はじめに
NHL2022-23シーズンは10月7日に開幕します(日本でも盛り上がって欲しい!)。NHL.comでは間もなく始まるキャンプに備えて、各チームのキー・ポイント、所属選手に関する最新情報、予想ラインアップの記事を掲載しています。
まあ、独力では全チームをカバーしきれないので、パッと思いついたチームから…ということになります(^^;。今回はボストン・ブルーインズです。 新ヘッド・コーチ、ジム・モンゴメリーの手腕や、いかに!といった感じでしょうか。
昨シーズンは51勝26敗5分け、アトランティック・ディヴィジョン4位。イースタン・カンファレンスのプレイオフ・ファーストラウンドでカロライナ・ハリケーンズに敗れています。
タイトルに書きましたように、主力にケガ人が出ており、どうやり繰りしていくがカギと言えます。アイスホッケーはラインを形成する選手同士の相性もありますから、新人選手を抜擢し、ベテランと組ませて成長させていく方法論があります。ブルーインズは、その手を使って難局を乗り越えていこうとしています。
どんなロースター(メンバー)になっているのか、早速見てみましょう。
※本記事は、NHL.com「Bruins season preview: Need fast start to overcome injuries」などを参照して、編集・作成したものです。
3つのキー・ポイント
モンゴメリー新監督への対応
ブルース・キャシディ前HCでの6シーズンを過ごした後、ブルーインズはベンチ内の変化を選択しました。NHLのHCとしては2度目のチャンスとなるジム・モンゴメリーを迎えることとなりました。
ダラス・スターズの元HCの経験のあるキャシディは、選手とのコミュニケーション改善に加え、チームの守備力をベースにすることによって、チームの攻撃力を向上させると宣言しました。
しかし、彼が起そうとする変化が何か具体的に意味あるものとなるには、ブルーインズが(監督や選手からの)新しい声と新しいアプローチに対応する必要がありますが、現時点でロスターはほとんど同じままです(移籍選手の獲得が無いということでしょうか)。
※ジム・モンゴメリー…カナダ、モントリオール出身の53歳。現役時代はNHLよりAHLで主に活躍していた。引退後、デンバー大のヘッドコーチに就任し、2016-2017シーズンにNCAAトーナメント・チャンピオンに導いています。
その腕を買われ、2018-2019シーズンからNHLダラス・スターズのHCに就任し、3年ぶりにチームをプレイオフに進出させました。しかし、翌シーズン途中、アルコール乱用などのプロとしてあるまじき行為のため解雇されています。
現在は体調も回復し、心機一転、シカゴの地でHCとしての手腕を見せてくれそうです。
好調な滑り出し…?(皮肉?)
ブルーインズは、フォワードのブラッド・マーシャン(故障箇所:両臀部。丸ガッコ内、以下同)とディフェンスのチャーリー・マカヴォイ (左肩) とマット・グゼルチク (右肩) の3人の主力選手が負傷しており、すでにシーズン開幕に遅れることが決定的です。
グゼルチクは今年11月に、マーシャンとマカヴォイは12月にそれぞれ復帰する予定です。ブルーインズが望んでいるのは、競争力を維持しつつ、グゼルチク、マカヴォイ、そしてマーシャンが戻ってくるまで、どうやりくりしていくのか見通しを立て、それに見合った選手を確保することです。
※ブラッド・マーシャン…カナダ、ハリファックス出身の34歳。ポジションは左ウィング。自らの得点能力の高さもさることながら、同じラインを組む同僚選手の得点アシストに集中すると、無類のパッサーとなります。
また、175センチと小柄な体格を活かし、中盤のダイナモとして相手選手の懐に潜り込み、パックを奪取する選手です。しかし、ラフプレイをする傾向がかなり強く、しょっちゅう出場停止のペナルティを課せられています。相手を「本当に舐めたプレイ」でも有名。
※チャーリー・マカヴォイ・・・2016年、ドラフト全体14位でブルーインズから指名されたディフェンダー、米国出身の24歳。昨シーズンの成績:78試合10ゴール・46アシスト。アシスト数は、現時点でキャリア最高。
2018年の世界選手権では、NHLのプレーオフ終了後の途中参戦にもかかわらず、6試合で3ゴール・6アシストを記録し、米国代表の銀メダル獲得に貢献しました。
※マット・グゼルチク…2012年、ドラフト全体85位で指名されたディフェンダー、地元ボストン出身の28歳。2012年に指名を受けながらも、ボストン大学で4年間プレーしています。昨シーズンの成績:73試合4ゴール・20アシスト。
キャンプ前に、これだけ主力がケガで抜けるとは…。
緊急事態にゃ!
