はじめに
最近、ネット・ニュースを見ていると、Jリーグ各チームの新ユニに関するニュースがアップされています。どれも「歴代最高にカッコイイ」「オシャレ!絶対買う!」という言葉ばかりが並んでいます。確かに年々洗練されてきているな、とは思いますが、こうも同じような反応ばかりだと、鼻白む思いもしてきます。
さて、アリゾナ・コヨーテズが、シーズン折り返し地点で新ユニフォーム(ジャージ)を発表しました。今や世界的なセレブ御用達ブランドRhudeとのコラボと聞いて、かなり驚きました。コヨーテズのユニは歴代斬新な色使いとファッションで人目を引いてきたのですが、行き着くところまで来たな、といった感じがします。
今シーズンは大学にあるマレット・アリーナ使用をはじめ、
コヨーテズの動きは活発だにゃ。
引用元:ESPN.com「Arizona Coyotes debut new ‘Desert Night’ jerseys」。
コヨーテズ、「Rhude」とのコラボ発表
アリゾナ・コヨーテズは、色とりどりのカチーナのロゴから、最近のリバース・レトロ・ジャージのテンプレートとして砂漠のシエナを使用するなど、大胆なファッション・ステートメントで知られています。
※カチーナ==ホピ族が信仰する、超自然的な精霊のような存在。アリゾナ州フラッグスタッフ郊外のサンフランシスコ・ピーク近くの聖なる山に住んでいると言われている。
※リバース・レトロ・ジャージ=本ブログで一度記事にしている→こちら。
※シエナ=黄褐色の土のこと。
彼らの勇気あるクチュール(オーダーメイドの仕立て)への最新の進出は、ロサンゼルスを拠点とするストリート・ウェア・ブランド「Rhude」の創設者兼クリエイティブ・ディレクターのルイージ・ビラセノールによって作成された特別仕様の「デザート・ナイト」ジャージです。
※Rhude=若干22歳のオーナー兼デザイナー、ルイージ・ビラセノールにより2013年にLAにて設立されたブランド。
ユース・カルチャーからのインスピレーションをもとに、ハードなクラッシュ加工やウォッシュ加工など、ロックやグランジ・テイストを強く押し出した、今までに無いストリートの感覚が落とし込まれたアイテムを展開。
ビラセノールの談話
1月18日(水曜日)、チームはジャージを一般公開しており、22日(日曜日)にマレット・アリーナで行われるベガス・ゴールデンナイツ戦で初めて着用します。
「デザインとスポーツの融合というコンセプトは、ますます成長し、大きなアイデアになっています」と、昨年10月、コヨーテズのクリエイティブ・ストラテジスト(戦略や方針を立案する専門家)兼グローバル・ファッション・デザイナーとして採用されたビラセノールは述べています。
「これは文化の火つけ役になるでしょう。私たちが絆を深めたことの一つは、スポーツに文化を取り入れることでした。私たちは皆、一つのエコ・システム(互いに独立した企業や事業、製品、サービスなどが相互に依存しあって一つのビジネス環境を構成する様子)の中にいるのであって、個別のエコ・システムの中にいるのではありません。
私にとっては、ストリート・カルチャーにホッケーを定着させるためのチームであることが重要なのです」。
コラボ・デザインについて
赤紫色のジャージの胸には砂色の筆記体で「アリゾナ」の文字が描かれています。ワード・マークの「I」の上にある星は、コヨーテが狩りをする砂漠の夜とアリゾナ州の州旗の両方を象徴しています。ジャージの裾と袖にカチーナ風のエッチングが施されています。
襟の内側に小さなヤモリが入っているが、これはコヨーテズのオリジナルである緑色のサードジャージにあったヤモリの肩当てに敬意を表したものです。
コヨーテズは砂色のサボテンを描いたパンツ、赤紫色のヘルメットと手袋を着用します。
伝統にヒントを得て、チームのキャプテンは半月型の「C」パッチを着用し、副キャプテンは2つのサボテンが抱き合って「A」を形作るパッチで識別されます。
※このデザインは、上記の引用元にアップされているので、そちらを参照のこと。
スポーツとファッション・ブランド
NHLのいくつかのチームは、ファッション・ブランドと提携して、特別な外観を持った用具を作り始めています。昨シーズン、トロント・メープルリーフスはジャスティン・ビーバーのデザイン・レーベルであるドリュー・ハウスと提携し、リバーシブル・ジャージを制作し着用しました。
※ジャスティン・ビーバーとドリュー・ハウス=https://gangstamarket.com/?pid=167549349
ビーバーは熱狂的なメープルリーフス・ファンとして知られる。
コヨーテズの最高ブランド責任者、アレックス・メルエロ・ジュニアは「現在、ファッション界にスポーツが流入しており、その最前線に立ち、限界を押し広げたかったのです」と語りました。
スイスを拠点とするBallyのクリエイティブ・ディレクターでもあるビラセノールにとって、これは初めてのスポーツとのクロスオーバーではありません。
※Bally=1851年、カール・フランツ・バリーと弟のフリッツによって、ゾロトゥルン州シェーネンヴェルトに設立されたスイスの高級ファッション・ハウスのこと。
Rhudeは2021年にF1とマクラーレンとのコラボレーションを成功させ、「スポーツと現代的なラグジュアリーを、革新的で進歩的なコレクションに再構築しました」と語りました。
