポンッと叩く。その姿に、観客18,000人以上が大歓声で応える…🥳プレジデンツ・トロフィー1を獲得したチームを崖っぷちに追い込んだことを称賛している光景が浮かぶようです。
この情景は、ただの夢物語ではなく、今まさに起こり得る現実。チームの士気は高く、ヘッドコーチのジム・モンゴメリーも自信たっぷりにこう語っています。「私もだよ、私はこのチームを信じている。2か月半もやってきたんだ。絶対に全力で戦って、第7戦に持ち込むつもりだ」。
シーズン序盤、プレーオフ進出すら諦めかけたチームが、ここまで戻ってきたのです。シリーズで0勝2敗になったときに希望を失った私たちファンが、その可能性を信じない理由なんてありませんよね😊
現実は甘くない…第5戦で見えた課題
ブルースには信じるに値する何かがあります。しかし、その想像のシーンを金曜のエンタープライズ・センター2で実現するには、第5戦で5-3の敗戦を喫し、シリーズでウィニペグに3勝2敗とリードされた今、やるべき課題が山積みです💧
この試合、これまでの4戦と同様、開始早々から激しいぶつかり合いが続きましたが、しかし早々に、どちらの夜になるかが明らかになりました。第2ピリオドに入ってからはウィニペグが一気にペースアップ。ブルースは14対3という大差でシュート数を下回ってしまい、流れを完全に奪われました。
ジミー・スナガルードが2-2に同点としたものの、ホームチーム(ウィニペグ)が主導権を握り続けたのです。ブルースの3得点のうち2点は第4ラインのネイサン・ウォーカーが決め、このラインだけでチーム全体19本のシュートのうち5本を放ちました。ウォーカーとビンニントンを除けば、金曜にシリーズを決めようとしているチームとは思えない内容です。
試合後、モンゴメリー監督はこう反省します。「彼らの方が上だったし、チーム全体の連携も足りなかった。パックサポートも、戻りのスピードも、フォアチェックも全部ダメだった」。
でも、すぐに切り替えも大事。「シリーズにはこういう試合もある。落ち込んでも仕方がない。次に向けて忘れるだけさ」。どこまでも前を向く姿勢が、ブルースらしさなんです💪
キーマンのシャイフリの離脱、その影響は?
第5戦で注目されたのが、ウィニペグ・ジェッツのスター選手、マーク・シャイフリのアクシデント。
試合開始から7分足らずで、ブルースのキャプテン、ブレイデン・シェンから激しいチェックを受け、その後もしばらくプレーを続けたものの(3回のシフト)、ラデク・ファクサからの別の接触でついにリンクを去ることに⛔(正確には、その後、もう1度シフトに出たが、第2ピリオドの開始時にはリンクに戻ってこなかった)
このシリーズではこれまで3度の2日間の休みがありましたが、第6戦に向けては木曜日にセントルイスへ移動した後、短い間隔での試合となります。第6戦は午後7時(中部時間。日本時間では翌日の午前9時)に開始予定。
現時点では、シャイフリが出場できるかは不明です。この件については両チームのコーチが真っ向から意見を対立させました。
ブルースのモンゴメリー監督は「はっきりさせよう。55番(シャイフリ)が本当にケガをしたのはファクサとの接触後。シェンのヒットのあと、彼は6分間プレーしていた。ファクサにやられた後は戻ってこなかった」と主張。
これに対して、ウィニペグのスコット・アーニエル監督はモンゴメリーの発言を聞いてこう返しています。「モンティ(モンゴメリー監督のこと)が医学の学位を取ったとは知らなかったよ。ウチの選手がどうケガしたかなんて決めつけてるが、的外れだな」とピリリと反論。プレーオフならではのピリピリした空気が伝わってきます😮💨
シェンのヒットした瞬間。うーん、どう見ても、この時ケガしたとしか思えないのだが。
ただ、実際のところシャイフリが次の第6戦に出場するかどうかは現時点では分かりません。ですが、どちらにせよ、ブルースにとってやるべきことは変わりません。やるべきことは山積みで、見直すべき点がチェックリストのように並んでいるからです。
ジェッツvs.ブルース、第5戦のハイライト映像です。
「つながり」が勝利のカギ
第5戦で見えたブルースの課題は、ずばり「連携不足」。パスはつながらず、パックを自陣から持ち出すのにも一苦労。そしてフォアチェック(相手陣内での守備)も不発に終わりました。これらが上手くできていれば、NHLプレーオフのどのチームとでも互角に戦えます。しかし、そうでないときは、まだ再構築中のチームのように見えてしまいます。
実際、第2ピリオドのシュート数では33対7という大差をつけられ、相手に主導権を握られてしまいました📉
フォワードのオスカー・スンドクヴィストも「間延びしすぎていた」と認め、ディフェンスマンのジャスティン・フォークも「どちらのゴールラインでも相手に先に入られていたから、自陣でプレーする時間が長くて、相手陣ではあまりプレーできなかった」と振り返ります。
第3戦と第4戦ではブルースが合計12点も挙げて快勝していたことを考えると、この落差は大きいですね😥あの支配力は、なぜ消えてしまったのでしょうか?
