はじめに
ゴールデンナイツに新加入したミッチ・マーナーの存在が、チームのライン構成やパワープレーにどんな影響を与えるのか注目が集まっています。ジャック・アイゼルやマーク・ストーンとの共演はもちろん、トマシュ・ハートルやパーヴェル・ドロフェーエフとの組み合わせも有力候補。
開幕に向けて、ブルース・キャシディ監督がどんな最適解を選ぶのか、その一手一手がシーズンを大きく左右しそうです。
参照記事:The Athletic「Golden Knights training camp: Marner’s linemates, Eichel extension among 5 big questions」
ゴールデンナイツの新シーズンが始動✨
ベガス・ゴールデンナイツが最後に試合をしたのは126日前。プレーオフ2回戦で完封負けを喫したあの悔しい試合1から、オフシーズンの間に多くの選手の移籍や新加入があり、チームは大きく変わりました💦
オフシーズンでは主力の移籍や新戦力の加入があり、新しい顔ぶれで迎える2025シーズンが始まります。木曜日にはトレーニングキャンプが開幕し、チームは(創設以来)9シーズン中8度目のプレーオフ進出と5度目のディビジョン優勝を目指します🏒
先週は新人選手たちがシティ・ナショナル・アリーナで氷上練習を行い、デンバーでの新人トーナメント2では2勝0敗と好成績。今週からはベテラン陣も合流し、チーム全体でシーズン準備が本格化します。
新戦力マーナーと守備陣の変化👀
今オフに8年総額9,600万ドル(約141億円)の契約を結んで加入したスターウィンガー、ミッチ・マーナー(トロント・メープルリーフスから移籍)のプレーを初めて目にすることになるでしょう✨一方で守備陣はアレックス・ピエトランジェロがけがのためホッケーから離れることになり、久々に彼不在の布陣3となります。
調整期間は短く、プレシーズン初戦は日曜日にサンノゼで行われ、それまでにチームが氷上に立つ機会はわずかです。10月8日、レギュラーシーズン開幕のロサンゼルス戦もすぐそこに迫っており、短期間で多くの課題をクリアする必要があります💨
ここからは、ゴールデンナイツの2025年トレーニングキャンプにおける最大の疑問点を紹介します。
マーナーは誰と組む?ライン構成を予想🔍
7月に加入したマーナーの存在で、ベガスの攻撃陣はさらに厚みを増しました💪そのため、ブルース・キャシディ監督には、フォワード陣の組み合わせをどうするか、多くの選択肢があります。
過去にはバランス重視のアプローチを取ることはありました。例えば2023年のプレーオフ4では、ジャック・アイゼル、マーク・ストーン、ウィリアム・カールソンを別々のラインに配置して、全体の層を厚くしたこともあります。一方で直近のポストシーズンでは、3人を同じラインに並べてトップラインを強化する戦略も取りました。
キャシディ監督はアイゼルとマーナーをいつか一緒に起用すると示唆していますが、具体的なタイミングや期間はまだ未定です。NHLでも屈指の攻撃力を誇る2人を組ませる“スーパーライン”を作るのか、それぞれが別のラインを率いる形にするのか、注目のポイントです✨
想定ライン例👥
もしアイゼルとマーナーを同じトップラインに配置するなら、こんな組み合わせが考えられます。
※左から順に左ウィング、センター、右ウィング。
トップライン
パーヴェル・ドロフェーエフ、ジャック・アイゼル、ミッチ・マーナー
第2ライン
イワン・バルバシェフ、トマシュ・ハートル、マーク・ストーン
第3ライン
ブランドン・サード、ウィリアム・カールソン、ライリー・スミス
第4ライン
ブレット・ハウデン、コルトン・シッソンズ、キーガン・コレスアー
世界屈指のプレーメイカー2人(アイゼルとマーナー)とチーム随一のシューターであるドロフェーエフが同じラインに揃う構想は魅力的です。ドロフェーエフは昨季チーム最多の35ゴールを記録。単独で攻撃を引っ張るタイプではありませんが、守備の隙間を見つける嗅覚と素早いシュートリリースを持っています。
