NHLの監督はツライよ!2年以上、監督の座に留まるのはわずか5人!

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はじめに

 相変わらず、プレーオフは見所満載です。ニューヨーク・レンジャーズに一気に3勝されて、窮地に立ったカロライナ・ハリケーンズが連勝で盛り返したり、コロラド・アバランチの弱点=守備の陣形に入る遅さを突いて、延長で初戦敗北以後、3連勝と安定のダラス・スターズ。

 日本時間で5月15日午前中の2試合、まずカナダのチーム同士の対戦=エドモントン・オイラーズvs.バンクーバー・カナックスは、2勝2敗で一歩も譲りませんし、昨年の雪辱を果たさんと燃えるボストン・ブルーインズが、フロリダ・パンサーズを押し返しています。

 さて、今回お届けするのは、プレーオフに参戦しているフロリダ・パンサーズ監督、ポール・モーリスを中心に、NHL監督業の難しさを解説した記事です。サッカーの監督に似ていて、成績によって数試合で解任、なんてことがザラの厳しいお仕事なのです。

讃岐猫
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引用元:TRIBLIVE.com「Coaching carousel spins fast in the NHL, with only 5 in current job for more than 2 years

強いチームの監督でもキツい

 ポール・モーリスはフロリダ・パンサーズの監督として2シーズン目を迎え、2年連続のスタンレーカップ決勝進出を目指しています。少し前に彼から指摘されましたが、現在の職業(監督)では、2年は永遠のように思えるとのことでした。

 それが彼の選んだ人生です。

 「大変な仕事だよ」とモーリスは言いました。「医者になればよかったかな」。

北米4大スポーツの監督離職率

 プロの監督業の世界で、雇用の安定は基本的に矛盾した話であり、NHLの離職率は現在のところ異常です。MLB、NBA、NFL、NHLの北米4大プロスポーツリーグには124チームがあり、ヘッドコーチのポジションは124です。

 現職に2シーズン以上就いているのは、全体の45%に過ぎません。

 NFLでは監督の約60%が3年以上仕事を続けており、MLBとNBAの監督では、その割合が両方とも53%となっています。

讃岐猫
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NHLは特に激しい

 NHLでは、回転ドアが他のどこよりも速くスイングします。シェルドン・キーフが先週トロントで解任されたことで、2年以上にわたって現職にあるNHL監督1の32人中わずか5人、つまり、基本的に16%にまで減少しました。

 スペンサー・カーベリーは、ワシントンに雇われてから1年足らずで(2023年5月30日就任)、すでにNHLで13番目に長い在籍期間を誇っています。

 ダラスのコーチであるピーター・デボアは、NHL監督の寿命の長さ、あるいはその短さについて「それには少し思うところがあるんだ」と語りました。「狂気の沙汰だ」。

 タンパベイのジョン・クーパー、ピッツバーグ・ペンギンズのマイク・サリバン、コロラドのジャレッド・ベドナー、カロライナのロッド・ブリンダムール、モントリオールのマーティン・セントルイスの5人は現在の仕事に就いて2年以上経っています。

 シーズン途中の交代も加わり、NHLは今シーズン、39人のヘッドコーチが交代し、2年前の記録に並びました。

 「誰もが現代のアスリートについ語り、彼らを指導するための関係を構築している時代に、我々はコーチングを行っているんだ」とデボアは語っています。

  「そのような離職率の中で、どうやって目標達成を行えるんだい?デートをして、前菜が登場する前に結婚して離婚するようなものさ。どういうことか理解できないね。でもね、ご存知のとおり、それが僕らの住む世界なのさ」。

監督が職を転々とするのは、昔からあることだけど…

リサイクル・コーチ

 いくつかの例外を除いて、これまでにNBAのコーチは280人以上交代しています。

 サンアントニオのグレッグ・ポポビッチは1996年からスパーズのコーチを務めており(5度の優勝、NBA歴代最多勝利数を記録)、

 マイアミのエリック・スポールストラ(アジア系アメリカ人として初の北米メジャー・プロスポーツの監督であり、初のNBA優勝監督)は2008年からヒートを率いていますが、監督が職を転々とするという考え方は新しいものではありません。