「まあ、常に調整はあるよね?」とシェンは言いました。「でも今夜の試合は、自分たちのプレーが好きになれなかった。流れを引き寄せるには、今夜のパフォーマンスは不十分だった。重要なタイミングで得点は取れたけど、そこから勢いに乗れなかった。正直、ちょっと気が抜けた感じだったよ」。
チャンスはあった!でも活かしきれず…
それでも、チャンスがなかったわけではありません。ブルースは第5戦でも2点を先に奪うなど、試合の流れをつかみかけた瞬間もありました。セントルイスでの連戦でウィニペグのゴーリー、コナー・ヘレバックを2試合連続で交代に追い込んだ後、第5戦では彼に再びプレッシャーをかけるのが当然の戦略だったはずです。
実際、水曜日の試合では、ウォーカーがコルトン・パラィコのシュートにディフレクション(いわゆる「ちょい当て」)で合わせて得点し、スナガルードもスルスルと抜けたシュートでゴールを決めました。ただし、ヘレバックに対しては、これまでのようにプレッシャーをかけ続けることができなかったのです😖
ブレイデン・シェンもこう振り返ります。「もっとシュートを打って3、ゴール前を混戦状態にするべきだった。彼にとって楽な試合にしてしまった」。つまり、「やるべきこと」ははっきりしているというわけです💡

どっかのプロ野球の監督じゃないけど、「個」で打開できないんなら、総合力と戦術で上回っていかないと、いわゆる「弱者なりの戦術」ってヤツだにゃ。肝心の連携をどこまで回復できるか、間延びしないニュートラル・ゾーンの使い方によって、相手の意表を突くパックを運びもできるし、どんどん相手陣内に入っていける。
必要なのは「第二のスコアリング」
試合を支配していた時間帯においても、ブルースの攻撃が依然として物足りなさを感じさせました。特に、得点力不足が響きました。トップラインの選手たちは十分に活躍していますが、それだけでは足りないのです。
ブルースの得点源として注目されるべきは、やはり「セカンダリースコアリング」。つまり、メインの攻撃陣だけでなく、サポート役として他の選手たちが得点をあげることが重要です⚡
例えば、第3戦でパベル・ブチネヴィチがハットトリックを達成し(シリーズ通算7ポイント)、ロバート・トーマスが2ゴール・7ポイント、ジェイク・ネイバーズも1ゴール・5ポイントの好成績を収めています。しかし、それでもまだ他の選手の活躍が求められています。
特にジョーダン・カイロは、チームの中でも得点が少なく、今回のシリーズではわずか2ポイント、プラスマイナスはマイナス5と振るわない結果に…💔ザック・ボルデュクも無得点でアシスト1にとどまっています。
モンゴメリー監督も言うように、「第4ラインが示しているように、他のラインでも同じようにやらなければならない」。つまり、ブルース全体で戦うことが求められているのです。
ウィニペグの「巻き返し」とブルースの反撃
一方、ウィニペグは水曜日の試合で、セカンダリースコアリングがついに機能し、反撃を本格化させました。シャイフリの不在を感じさせないよう、チーム全体で点を取りに行ったのです。
特に目立ったのは、ヴラディスラフ・ナメスニコフの得点。シャイフリの代わりに第1ラインに昇格し、見事なシリーズ初ゴールを決め、第2ピリオド終盤に4-2とリードを広げました⚽さらに、ニーノ・ニーダーライターも今シリーズ初ゴールを記録し、チームに勢いを与えました。
ヴラディスラフ・ナメスニコフの得点シーン、プレジデンツ・トロフィーのチームの選手層は厚い。
ディフェンス面でもウィニペグはしっかりと立て直し、ブルースの攻撃を封じ込めました。その結果、ブルースはなかなか得点に結びつけることができず、終わってみればウィニペグが3-2のリードを取ってシリーズを優位に進めている状況です⏳
