はじめに
スタンレーカップ・プレーオフに突入直前、「このままニューヨーク・レンジャーズがカップを頭上に掲げるんじゃないか」と予想していました。それほどまでに彼らに穴は少なく、ベテラン依存度が高いものの、総合力では戴冠したフロリダ・パンサーズと遜色ありません。
結局カンファレンス決勝で夢破れてしまいましたが、年間最多勝=プレジデンツ・トロフィーを手中に収め、一定の成果を出したチームと言えるでしょう。しかし、チームは戦力としてどうかな?と思わせるスター選手2人を手駒にして、大型トレードを狙っているようです。
さらにシーズン通して活躍した守護神との契約についても、駆け引きの最中のようです。普通の感覚なら「大事な選手なんだし、さっさと契約しろよ!」ってなりますが、超一流を維持しなければならないチームとしては、いろいろ考えるところがあるようです。
プレーオフは長丁場だし、人間ってなかなか緊張感続かないんだなぁ、
というのを、昨シーズン(23-24)は特に実感させてくれたにゃ。
レンジャーズとダラス・スターズが顕著で、
シリーズが進むごとにガタガタと崩れていった印象。
マネジメントの難しさよ。
引用元:Blue Line Station.com「3 burning questions the NY Rangers still need to answer this offseason」
レンジャーズ、スター選手を手放せるかどうか…
ニューヨーク・レンジャーズは、メトロポリタン・ディビジョンとイースタン・カンファレンスの最高のチームの1つとして絶好調状態にあるように見えますが、7月も半ばに差し掛かろうかというこの時期、まだ疑問符がつきまとっています。
あっという間に、2024-25シーズンの開幕を告げるパックがリンク上に落ちることとなり、そして、新シーズン開幕時におけるレンジャーズというチームが、現在と少し違って見える可能性は十分にあります。
2人の選手が10月にニューヨークにいないかもしれないので、彼らをトレードする価値があるのか、それともレンジャーズが彼らをニューヨークに留めておく方が良いのかを問うのは理にかなっています。
さらに、イゴール・シェスターキンの新契約が最終的にどのようなものになるのか、なぜ、彼が早くサインしたほうがレンジャーズにとって良いのか、についても注視する必要があります。
あの時のミスさえ無ければ…
ニューヨーク・レンジャーズは、ジェイコブ・トルーバを取引すべきか?
ジェイコブ・トルーバは低迷したシーズンを過ごしましたが、昨シーズン、スタンレー・カップ決勝にてあと一歩のところまで迫ったファンが、プレーオフでの彼に多くの責任を負わせた1のも理にかなっています。
しかし、レンジャーズがトルーバだけでなく、彼を失うことでもたらされる潜在的な選手層の薄さを十分に補うことができると確信していない限り、彼をトレードする価値があるのでしょうか?
正直なところ、それは報酬次第です。もし他チームが、トルーバの後釜、適切な代役となるような実績のあるブルーライナーを移籍させることをいとわないのであれば、答えは「イエス」です。
しかし、もしレンジャーズが、トルーバ退団の可能性を受けて、効果的なディフェンスマンを見つけるためだけに、いくつかのトレードを余儀なくされるのであれば、彼を引き留めた方が良いかもしれません。
以前のブログ記事にも書いたけど、一瞬の隙を突かれてパックを奪われ、
あっという間に得点されたという大失態だったにゃ。
トルーバはチーム・キャプテンでもあり、責任感の強い熱い男なんで、
相当凹んでしまったようだ。
伸び悩む若手、全体2位指名のプライドが…
レンジャーズは2024-25シーズン、カーポ・カッコをキープまたはトレードすることで、より多くの利益を得ることができるでしょうか?