アイゼルとマーナーが理想的なパートナーとなる一方で、第2・第3ラインの得点力をどう確保するかも課題です💡
キャシディは昨季最も多く使ったトップライン(アイゼル、ストーン、バルバシェフ)に戻す可能性もあります。この組み合わせは462分間のアイスタイムで相手を27対19と上回り、チームで最も得点を挙げたラインでした⚡
もしこの布陣を採用するなら、マーナーとドロフェーエフは第2ラインでハートルと組むことになります。ハートルとドロフェーエフは昨季良いケミストリーを見せており、そこにマーナーが加わればさらに得点力が増すでしょう。
また、キャシディにはブランドン・サードという選択肢もあります。かつてほどの力はないものの、今もスピードと攻撃センスを持っており、上位ラインの攻撃的選手と組ませることが可能です。サードを上位2ラインに入れれば、リーグ屈指の強力な第3ラインを作れる可能性があります🏒
昨季最も多く使ったトップラインに戻した場合、例として以下のような布陣が考えられます。
トップライン
イワン・バルバシェフ、ジャック・アイゼル、マーク・ストーン
第2ライン
ブランドン・サード、トマシュ・ハートル、ミッチ・マーナー
第3ライン
パーヴェル・ドロフェーエフ、ウィリアム・カールソン、ライリー・スミス
第4ライン
ブレット・ハウデン、コルトン・シッソンズ、キーガン・コレスアー
組み合わせのバリエーションは無限にあり、けがの影響もあってシーズン中に多くのパターンを目にすることになるでしょう。しかし、シーズン開幕時にキャシディが選ぶラインナップは、彼のチーム作りの哲学や理想的な布陣の考え方を示すものとなります✨
アイゼルの契約延長はいつ?💰
契約最終年に入るアイゼルは、そろそろ延長契約が必要です。サインは早めに済むと見られており、マーナーがチーム史上最高額となった立場も、アイゼルが延長すればすぐに塗り替えられます。アイゼル自身はベガスに残りたいと考えており、ゴールデンナイツもフランチャイズの中心選手を手放したくありません。
唯一の問題は、最終的な契約金額がいくらになるのかという点です。昨年9月にレオン・ドライサイトルがエドモントンと結んだ8年契約が市場をリセットし、年平均1,400万ドルはNHL史上最高額となりました。
果たしてアイゼルはその額を超えるのか?アイゼルも市場に出ればその額を超える可能性がありますが、ネバダ州の税制上の優位性5や勝てるチームでプレーできている充実感から、多少低めの額で合意する可能性も高いです。
現時点では、レギュラーシーズン開幕までに新契約がまとまらない方がむしろ驚きですが、契約交渉に絶対はなく、アイゼルのUFA(無制限フリーエージェント)化が迫っていることはゴールデンナイツにとって最大のオフアイスの話題です。延長が決まらない期間が長引けば長引くほど、注目度は高まります⚡
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トップディフェンスの組み合わせは?🛡️
過去5シーズンで、ピエトランジェロはレギュラーシーズン合計7,823分のアイスタイムに出場しました。これはチームで2番目に多い選手よりも約1,000分多い数字です。また、この間にチーム最多となる8,750回のシフトをこなし、そのほとんどが相手の最強ラインとのマッチアップにおけるトップディフェンスとしての出場でした。ピエトランジェロの不在は大きな穴です。
ベガスには依然として豊富な才能があり、代わりとなるのはシェイ・セオドアとノア・ハニフィン。2人はいずれも最近、2031-32シーズンまでの長期契約を結んでいます。
しかし、どちらもピエトランジェロが担ってきた役割を長期間務めた経験がほとんどなく、イーブンストレングス(氷上の両チームが同人数でプレーしている場合)での共通アイスタイムはわずか31分です。それもライン交代のタイミングによる偶然の産物に過ぎません。
