はじめに
氷上の荒ぶる若武者を描いた漫画『ドッグスレッド』、現在ヤンジャン休載中…( ; ; )。野田サトル先生の体調回復を祈るばかりです。アイスホッケーの激しさを描いた唯一の漫画ですからね、元気になられたら、休んだ分、どーんと描いてくださいよ!
さて、オフシーズン中とはいえ、北米の若武者=新人さんや若手選手に休息はありません。大学やNHL傘下の下部組織チームにいる若手達は自分の個性を磨きつつ、上へ這い上がろうと必死で闘っています。今回は、2人の有望な若手をピックアップしてみました。
一人はトップ・チームでやれる実力を持ちながら、もう1年、大学でプレーすることを選び、もう一人は、選手だった父親の教えを受けつつ、いよいよトップ・チームへ闘いの場を移そうとしています。北米の人材の豊富さに、圧倒される内容の記事でもあります。
『ドッグスレッド』最新巻=第3巻が好評発売中だにゃ。
実際の日本のアイスホッケー・リーグは
いろいろと難題を抱えているけど、
きっとかつての日本リーグ時代の活気を取り戻してくれると信じている!
このブログも、その一助になるべく頑張るぞ!
引用元:NHL.com「Devine has dramatically raised profile for future with Panthers」
7巡目指名ながら、超期待の新星
2022年のNHLドラフト後、フロリダ・パンサーズが彼を7巡目(全体221位)で最後から5番目に指名したとき、ジャック・ディヴァインは「超興奮」と「超感謝している」と述べました。
もしパンサーズが、ドラフトの後半にこのような才能を獲得したことに「超感謝」し、「超興奮している」と思っているのであれば、許してやってください。
この20歳のフォワード(の能力)は、間違いなくドラフト順位を上回っています。
2022年のNCAAチャンピオンシップで優勝したデンバー大学の新入生として36試合で3ゴール(16アシスト)を決めたディバインは、大学ホッケーのトップスコアラーの1人になりました。
昨シーズン(23-24)3年生だった彼は、一時NCAAのゴール数でトップに立ち、その後、フォワードのカッター・ゴーティエ(アナハイム・ダックス)、マックリン・セレブリーニ(サンノゼ・シャークス)、
ライアン・レナード(ワシントン・キャピタルズ)に次ぐ27ゴール(29アシスト)で全米4位でシーズンを終わりました。
ホビー・ベイカー賞1の最終選考に残ったディバインは、デンバーを3シーズンぶり2度目の全米タイトルに導きました。
そして、パンサーズが2022年に彼を「超感謝すべき存在(ドラフト指名)」にしたこともあり、彼はデンバーでの82試合(2年生&3年生の2シーズン)で87ポイント(41ゴール、46アシスト)を挙げるまでの選手になっています。
「自分にとってもチームにとっても、かなり特別なことだった」と、ディバインは今月初め、パンサーズの新人研修用キャンプで語りました。「シーズンを勝利で締めくくることができれば、それはとても特別なことだ。特別な1年だったし、素晴らしい経験だった」。
フロリダが7巡目でディバインを獲得できたのは予想外のことであり、なぜならドラフトでは2巡目位で指名されると予想されていたからです。
2022年、フロリダとの初めての新人研修用キャンプで、ディバインは、そんなことはどうでもいいと言いましたが、今のところそうではないようです。
そして、(大学)3年目のシーズンで成功を収めたディバインが、9月のトレーニング・キャンプで、パンサーズのポジションに挑戦することが期待されていたのです。
もう1年、大学へ行きます!