キャリア300試合でわずか117ポイントというのは、チームが元全体2位指名選手(2019年ドラフト)から想像しているものではありませんが、カーポ・カッコに価値がないわけではありません。
確かに、カッコは非常に素晴らしい成長の伸びしろを持っているので、レンジャーズはこの若手選手から平均よりも良い見返りを得ることができました-そうでなければ、彼の2位指名はなかったでしょう-
しかし、繰り返しになりますが、トレード補償に関する話になってしまうのです。
カッコは、過去2シーズンで14.4のシュート率と31ゴールを記録しているため、まともな控えウィンガーとして、あるいは補佐的なスコアラーとして、ニューヨークで役割を見つけることができるかもしれません。
また、ブレイクするまで成長に時間のかかる選手もいますが、今頭に浮かぶのは元バッファロー・セイバーズのケーシー・ミッテルシュタット2です。おそらく、ミッテルシュタットがキャリアの最初の6年ほどでたどったのと同様の道を、カッコはたどっているのでしょう。
ブレイク寸前だった2022-23シーズンのような姿で、カッコが2024-25シーズンを迎えるなら、レンジャーズは有能な人材を失うことになるかもしれません。しかし、ではその補償はどうなるのでしょうか?
すべてのトレードというものは、最終的に(お金が)判断の分かれ目となりますが、このトレードはゼネラルマネージャーのクリス・ドーリーにとっては賭け金を上げることになるかもしれません。
いずれ契約するとは思うけど、時期を見誤ると…
イゴール・シェスターキンは、遅かれ早かれ契約延長にサインするのでしょうか?
額面通りなら、イゴール・シェスターキンは、シーズンが始まる前か後に契約するとか関係なく、2024-25シーズンに契約最終年を迎えることになるので、これは切実な問題ではないように思えます。
しかし、ホッケー・ライターズのブレンダン・アゾフによる最近の記事では、彼が「記録破りの契約」にサインした場合、シェスターキンの契約がレンジャーズにとって、どのような意味を持つかを明らかにしています。
しかし、レンジャーズがシェスターキンと契約するのが早ければ早いほど、ゼネラルマネージャーのクリス・ドーリーは、自チームのスター・ゴールテンダーに、そのような有利な契約を結ばせることで、自らの人生設計を練らなければならないでしょう。
また、彼が早く契約すればするほど、ドーリーが交渉しやすくなり、うまくいけば、契約満了となる若手の中心選手の大半を引き留めたいところです。
引用元:Blue Line Station.com「What NY Rangers fans can expect from Braden Schneider in 2024-25」
24-25シーズンはこの若手に注目!
こうした2つの選択肢を持つブリッジ契約3は常に興味深いものです。契約した選手は、次のシーズン、あるいは遅くとも次の2年間で期待を上回る成績を残せば、巨額の契約を結べるとわかっているからです。
ブレイデン・シュナイダーにとって、年俸220万ドルで2年契約を延長したニューヨーク・レンジャーズで、まさにこれが実現したいところです。
サイトのディフェンス・ランキングで5位にランクインしたシュナイダーは、引き続き期待している選手であり、それゆえ、彼が長期にわたってチームに残す価値のある選手であると証明するため、あと2年間、ニューヨークに戻ってくるのを嬉しく思っています。
彼が今後2シーズンで得点力の高い選手になることはないでしょうが、レンジャーズはすでに優秀な得点力を誇るチームであり、彼に大量のアシストやゴールを期待する必要はありません。
しかし、ニューヨークで3年目、(プロ)通算4年目を迎える彼に、もう少し−主に16:30から17:30の範囲で−アイスタイムを与えることは、レンジャーズにとってプラスになるでしょう。
シュナイダーの成長を数字が示している!