キャシディ監督とディフェンスを専門とするアシスタントコーチのジョン・スティーブンス6は、2人を組ませてピエトランジェロの穴を埋めるのか、それとも別々に起用してこれまでの慣れたペアを維持するのか、難しい判断を迫られます。
セオドアはブレイデン・マクナブと組むのが最も快適です。2人は過去8年間のほとんどでペアを組み、そのスタイルは非常に相性が良い。ただし問題は、マクナブは1月で35歳となり、トップペアの長時間出場はほとんど経験がありません。
昨季の彼は素晴らしいプレーを見せましたが、この年齢で大幅にアイスタイムを増やすのは負担が大きいかもしれないのです。さらに、チームはこのオフにキャップ問題と新契約の必要性からニコラス・ヘイグをナッシュビル(・プレデターズ)へトレードし、トップペア経験者が限られる状況です。
彼は(主にピエトランジェロと組んで)トップペア経験を持つ唯一のディフェンダーでした。マクナブ、ザック・ホワイトクラウド、ケイダン・コルザック、ベン・ハットン、そして(ナッシュビルから)新加入のジェレミー・ローゾンのいずれかに、これまで以上の役割が求められるシーズンになりそうです💦
このゴールのように、セオドアが攻守両面で活躍してくれれば、ベガスとしては万々歳なんだけど。プレシーズンマッチ少ないからねぇ、彼中心のペアリングのテストができないのが難点。
トップパワープレーから外れるのは誰?⚡
ゴールデンナイツは昨季、リーグ2位となる成功率28.3%の強力なパワープレーを誇りました。そこにマーナーが加わることで、さらに得点力は増す期待度大です✨彼は2016-17シーズンのデビュー以降、ウィンガーとして5番目に多いパワープレーポイントを積み重ねてきた選手です。
しかし、昨季のトップユニット5人が全員残っているため、マーナーを入れるには誰かが外れる必要があります。その「誰か」を決めるのは簡単ではありません。アイゼルは外せません。ハートルはバンパーの位置7からチーム最多の14ゴールを挙げ、ドロフェーエフも13ゴールと続きます。ストーンはゴール裏からプレーを作る役割で確かな実績を持っています。
最も理にかなっているのは、セオドアの位置にマーナーを配置する案です。ベガスではあまり見られない5人全員フォワードのユニットですが、マーナーはトロント時代にその役割を経験済みで、ここでも十分に対応可能です💡
リスクはありますが、マーナー、アイゼル、ストーンはいずれも守備力に優れているため、そのリスクはある程度軽減できます。

パワープレーで5人フォワード並べるって、ある意味、ベガスにしかできない荒業だと思うにゃ。フォワードでありながら多少守備にも秀でているからといって、誰がディフェンス2枚に入るのかモメそう^^;。「オマエ、やれよ」って、新顔マーナーは渋々ディフェンスに回されるんだろうなぁ。ストーンは絶対入りそうにない、前線で踏ん張ってるわ、多分。
キャシディ監督はまた、2つのユニット間でバランスを取るため、これらの選手の一部をカールソンとともに第2ユニット8に移すという選択肢も考えられます。キャンプでの布陣は非常に注目されるポイントです👀
シュミットは控えゴーリーとしてやれるか?🧤
ゴーリーのアキラ・シュミットにとって、初年度は波乱のシーズンでした。ほとんどをAHLで過ごし、シルバー・ナイツ(ベガスの下部組織チーム)の守備の不安定さもあって苦戦。セーブ率.886はキャリア最低で、パートナーのカール・リンドボムの.912を大きく下回りました。
しかしシーズン終盤、NHLで限られた出場機会を得た際には良いプレーを披露。プレーオフではアディン・ヒルの控えとして起用され、今回のキャンプでは明確なNo.2として臨みます。
多くのゴーリーが言うように、AHLでは得点チャンスの予測が難しく、NHLのスキルフルな選手相手よりも難易度が高い9ことがあります。シュミットは特に身体能力よりもプレーの読みを重視するタイプなので、この影響は大きいです。