 NBAでは、ドック・リバースが、今年初め(2024年1月24日)、シーズンで言えば半ば頃、ミルウォーキー・バックスの指揮を執るようになり(その前は22-23シーズンにフィラデルフィア・セブンティシクサーズ)、彼のキャリアで5度目の監督就任を果たしました。

 フランク・ヴォーゲル(2019-20シーズン、就任1年目でロサンゼルス・レイカーズをNBAファイナル優勝に導く)にとって、フェニックスでの1年間の任期は解雇で終わり(2023年6月6日就任、翌年5月9日解任)、彼にとって4つ目のフランチャイズとなっています。

 NBAのカンファレンス準決勝に出場した8人の監督のうち4人、つまりニューヨークのトム・シボドー(2010年、ブルズ監督就任年に最優秀監督賞)、インディアナのリック・カーライル(10-11シーズン、マーベリックス初優勝時の監督)、

 ダラスのジェイソン・キッド(2020年、レイカーズ優勝時のアシスタント・コーチ)、クリーブランドのJB・ビッカースタッフ(キャバリアーズを強豪に押し上げる。父も監督歴あり)は、3回目の監督就任です。

 NFLでは、ビル・ベリチック(6回のスーパーボウルを制覇。4年間で3回優勝した監督は彼のみ)がニューイングランドから去った後、ピッツバーグ・スティーラーズのマイク・トムリン(就任以来、17シーズン連続で負け越しが無い)が、現職での在職期間最長となりました。

 トムリンが2007年に雇用されて以来、140件の異動がありました。

 もしかしたら、フロリダのメキシコ湾岸海中には、監督が他の地域よりも長く仕事を続けられる何かがあるのかもしれません。

 ケビン・キャッシュ(2020、2021年と連続して最優秀監督賞)はタンパベイ・レイズの監督として10シーズン目を迎えています。MLBで現在の監督職を長く続けている人はいません。

 そして、(ジョン・)クーパーがタンパベイで監督を引き継いで以来(12-13シーズン〜)、NHLでは122人のコーチ交代がありました。

 「結局のところ、本当に良い選手と良いチームがたくさんいるのは幸運なことだ」とキャッシュは語っています。

讃岐猫
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忍耐強くなければ勝てないのだが…

コーチはずっと勤務中

 それ(時間をかけること)はどんなスポーツでも重要なことですが、ホッケー界にはそれが欠けていると言う人もいます。勝つには時間がかかります。チームの構築には時間がかかります。しかし、選手の年俸が上がり続ける時代において、忍耐力はますます短くなっています。

 今すぐ勝つか、さもなければ…。

 NHLコーチ協会事務局長のリンジー・ペナルはAP通信との電話インタビューで、「本当に前例のない数の解雇があった」と語りました。

  「その一部はコーチング・サイクルによるものです。サイクルがあり、監督の平均在任期間がわずか約2.2年であることを考えると、現在の状況の一部は、コーチングの周期的な入れ替わりに関係しています」。

 「しかし、監督が解任された要因は、監督のパフォーマンスや、チームにもたらしたポジティブなこととは無関係で、解任に寄与した他の要因があるとも感じています。

 つまり、経営陣が成績不振の責任を転嫁する方法を考えているのか、あるいは組織の他のメンバーを満足させるために考えているのか、です」。

 2019年(スタンレー)カップ優勝者のクレイグ・ベルーブをシーズン半ばに解任したダグ・アームストロングは、セントルイス・ブルーズのゼネラルマネージャーとして14年間で4度目の監督交代となりましたが、その時々に「変化は避けられない」と語っていました。

(付記)

 ダグ・アームストロングが、ドリュー・バニスターと監督契約を2年延長したと話している映像。バニスターは、23-24シーズン途中、ベルーブの後を承けて、暫定監督として就任。就任後は30勝19敗5延長負けと、なかなかの好成績である。

 アームストロングは、AHLで長らく監督をしていたバニスターの手腕をじっくり観察して抜擢、NHL監督初体験でもある彼をサポートし、今後2年間は監督である彼を中心にチーム作りを進めていくと映像内で明言している。果たして有言実行してくれるかどうか。

 (そんな彼でも)これだけの離職率は多すぎるのではないか、と疑問に思っているようです。

 アームストロングは、「過去36カ月間の監督交代の数を見ると、個人的にはこれが健全だとは思えない」と語りました。「それが変わることを願っています」。

雇用→再雇用…のサイクルは悪いことじゃない?