しかし、そうはいきませんでした。ちょっと驚いたことに、ディバインは5月に大学最終学年のためにデンバーに戻る(大学4年生に進級して、アイスホッケー部でプレー)と発表しました。
ディバインは、(パンサーズに入っても)アメリカンホッケーリーグのシャーロット2(・チェッカーズ)に移籍する可能性が高かったのですが、その代わりに、デンバー大学でホビー・ベーカー賞と3度目の全米タイトルを狙うことになります。
このことは、ディバインが来年の夏、フリーエージェントとなって、3大学でのキャリアを他のチームで活かす可能性があることを意味していますが、フロリダのゼネラル・マネージャー、ビル・ジトは、もう1年学校に残るというディバインの決断に拍手を送ると言いました。
「彼は1歳年上になり、1歳分、前より強くなり、今シーズンは『ボス』になるだろう」とジトーは言っています。「そこには良いことがたくさんあります。なぜ自分の大学にもう1年戻らないんだ?って言いたいくらいだ。
彼は素晴らしい子だし、(大学は)素晴らしいプログラムだ。彼のような選手がいるのは幸運だよ」。
2025-26シーズン、ディバインはどこでプレーできるかについては語っていませんが、パンサーズでプレーしたいと思っているようです。
フロリダは確かにそうであることを願っています。
「パンサーズはトップクラスの組織であり、そして、彼らが与えてくれたサポートにとても感謝しているよ」とディバインは言いました。
「僕にとっては難しい決断だったけど、やってよかったと思っている。それは僕自身と僕の家族のために正しい決定を下すことであり、チーム・フロントからも大きなサポートがあった。彼らは僕のために最善を尽くしてくれるし、僕をサポートしてくれているんだ」。
「僕がドラフトされたチームが、これほど多くの成功を収めているのを見るのは素晴らしいことさ。その時(チームに加入する時)が来れば、僕にはバックアップしてくれる組織がある。うまくいけば、僕も(チームの成功に)参加できるかもしれないね。
ここフロリダでもシャーロットでも、彼らの勝利に貢献できるようベストを尽くしたい」。
大学4年間、しっかり闘って成功体験を得れば、
それが勝利のDNAとなって、ディバインの今後のホッケー生活を
支えてくれるんじゃないかにゃ。
チームともしっかり絆ができているみたいだし、何の不安もなく、
大学ラスト・シーズンを迎えるでしょう。
引用元:NHL.com「George wants to eventually be ‘the No. 1 guy’ for Kings」
バランス感覚の優れた若手ゴールキーパー、現る
カーター・ジョージは、若きゴールキーパーとしては最もバランスが取れており、特にポジショニングとゲーム理解力に優れています。ロサンゼルス・キングスが2024年のNHLドラフトの2巡目(全体57位)で18歳の彼を指名することにつながったのは、その幅広い特性でした。
「彼のゲーム構成、ホッケーセンス、ゲームに対する天性の直感が、我々を惹きつけたのだと思う」と、キングスのゴールテンダー・ディレクター、ビル・ランフォード4は語っています。
ポジションを習得する過程で型にはまらないアプローチをとったことが、そうした重要な特性のいくつかを育んだ、とジョージは評価しています。
彼の父であるマイク・ジョージ5は、カーターが初めて氷上に立ったとき、シュートと向き合うのではなく、スケーティングを重視しました。その結果、セービングをするためにどこにいるべきか、という予測に磨きがかかったのです。
「おそらく、ゴールテンダーになって最初の2、3年は、ゴールキーパーの練習中、パックを実際に目にしなかったよ」とジョージは言いました。
「いつもただ滑って、滑って、滑ってだけで、そのおかげでエッジが効く(シャープに動く)ようになったし、若いうちからクリース(ゴール前エリア)でもっと効率的にプレーできるようになった。そして、僕はそれを土台にしていったんだ」。
NHLの5チームでゴールキーパーとしてプレーし、1990年、エドモントン・オイラーズのスタンレーカップ優勝に貢献してコン・スマイス・トロフィー(プレーオフMVP)を獲得したランフォードは、ジョージを評価する際に状況処理が際立っていたと述べています。
「彼は目の前で起こっていることを本当によく把握している。若いゴールキーパーとしては素晴らしいことだ」とランフォードは言いました。
ジョージは昨年、それを実践し、2023年のフリンカ・グレツキーカップ6と2024年のIIHF U18世界選手権でカナダ代表として金メダルを獲得しています。
2023-24シーズン、彼はリーグ最多の1,923ショットに直面したにもかかわらず、オンタリオ・ホッケーリーグのオーウェン・サウンド(アタック。23-24はミッドウェスト・ディビジョン5位。プレーオフ1stラウンド0勝4敗で敗退)で56試合に出場し、
23勝21敗6延長負け3シュートアウト負け、平均失点3.30、セーブ率.907を記録しました。
ホッケーだけじゃなく、勉強もできます
ジョージはまた、毎年OHL(オンタリオ・ホッケー・リーグ)の最も学業優秀だった選手に贈られるボビー・スミス賞7と、学業優秀高校生選手に贈られるアイヴァン・テナント記念賞8も受賞しています。
「私もジュニア・ランクを経験したよ」とランフォードは言いました。
「学校に行くのは大変だけど、24時間365日ホッケーをしているわけじゃないから、何か他のことに集中することもできるようにしないとね。彼は賢い子だよ。彼は非常に自主的で、それが私たちの好きなところだ」。
欠点は気にせず、頑張るのみ!