そのため、控えゴーリーとして十分に準備ができていることを示すため、キャンプとプレシーズンでの活躍が求められます。チームはヒルに負担をかけたくないため、第2ゴーリーとして信頼できる存在が優先課題です🏒
ベテランゴーリー10はリーグ全体でロースター削減に伴いウェーバーにかけられる可能性があるため、シュミットが自分の力を証明するのは今しかありません。
まとめと開幕への期待🎉
ベガス・ゴールデンナイツはオフシーズンの補強や布陣調整を経て、新シーズンに挑みます✨。マーナー加入による攻撃力向上やアイゼルとのライン構成、守備陣の課題、パワープレーの起用、控えゴーリーのシュミットの役割🏒など、注目ポイントが多く、開幕戦に向けてチームがどのような戦略を見せるかが楽しみです💫。

ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- ベガスは、2025年5月14日に行われたプレーオフ2回戦第5戦でエドモントン・オイラーズに1-0で敗れ、シリーズを1勝4敗で終えた。この試合は、延長戦でカスパリ・カパネンがゴール前の混戦から決勝点を挙げたことにより決着がついた。
この敗北により、ゴールデンナイツは2回戦で敗退し、2023-24のスタンレーカップ制覇からわずか2年での早期敗退となった。
チームはキャプテンのマーク・ストーンやフォワードのブランドン・サードを欠いており、攻撃陣の不調が続いた。 特に第4戦では3-0の完封負けを喫し、攻撃力不足が浮き彫りとなっていた。
第2戦では、レオン・ドライサイドルの延長戦ゴールが決勝点となり、試合後には審判の判定に対する不満の声が上っている。
↩︎ - ベガス・ゴールデンナイツの新人選手たちは、2025年9月12日から14日にかけてデンバー郊外のサウス・サバーバン・スポーツ・コンプレックスで開催された「2025 NHL ルーキー・ショーケース」に参加し、2戦全勝を収めている。初戦ではユタ・マンモスに8-1で圧勝し、続くコロラド・アバランチ戦では3-2で競り勝った。
この大会では、マテオ・ノーベルト、マズデン・レスリー、マテュー・カタフォード、ウチャズがそれぞれ3ポイント以上を記録し、注目の若手選手たちが実力を証明。特にウチャズは3ゴールを挙げ、攻撃陣の中心として活躍した。
↩︎ - ピエトランジェロは、2025年6月30日にベガス・ゴールデンナイツから、深刻な股関節の怪我を理由にホッケーから離れることを発表。チームのゼネラルマネージャー、ケリー・マクリモンによれば、ピエトランジェロは「両側の大腿骨再建手術」を受ける必要があり、その成功には保証がないとのこと。
この怪我は、2024-25シーズンを通じて悪化し、ピエトランジェロはシーズンの大半を痛みとともにプレー。特に、2月の「4 Nations Face-Off」では、カナダ代表から離脱する事態となり、健康状態が懸念されていた。
ピエトランジェロは、2019年にセントルイス・ブルース、2023年にゴールデンナイツでスタンレーカップを制覇した経験を持つベテランディフェンスであり、これまでに637ポイントを記録しています。現在35歳の彼は、長期的な健康と家族の生活の質を最優先する決断を下した。
↩︎ - 例えば、アイゼルはイヴァン・バルバシェフとジョナサン・マーシャソーと共にファーストラインを組み、バルバシェフのフィジカルなプレーとマーシャソーの得点力を活かした。一方、ストーンとカールソンはセカンドラインでトマシュ・ハートルと共にプレーし、攻守のバランスを保った。
このようなライン構成により、ゴールデンナイツは攻撃力と守備力の両方を強化し、プレーオフを勝ち抜く力を養ったのである。
