はじめに
今シーズン、「ちょっと期待裏切られちゃったなぁ」と思わせておいて、ある日突然、覚醒するチームが多いように感じます。16連勝と未曾有の快進撃を見せたエドモントン・オイラーズ然り、今や無敵の感すら漂うフロリダ・パンサーズ然り。
82試合、7ヶ月近くに及ぶ長いシーズンですから、そんなチームがあってもおかしくないのですが、勝ち始めたら止まらない所が共通しているようです。そして、この3月半ばで、その兆候を見せ始めているのが、ナッシュビル・プレデターズ。
あっという間にプレーオフ進出争いに加わり、安定した連勝街道を進行中…、が、それに待ったをかけたのが、同じディビジョンに属するミネソタ・ワイルド。しかも、これまたファンをあっと言わせる奇策で、絶好調チームから勝ち点をもぎ取ったのです!
昨シーズンのチャンピオン、ベガス・ゴールデンナイツより上を行ってるもんにゃ、
ナッシュビルは。
大スター選手がいるわけでもなく、コツコツやっていたら、周囲が勝手にこけて、
気づくと上位に…って感じ。これをキープできるかどうか。
引用元:Times Union.com「Minnesota Wild pull goalie in overtime, beat Nashville Predators 4-3 on Boldy goal」
NHL.com「Boldy scores in OT, Wild recover to defeat Predators」
延長戦で珍プレー好プレー?
3月10日(日曜日)、ミネソタは延長戦でゴールキーパーをリンクに引き出し(ゴールから出て、他の選手同様、リンク上でプレーさせた。つまり、通常のエンプティネットと違い、ゴールキーパーをベンチに置かない)、マット・ボルディ(左ウィング、22歳)が得点して、(ホームのエクセル・エナジー・センターで)ワイルドは4-3でナッシュビル・プレデターズに勝利しました。
OT(オーバー・タイム)3分30秒、ワイルドのゴールキーパー、(27セーブを挙げた)マルク=アンドレ・フルーリー(39歳)がリンクに出ていき、ミネソタに4対3の人数的アドバンテージをもたらしたのです。
その数秒後、(2アシストを記録した)ボルディは1マッツ・ズッカレロ(右ウィング、36歳)からパス(右サークルからアイスクロスパス)を受け、プレデターズのゴールキーパー、ユース・サロス(28歳)を(ワンタイマーで)破って24点目を挙げました。
ミネソタ監督による危険な賭け
フルーリーがゴールから出て攻撃に加わった後、ナッシュビルがエンプティネッターを決めていたら、ミネソタ(31勝27敗7延長負け。4試合連続〈3勝0敗1延長負け〉で勝ち点獲得)は延長戦の敗戦で勝ち点を失っていたでしょう。
しかし、ワイルドはプレーオフ出場権獲得を狙っているため、監督のジョン・ハインズは危険な賭けを試みました。
ハインズ監督は2「我々には勝ち点2が必要だ」と語っています。「勝ち点1であっても勝ち点0であっても、それは我々にとって何の役にも立たない。我々に必要なのは勝ち点2だ」。
どうしても欲しい勝ち点2を取りたい監督による、捨て身の奇策が的中したわけだけど、
これが逆の結果だったら、マスコミはどう報じていたんだろうにゃ。
後でも出てくるけど、悔しい中でも相手のナッシュビルはその勇気を称えているのが、
スポーツマンらしい。
ナッシュビル側の反応は…
レギュレーション(試合時間60分)残り2分02秒、ナッシュビルのライアン・オライリー(センター、33歳)がパワープレーゴール(密集を抜け、スロットからのスナップショット)を決め、プレデターズが2月15日以来となるレギュレーション時間内での負けを回避するのに貢献しました。ナッシュビルは直近12試合で10勝0敗2延長負けです(12試合連続勝ち点)。
「あれは彼ら(ミネソタ)の勇気あるプレーだった」とオライリーは3言いました。「悔しいよ。我々はシュートアウト(PK戦)が得意だからね。もしかしたら、シュートアウトまで到達すれば、勝ち点2を獲得するチャンスがあったかもしれない」。
ゴールからリンクに出たゴールーキーパー
ミネソタのロッカールームにいた選手たちは、もしナッシュビルが延長戦でエンプティネッター(空のゴールにシュート)を決めていたら、ワイルドは勝ち点を剥奪されていた可能性4に気づいていませんでした。
その中にはフルーリーも含まれており、彼は最後に延長戦で追加アタッカーとして選ばれたのがいつだったか、思い出せないと語っています。
「(でも、)これだけは覚えているよ」とフルーリーは言いました5。「(あの試合は、)とても素晴らしい気分だったね。(最高の気分で)今回の試合も終えることができたよ」。
アタッカーになったフルーリーがゴールを決めていたら、
アリーナ中、蜂の巣をつついたような騒ぎになっていたと思うにゃ。
アイスホッケー延長戦ではなかなか見られない光景だけに、
その日、生で観たファンは幸せ者だ。
得点経過
レギュレーションの60分間、3つのピリオドそれぞれで、両チームは得点しています。
第3ピリオド・12分28秒、ニュートラルゾーンでアンソニー・ボーヴィリエからのブレイクアウトパス(守りから攻撃へ転じるパス)を奪ったライアン・ハートマン(右ウィング、26歳)が6、アシストなしの(バックハンドによる)ブレイクアウェイ・ゴール(相手プレーヤーをかわし、ゴールキーパーと1対1の状態でのゴール)を決め、ワイルドに3-2のリードをもたらしました。
残り2分47秒、ミネソタのジョエル・エリクソン・エク(センター、27歳)がフッキング(スティックでひっかけるようにして相手の動きを妨害する反則)をコールされ、オライリーの今シーズン24点目で3-3の同点となっています。
乱闘あり!