ブレイデン・シュナイダーは、ニューヨーク・レンジャーズで、今のフィジカル以上のものを披露するでしょう
ブレイデン・シュナイダーは、過去3シーズン、氷上を滑るたびにフィジカルなプレーを身につけ、2023-24シーズンには167回ものボディチェックを行いました。
これは2022-23シーズンより20回も増加しており、特に1試合あたりの氷上時間を1、2分増やして、200回以上の大台に乗ったとしても、誰も驚かないでしょう。
昨年、イーブン・ストレングス(氷上の両チームの人数が同じ場合)で62失点を喫したので、彼が氷上にいる時、もっと失点を減らしてほしいところですが、それでも全体的な成長には感心しました。
昨年、イーブン・ストレングスで、彼のオフェンス・ゾーンにおけるスタート率4は47.3%で、2022-23シーズンから3.6%減少しましたが、彼のコルシ・フォー率5は急上昇しました。
2022-23シーズン、オフェンス・ゾーンでのスタートが半分以上を占めていたにもかかわらず、シュナイダーのイーブン・ストレングスでのコルシ・フォー率はわずか43.9で、相対的には(他の選手と比べてみて)マイナス8.6%でした。
昨シーズン(23-24)、それが48.9%に上昇し、相対的にはマイナス2.0となりましたが、今シーズン(24-25)、同じような急上昇は見られないかもしれませんが、50%を超えても驚かないでしょう。
つまり、今シーズン、シュナイダーは単にフィジカルな選手になるだけでなく、オフェンシブゾーンでのチャンスを増やすことにも貢献するはずだ、ということを意味しています。
彼が第3(ラインのディフェンス)ペアでこれを達成すれば、レンジャーズのまだ若い守備陣の層が厚手になることもわかります。
まとめ
昔のNHL=守備重視リーグと違い、今は超攻撃型化しているため、シュナイダーのような攻守の切り替えの速い「二刀流」選手はとても重宝されます。相手へのボディチェックをはじめ、雑な守備を見せる時もありますが、新シーズンはさらに成長して、上手さを見せるでしょう。
代理人からの入れ知恵か、2年延長に留めたのもクレバーで、勇気ある選択です。おそらく2年後に最も長い8年契約を勝ち取り、出来高もプラスされれば鬼に金棒、明るい未来、レンジャーズのレジェンドへの道、まっしぐら。その分、相当な努力と成績を必要としますが。
シュナイダー+カッコなんて、最高にイカした若手コンビなのですが、片方の成長曲線がイマイチ伸びてきません。今のところ、トレード無しでシーズン・インすると思いますが、変化無しならシーズン中にチームを離れる可能性は高いかもしれません。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- パンサーズとのカンファレンス決勝で、トルーバは、コントロール・ミスからパックを失い、パンサーズに得点を献上する失態を犯している。詳しくはこちら→☆。なお、当該記事中では「トロウバ」と表記。
↩︎ - 2017年ドラフトで、バッファロー・セイバーズから全体8位指名を受けたセンター。なかなか常時出場とはいかなかったが、22-23シーズンから、やっとトップ・チームに定着。
しかし、2024年3月、コロラド・アバランチへトレード。キャリア初のプレーオフ進出を果たしている。
↩︎ - まず「こうした2つの選択肢を持つブリッジ契約は常に興味深い」というのは、この記事のサブ・タイトル「ブレイデン・シュナイダーは2年契約でニューヨーク・レンジャーズに復帰したため、長期の有利な契約を結ぶチャンスを得ることになるだろう」を受けたもの。
ブリッジ契約とは、ドラフト指名された選手は、7年間、そのチームの管理下に置かれる。最初の3年間のエントリーレベル契約が終了後、選手は制限付きフリーエージェント(RFA)の4年間が始まり、入団から7年目に無制限のフリーエージェント(UFA)となる。
UFAとしての4年の間に、選手はサラリーアップと2年または3年契約、あるいは5〜8年契約をチームと交渉して勝ち取ることが可能。この4年間が入団3年目とフリーとなる7年目の間にあることから、ブリッジ契約と呼ばれる。
つまり、ブレイデン・シュナイダーは「普通のブリッジ契約」を交わしたこととなる。記事中の「2つの選択肢」とは、2年後、シュナイダーはもう2年契約延長して、無制限フリーエージェントとなるか、5年以上の長期契約を結び、レンジャーズに骨を埋めるか、どちらかを選択できる。
単年契約を結ぶ選手は少なく、また4年契約の選択肢もあるが、その契約が切れると、問答無用で無制限となってチームから放出されてしまうため、これを選ぶ選手も少ない。
↩︎ - ある選手が、オフェンス・ゾーンで何回フェイスオフを行ったかの比率。これが高いと、それだけ攻撃に参加し、相手陣内で優位に試合を進めていることとなる。
↩︎ - ある選手のシュートを試みた数に対し、「シュートを試みた数+相手選手にシュートを打たれた数の合計」で割った比率。これの高いディフェンスマンは、攻守の切り替えの速い選手となる。 ↩︎