攻撃力の見極めが必要
ブルーインズは昨シーズン、全32チームのオフェンス部門での数値において、中位に位置していました(NHL15位、1試合平均3.09ゴール)。トップスコアラーのマーシャン (80ポイント) が開幕からいないため、シーズン開幕には別な得点源を見つけなければいけません。
ジェイク・デブラスクは、マーシャンとパトリス・バージェロンと共にスケートをする機会を得て、25ゴールを決めた昨シーズンのペースを維持できるでしょうか。ダビド・クレイチは母国のチェコで1年間プレーした後、NHLに戻ってくるのでしょうか。
パベル・ザハはボストンをホーム・チームとすることで、ニュージャージー・デビルズで我慢してきた分を取り返し、成績を向上できるでしょうか。アトランティック・デイヴィジョン上位クラスにとどまるためには、少なくともこれらの選択肢の中から1つが必要になるでしょう。
※ジェイク・デブラスク…2015年、ドラフト全体14位で指名された左ウィング。カナダ、エドモントン出身の25歳。父・ルイも元NHL選手で、公式戦401試合出場。現在はホッケー関連のコメンテーター。
昨シーズン、移籍志望を口にし物議を醸したが、一応契約延長に。しかし、契約付帯条項はスムーズに移籍しやすいものになっており、今夏のマーケットでは無風だったものの、今後ひと波乱ありそう。
※パトリス・バージェロン・・・まさに「ミスター・ブルーインズ」と言うべきキャプテン。カナダのケベック州アンシェーヌロレッテ出身、37歳。ポジションはセンター。
ありとあらゆるカップを手にした男と言えるくらい、受賞歴は素晴らしいものとなっており、2011年には五輪、世界選手権、スタンレーカップ杯のすべてを制した選手の特権であるトリプル・ゴールド・クラブの仲間入りを果たしています。
※ダビド・クレイジ・・・チェコのシュテルンベルク出身、37歳。ポジションはセンター。2020‐2021シーズンを最後に、母国チェコのリーグに参戦すると発表。しかし、ブルーインズは「戻りたくなったら、いつでもドアを開けて待っている」と返答したとされています。
そして、新シーズン、期待に応えるべく、クレイジはNHLの舞台に戻ってきたのです!
※パベル・ザハ・・・チェコのブルノ出身、25歳。2015年、ドラフト全体6位指名でニュージャージー・デビルズに加入。一巡目指名ですから、スター選手候補の一人のはずでしたが、数字的にはもうひと皮むけてほしい、といったところでしょうか。
後述の記事にあるように、かなり期待されている選手みたいです…。
バージェロン、クレイジは人格者なんだにゃ。
現時点でのロスターについて
開幕出場メンバーに名を連ねそうな選手は?