↩︎ - ネバダ州は、個人所得税を課さない数少ない州の一つであり、プロスポーツ選手にとっては特に魅力的な税制上の優位性を提供している。この税制の特徴は、選手がネバダ州に居住している場合、給与や契約金などの所得に対して州の所得税が一切課されない点である。
例えば、ネバダ州に拠点を置く選手は、他の州で試合を行った際にその州の「ジョック税(jock tax)」の対象となることがあるが、ネバダ州自体はそのような課税を行っていない。
この税制上の優位性は、特に高額な契約を結ぶ選手にとって大きな経済的メリットとなる。例えば、ネバダ州に居住する選手は、他の州に比べて実質的な手取り額が増加し、契約金の価値が高まる可能性がある。
また、ネバダ州は不動産税や相続税も低く、退職後の生活にも有利な税制環境を提供。これらの要素が組み合わさることで、選手がネバダ州に居住する選択は、長期的な財務的利益をもたらすと考えられる。
このような税制上の優位性は、ネバダ州に拠点を置くプロスポーツチームにとっても、選手の獲得や維持において競争力を高める要因となる。特に、長期契約を結ぶ際には、税制面でのメリットが重要な交渉材料となることが多い。
↩︎ - John Stevensは、カナダ・ニューブランズウィック州キャンベルトン出身。1966年5月4日生まれ。1984年のNHLドラフトでフィラデルフィア・フライヤーズから3巡目全体47位で指名された。ディフェンスマンとして、フィラデルフィア・フライヤーズやハートフォード・ホエーラーズでプレーし、1999年に眼の負傷により現役を引退。
引退後はコーチングキャリアをスタートさせ、フィラデルフィア・ファントムズ(AHL)でアシスタントコーチを経て、2000年から2006年までヘッドコーチを務めた。その後、フィラデルフィア・フライヤーズのアシスタントコーチを経て、2006年にヘッドコーチに就任。
2010年から2019年までロサンゼルス・キングスでアシスタントコーチを務め、2017年にはヘッドコーチに昇格したが、2018年に解任。その後、ダラス・スターズでアシスタントコーチを務め、2022年からベガス・ゴールデンナイツに加入。
コーチとしては、ペナルティキルや守備戦術に定評があり、2023年にはゴールデンナイツのペナルティキルがファイナルで13回の機会を無失点に抑えるなど、チームの守備力向上に貢献した。
また、スティーヴンスはAHLの名誉の殿堂に名を連ねるなど、選手・コーチとしてのキャリアを通じて数多くのタイトルを獲得しており、2023年にはゴールデンナイツのコーチングスタッフとしてスタンレーカップを制覇。
↩︎ - 「バンパー・スポット(the bumper spot)」とは、パワープレイ(相手チームがペナルティで人数が少ない状況)の際にフォワードが位置する典型的なポジションの一つで、相手ゴールの両サイドにあるフェイスオフサークルの上部付近に位置する。
この位置にいる選手は、ゴール前のプレイヤーやポイントのディフェンスマンとの間でパスを受けたり、ショットチャンスを狙ったりする役割を担います。
バンパー・スポットの利点は、相手ディフェンスの注意を引きつけつつ、素早くパスやシュートに転じることができる点。ここに配置された選手は、ゴール前でスクリーンを作ったり、リバウンドを狙ったり、ライン上の味方にパスを供給したりすることで、得点機会を最大化できる。
↩︎ - 「第1ユニット(first unit)」および「第2ユニット(second unit)」とは、パワープレイ時に用いられる攻撃陣の編成を指す。第1ユニットは通常、チーム内で最も得点力や経験のある選手で構成され、ポイント(ブルーライン付近)やバンパー・スポットに配置される中心的な攻撃陣のこと。
第2ユニットは、第1ユニットほど得点力は高くないものの、エネルギーやスピードを生かした攻撃を担当。第2ユニットには、通常、若手選手や役割型の選手が入り、パス回しやスペース作りを重視しつつ、相手の守備陣の対応力を試す役割を担う。
