はじめに
NHL在籍選手中、アジアにルーツを持つ選手で最も有名なのは、何と言ってもモントリオール・カナディアンズのニック・スズキでしょう。キャプテンでもある彼は、昨シーズンもガッツ溢れるプレーで、やや低迷しているチームを牽引し続けていました。
パトリック・レインがモントリオール・カナディアンズに加入し、新たなスタートを切る中で、チームメートであるニック・スズキとの関係が注目されています。カナディアンズへの移籍が決まった背景やスズキの期待の声をお伝えします。
また、レインがカナディアンズに加入した背景には、ミネソタ・ワイルドからの関心とサラリーキャップの制約が関わっていました。レインがカナディアンズを選んだ理由と、ワイルドが彼を獲得できなかった経緯も詳しく探ります。
NHL.TV等で「ス・ズーキィ」と連呼されているのを見たり聞いたりすると、
とても誇らしく思えてくるし、「頑張れ!」と声援を送りたくなるんだにゃ。
日本ではあまり知られていないけど、北米では大スターなのだ。
引用元:NHL.com(NHL公式サイト)「Laine ‘in good spirits’ with Canadiens, Suzuki says」
レインのトレードと新たな挑戦
パトリック・レインがモントリオール・カナディアンズのキャプテン、ニック・スズキに良い印象を与えるのに、そう時間はかからなかったようです。
レイン自身がトレードを要求した結果、8月19日、コロンバス・ブルージャケッツからトレードでカナディアンズに加入しました。
ブルージャケッツは2026年のNHLドラフト2巡目指名権とともにレインを放出し、26歳のフォワードと引き換えにディフェンダーのジョーダン・ハリスを獲得しました。
スズキが語るレインの現状と期待
スズキは月曜日(9月9日)、NHL北米選手によるメディアツアー1でこう語りました。「彼とはこの一週間で一緒に滑る機会があったんだけど、元気だよ。メンタルの状態も良いみたいだし、ホント素晴らしいよ」。
「僕らと一緒にプレーすることに、彼はとてもワクワクしていると思うよ」。
レインは昨シーズン、多くの逆境に直面した後、モントリオールで新たなスタートを切ろうとしています。
12月14日、延長戦で6-5で勝利した試合の第2ピリオド、レインはトロント・メープルリーフスのディフェンダー、ウィリアム・ラグソンにトリップ2された際に鎖骨を骨折し、それがブルージャケッツでの最後の試合となりました。
それから2ヶ月も経たない1月28日、NHL/NHLPA選手支援プログラム(選手やその家族に対して、様々なサポートと支援を提供。自分から申し出て利用を決定。スポーツ界におけるメンタルヘルスの改善に寄与)によるケアを受け始め、約6ヶ月後の7月26日に出場を許可されました。
しかし、許可を得る前に、レインはブルージャケッツの新GM、ドン・ワデルにトレードを要請しました。
現在、レインはモントリオールというホッケーの中心地に降り立ち、カナディアンズという常に注目されるチームに加わりました。スズキによれば、レインは身体的にも精神的にもうまく適応しているようです。
スズキは「ここ6、7ヶ月間、彼はあまりスケートしていなかったと思うので、チームメートと一緒に再びプレーできて本当に楽しんでいると思う。彼と少しずつ知り合っていくのが楽しいね」と語りました。
カナディアンズの再建とレインの役割
7月、GMケント・ヒューズは、カナディアンズの再建が計画的に進められているため、夏の間に高額なフリーエージェントを追わなかったと述べました。そのため、レインの獲得が少し驚きであったことも理解できます。
特にレインに、2022年7月22日にコロンバスと結んだ4年3,480万ドル(約52億2,000万円。年間平均870万ドル)の契約が残っていることを考えると尚更です。
それでも、スズキはこのトレードについて非常に興奮していた一人です。
「とてもワクワクしたよ」とスズキは言いました。「チームの皆も彼のような選手が加わることに興奮していたと思うね」。
「彼にはビッグネームであることが付いて回るだろうし、ここ数年は厳しい時期が続いていたね。彼にとって何かがきっかけになって、キャリアの初期のようなプレー・レベルに戻せればいいなと僕らは思っている。
彼は本当に優れた選手だし、僕らは彼を迎え入れることに興奮しているんだよ」。