解雇と再雇用

 キーフ、ニュージャージーのリンディ・ラフ(2024年4月22日、バッファロー・セイバーズ監督に就任。ニュージャージー監督は未定)、バッファローのドン・グラナト、シアトルのデイブ・ハクストルはいずれも、新たな契約延長が始まる前に解雇されています。

 彼が指揮を執って5年目にして、メープルリーフスが4度目のプレーオフ1回戦敗退2を喫した後で、おそらくキーフの件が最も驚くべきことではありませんでした。

 より深く監督業を極めている彼の「同僚」の中には、旅慣れている人もいます。ニューヨーク・レンジャーズは、ピーター・ラヴィオレットにとって6番目の訪問地となっています。デボアにとってダラスは5番目です。

 フロリダはモーリスにとって4番目の職場であり、プレーオフの数字も含めて、NHLで2,000試合を監督した唯一の選手として(現時点では1971試合、歴代2位)、スコッティ・ボウマン3(通算2364試合)に並ぶペースで進んでいます。

 彼らは皆、解雇されては雇用され、解雇されては雇用されてきました。そして、彼らが選んだ人生の中で、それは続くのです。モーリスは数日前、NHLのほとんどのコーチよりも長くその職に就いていると言われました。「一ヶ月待ってみてください」と彼は笑っています。

 「確かに大変な職業です」とモーリスは言いました。「そして、コーチングにハマり、最終的にはコーチングを好きになってしまう人もいるということさ。…これらの仕事は(NHL32チームあるから)32件あります。このような仕事はあまりないからね。

 唯一良い点は、何度も解雇されるようになれば、それでキャリアを築けるということだ。そして、監督が解雇されるたびに、別の監督が雇用されるのさ」。

まとめ

 シアトルのハクストル監督は、もう1シーズンやるかなと思ったのですが、プレーオフ争いの中に入ることなく終わったこともあって、あっさり契約延長とはなりませんでした。デビルズの監督も昨シーズンほど活躍できなくて、同じ憂き目に遭ったようです。

 逆に、フロリダのポール・モーリスはしばらくやるでしょう。あれだけマスコミから絶賛されるチームを作り上げ、かつ安定した成績を残していれば、フロントは文句の付けようがないはずです。まあ、性格的に合わないフロントがいて、情報操作の末、解任もあり得ますが…。

 ユニークな記事でしたが、注文をつけると、若い監督と老練な監督のどちらが解任までの速度が速いのか、とかが知りたかったです。今後、NHL以外で若手の伸び盛りの監督がいるのか、も知りたいですね。

讃岐猫
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【註釈】

  1. 来月で就任から丸2年となる監督は以下の通り。
    ルーク・リチャードソン(シカゴ・ブラックホークス)、デレク・ラロンド(デトロイト・レッドウィングス)、ジョン・トルトレラ(フィラデルフィア・フライヤーズ)、ブルース・キャシディ(ベガス・ゴールデンナイツ)。

     まさかのプレーオフ1回戦負けを喫したキャシディは微妙なライン、残留6:解任4か。ラロンドはあれだけの戦力を持ちながら…とジャッジされたら、ヤバいかも。後の2人は解任されてもおかしくない。
    ↩︎
  2. 2016-17シーズン以降、1回戦負けが多く、2回戦に進出したのは、22-23シーズンのみである。よって、キーフ個人の技量の問題だけでなく、チームの戦力そのものに問題がある可能性も高い。
    ↩︎
  3. このブログでは、バンクーバー・カナックス前監督であるブルース・ブードローを取り上げた際、ボウマンについても記載している。詳細はこちら→
    ↩︎
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