はじめに
NHLのサイトで、毎日、各チームの勝敗を確認しているのですが、サンノゼ・シャークスとシカゴ・ブラックホークスについては、「今日も負けたか…」と思う日々が続いています。そのシカゴにかつて栄光の日々をもたらした男が、久しぶりに現役選手として帰ってきました!
その名はパトリック・ケイン、昨年夏にトレード先のニューヨーク・レンジャーズを退団し、古傷にメスを入れる決断をした選手です。術後のリハビリ等については、このブログでも取り上げましたが、かなり時間を要するとされ、前途多難な雰囲気でした。
しかし、彼はリンクに戻ってきました。シカゴと同じ「赤」を使っていますが、ジャージのデザインがちと違うデトロイト・レッドウィングスの選手として。ファンは、どんな風に復活した彼を迎えたのでしょうか。今回はその試合を中心にお届けします。
西暦2000年以降に活躍した選手の中で、並みいるシカゴのレジェンドを押しのけ、
チーム歴代記録のトップクラスにいるのは、ケインだけなんだにゃ。
そのスピリットを今在籍している選手達も受け継いでもらいたいものだ。
引用元:ESPN.com「Patrick Kane scores OT winner in 1st meeting vs. Blackhawks」
NHL.com「Kane delivers vintage performance for Red Wings in emotional Chicago return」
奇跡の復活!シカゴは大歓迎ムード
パトリック・ケインがスティックを上げてアイスリンクの真ん中まで行き、3回滑ると、周回を重ねるごとに観客の声は大きくなりました。試合が再開されると歓声が上がり続け、頭上のビデオボードにケインが映し出されると、再び歓声が上がったのです。
ショータイムが戻ってきた――そして、今のところ、長年のシカゴのライバル・チームの一つであるデトロイト・レッドウィングスで、ケインがプレーしていることについて、誰もそれほど気にしていないようでした。
日曜日、ケインはデトロイト・レッドウィングスの選手としてシカゴに戻り、1年前にニューヨーク・レンジャーズにトレードされて以来、初めてのブラックホークス戦1に臨んだのです。
派手なプレー・スタイルから「ショータイム」の愛称で親しまれた35歳のウインガーは、最初に在籍したNHLチーム(シカゴ)でレギュラーシーズン1,161試合に出場し2、446ゴール、779アシストを記録しました。
古巣・ブラックホークスに勝利!
これまで何度もそうしてきたように、(この試合で)ケインは結果を残したのです。彼は1ゴール・1アシストを記録し、デトロイトの3-2の勝利に貢献し、延長戦開始1分43秒で3試合を締めくくりました。
ケインは勝利を祝いながら、両腕を宙に突き上げて「ショータイム!」と叫び、ユナイテッド・センターのシーズン最多となる2万1141人の観衆が歓声を上げたのです。
「ゴールを決めたこと、ここに戻ってきたこと、違うチームにいること、今は本当にたくさんの感情がある」と、8試合連続でポイントを獲得し、5ゴール・7アシストを記録しているケインは語りました。
「ただ、最後にそこにいるファンの皆さんに4、僕の心はいつもここにあるんだということを示したかっただけさ」。
デトロイトは、ケイン獲得が吉と出ているようで良かったにゃ。
昨シーズンと比べ、トレード連発で陣容がかなり変わっているチームをまとめるには、
ケインのような経験値の高い選手にいてもらうのが得策だ。
永久欠番「7」の男からも祝福
この試合前のセレモニーで、ブラックホークスが殿堂入りを果たしたディフェンスマン、クリス・チェリオスの背番号7番ジャージを永久欠番にしたのと同時に、ケインのシカゴへの帰郷は行われました。チェリオスもまた、現役時代にレッドウィングスで過ごしています。
チェリオスはスピーチの中でケインに敬意を表し、バッファロー出身のケインはホッケー界で最も偉大なアメリカ生まれの選手として名を残すだろうと語りました。