レインのドラフト指名時から今までがよく分かる映像です。
レインのキャリアとモントリオールでの未来
スズキの言う通り、レインはNHLキャリアの初期には確かに注目のスコアラーでした。2016年NHLドラフトでウィニペグ・ジェッツから全体2位指名を受けたレインは、最初の4シーズンでいずれも28ゴール以上を記録し、2017-18シーズンにはキャリア最高の44ゴールを挙げました。
ジェッツとブルージャケッツでのレギュラーシーズンでの通算成績は480試合で388ポイント(204ゴール、184アシスト)、スタンレーカップ・プレーオフでは24試合で16ポイント(8ゴール、8アシスト)を記録しています。
もし彼が以前の調子を取り戻せれば、モントリオールのトップ・シックスの強化につながるでしょう。
トップシックスには25歳のスズキ(昨シーズン33ゴール)、23歳のコール・コーフィールド(昨シーズン28ゴール)、20歳のユラジ・スラフコフスキー(昨シーズン20ゴール)が含まれています。
スズキは「カナディアンズが正しい道を歩んでいることを示していると思うね」と語りました。カナディアンズは2021年のカップ・ファイナルでタンパベイ・ライトニングに敗れて以来、プレーオフ進出を果たしていません。
「若いディフェンダーや優れた才能を持った若手フォワードがたくさんいると思う。彼らは本当に優秀で、新進気鋭の才能ある選手だよ」。
「一緒に成長し続けることが、僕にとって最も重要なことだと思っている」。
引用元:clutchpoints.com(CLUTCH POINTS)「NHL rumors: Patrik Laine rejected Western Conference team before Canadiens trade」
レインのカナディアンズ移籍の背景
モントリオール・カナディアンズは今夏、コロンバス・ブルージャケッツとのトレードでパトリック・レインを獲得しました。しかし、この移籍はほぼ実現しなかったかもしれません。
レインはフレンチ・カナディアン・ホッケーの熱心な地域3への移籍前に、他のトレードの提案を断っていたと報じられています。現在、彼がカナディアンズ加入を選んだ理由となるチームがどこだったのかが、明らかになったかもしれません。
ミネソタ・ワイルドの関心と制約
ミネソタ・ワイルドがレインに関心を持っていたと、『ミネソタ・スター・トリビューン』4のラヴェル・E・ニール3世(「Star Tribune」のスポーツ・コラムニスト。MLBやミネソタ・ツインズに関する報道で有名)が報じています。ニールは先週、ワイルドのゼネラルマネージャーであるビル・ゲリンと面会しました。
その会話の中で、ゲリンはブルージャケッツとのトレードが進んでいたと明かしました。しかし、レインはミネソタ行きに興味がなかったと、ワイルドのゼネラルマネージャーは述べています。
レインはカナディアンズでキャリアの復活を望んでいます。かつて全体2位指名されたレインは、2023-24シーズンにはわずか18試合の出場にとどまりました。フィンランドのタンペレ出身の彼は、その出場試合で6ゴール、9ポイントを記録しました。
彼は2022年オフシーズンに結ばれた4年契約の3年目に入っています。
サラリーキャップ問題さえなければ、夢の攻撃陣が
パトリック・レインのトレード獲得は、ワイルドにとって複雑なものだった
レインがモントリオールに加入する意欲を持っていたため、カナディアンズはその獲得に成功しました。しかし、彼の意向を問わずに取引を進めた方が、カナディアンズははるかに簡単に契約できたでしょう。
モントリオールは今後2シーズンで、レインの870万ドル(約1億2,800万円)のサラリーキャップを吸収する力と余裕を持っていましたが、ワイルドにはそれが非常に困難だったのかもしれません。
ミネソタはここ数シーズン、サラリーキャップの問題を抱えています。この問題は、2021年にチームが行ったバイアウトに起因しています。ライアン・スーターとザック・パリスのバイアウトにより、ワイルドは約1500万ドルのデッド(サラリー)キャップ5を負担することになりました。
このデッド(サラリー)キャップは、2024-25シーズンにもチームの帳簿に残っています。
