はじめに
2025年春、NHLのプレーオフで、ドラマのような展開が起こりました。
主役は、かつてコロラド・アバランチでプレーしていたミッコ・ランタネン。彼は現在、ダラス・スターズに所属していますが、古巣との大一番「第7戦」で驚きの活躍を見せました。
参照記事:Washington Post「Rantanen has hat trick as Stars rally past Avalanche 4-2 in Game 7 to advance to 2nd round」
奇跡の逆転劇!ミッコ・ランタネンが見せた意地🔥
試合は、7戦中の最終決戦。ダラスは2点差を追いかける苦しい展開でしたが、第3ピリオドでランタネンが大爆発!残り3分56秒でワイアット・ジョンストンの勝ち越しパワープレーゴールをアシストし、そして最後はエンプティネットゴールにシュートを決めて、なんとプレーオフ初のハットトリックを達成しました🎩✨
これでダラス・スターズは4対2で勝利し、ウェスタン・カンファレンス1回戦を制し、次のラウンドへと進出。ランタネンの活躍は、まさに「英雄」の一言でした。
「彼は“俺たちはここで終わらない”と決めたようだった。あれは特別な瞬間だった」と、スターズのピート・デボア監督は語っています。
「このシリーズは、予想通りの展開だった。第1戦の前から7戦までもつれると思っていたし、チーム全体が常に勝てると信じていた」とランタネンは語りました。
スターズは2回戦に進出し、トップシード1のウィニペグまたはセントルイスと対戦します。両チームは日曜夜に第7戦を行う予定で、ウィニペグが勝てばホームアイスの利はジェッツに、セントルイスが勝てばダラスがホームから始めることになります。
スターズvs.アバランチの第7戦、ハイライト映像です!
【追記】日本時間で5月5日・午前中に行われたウィニペグ・ジェッツvs.セントルイス・ブルースは、ダブル・オーバータイムにわたる激戦となり、4-3でジェッツの勝利。この結果、東部時間で5月7日(水)・午後9時30分(日本時間では翌日の午前11時30分)開始の第2ラウンド・第1戦はジェッツのホームアイスとなる。
元チームへの思いと涙の握手🤝
この試合には、ランタネンの特別な感情もありました。なぜなら、今季、6週間の間に2度トレードされ、最初はコロラドからカロライナへ、そして期限直前にはダラスへ移籍。このときには8年・9600万ドルの契約延長も結ばれていました。
しかも、今回の対戦相手は長年プレーしてきた古巣コロラド・アバランチだったのです。ランタネンはこのシリーズで、古巣相手に5ゴール・7アシストを記録しています。
ランタネンのレギュラー・シーズン&プレーオフでの活躍については、こちらでも触れています。
「個人的にも精神的にも厳しい1年だった。2回もトレードされるなんて……1回でもつらいのに、同じシーズンで2度もだ」と語ったランタネンは、試合後、元チームメイトたちと握手を交わしましたが、その表情はとても感傷的。
「彼らは自分の兄弟みたいな存在。10年一緒にやってきた仲間だからね。もちろんこのシリーズ中は敵だったけど、氷の外では彼らのことをずっと愛している。あれだけ急展開の中での再会は、感情的にならざるを得なかった感情があふれた」と語りました😢

ランタネンにとって、まさに「ジェットコースターのようなシーズン」だったにゃ。FAやサラリーキャップ制度がある以上、チームを渡り歩く「ジャーニーマン」になる可能性はどの選手にもあるんだけど、これだけのスター選手がそうなるのは珍しい。よく耐えたと思う。
試合を動かした“第3ピリオドの魔法”✨
この試合、実はコロラド・アバランチが有利な展開で進んでいました。ジョシュ・マンソンは、第2ピリオド中盤にショートハンド2でゴールを決めてアバランチに1-0のリードを与えます。この得点も運に恵まれたものでした。
第6戦でコロラドが土壇場で逆転勝利した際、ダラスの選手に当たったパックが跳ね返ってゴールに入ったように、今回もマンソンのシュートはポストに当たった後、オッティンジャーの左肩の裏に跳ね返り、そのままゴールラインを越えています。
オッティンジャーとスターズは、第1ピリオドにキャプテンのジェイミー・ベンがバレリ・ニチュシュキンの顔面にハイスティック3を浴びせ、4分間のダブルマイナーを受ける(=4分間のペナルティ・ボックス行き)中でも失点を許しませんでした。アバランチはこの間に3本のシュートを枠内に飛ばし、さらに4本をミスしています。
第3ピリオドが始まってすぐ、開始31秒でネイサン・マキノンのショートスナップショット4によるゴールで、2点差にリードを広げたのです。これが彼にとって5度目の第7戦での初ゴールでしたが、いずれも敗戦となっています。
ところがここで、ランタネンの“スイッチ”が入ります⚡
12分11秒にまずは一発目、ミドルサークル上から放ったシュートで、ダラスの最初のゴールで1点を返すと、さらに残り6分14秒、彼はパワープレー中にネット裏を回り込み、ゴール裏からラップアラウンドショット5を放ちました。