※RhudeとF1、マクラーレンとのコラボレーション=https://www.gqjapan.jp/fashion/gallery/20210126-mclaren-rhude-news
ビラセノールの苦労
ビラセノールは、他のブランドによるホッケー用ジャージ作成を見てきたので、NHLも、より多くの人の手に渡りうるジャージを作ることに心を向ける時期が来たのだと言いました。
NHLのジャージを作ることには、いくつかの特異な課題がありました。機能性は常にファッションの最先端にあるわけではないが、ゲームウェアのデザインには必要なことです。
ビラセノールは、Rhudeでホッケー用のジャージを作ろうとしましたが、それはどちらかというとランウェイ風だったと言っています。当初、彼はゲーム用ジャージに必要なすべての通気性を認識しておらず、パッドに必要な余分なスペースも考慮していませんでした。
※ランウェイ=ファッション・ショーの間、ファッション・モデルたちが服やアクセサリーのデモンストレーションを行う舞台。
「形をデザインし、ロゴを作成するために、私は(チームへ)来ていると思っていました。しかし、ジャージの複雑さや、私たちが普段目にしているシルエットや色以上の要素を見るのは本当に興味深いです」と語りました。
「人生のどんなことでも、目標があれば、その目標に向かって取り組み、すべての材料を加えます。この場合の目標は、コヨーテズの伝統の一部であるかのように感じる象徴的なジャージを作ることでした。それに追加された部分は複雑さです」。
ランウェイでのファッション・デザインと、氷上のジャージのデザインのもう一つの違いは距離です。
「一歩下がって、試合を観戦すると、選手から5インチも離れていないことを認識しなければなりません。これらは、私たちのしなければならない小さな修正です。でも結局は、ドープ(ここでの意味は、最高とか、かっこいい)・ジャージを作ることなんです。エキサイティングでした」と語りました。
ビラセノールは自分のデザインを押し付けるのではなく、
ちゃんと選手のことを考えてくれてるんだにゃ。
コヨーテズの伝統を重んじたビラセノール
ビラセノールは、コヨーテズのこれまでの外見を考慮し、ある意味で尊重することもプロセスの一部であると述べました。
「ジャージの遺産を見た時、本当にクールなものが使われていることに目を見張りました。ジャージの象徴的な部分を使いたかったのです」と語りました。
セーター(ジャージ)の彼のお気に入りの部分は、砂漠の地形を連想させるところです。「それが表現しているものです。これがアリゾナ・コヨーテスのユニフォームになるだけでなく、同時に州のユニフォームにもなることを確認しておいてくださいね」と述べました。
コヨーテズは今シーズン、マレット・アリーナで「デザート・ナイト」ジャージを14回着用します。アリゾナ州立大学構内にあるこのアリーナは、テンピの新アリーナ建設がこの春に有権者によって承認されるのを待つための仮住まいなのです。
メルエロによると、特別仕様のセーターを追加することは、フランチャイズ全体の再生に向けた気持ちの一部であると語りました。
「すべてが進行中で、現時点では拡張チームのようなものです。私たちが実際に目にしているもの、そして私たちがそれになりたいと思っているものをブランドで創造し、待っているすべてのファンと交流できることは、本当に素晴らしいことです」と彼は述べました。
「当社はこれにかなりの投資をしており、それが未来の一部であると感じています。理想的にはコヨーテズの世界を作り、あらゆる方法でファンにサービスを提供したい」と述べました。
アイスホッケー文化の復権
ビラセノールはその視聴者拡大において重要な役割を担っています。彼が11歳の時に家族でフィリピンの首都マニラからロサンゼルスに移住しました。彼はヒップホップ文化に夢中になり、その影響を受けたのです。
彼は、NHLのジャージがストリート・ウェアのどこにでもあった頃を今でも覚えています。彼は、もう一度そこに到達できると信じています。
「2000年代と1990年代、音楽や映画やコマーシャルなどを見ると、そこにNHLのジャージがあったね」と彼は言いました。「ホッケーはまだ文化に組み込まれています。しかし、ときには物事にひびが入り、新しいものが生まれることもあります。
でも、他のスポーツが復活してかっこよくなったように、ホッケーも進化した形でそれを楽しむことができるだろうね」と述べました。
まとめ
知らないだけで、実はやっているのかもしれませんが、日本のアイスホッケー界も日本の有名ファッション・デザイナーとコラボするくらいの、斬新な試みをやってみてもいいような気がします。それがどれだけ集客力に結びつくのか、全く未知数ではあります。でも、やらないよりはマシだと思うのですが。
コヨーテズの本業の成績は、確かにパッとしたものではありません。将来、テンピに建設されるであろう新アリーナのことを念頭に置きつつ、新たなファン開拓に向けてのメッセージとして、チームが今回のチャレンジをしたと感じます。それは賭けの部分も多分にあると思いますが、「一つ勝負に出るか」と腹を括ったフロントに敬意を表したいですね。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!