コヨーテズGM、NHLトレード期限前の取引に「オープンに応じる」

NHLチーム紹介

はじめに 

 前回、トレードに関する各チームのシビアな対応について、記事にしてみました。功罪相半ばするサラリーキャップ制度に意外な抜け道があることで驚かされましたが、そのやり方があまりにもイレギュラー過ぎて(負傷者リスト利用によるサラリーキャップの調整)、選手本位じゃないなと感じました。

 さて、今回もトレードの話題。新アリーナ建築中のコヨーテズGMは、これまたユニークな考えを持っているようです。 「ユニーク」というか、もう割り切ってしまっているというか…。「どんどんウチの選手を持っていってください!」、そのあまりにもオープンな姿勢の裏側には何があるのでしょうか。

讃岐猫
讃岐猫

財政規模の小さいチームであるコヨーテズ。

でも、このGMはちっとも泣き言を言わないんだにゃ。

すごいタフな人だ。

引用元:NHL.com「Zizing ‘Em Up: Coyotes ‘open’ to deals ahead of NHL Trade Deadline」。

コヨーテズに関するトレードの話題

 NHL.comのスタッフライターであるマイク・ツァイスバーガーは、1999年から定期的にNHLを取材しています。シーズン中の毎週日曜日には、彼の広範なホッケーの人脈を使って、ノートコラム「Zizing’Em Up」を執筆しています。

 NHLのトレード期限である2023年3月3日まで33日間のショッピング・デーがあり、アリゾナ・コヨーテズはより忙しい売り手の一人になると予想されています。

「私たちのビジネスは開放されています」とゼネラル・マネージャーのビル・アームストロングはNHL.comに語りました。「あとは、どう展開するかだね。私たちはほぼどんな事にもオープンです」。

ビル・アームストロング=2020年9月、アリゾナ・コヨーテズのGMに就任。チーム史上10代目となる。オンタリオ州リッチモンド・ヒル出身、52歳。トレードやNHLドラフト戦略の上手さには定評がある。

 彼は、2019年、スタンレーカップ・チャンピオンに輝いたセントルイス・ブルースの育成面で貢献し、それを認められてコヨーテズに加入。

 ディフェンスのヤコブ・チクロン(24歳)は、スタンレーカップ・プレーオフ圏内から19ポイント離れたアリゾナ(16-28-6)から移籍する可能性のある第一の候補者の名前となっています。

 また、ディフェンスのシェイン・ゴスティスビヒア(29歳)やフォワードのニック・リッチー(左ウィング、27歳)、ニック・ビュグスタッド(センター、30歳)も関心を集めています。コヨーテズは木曜日、ゴスティスビヒアが上半身の怪我で4週間から6週間離脱すると発表しました。

GMビル・アームストロングとの一問一答

 移籍交渉が過熱する中、Zizing’Em Upとの質疑応答で、アームストロングは時間をかけてコヨーテズの状況に言及してくれました。

話題集中!チクロンの状況

問:まず、世間で大きな話題となっているチクロンの状況から見ていきましょう。さまざまな報道によると、提示額は最低でもドラフト一巡目の指名権二つと、それ以上ではないにしても、2024年から25年のシーズンまで契約している24歳のディフェンスマンの移籍・獲得が見込まれています。

 値段を明かす習慣はありませんが、高い値段というのは正確な情報でしょうか。

「私としては、チームに関係する選手を見ていれば、結構簡単に(値段を)思いつくものなんですよ。彼(チクロン)が(チームに)与え続けてくれるものは資産である、という事実に注目する必要があるんじゃないかな。

 彼はプレーオフに3回出場できるだろうし、契約最終年までに27歳になるよ。

 彼は非常に「消化の良いキャップ・ナンバー(チームの負担にならないサラリー)」を持っていて、安心して仕事ができます。そして彼は、ある程度のサイズ(6フィート2インチ=身長約1メートル88センチ、220ポンド=体重約100キロ)を有していて、スケート、得点力も加えることもできます。

 そして、(チーム内で)トップ4のディフェンスマンの1人であり、何分もプレーすることができる非常に優れた選手です。

選手達は行くべきチームに行けばいい

 選手全員にキャップ・ルームが開いているわけではありません。誰もがその資産を持っているわけではありません。誰もがそのタイプの選手を必要としているわけではありません。資産を持ち、彼のような選手を必要とする人にとっては、プレーオフに3回出場するための素晴らしい財産を手に入れることができるのです。

 そして、もしそれ(プレーオフ出場)を2つだけにすると考えるなら、資産を動かそう(トレード)としても全く構わないし、その後、あきらめたもの(3回目のプレーオフ出場)を取り戻そうとしても何ら不思議はありません。

 これから彼は働き盛りになるはずです。だから、私にとって、そういうタイプの選手は他の組織(チーム)に入っていけばいいのであって、優勝を目指して頑張る必要のあるチームであれば、良い取引なのです。

 …そのような将来性と500万ドル(日本円で約6億5千万円)以下の平均年間価値を持つ若いディフェンスマンは、魅力的な資産なのです」と述べています。

讃岐猫
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選手を「資産」と考えているのは、いいことなんだろうか、

悪いことなんだろうか。悩んじゃうにゃ。

他の選手の状況

問:ここ数週間で、彼(チクロン)や他の選手に興味を持った人はいますか?最近、あなたの電話はいつもより鳴っていますか?

