USAホッケーU-18、NHLドラフトへの影響はかなり大きい!

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はじめに

 2023年のNHLドラフトも無事終了。全体的な印象として、(シーズンは下位に低迷していたものの)指名順上位のチームがかなりいい仕事をしたのではないか、でした。愛するフィラデルフィア・フライヤーズの指名も高評価で、これは公式サイト等で取り上げられるかもしれません。

 さて、今回はUSAホッケーU-18とドラフトの関係についてです。米国は独特の育成プログラム=NTDPを有しており、次から次へといい若手選手を輩出しているのですが、今回のドラフトでも、同プログラムから多くの選手が指名されました。

 年齢的に考えて、記事に出てくる選手達がすぐトップチームで活躍すると思えません。しかし、その名前を今から覚えておくと、数年後、周囲に「アイスホッケー通」を自慢できるかもしれませんよ。

讃岐猫
讃岐猫

今季、U-18の躍進が、いつも以上に華々しかったみたいだにゃ。

他の北米スポーツ同様、大学勢も強いのだが、

それを上回るプレーを見せたのだから驚きだ。

引用元:NHL.com「USA Hockey NTDP continues trend with big impact on 2023 NHL Draft」。

ドラフトで、U-18が大暴れ⁉︎

 2023年のUpper Deck NHLドラフトにおいて、米国ホッケー・ナショナルチーム育成プログラム・アンダー18チームが、1巡目指名で「ほんの少し星条旗の魔法」を散りばめました。

 右打のセンター、ウィリアム・スミス(6フィート、180ポンド)がサンノゼ・シャークスに1巡目・全体4位で指名され、NTDP U-18の4選手中、最初に指名されたことから始まったのです。

NTDP=詳細については、こちらの記事を参照のこと→「6月末まで待てない!NHLドラフト上位指名されるのは彼らだ!」

 1巡目指名には、スミスの他に右ウィングのライアン・レナード(8位・ワシントン・キャピタルズ)、センターのオリバー・ムーア(19位・シカゴ・ブラックホークス)、右ウィングのガブリエル・ペロー(23位・ニューヨーク・レンジャーズ)が加わりました。

 ペロー、スミス、レナードはトップラインでプレーし、来季はそれぞれボストン大学(愛称はイーグルス、ホッケー・イースト・カンファレンス所属、NCAA全国選手権5回優勝)に、ムーアはミネソタ大学(愛称はゴールデンゴーファーズ、ビッグテン・カンファレンス所属、NCAA全国選手権5回優勝)にそれぞれ進学します。

 「リンクの外では、みんな尊敬し合っていたよ…みんなで遊んだりもしたし、それが氷上でも役立ったんだ」とスミスは語っています。「試合に出たとき、お互いに信頼し合っていたからこそ、それが勝利につながった」。

U-18の躍進は数年前から

 同プログラムのメンバーがトップ5に1人以上選ばれたのは5年連続で、NHLドラフト史上最長記録となりました。

 このプログラムでは、7巡目指名までで13人のプレイヤーが選ばれています。

 USAホッケーのホッケー運営部門の副責任者、ジョン・バンビーズブルックは、「これは、プログラムと、そこで誰もが行っている仕事の証だと思う」と述べました。

 「(USAホッケーの副事務局長)スコット・モナハンは私たちのために素晴らしいプログラムを運営しており、(USAホッケーのスポーツ科学部長)ブライアン・ガリバンは現在、氷上だけでなくリンク外でも発展を助けてくれています。

 米国生まれの選手への献身的仕事は過去最高だと思います」。

 「私たちは成長を目の当たりにしているし、このようなチームを運営していると、本当に優れたホッケー選手たちに恵まれるんだ。

 私たちはハードルを高く設定しており、今の課題はそれを維持することだと思いますが、非常に優れたアスリートを獲得しており、それを非常に誇りに思っています」。

讃岐猫
讃岐猫

なかなかアイスホッケーが10代に根付かない日本から見たら、

このプログラムは羨ましい限りだにゃ。

指名選手達、まずはボストンへ

 2019年のNHLドラフトの1巡目では、トップ15に入った7人を含む過去最多の8人のNTDP選手が指名されました。2022年のNHLドラフトでは、1巡目で6人、全体で14人のNTDPフォワードが指名されています。

 2023年のドラフトで選ばれた今年のチームから、右ウィングのレナードと左ウィングのペロー、中心にスミスを置いたプログラムのトップラインを含め、2023-24シーズン、ボストン大学に入学する5人の選手がいます。

 「僕らは皆、(トップラインとして)それそれ異なる何かをもたらし合っていると思ったよ」とペローは言いました。

 「ウィルはおそらく今回のドラフトで最も熟練した選手だと思うし、ライアンほど多くのものをもたらしてくれる選手は他にいないので、彼らとプレーのは間違いなくかなり簡単だったさ」。

来年は何が起こるか見てみよう」。

 スミス、ペロー、レナードに加えて、ディフェンスのドリュー・フォーテスキュー(レンジャーズ、全体90位)とアラム・ミネティアン(ダラス・スターズ、全体125位)、フォワードのウィリアム・ヴォートがホッケー・イーストのボストン大学に向かう他の選手です。