シーズン開幕までに主力選手にケガ人が出たため、ブルーインズはグラブ内にいくつかのスポット(ポジションの空白)ができています。
通常のフォワード・コンビ、マーシャン-バージェロンのペアの代わりに、モンゴメリー監督は、バージェロンと期待の選手ファビアン・ライセルとでペアを組ませれば、(相乗効果で)開幕から強烈なシュートを打ち、印象に残る働きをしてくれるかもしれない、と期待しています。
また、マカヴォイのスポットを埋める人材として、ハンパス・リンドホルム (あるいはブランドン・カルロ) とともに、ヤクブ・ズボルジルにチャンスを与える予定です。シーズンをスタートさせるために、ブルーインズのラインナップが流動的になることは間違いありません。
※ファビアン・ライセル…スウェーデン、ヨーテボリ出身の19歳。ポジションは右ウィング。カナダのブリティッシュコロンビア州にホームを置く、バンクーバー・ジャイアンツでの活躍(成績等は後述)により、2021年のNHLドラフトで、ブルーインズから全体21位の指名を受けています。
※ハンパス・リンドホルム・・・スウェーデン、ヘルシンボリ出身の28歳。ポジションはディフェンス。昨シーズン途中、アナハイム・ダックスからトレードで加入。ドラフト指名権3つ+選手2人との交換ですから、いかにブルーインズが期待しているか分かります。
※ブランドン・カルロ・・・米国、コロラドスプリングス出身の25歳。ポジションはディフェンス。2020‐2021シーズンは故障続きで満足いくものではありませんでしたが、昨シーズンに復活。故障者続きの新シーズン、恩返しの活躍ができるかどうか。
※ヤクブ・ズボルジル・・・チェコのブルノ出身、25歳。ポジションはディフェンス。故障もあり(後述)、まだNHL出場経験は少ないですが、チェコ出身の選手が多いチームですから、相乗効果で大きく素質が開花するかもしれません。
最も興味深い移籍加入選手!
パベル・ザハは、デビルズから2015年NHLドラフトで6位で指名された後、彼のドラフトの順位に見合った活躍を全くしていません。だから、再スタートは、このフォワードにとっていいことかもしれません。
ブルーインズの5人のチェコ選手の1人であるザハは、今年7月14日、センターのエリック・ハウラとのトレードで獲得し、8月8日に制限付きフリーエージェントとして1年間350万ドル(日本円で約5億円)の契約にサインしました。
彼はキャリアハイの36ポイント (15ゴール、21アシスト)以上を達成し、高いスキルを持ったセンターとしてトップ6(先発の6人)に入るチャンスを得ようとしています。将来的にはバージェロンかクレイジのどちらかに取って代わる選手となるべく、新シーズンはオーディションの場となる可能性があります。
それにしても、チェコ出身の選手が多いにゃ。
最大のサプライズを起こしそうな選手がいます!
19歳のライセルが、ウエスタン・ホッケー・リーグのバンクーバー・ジャイアンツからNHLへとジャンプ・アップ(移籍)することは、彼にとってとても大きな望みでありますが、ブルーインズは北米での短い期間の中で、この若きフォワードが見せてくれたプレーに心を惹かれています。
53試合で62ポイント(22ゴール、40アシスト)を挙げ、NHLの試合中に、ブルーインズが大いに活用できるであろう、ダイナミックな攻撃型選手の素質を見せてくれました。
彼はまだ幾らかの強さと身体の大きさを得る必要があるにもかかわらず、2014‐2015シーズンのパストルニャクのように飛躍できるかもしれません。その可能性は、まだテーブルの上の話です。
※パストルニャク・・・ダビド・パストルニャクのこと。チェコ、ハヴィジョフ出身の26歳。2019‐2020シーズン、48ゴールでモーリス “ロケット” リチャード・トロフィー(最多ゴール)を獲得しました。ブルーインズのプレーヤーでは初受賞となります。
壁を突破する準備完了だ!
