はじめに
いよいよ始まったNHLスタンレーカップ・プレーオフ第1ラウンド、日本では相変わらず話題になっていませんが、レギュラー・シーズン以上の熱気をはらみ、各地で激闘が繰り広げられています。やはり、上位チームの方に分があるのか、順当に白星を重ねています。
今回は、カロライナ・ハリケーンズvs.ニューヨーク・アイランダーズの第2戦をお届けします。第1戦、ハリケーンズが3-1で勝利。結果を見た時、ファンには申し訳ないが、アイランダーズの不安定なシーズンの戦いぶりから、「まあ想定内かな」と感じました。
迎えた第2戦、奮起して試合開始から積極的だったアイランダーズが主導権を握ります。しかし、第2ピリオド途中から、様子が…。詳しくは記事を見ていただきましょう。何が起こるかわからない、ほんの数分で全てが変わるNHLの面白さを凝縮した試合です。
もう一方のニューヨークの雄、
レンジャーズは攻守共に脂ののったスキのないチームであるのに対し、
アイランダーズは発展途中のチームなんだにゃ。
そんなに選手層に厚みのないチームなんで、
うーん、プレーオフを勝ち進めるかどうかは疑問。
引用元:NHL.com「Islanders falter against Hurricanes in Game 2 loss that ‘hurts the gut’」
あともう少しだったのに…
4月22日(月曜日)、ニューヨーク・アイランダーズはフィニッシュラインが見えてきました。それは遠くにうっすらと見えているのです。
あと1回、シュートを止め、あと1回、相手選手にヒットしてパックを奪い取り、まるで一晩中プレーしていたかのように戦って、あと1つの戦いに勝利し、スタンレーカップ・プレーオフ・シリーズの最初の2試合、アイランダーズは1勝1敗のタイにするという貴重な成果を上げ、完全なるアウェーの環境から脱出しようとしていました。
それどころか、PNCアリーナで行われたカロライナ・ハリケーンズとのイースタン・カンファレンス第1ラウンド・第2戦で、アイランダーズは3点のリードを、最終的に5-3で失うという最悪の結果に終わってしまったのです。
「2つのピリオドの間、自分たちの陣地内だけでプレーするわけにはいかないだろ」とアイランダーズのディフェンスマン、ノア・ドブソンは言いました。
「僕らは押し返していかなきゃいけない。今夜、十分にプレーできていなかったのははっきりしている。僕らはそこから学び、より良くなっていきたい」。
シュート数の差が物語る敗戦
アイランダーズはガス欠になり、最後の40分間は守備に明け暮れました。第2・第3ピリオドの枠内シュート数で、29-5と大差をつけられています。試合のシュート総数1は110-28で彼らの完敗でした。
忘れようにも忘れられない第3ピリオドで、ハリケーンズがフランチャイズのポストシーズン史上3度目の3点差逆転勝利を収めたため、犠牲者(アイランダーズのこと)は自分のねぐら(ホーム・アリーナ)に帰っていったのです。
今回以外の逆転勝利は、2002年のイースタン・カンファレンス準決勝の第4戦(モントリオール・カナディアンズとの延長戦で4-3)と2006年のスタンレーカップ決勝の第1戦(エドモントン・オイラーズとの対戦で5-4)でした。
元々ハリケーンズは土壇場に強い体質を持っていたチームなんだにゃ。
それは、とにかくシュートを撃ちまくる激しい攻撃性に裏打ちされているわけで。
アイランダーズは、サッカーで言う「ベタ引き」戦術を取ったんだけど、
あれは得てして成功しないんだよなぁ。
第3ピリオドの悪夢
本格的な逆転劇が始まったのは第3ピリオド残り9分17秒、セス・ジャービスがアイランダーズのゴールキーパー、セミヨン・バルラモフ(34セーブ)をかわしてシュートを放ち、ハリケーンズが3-2と点差を縮めたところからです。
その後、チームは見事にバラバラになってしまいました。プレーオフ進出を逃した5チームよりもトップに立ったアイランダーズは、今シーズン何度もそうだったように、レギュラーシーズンの第2、第3ピリオドで196失点も許していたのです。
「もう少し頑張れば、勝利で試合を締めくくれると思ったよ」とニューヨークのフォワード、ブロック・ネルソンは言いました。
「僕らはかなりいいところにいたのに、シュートを打たれて同点に追いつかれた。それからどんどん攻めてきたんだ。反応することさえ難しくなってしまったね」。
17分45秒、アンドレイ・スヴェチニコフからのスラップパス(スラップ・ショットを打つ構えを見せながら、フェイントをかけてパスすること)をセバスティアン・アホが決めて、ハリケーンズは3-3の同点に追いつきました。
たかが2分15秒、されど2分15秒
動揺しているアイランダーズは、ロッカールームに行き、延長戦に備えて再編成するために、(レギュラー・タイム終了までの)2分15秒も耐え続ける羽目になったのです。
彼らは9秒間しか続きませんでした。
アイランダーズの監督、パトリック・ロイは出血を止めるべく、タイムアウト2を取ることを考えたと述べています。
しかし、彼は氷の上にチーム最高の200フィート(アイスリンクの縦が200フィート。つまり、リンク中を駆け回れる選手の喩え)・フォワード(ジャン=ガブリエル・パジョー)と最高の2人のディフェンスマン(ドブソンとアレクサンダー・ロマノフ)を氷の上に置いていました。
ロイはサイコロを振ってしまいます。蛇の目(snake eyes=さいころを2つ投げて、両方とも1の目が出るときに使われる表現)が出てきました。