ホッケー・イースト=1984年設立、正式名称はホッケー・イースト・アソシエーション。

 ニューイングランド地域(米国北東部のコネチカット州、メイン州、マサチューセッツ州、ニューハンプシャー州、ロードアイランド州、バーモント州の6州で構成される地域)で運営されている大学のアイスホッケー・カンファレンス。NCAAのディビジョンIに参加。

大学スポーツとの協力関係

 「(ボストン・カレッジ・コーチの)グレッグ・ブラウンがあそこで何をしたか分からないよ…彼は大きなかぎ針でも使っているんじゃないか」とバンビーズブルックは冗談っぽく言いました。

グレッグ・ブラウン=米国、コネチカット州ハートフォード出身、55歳。現役時のポジションはディフェンス。1986年のNHLドラフトで全体26位指名を受け、バッファロー・セイバーズに加入。

 2022年5月、ボストン大学男子アイスホッケー部の監督に就任。ボストンではアシスタントコーチ歴が長く(14年間)、ヘッドコーチは今回が初。

 「彼らは素晴らしいプログラムを持っていて、私たちのグループに対し、本当に献身的で集中して仕事をしてくれていると思うね。

 この3人のラインは明らかにトップラインであり、今年の夏に開催されるUSAホッケー・ワールド・ジュニア・サマー・ショーケース(8月)で再び一緒にプレイする姿を見ることになるだろう」。

USAホッケー・ワールド・ジュニア・サマー・ショーケース=毎年夏に開催され、IIHF 世界ジュニア選手権(2023年12月26日~2024年1月5日まで開催)の代表チーム入りを目指すアスリートの評価の場である。フィンランドとスウェーデンのチームも参加。

 8つの試合が組まれ、USA代表選手はこのイベントで2つのチームに分かれて、フィンランドとスウェーデンのチームと対戦。

 「ゲームにおける化学反応と結束は非常に大きな要素だ。ボストン・カレッジについては非常に珍しいパターンが、彼らは一緒にプレイしたいと思っており、幸いなことに、ボストンカレッジは賢明にプログラムに投資してくれた」。

讃岐猫
讃岐猫

ボストン大学は、ここ数年、

リーグ戦であまり上位に食い込んでないんだにゃ。

彼らが来たことにより、大きく躍進するかどうか。

今年のU-18はひと味違います!

 今年のプログラムは、様々な面で記録的なパフォーマンスを達成しています。

 NTDP(50-13-0)は、NCAA(全米大学体育協会)大会での勝利(16-5-1)とディビジョンIプログラム(NCAAの最高レベルに位置する大学スポーツのカテゴリーのひとつ)での勝利(15-3-1)の記録を樹立しました。

NCAA大会での勝利=NTDPは、毎年、NCAAのチーム(U-18)及びジュニア・アイスホッケー・リーグの一つ、USHL(United States Hockey League)のチーム(U-18、U-17)と対戦する。その他に3つの国際トーナメントに参加し、時折親善試合も行う。

 2023年のIIHF世界U-18選手権では、優勝決定戦で米国はスウェーデンに延長戦の末3-2で勝利し、2017年以来、トーナメント史上11回目の金メダルを獲得しました。2022年、U-18世界選手権の金メダルをかけた試合で、米国はスウェーデンに6-4で敗れています。

 米国は今回圧倒的な強さを見せ、カナダの大会最多ゴール記録(2001年の51ゴール)に並ぶと同時に、最多得失点差(51-10)の基準を打ち立てました。

 2023年のドラフトでは、NTDPのゴールキーパー、トレイ・オーガスティン(デトロイト・レッドウィングス、全体41位)とカーソン・マッサー(アリゾナ・コヨーテズ、全体166位)がそれぞれ指名されています。

昨シーズンのコーチの話

 昨シーズン、NTDP U-18のコーチを務めたダン・ミューズは「このグループの一員であること、そして私たちが成し遂げられたことを本当に誇りに思う」と語りました。

 「このグループの選手たちは、彼らが到着したときよりも良い状態で去っていっており、そしてそれこそが、このような場所において、2年間のプロセスを経て成し遂げたいことなのだ」。

 「多くの素晴らしいグループ、多くの素晴らしい選手がやって来ましたが、スタンダードを構築し続けようと思ってやっている。日々のやり方を積み重ねていこう。それのできる選手グループが必要だし、彼らはそれを作ってきたと思う」。

まとめ

 大学生と試合をしても、全く見劣りしないとなれば、何人かはNHLで即戦力として使えそうです。下部リーグだと、間違いなく主力級でしょう。しかし、その道より、彼らは更なる難関・NCAAへのチャレンジを選びました。しっかり体力と経験を養っていきたいんだと思います。

 NHLの凄いところは、そういう選手の意思を尊重し、すぐにチームに囲い込まず、伸び伸びとプレーさせる点です。もちろん、大学卒業前にチームへ呼び寄せる場合もありますが、可能性の芽を摘むことはまずありません。この辺のホッケー文化、日本も見習わねばなりません。

讃岐猫
讃岐猫

ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!

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