新シーズン、ズボルジルの能力に対する懐疑論者の間違いを明らかにするチャンスかもしれません。2021年12月2日、彼が膝前十字靭帯損傷(ナッシュビル・プレデターズ戦での負傷)によりシーズンを棒に振る前、能力の煌めきを見せ始めていました。2015年のNHLドラフトで、ブルーインズによる13位指名の原因となったのもそれです。
マカヴォイとグゼルチクがいないので、シーズン開幕時、チームの他のディフェンスマンにはたくさんの空きポジションがあり、ズボルジルも頻繁に呼び出されるはずです。
ケガした場所が場所だけに、
心配だにゃあ…。
ファンタジー・スリーパー
リンドホルム (ファンタジー・アベレージ・ドラフト・ポジション:145.8)は、初めてのパワープレイでボストンのエリートフォワード、ダビド・パストルニャクとパトリス・バージェロンと共に、短時間とはいえ一緒にプレーすることになるでしょう。
最終的にはトップ・ディフェンス・ペアを組むであろう、チャーリー・マカヴォイ (肩の手術からのリハビリ中) が復帰することで、さらに恩恵を受けるはずです。
リンドホルムは以前のNHLキャリアハイ・ポイント(2014-15年にアナハイム・ダックスで34)を上回る可能性があるため、ファンタジー・スリーパーとなっているのです。
※ファンタジー・スリーパー・・・スリーパーとは、ドラフト後半のラウンドで指名されたプレイヤーでありながら、アベレージ・ドラフト・ポジションを大幅に上回る可能性を持った選手のことを言います。
アベレージ・ドラフト・ポジションとは、実際のドラフト以前に行われたドラフト予想と実際のドラフトの両方のデータを使用し、それぞれの順位がまとめられ、各プレーヤーの平均順位が割り出されたものです。
若いプレーヤー (少なくとも24歳まで) であるか、以前にNHLで好成績を収めたが、あるいは何らかの理由で過小評価されているか、そして見過ごされているままの経験豊富なプレーヤーが、「スリーパー」と呼ばれます。
なお、ここでのファンタジーとは、NBAやMLB等のユニークなデータをネット上にアップしている、ファンタジー・データ社のことを言います。つまり、リンドホルムは、同社から注目されている選手ということになります。
予想ラインナップ
フォワード
(1)テイラー・ホール — ダビド・クレイジ — ダビド・パストルニャク
(2)パベル・ザハ — パトリス・バージェロン — ジェイク・デブラスク
(3)トレント・フレデリック — チャーリー・コイル — クレイグ・スミス
(4)ニック・フォリーニョ — トマス・ノセック — マーク・マクラフリン
それぞれがラインメイトになるという予想です。開幕戦は(1)と(2)の順序が逆になっているかもしれません。どちらも捨てがたいのですが…。プレシーズン・マッチでどうなるかですね。
また、フォワード4セット+ディフェンダー3セット+キーパー2人ですから、ベンチ入り22人に2人足りません。フォワードの控えは、ファビアン・ライセルでしょうか。
ディフェンダー
(1)ハンパス・リンドホルム — ブランドン・カルロ
(2)マイク・ライリー — ヤクブ・ズボルジル
(3)デレク・フォボート — コナー・クリフトン
フォワード陣より、こちらの方が危機感大だと思います。なんせ主力ディフェンダー2人を欠いてますから。記事の感じだと(1)で開幕戦のスタートに臨むと思いますが、どうなることやら。
ゴールテンダー(ゴールキーパー)
(1)ジェレミー・スウェイマン
(2)ライナス・ウルマーク
まとめ
バラエティに富んだ顔ぶれですが、実力未知数の選手が多いな、という印象を受けました。言い換えれば、「使ってみないと分からない」選手ばかり。この辺は、プレシーズン・マッチで、どんなケミストリーが生まれるか、それによってチームの雰囲気が変わってくるでしょう。
あと、これ以上ケガ人を出さないように!特にディフェンス陣はこれ以上ケガ人を出すと、緊急補強せざるを得ないかもしれません。キャンプでは、入念なフジカル・チェックが必要となります。
経験豊富なベテランと若手の歯車がきっちり噛み合い、若手がぐんぐん伸びていけば、シーズン序盤出遅れたとしても、ケガ人が戻ってくる後半には盛り返せそう。新HCが長いシーズンをどう乗り切るかも楽しみです!
未知数の選手が多いのは、それだけ楽しみも多いってことだにゃ!
期待してるじぇ!
ここまで読んでくれて、サンキュー、じゃあね!