「チームは大丈夫だと感じてしまったんだ」とロイは言いました。「残念ながら、ハリケーンズは得点してしまいました。何が起こったのか正確にはわかりませんが、再確認する必要がある」。
アイランダーズ監督は一世一代の大博打に出たのか、
それとも単なる「楽観主義者」なのか、何とも言えないにゃ。
「どうにかオーバータイムに持ち込めるだろう」くらいには考えていたと思う。
そっから立て直して勝てばいい、トーナメントだし、みたいなね。
フォアチェックの大切さ
起こったことは次のとおりです。
ハリケーンズはフェイス・オフに勝ち、氷上にパックを投げ入れました。ドブソンはそれを手に入れるために急いで自陣へと戻ってきます。カロライナのフォワード、ジョーダン・マルティヌークに、彼は激しく迎え撃たれてしまいました。
ゴールキーパーが反対側を向いている間に、「このまま自分がパックを持っていく!」と頑張ったマルティヌークが方向を変え、アイランダーズ側ゴールのショートサイド(間隔の狭い方)、バルラモフの足元にパックを入れたのです。
「この時期、感情が高ぶるものなんだ」とネルソンは言いました。「ホッケーに良い時・悪い時のスイングがあるのは、みんなわかっているはずさ。どんなポイントでも、どんなゲームでも、一年中、僕らは常に次のシフトについて話し、勢いを元に戻そうとしてるんだ。
ハリケーンズはフォアチェックでパックを奪い、1点を取ることができた。ああ、30秒でいいから、時間が戻ってきてほしい」。
ピッツバーグ・ペンギンズとフィラデルフィア・フライヤーズの2018年第1ラウンド・第3戦、ピッツバーグが5秒で2ゴールを決めて以来、ハリケーンズはプレーオフ史上最速の2ゴールを決めました。
NHL史上7チームが、プレーオフの試合中、最後の3分間に同点と勝ち越しゴールを決めています。
悪い数字が並んでる…
昨シーズンの第1ラウンド、ハリケーンズと6試合戦って敗れたアイランダーズにとって、今は暗澹たる状況に見えます。
最大7試合を戦うシリーズの最初の2試合に勝利したチームは、86%の確率で勝ち進むようです(393チーム中348チーム)。ハリケーンズは、2勝0敗でリードした10シリーズのうち、8シリーズで勝ち進んでいます。
「まあ、あの試合に勝つチャンスがあったのだから、厳しい負けであることは間違いない」とロイは言いました。
アイランダーズは第2ピリオドの早い段階で3-0のリードしましたが、最後の27分で5つの連続ゴールを許しています。
このシリーズを勝ち抜いて、次へ勝ち進むためには、PNCアリーナでの1試合を含む5試合のうち4試合に勝たなければなりません。木曜日にUBSアリーナで行われる第3戦(東部標準時:午後7時半、MSGSN、BSSO、ESPN2、SN360、TVAS)から、その登り坂が始まります。
「我々は、この2日間を有効に使います」とアイランダーズのキャプテン、アンダース・リーは言いました。「ホームに帰り、ファンの前に立たなきゃね。みんなからもっと力を与えてもらおう。そして、この件はまだ終わっていないけど、今だけは(緊張で)お腹が痛いよ」。
(チームは)どこもかしこも痛そうです。
月曜日、アイランダーズは氷の上に(課題の)すべてを残したままです。彼らは39本のシュートをブロックし、カロライナの試合の特徴であるプレッシャーを破ることができず、長い間、自チームサイドの端に固定されたままだったのです。
彼らはハリケーンズにプレッシャーをかけることができませんでした。
プロ野球の日本シリーズでも、数日のインターバルがガラッと流れを変えることはあるにゃ。
過去2戦、そして昨シーズンの敗戦を忘れて、とにかく眼前の試合に勝つ、
アイランダーズにはそれしかないと思う。まずはフォワード陣の奮起かな。
全てを変えた「あのプレー」
彼らは生き延びているだけであって、繁栄しているわけではありません。
バルラモフがゴール前のクリースでクリアしようとしてトリップ・ペナルティ3を受けたとき、すべてが変わりました。突然、ハリケーンズに活気が出て、テウボ・テラバイネンがパワープレーでゴールを決めて衝撃を与え、第2ピリオド・13分1秒で3-1にします。
ハリケーンズは残りの時間を支配しましたが、アイランダーズにこれ以上の打撃を与えることはできませんでした。
「我々が反則をしたことで、相手に勢いを与え、試合が大きく動いたように感じた。どういうわけか、チームは1対1の戦いに負け始めるようになったんだ」とロイは言っています。
「そして、パックを外に出すため、リンクの壁沿いで仕事をしようとしたが、あまりうまくいかなかった。彼らはそれを利用してきた」。
まとめ
アイランダーズとしては、ハリケーンズの猛攻を予測できなかったことが敗因の一つでしょう。元々攻撃力のあるチームに対して、データに則った形で、もっとテクニカルにディフェンスすることは可能だったと思います。ベンチ・ワークの拙さは明白です。
正直、アイランダーズの現有戦力で、プレーオフは無理かな?と思われていたところ、(他力本願的な所もありますが)スルスルッと上がってきた感じで、出場を決めたと同時に、チーム全体が安心しちゃったのかもしれません。よくあることです。
中2日でどこまで立て直してくるか。ハリケーンズのクセも分かってきたはずですから、弱点を突いて、是が非でも3戦目を取る!意気込みを見せてほしいところです。やや頼りない監督に不安無きにしもあらずですが、リフレッシュした選手達のいいプレーを期待します。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】