ブルースが反撃するためには、まずこの流れを断ち切らなければなりません。
「彼らはラインを入れ替えて、何人かを昇格させた。それで何人かが得点した」とフォークは言いました。「僕たちはもっと自分たちのゴール前で仕事をしないといけない。彼らを近距離から自由に打たせすぎた」。
新たな課題:第3ディフェンスペア
試合を重ねるごとに、ブルースのディフェンスにも課題が浮き彫りになっています。その中でも注目すべきは、第3ディフェンスペアの選手たち。特に、タイラー・タッカーが怪我で欠場中ということもあり、ベテランのライアン・スーターが第5戦でラインナップに復帰し、ニック・レディとコンビを組んで、その役割を担っています。
しかし、第5戦では、彼らがウィニペグの2ゴール目、さらに4ゴール目に絡む場面がありました(つまり、失点シーンには必ず2人の姿があった)。ディフェンスとしてもっと集中力を高める必要があることは明白です⚠️
タッカーが第6戦に間に合う可能性は低いため、スーターとレディが引き続き第3ペアを務めることになりそうです。第5戦では2人とも15分以上出場しているので、今後の試合でその責任をしっかり果たしてもらいたいところです。
まとめ〜ホームでの反撃、ブルースはまだ諦めない
ただ、ブルースにはまだチャンスがあります💥
シェンもこう付け加えています。「最終的には、ページをめくって、次へ行くこと。それが第6戦だ」。彼らはこれまでにも、このような場面で私たちを驚かせてきました。そして今、ホームに戻ります。そこでは、彼らは14連勝中です、今回もまたやってのけるでしょうか。
「もちろん」とスンドクヴィストは言います。「このシーズン中、もっと不利な状況も経験してきた。まずは第6戦。それに勝って、第7戦に持ち込むだけさ」。
ブルースはホームで非常に強いチームであり、過去14試合を連勝中という驚異的な成績を誇ります。セントルイスのファンにとっても、これ以上の応援をする時間はありません。ホームでの一戦で反撃を開始し、シリーズを第7戦へと持ち込むことができるか、すべてはこれからの試合にかかっています🔑
モンゴメリー監督は「次に進むためにはまず1勝だ」と言っています。シーズンを通して数々の困難を乗り越えてきたブルース。今、もう一度奇跡を起こす時が来たのです⏳

ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- レギュラーシーズンで最も勝ち点を獲得したチームに贈られる賞。1985-86シーズンに創設され、受賞チームにはスタンレーカップ・プレーオフ全ラウンドでのホームアイスアドバンテージと賞金が与えられる。
最多受賞はデトロイト・レッドウィングス(6回)。2024-25シーズンはウィニペグ・ジェッツが受賞。レギュラーシーズンのNo.1を決める重要な指標だが、受賞チームが必ずしもスタンレーカップで優勝するとは限らない。
↩︎ - ミズーリ州セントルイスにある多目的屋内アリーナで、NHLセントルイス・ブルースの本拠地。アイスホッケーで約19,250人収容。1994年開業、名称を数回変更し2018年に現名称へ。2019年にはブルースが本拠地として初のスタンレーカップ優勝。
↩︎ - このシリーズでブルースが勝利した2試合では、平均シュート数は26本。一方、3敗した試合では平均19.3本と明らかに少ない。第5戦終了時点で、チームのトップ6スコアラーのうち3人がディフェンスマンとなっている:キャム・ファウラー(9ポイント)、パラィコ(4)、フォーク(3)。ブルースは上位3ラインからもっと得点を引き出す必要がある。 ↩︎