「そのジャージはちょっと面白そうだね、ケイナー。でも、そのうち好きになるよ」とチェリオスは言っています。「心配することはないさ、最終的にはうまくいくよ。いずれ、君も僕と同じようにここに立つ日が来るだろう」。
これをきっかけに、ユナイテッド・センターでは、雷鳴のようなどよめきが起きました。ケインのデトロイト先発メンバー入りが発表されると、また大きな歓声が上がったのです。
ファンのために何度も手を振るレジェンド
第1ピリオドの最初のテレビタイムアウト中、ブラックホークスはトリビュート・ビデオを放映しました。観客はビデオが始まる前から歓声を上げ始め、時折恥ずかしそうな笑みを浮かべ、ケインが何度も感謝の気持ちを込めて手を振る中、観客は歓声を上げ続けていたのです。
「本当に特別なことだ。ブラックホークスに賛辞を贈る以上のものは、何も思い浮かばないよ」とケインは語りました。
「(ファンのために)十分な周回をしたのか、それとも多すぎたのかなんて分からなかったよ。他の選手たちは僕にもう1周行け、もう1周行けと言い続けていたね。中には4周めを見たいという人もいたけど、僕は3周しか滑れなかったな。でも、本当に素晴らしかった」。
ブーイングではなく、ケインが温かい声援で迎えられたのは、
やはり彼の残してきた「至福の時間」のおかげだろうにゃ。
あと何年現役でやれるか分からないからこそ、ファンはデザインこそ違えど、
ジャージ姿の彼の勇姿を目に焼き付けたかったんだろう。
苦難から救ってくれたデトロイト
ケインはレンジャーズでの昨シーズンを終えた後、フリーエージェントとなります。彼は6月(1日)にの股関節表面置換手術を受け、11月にデトロイトと契約するまで、体調を整えようと努めていました。
彼はレッドウィングスで27試合に出場し5、12ゴール・16アシストを記録しています。
「最高だよ。ここにいると、ポジティブな気持ちと感動しかないね」とデトロイトへの加入について語りました。
「ここでの時間を本当に楽しんでいるんだ。このグループは素晴らしいよ。コーチングスタッフ、選手全員が6、僕にデトロイトに来てチームに適応し、自分本来のプレーを見つけるチャンスを与えてくれたと思っている」。
シカゴ時代は幸せの絶頂だった
ケインは2007年のドラフトでシカゴから1位指名を受けました。すぐにチームへインパクトを与え、2007-08シーズン、彼は21ゴール、51アシストを記録し、NHL新人王に贈られるカルダー・トロフィーを獲得しています。
それは、ほんの始まりにすぎませんでした。
ケイン、ジョナサン・トウズ、ディフェンスマンのダンカン・キースの台頭により、ブラックホークスはチーム史上最高の成績を収め、2010年、2013年、2015年にスタンレーカップを制覇7しています。
2014年にも、シカゴはウェスタン・カンファレンス・ファイナルに進出しましたが、7試合を闘い、ロサンゼルス・キングスに敗れました。
「それ(スタンレーカップ獲得)を経験すると、自分がどれほど幸運で感謝に満ち溢れているかがわからなくなるくらいさ」とケインは語っています。
「でもね、あのチームには何人かの選手がいたし、あのチームの素晴らしいところは、グループとして本当に仲が良かったことだと思う。でも、内部の競争も多かったんだよ」。
ブラックホークスは最近苦戦しており、昨年、ケインはニューヨークとのトレードを円滑に進めるために契約の移籍禁止条項を放棄しました。
「素晴らしい航程を取ったと思っている」とケインは語っています。「組織(シカゴ)にとっても、僕自身にとっても、そのような時期(チームを離れる時期)だったんじゃないかな。新たなスタートを切り、いつもと違うことを楽しむのはいいことだったと思うよ」。
まとめ
ファンも選手も大人だなぁ、と感じさせる記事でした。シカゴの顔でもあったケインが、昨年、移籍を決断したのは、相当苦渋の選択だったと思うし、そのまま引退するんじゃないか、と言われていたのも事実です。しかし、彼の不屈の精神力が大きな怪我に打ち勝ったのです。