これがアバランチのディフェンスマン、サミュエル・ジラルのスケートに当たってゴールに入り、同点に追いつきます。そして、最後の3秒には、彼のキャリア初となるプレーオフでのハットトリックをエンプティゴールへのシュートで決めて、試合を完全に締めくくりました。
この3ゴールに加え、1アシストで合計4ポイント!アバランチで過去7シーズンプレーし、2022年のスタンレーカップ優勝メンバーでもあるランタネンは、なんとNHL史上第7戦の第3ピリオドで4ポイントを記録した史上2人目の選手となったのです。
ハットトリックだけの映像。96番に注目。アバランチの選手がシュートコースを消しに行ってるのですが、それをものともしないプレーは最高。
「第6戦で彼のスイッチが入ったのが見えた。自分が試合を支配すると決めたようだったし🔥、彼にはそれを実行できるだけの体格とスキルがある」と、2アシストを記録したマット・デュシェーンは語っています。
スターズのゴーリー、ジェイク・オッティンジャーは4年連続で第7戦に出場し、24セーブを記録。これで第7戦の通算戦績は3勝1敗となりました。
片やアバランチのマッケンジー・ブラックウッドは15セーブを記録。第2ピリオドには、ミカエル・グランルンドの横へ広がっていくようなシュートに対して右足をポストまで伸ばし、ゴールを阻止したシーンもありました。
スターズと監督の“第7戦”ジンクス💫
ランタネンの活躍だけでなく、ダラス・スターズ全体にも注目ポイントが!実は、コロラド・アバランチとの「第7戦」でダラスはこれで4戦全勝。そして、そのすべての年でスタンレーカップ・ファイナルに進出しています。
1999年と2000年にはウェスタン・カンファレンス・ファイナルで7戦を戦い、2020年のパンデミックによる「カナダ・バブル6」の第2ラウンドでも7戦シリーズに勝利しています。
また、スターズのピーター・デボア監督は、NHL史上初めて「プレイヤーまたはコーチとして第7戦で9勝」を達成。彼はこれまで4つの異なるチームで、第7戦を9勝0敗としており、その内訳はニュージャージーで1勝、サンノゼとダラスでそれぞれ3勝、ベガスで2勝。スターズでは、就任以来3シーズン連続で第7戦に勝利しているのです📈
そんな強運(?)にも支えられて、ダラスは次のラウンドへと駒を進めることになりました。
勝者と敗者、ドラマの交差点🎭
一方で、敗れたコロラド・アバランチは2002年から「第7戦」で7連敗。OptaSTATS7によると、これはNHLだけでなく、NBAやMLBを含めても唯一の不名誉な記録です…。直近の4回は、ジャレッド・ベドナー監督の下での敗北です。
「この結果は本当に辛い。1年を通じて、シリーズを通じて、全身全霊で戦ってきたのに、あと少しのところで全てが崩れてしまった。選手たちがどれだけ努力して、どれだけ勝利を望んでいたかは誰よりも知っている。今はそのことしか考えられない」と語ったベドナー監督のコメントには、チームへの愛情がにじんでいました。
スポーツには勝者がいれば、必ず敗者もいる。だからこそ、毎試合に物語が生まれるのだと、あらためて実感させられる試合でした📖
まとめ
今回は、アイスホッケーのゲーム7で見られるドラマチックな瞬間や、選手たちの華麗なプレーを紹介しました🏒✨重要な局面での集中力や戦術が試合を大きく左右することが分かりましたね。初めてNHLに触れる方でも楽しめる内容なので、次回の試合もぜひチェックしてみてください!🔥

ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- NHLでは、東西の各カンファレンス(リーグ)で最も良い成績を残したチームを「トップシード」と呼ぶ。このチームはプレーオフで有利な位置(ホーム開催が多くなるなど)からスタートでき、通常は下位のチームと初戦で対戦する。
なお、リーグ全体で最も勝ち点が多かったチームには「プレジデンツトロフィー」が授与されるが、そのチームが必ずしも優勝できるとは限らないというジンクスもある。
↩︎ - 反則で自チームの選手が退場していて、人数が少ない状態でプレーしている時のこと。その状況で決めるゴールを「ショートハンド・ゴール」といい、かなり難易度が高いプレー。
↩︎ - スティックを肩より高く振り上げて、相手の顔や頭に当ててしまう反則のこと。危険性があるため、通常2分、出血などがあれば4分のペナルティになる。
↩︎ - 短い動作で素早く打つシュートのこと。スティックの振りが小さくて目立ちにくく、キーパーに読まれにくいテクニックです。
↩︎ - ゴールの横を回り込んで放つシュート。ゴールキーパーの反対側の隙間をついて決めるため、タイミングが重要で非常に効果的なプレー。
↩︎ - 新型コロナウイルス感染拡大を受けて、NHLは2019–2020年シーズンのプレーオフを安全に開催するため、カナダのトロントとエドモントンを「隔離バブル都市」に指定。選手・関係者は外部と遮断された環境で過ごし、定期的なPCR検査や健康管理を実施。全試合は無観客で行われ、リーグ内の感染者ゼロを達成するなど、安全対策の成功例として高く評価された。
↩︎ - Stats Performが提供する、リアルタイムスポーツデータとAI分析を扱うサービス。主にNHLやNBA、MLBなどの詳細な試合データや選手のパフォーマンス評価を提供している。 ↩︎