 「今、プレーオフ進出が決まっているようなチームは、我々に対してだけでなく、他のチームにも選手の値段を聞いてきているんです。彼らは今、何にコストがかかるのか、誰が最もチームに適しているのか、順位をつけ、プレイヤーに声をかけ、『これを完成させるにはいくらかかりますか?』と言っている段階にあります。

 私たちのような(規模の小さい)チームの場合、(プレーオフに進出するチーム達の)比較対象から外れてしまうのです。去年はどんな奴がどんな値段で行ったかとかね、普通はそんなものさ。特別なプレーヤーがいれば、価格も決まっています」と述べました。

3人の売れそうな選手

問:チクロン以外にも、ゴスティスビヒア、リッチー、ビュグスタッドなど、多くのコヨーテに関する憶測が出ています。チクロンという名前以外の選手が関わっている市場をどう読んでいますか。

 「ニック・ビュグスタッドはセンターで活躍してくれました。彼のサイズ(6-6=身長約1メートル98センチ、209=体重約95キロ)と、スケートとパックを取る能力に非常に興味をそそられます。彼は信じられないようなチームマン(グラウンド内外で献身的に働く選手)だから、確かに注目を集めるでしょう。

 タフネスと得点力が少しでも必要なチームにとっては、『リッチー』、彼が働いてくれるだろう。『ゴースト(ゴスティスビヒアのこと)』、元気な時ならポイントを生み出すパワープレー要員、点を取れるライバル(ディフェンスマン)が必要なチームであれば、彼は素晴らしい「広告(アピール・ポイント)」を持っています。

 ですから、私たちには、トレード期限までに動かすことのできる、さまざまな資産があるのです」と述べました。

賢く使おう、キャップ・スペース

問:(コヨーテズには)キャップ・スペースもあり、1200万ドル程度と見積もっている報告もあります。

 多くのチームがキャップ・スペース上限に反対している中で、他のチームが処分したがってる将来性のある選手やピック(ドラフト指名権)を獲得できるトレードにおいて、スペースがどれだけ価値のある資産になると思いますか?

 「チームの助けになるかもしれない、あらゆる手段に目を向けています。ドラフト指名権のトレードをすることにより、今年、チームは指名権を手放さないようにしたとしても、他チームの選手を逆指名できる場合もあるから、うまくいくこともあるだろう。

 例えば、いくつか2026年分の指名権を手放すことになるので、今すぐにでも『収穫を得る(選手を獲得する)』ための余裕ができるのです。だから、たとえ数年先のことであっても、指名権と一緒に(新たな選手との)契約も引き受けることになるのです」。

チーム再建には時間かかるけど…。

問:最後に、このチーム再構築にはしばらく時間がかかる、という事実を秘密にしていません。ここまではどうなっていると思いますか?

 「私が2020年に雇われたとき、ドラフト指名権が事実上なかったことをみんな忘れています。だから、私たちが2年前にドラフトしたばかりの、ディフェンスマンのJ.J.モーザーのような子供(22歳。2020年NHLドラフト2巡目・60位)を見ると、すでに私たちのチームのラインナップに入っていて、貢献しているのを見ると、勇気づけられます。

 また、さまざまなレベルで発展し続けている他の将来有望な選手もいます。まだ先の話だが、正しい方向に進んでいるのは確かだ」と述べました。

まとめ

 このGMの話を読んでいると、毎年、チームがプレーオフに出るより、細々とでもいいから、チームが存続してくれればいい、といった印象を受けます。そのためには、ある程度育った選手は大事な「資産」であり、それは適切に「運用」していかなければならない、チーム存続のためならば…。それだけ、NHLのチームで居続けるのは大変なのです。

 このブログでも取り上げたように、コヨーテズは斬新なデザインのジャージを一流デザイナーに依頼したり、数年後には本拠地となる新たなアイス・アリーナがお目見えする予定です。ただ、それらに合わせて、チームをレベルアップさせようという考えがGMにないのが不思議です。果たして、そんなノンビリ・チームが覚醒する時が来るのでしょうか。

讃岐猫
讃岐猫

ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!

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