古豪でもあるシカゴは、ここ数年低迷中で、なかなか浮上のきっかけを掴めません。至宝とも言うべきコナー・ベダードを手に入れても、周囲が彼に付いてこれないのでは話になりません。ケインの出場、延長戦の決勝点がカンフル剤になればいいのですが。
これからのケインの前に立ちふさがるのは、プレーオフの闘いです。彼の経験がチームを引っ張るか、それともこのベテランを封じ込める新鋭が現れるか。でも、ケインは、プレーオフを楽しむんじゃないですかね。「戻ってきたぜ、この場所へ!」ってワクワクしながら。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- ケインにとってブラックホークスとの初試合であり、シカゴでの試合は、2023年2月21日のベガス・ゴールデンナイツ戦、3-2のPK戦で勝利した試合でアシストを決めた時以来。その1週間後、ニューヨーク・レンジャーズにトレードされた。
↩︎ - ブラックホークス史上、ポイントとアシストではスタン・ミキタ(1,467ポイント、926アシスト)に次いで2位。ゴール数ではボビー・ハル(604ゴール)、ミキタ(541)に次いで3位。
出場試合数ではミキタ(1,396試合)、ダンカン・キース(1,192)に次いで3位である。 ↩︎ - ケインがリンク中央でパスを受けてからスピードを上げ、スロット内で少し減速した後、ペトル・ムラゼクのグローブを越えるシュートを放ち、延長戦の勝者となった。
この延長戦で、ケインにストレッチパスを出したのは、レッドウィングスのフォワード、アレックス・デブリンカットである。「一つの組織のために多くのことを成し遂げてきた人が、そこに戻って来るなり、また花を贈られるなんて、考えるだけでクレイジーなことさ。
あのような結末になって、明らかにこれ以上の脚本はなかったと思う。彼がお祝いを楽しんでいるのを見るのは嬉しいよ」と語った。
なお、12月にケインがレッドウィングスでデビューする前、2017〜2022年までブラックホークスでチームメイトだったデブリンカットがデトロイトにいたことが、契約理由の一つだったと語っている。
ケインは、「今日はちょっとイライラしていたんだけど、彼(デブリンカット)がずっと前向きにさせてくれたんだ。彼は今、僕にとって兄貴のような存在なんだ」とも語った。
↩︎ - リンクを離れる前、ケインは胸を撫でて観衆に手を振った事に対する、彼自身のコメントから。他に「特別な16~17年だったとしても、それがどんなものであったのか、僕にもなかなか分からないよ。
でも、素晴らしかったことだけは間違いない」とコメントしている。
↩︎ - 手術後のケインの動向に注目が集まったが、2023年11月28日、ケインがレッドウィングスと1年275万ドルの契約を結んだ後、否定的な懸念は払拭されたと言える。
2015-16シーズン以来スタンレーカッププレーオフへの出場権を獲得していないレッドウィングス(32勝20敗6延長負け)は、ケインの加入により、イースタン・カンファレンスのワイルドカード1位に付けている。
↩︎ - レッドウィングスのゴールテンダー、ジェームス・ライマーが、次のように語っている。「この試合、特別な夜に実際に立ち会えるのは限られた人だけさ。僕は幸運にもいくつかの試合に(ケインと)参加できたが、今回の試合は、その中でも上位にランクされるね」。
「(ケインは)とてもエリートで、とても素晴らしい選手さ。そして、ケインがこの街(シカゴ)に戻ってきたとき、彼のいるチームに自分もいること、彼が受けた歓迎、ここのファンに敬意を表したいね。
シカゴのみんながケインを歓迎しているのは素晴らしく、シカゴのために彼が今までやったことを考えると、とてもふさわしいものだよね。それを見るのは本当にクールだし、あの試合の終わり方だろ?とても特別な感じがするさ」。
↩︎ - 2013年、スタンレーカップ・プレーオフの最優秀選手としてコン・スマイズトロフィーを受賞。2015-16シーズン、リーグ最優秀選手としてハート・トロフィーを獲得。 ↩︎