こう言ってはなんですが、レインはミネソタのロースターにうまくフィットしたかもしれません。現在カナディアンズのフォワードである彼は、モントリオールのラインナップに与えたのと同じように、ミネソタのトップ6(1st&2ndライン)を強化し押し上げることができたはずです。
レインは、キリル・カプリゾフ、マッツ・ズッカレロ、マット・ボルディと組むことで、強力な攻撃を完成させることができたでしょう。
そのフロントラインが氷上でどのように機能するかを見るのは、確かに興味深いことです。しかし、レインは現在カナディアンズのロスターの一員です。
確かにレインがワイルドに加入したら、
かなり破壊力のあるファースト・ラインが組めると思うにゃ。
今回は紹介しなかったけど、フィラデルフィア・フライヤーズも
レイン獲得に興味津々だったらしい。年齢も若いし、
故障さえ完治すりゃ8年契約したって悪くない選手だから。
今後の試合とレインのデビュー戦
彼はモントリオールでユライ・スラフコフスキー、ニック・スズキ、コール・コーフィールドといったコアメンバーとともにプレーします。レインは、今後モントリオールの攻撃に大きな影響を与える可能性があります。
レインの移籍やその周辺の出来事が織りなす長いストーリーは終わり、その結末は確かに見る価値があるでしょう。彼はおそらく10月9日にトロント・メープルリーフスとの試合で、カナディアンズ・デビューを果たすと見られています。
一方、ワイルドは10月10日にレインの元チーム、ブルージャケッツとの試合で2024-25シーズンを迎える予定です。
まとめ
レインの加入はカナディアンズにとって大きなプラスであり、彼の復活がチームの成績向上に繋がると期待されています。スズキをはじめとするチームメートたちの前向きな言葉からも、レインの新たな挑戦が順調に進んでいることが伺えます。キャプテンが太鼓判を推すんだから、大丈夫でしょう。
今回のトレードは、レインの希望とチームの状況が影響を及ぼした結果であり、希望が叶った以上、カナディアンズの攻撃力向上のために、レインは全身全霊をかけてプレーしなければいけません。一方、取り逃したワイルドは是が非でもサラリーキャップの制約を取り除き、レイン獲得の失敗を返上していくこと必須です。
いずれにせよ、レインのデビュー戦は注目される瞬間となるでしょう。スター揃いのメープルリーフスをかき回したいところです。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- NHL North American Player Media Tourのこと。毎年開催されるイベントで、NHLの選手たちがメディアと直接交流する機会を提供するもの。
このツアーは、リーグのプロモーション活動の一環として行われ、選手たちがシーズンの開幕を前にファンやメディアに向けて自らのプレシーズンの準備状況や意気込みを伝える場となっている。
↩︎ - 反則の一つで、スティックやスケートを使って、相手選手のスケートや足を意図的に引っ掛けたり、つまずかせて倒したりする行為を指す。この反則は通常、「トリッピング」としてペナルティが科される。
↩︎ - カナディアンズは1909年に設立され、カナダのフランス系コミュニティに深く根ざした存在である。チーム名はフランス系カナダ人を指し、フレンチ・カナディアン・ホッケーの象徴とされている。
モントリオールはフランス語圏の中心地であり、カナディアンズのファン層は主にフランス語を話すカナダ人である。よって、チームの成功や選手のパフォーマンスは、彼らコミュニティにとって誇りとなっている。
↩︎ - 米国ミネソタ州ミネアポリスに本社を置く新聞社。1867年創刊。地元ニュース、政治、経済、スポーツ、エンターテインメントなど幅広い分野の報道を行い、ミネソタ・ワイルドのカバレッジもしっかりと行われている。 ↩︎
- チームが選手との契約を解除(早期に終了させる「バイアウト」のこと)すると、解除された契約の一部がデッドキャップとして計上される。これにより、その選手の契約金額が、複数年にわたってチームのサラリーキャップに影響を及ぼす。
また、トレードで選手を放出した場合も、契約の残額がデッドキャップとして計上されることがある。デッドキャップは、チームのサラリーキャップの上限に影響を与え、他の選手を契約する際の制約となるため、チームの資金管理において厄介な要素なのである。 ↩︎