第1ピリオド、(乱闘が)2試合ありました。
ミネソタのマーカス・フォリーニョとナッシュビルのマイケル・マッカロンは試合開始2分57秒にグローブを外しています。ザ・ワイルドのメイソン・ショーとプレデターズのフォワード、キーファー・シャーウッド(左ウィング、28歳)は、7分も経たないうちに殴り合いました。
ミネソタが先制点を決めたのは、フォリーニョとマッカロンが乱闘によるメジャー・ペナルティでペナルティボックスに入ってから(5分間退場の重罰)、わずか19秒後のことです。
第1ピリオド・3分16秒、ヨナス・ブロディン(ディフェンス、30歳)がネット前のスクラムからこぼれ出たリバウンドを拾い、(左サークル下から)今季7点目のゴールをネットに決めました。
「これはセントラル・ディビジョン(に所属するチーム同士)の試合だ。僕らはこんな奴らと乱闘するのは好きじゃない。前回の試合からの嫌な流れが少し残っているのかもね」とフォリーニョは、2月29日、ナッシュビル戦でワイルドが1-6で敗れたときのことを思い出しながら語っています。
「我々はまだこの状況(プレーオフ出場権争い)から抜け出せていない。ファンのみんなには、我々がこういう状況にいる気持ちを知ってもらいたいな」。
どちらも意地と意地のぶつかり合い、同じディビジョンのライバルだし、
最近、大差で負けているミネソタとしては、倍返しだ!の気分だったろうにゃ。
各チーム、これからさらに一戦必勝態勢に入るから、ますます目が離せなくなる!
両チーム、点の取り合い!
第1ピリオド開始から19分、ナッシュビルは同点に追いつきました。シャーウッドはゴールネット裏でカプリゾフからパックを奪うと、そこからマーク・ヤンコウスキー(センター、29歳)にパスを出し、ヤンコウスキーがワンタイムシュートでフルーリーを突破し今季3点目を挙げています。
第2ピリオドにも、両チームは再びゴールを奪い合いました。3分36秒、ヤンコウスキーのパスがワイルドの選手(トミー・ノバク〈センター、26歳〉)のスケートに当たって跳ね返り、ナッシュビルのルーク・エヴァンジェリスタ(右ウィング、22歳。3試合連続ゴール)はそれを拾い、フルーリーをかわしてシュートを放ち、2-1とリードを奪いました。
第2ピリオド18分42秒、サロスが3回のパッドセーブを成功させた後、ミネソタのキリル・カプリゾフ(左ウィング、26歳)がリバウンドを前線で押し込んだパワープレーゴールで、2-2の同点に追いついています(今季31ゴール目)。
日曜日、ワイルドはエクセル・エナジー・センターでの1,000試合目を迎えました。アリーナは2000年にオープンしています。
【付記】
プレデターズ監督、アンドリュー・ブルネットの談話
「楽しい試合だったね。試合内容はとても気に入っているものだ。もう少し良くなってもいいと思ったけど、素晴らしい試合だった。面白かったと思うよ。ミネソタは本当に一生懸命プレーしていたね。一進一退の攻防で、それはホッケーの試合に望むすべてだった。
参加できて、本当に楽しかったよ。追加点があればよかったと思うが、1点を失ってから得点することができたということから、我々のグループの回復力が今年の成功の柱を築いているんじゃないかな」。
注:延長戦において、ゴールキーパー無しのチームがゴールを決めた試合として、最近で言えば、2017年10月28日のロサンゼルス・キングス対ボストン・ブルーインズがあります。
…ワイルドは今シーズン9回目の第3ピリオド逆転勝利を収めました。これを上回るのは、デトロイト・レッドウィングス(11)、エドモントン・オイラーズ(10)、ダラス・スターズ(10)だけです。
次の試合
プレデターズ:水曜日の夜、アウェイでウィニペグと闘います。
ワイルド:火曜日の夜、ホスト・ゲームでアリゾナを迎え撃ちます。
まとめ