ジョージの唯一の欠点は、体格のなさかもしれません。7月に行われたキングスの育成キャンプで、NHLの多くが大柄なゴーリーを好んでいるように見えるこの時期に、身長6フィート1インチ(約185センチ)、体重196ポンド(約89キロ)でチェックインしました。
エリック・ポルティージョはキングス傘下のトップ・クラスの若手有望株で、6フィート6インチ(約198センチ)と218ポンド(約99キロ)もあります。
23歳の彼は、昨シーズン、アメリカンホッケーリーグのオンタリオ9(・レイン)で24勝11敗3延長負け、平均失点2.50、セーブ率.918を記録しました。
しかし、7月25日、キングスとエントリーレベルの契約を結んだジョージは、身体的な格差を心配していません。
「僕はNo.1の男になりたいし、ここに来て、このリーグでスターターになれることを示したい」とジョージは言いました。
「自分が今いる場所に、ずっといられるだけの技術と才能があることを示したいし、それを楽しみにしている。それには多くのハードワークが必要だとわかっているし、まだ始まったばかりだしね」。
まとめ
学業優秀者について、そのような表彰制度があるとは知りませんでした。ホッケーの技量を磨くと同時に、一人の人間として教養を身に付けてほしいということだと思います。この辺の教育システムは、日本も見習うべき点があるのではないでしょうか。
今回取り上げた2人の若武者は、確実にトップ・チームで活躍するはずです。特にディバインは、ドラフト最終指名に近い順位で指名されており、これでスターになったら、同様の境遇だったNFL・49ersのブロック・パーディーのように騒がれるかもしれません。
NHLには、まだまだたくさんの才能あふれる若武者が揃っています。10月からの24-25シーズン、我々を驚かせてくれる、思わぬ「原石」が飛び出して来ることを期待しています。ああ、新シーズンが待ち遠しいですね。
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!
【註釈】
- NCAA男子アイスホッケー最優秀選手に与えられる毎年恒例の賞。現在まで44回を数える。プリンストン大学で大学ホッケーをプレーし、第一次世界大戦直後に亡くなった、ホッケーの殿堂入りをしたホビー・ベイカーにちなんで名付けられた。
↩︎ - パンサーズ傘下のチームで、AHL・アトランティック・ディビジョン所属。昨シーズンはディビジョン4位(39勝26敗7延長負け)で、プレーオフ出場圏内を目指す予備予選に出場したが、1勝2敗で敗退。
↩︎ - ドラフト指名はされたものの、パンサーズとエントリーレベル契約をかわしていないため、ディバインと契約を結ぶための「ウェーバー」権限が他チームにも適用される。ルール的には、他チームは契約交渉をしても問題はない。
↩︎ - カナダ、マニトバ州出身。57歳。スタンレーカップ・プレーオフ(エドモントン・オイラーズ在籍時、89-90)、カナダ・カップ/ワールドカップ(91)、男子アイスホッケー世界選手権(94)でMVPを受賞した史上唯一のゴールキーパー。
↩︎ - カナダのオンタリオ州ウォータールーを拠点とするジュニア・アイスホッケーチーム、ウォータールー・シスキンズ(グレーター・オンタリオ・ジュニアホッケーリーグ中西部地区。86-87シーズンのみ)等で、ゴールキーパーとしてのプレー経験を持つ。
↩︎ - ホッケー・カナダ、チェコ・アイスホッケー協会、およびスロバキア・アイスホッケー連盟が主催する毎年18歳以下の国際アイスホッケー・トーナメントのこと。1991年から開始され、日本でも4回開催(91〜93、95)されている。
↩︎ - オンタリオ・ホッケーリーグの年間最優秀学業選手に毎年授与される賞。高い水準のプレーと学業の優秀さを最もうまく両立させた選手に贈られる。元オタワ67’sの選手、ボビー・スミスにちなんで名付けられた。
スミスがジュニア時代の素晴らしいキャリアで、氷上だけでなく教室でも示した高い水準の優秀さがその理由である。各チームからノミネートされた選手は、その年のOHLにおける学業優秀者のみのチーム・メンバーとなる。
この賞は、OHL教育コンサルタント委員会とNHLセントラル・スカウティングのディレクターによって選出。
受賞者は全員、CHL(カナディアン・ホッケーリーグは、カナダに本拠を置く3つの主要なジュニア・アイスホッケーリーグを代表する統括組織)年間最優秀学業選手賞にノミネートされる。
↩︎ - OHLの成績優秀な高校生選手に毎年授与される。この賞は、キッチナー・レンジャーズの元教育コンサルタントで、20年間の在任期間中にリーグ全体の学力基準の策定に尽力した故アイヴァン・テナントに敬意を表して名付けられた。2005年開始。
↩︎ - 2015-16シーズンからリーグ入りしたチーム。カリフォルニア州オンタリオに本拠地を置き、キングス傘下であり、トヨタ・アリーナをホームとする。
2015年、いくつかのフランチャイズがパシフィック・ディビジョン創設の際、マンチェスター・モナークスの移転により創設された。
なお、かつてレインと同名のECHLチームがあり、ニューハンプシャー州マンチェスターに移転し、2008〜2015年までマンチェスター・モナークスとしてECHLに参加していた。 ↩︎