パワープレイ中は、第1ユニットでプレッシャーをかけて得点を狙い、第2ユニットで相手を攪乱したり、セットプレーの間にフレッシュな攻撃を仕掛けたりすることで、チーム全体の効率を高める。
↩︎ - AHLでは、攻撃/守備両方の動きがNHLほど整ってない試合が多いため、シュートや得点の場面が予測しづらいことがよく指摘される。選手たちがパックの動きを遅らせることなく判断とパス/ドリブルを速く行うケースが増えており、ゴール前に入るランシング(rushes)や反転パス、スクランブル(混戦状態)といった「あいまいな状況」が頻発すると言われる。
このような展開では、ゴールキーパーは「どのパスが来るか」「どの撃ち場所からのシュートになるか」を即座に読まなければならず、ポジショニングや反応だけで守るだけでは十分でないことが多い、という意味で「play-reading(プレー読み)」がより重要になる。
たとえば相手のフォワードがどのタイミングでシュートモーションに入るか、ディフェンスがどこまでカバーを切るか、反転してパックを持ってどこに滑り込むか等、予測要素が非常に多く、映像分析や経験が少ないと読みが遅れがちになる。
また、AHLからNHLに上がる際には、シュートの“種類”や“質”も変わってくる。NHLの選手は射撃技術、スナップショット/リストショット/ワンタイマーなど多様で、しかもパックの持ち運びやフェイク、角度からのシュートを使い分ける能力がより高い。
そのため、AHLで読めていた型でも、NHLではその裏をかかれることが増える。ゴーリーはこれらの違いに対応する必要が出てくる。
その上で、AHLでは守備の構造が完全でないこともしばしばあり、ディフェンスのカバレッジやシステムが崩れやすいため、中-距離や予期せぬ角度からのシュートが急に生まれることが多い。これが「シュートチャンスが“予測できない”/“読みにくい”」という感覚を強めていく。
↩︎ - まずウェーバーとは、NHLのチームがある選手をAHLなどへ降格(あるいは契約の解消や移籍)させようとする際、他チームにその選手を獲得する機会を与えるプロセス。
具体的には、選手が一定の経験・出場試合数を満たしていたり、年数が経っていたりすると、「ウェーバー対象選手(waiver-eligible)」となり、NHLからAHLなどに送られる際にウェーバーにかけられる必要がある。
もしその選手がウェーバー中に他のチームからクレーム(claim)がつけば、その選手は新しいチームに移り、そのチームが元の契約をそのまま引き継ぐ。
ロースター削減とウェーバーの関係
NHLの各チームはプレシーズン(トレーニングキャンプ後)になると、公式シーズン開始前に許されるロースター(出場可能な選手数)を超える選手をキャンプに招く。シーズンが近づくにつれて、チームは選手を削ったりAHLへ送り込んだりして、「23人のアクティブロースター」に収める必要が出てくる。
その過程で、経験豊かな選手(特にゴールキーパーなど)が、ウェーバー対象であれば、降格のためにウェーバーにかけられる可能性がある、ということ。つまり、チームがベテランを抱えたままのコストやポジション競争を整理しようとするとき、「このゴールキーパーはAHLに送るけど、他チームに獲られてしまうリスクがある」状況が発生する。
なぜ「ベテランゴーリー」は特にそうなるのか
ゴールキーパーは通常、ポジション数が少ないこと、シーズンを通じてスタート/バックアップの2人構成が多いことなどから、他のポジションと比べて競争が厳しい。さらに、ベテランであれば、給与が高め、契約も安定しており、ロースター枠の重しとなりうる。
キャンプやプレシーズン中、またはシーズン始まりに近い時期には、チームはロースターを絞る必要性があるため、バックアップあるいはトライアウト的立場のベテランゴーリーが、他チームがその選手を欲しがるかどうか見極めつつ、ウェーバーにかける判断をされるのである。 ↩︎