シーズン途中に監督交代があったにもかかわらず、ミネソタはかなり頑張っていると思います。とはいえ、ワイルドカード争いで、ウェスタン・カンファレンス2位(プレーオフ出場圏内)のベガス・ゴールデンナイツとの勝ち点差は6。やや厳しい数字かもしれません。
ベガスがこれ以上大崩れすると思えませんし、ワイルドカード争いのウェスタン・カンファレンス首位が、同じディビジョンの絶好調ナッシュビルとなれば、一気に勝ち点差を縮められると思えません。今回の「奇策成功」のような奇跡が起これば、話は別ですが。
毎試合、トーナメントのような気持ちで、各チームが闘う時期に入ってきました。そのプレッシャーに打ち勝ち、プレーオフの切符を掴むのはどのチームか。ナッシュビルのように、突如覚醒するチームもありますから、まだまだ分かりません!
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- 試合終了後、次のように語っている。「我々には勝ち点が必要なんだ。勝てたのは大きかったね。最高だったとも最悪だったとも思わないが、多くの選手がステップアップして懸命にプレーした。
ナッシュビルとは対戦するのが難しく、強くてフィジカルがあり、フォアチェックが非常に難しい。だから、勝ち点を獲得できたことは非常に大きなことなのさ」。
↩︎ - 試合後の談話で、オーバータイムでの「ギャンブル」について、次のように語っている。
「我々は勝ち点を取ることについて、組織的に動いていたように感じているし、選手たちは何が起こっているのかを理解していた。
今、チームの4選手を氷上に立たせた時こそ、ゴールを決めて勝ち点2を獲得する最高のチャンスだと信じていたし、だからこそ、こうしていられるんだ」。
「いつもやっていることではないが、我々の立場としてはアグレッシブにプレーしたいし、勝ち点2を取りたいし、戦い続けたい。我々は自分たちのグループを信じ、有意義な試合をするために戦い続け、そして、その結果がどうなるかは、その時の成り行きに任せればいい。
だから、我々が置かれている状況で、勝ち点1、あるいは0、それは我々にとって何の役にも立たない。勝ち点2を獲らなければいけない」。
↩︎ - ライアン・オライリーは、以下のようにも(たくさん)話している。「僕はただ高い位置(よりゴールに近い位置)を目指してプレーして、相手を引き連れていくような感じで、相手ゴール前の危険なゾーンに入り込もうとしていたんだ。
だけど、(ディフェンスマンが)出てくるのを見て、もしここを突破できれば、ゴールするチャンスが来ると思ったんだ。それで、相手ディフェンスを避けようとしたら、幸運なことに得点できたのさ」。
「僕らはすぐに反撃した。良いプレーをしていたし、良いチャンスもあった。フルーリーは、ネットにスペースができた時でも、信じられないようなセーブを見せた。サロスも僕らにとって大活躍してくれたと思うよ。
みんなの言う通り、一進一退の攻防だったね。僕らにとってチャンスだった。勝ち点2を取れなかったのは残念だ」。
↩︎ - 本来延長戦は3対3で行うルールだから、ルール違反とみなされ、勝ち点0になる、という意味か。
ちなみに、延長戦でリンク上にいる選手1人あるいは2人がペナルティボックス行きの場合、一方のチームを増員し、4対3あるいは5対3にする場合はある。
↩︎ - ワイルドカード枠の獲得争いについて、「ただ諦めて辞めてしまうわけはないよね。僕たちにもプライドはあるので、良い成績を残して戦い続けたいと思っているよ」。
↩︎ - 試合後、延長戦のゴールについて次のように語っている。「僕らの今の状況では本当に勝ち点2が必要だったけど、(延長戦で)素晴らしいパワープレーができた。あの4人を止めるのは難しい。僕はあの(延長戦でのミネソタの)プレーがとても気に入っているよ」。 ↩︎